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最近急にボリュームが大きくなってきたのが、主に「既存組」の高速路線バスを対象に、新制度対応を支援する仕事である。書面上は、<年間運行台数の3分の2まで、他社の貸切バスを活用できますよ><上下50%の範囲内でリアルタイムに運賃を変動できますよ><払戻手数料が、募集型企画旅行のキャンセル料と同等まで取れるようになれますよ>ということなのだが、いずれも現実にはそう簡単な話ではない。まず、上記3つのポイントは、それぞれ適用対象となる路線(厳密には系統)の範囲が異なる。また申請や届出など必要な手続きも異なる。もっとも、それは書面をよく読み込めさえすれば理解できる話。むしろ、実際に運用するとなると考えなければならないことがたくさんある。例えば払戻手数料。新しい標準運送約款では、「乗車便確定乗車券」については10日前を過ぎたら20%、7日前からは30%という風に、当日キャンセルなら50%(さらに直前キャンセルならノーショー扱い100%)まで払戻日に応じて払戻手数料を頂くことができる。言うまでもなく、現行なら100円または200円だ。現行が主に「手数」に対し手数料を受け取るのに対し、新制度では空席を出してしまうことへの補償的な意味合いも(実質的には)含まれる。考え方自体は理に叶っているし、高速ツアーバスからの「移行組」にとってはほぼ現行通りというわけだが、「既存組」では考慮すべき点がいくつかあるのだ。まず、数万円、数十万円する商品を扱う旅行会社のカウンターに比べ、鉄道、バスの窓口は低額多数の乗客を扱うため、クイックな接客を求められる。乗合バス運賃は10円単位とされ、高速バスターミナルの窓口には1円玉の釣り銭準備がない。高速ツアーバスならほぼ100%ウェブ予約で自動的に返金されるから問題ないが、「既存組」高速路線バスの場合は、上記パーセンテージの範囲内で10円または100円単位で切捨てするのが現実的だろう。その上で、当日キャンセル50%というのは、営業上は少し高すぎる気がする。楽天トラベルのサイト上で、高速路線バス各社が、<払戻手数料が割安。急な予定変更にも対応>と盛んにアピールしていることからわかるように、手数料が高すぎて集客に影響を与えては本末転倒。さらに「100円」に慣れきった乗客も多く、説明も大変だ。そして共同運行の問題(←また出てきたよ、この問題)。地方の事業者から見れば、<東京線(w/京王)は●%、大阪線(w/阪急)は▲%>という例も生まれ得るわけだが、現実的な「落としどころ」を見つけ出し、ある程度足並みが揃うことになるかもしれない。幅運賃によって可能となるダイナミックプライシング(レベニューマネジメント概念に基づくリアルタイム運賃変動)はさらに複雑だ。私はこれまで、ホテルでRM導入に携わり、その経験を元に高速ツアーバス各社のRM導入を支援した。だがホテルや高速ツアーバスと、今回RMの対象に加わる高速路線バスでは環境が大きく異なる。ホテルや、高速ツアーバスのほぼ100%を占める長距離路線(主に夜行)では「日単位」の価格コントロールになるのに対し、高速路線バスに多い多頻度昼行路線では「便単位」コントロールが必要だ。課題はまだある。まず運賃制度的には、「既存組」高速路線バスは高速ツアーバスと異なり「三角表」に基づいた細かい運賃区分がある。子供、障がい者運賃なども忘れるわけにはいかない。長距離路線を中心に三角表を廃止する(あるいは廃止した)路線も増えるだろうが、昼行路線ではそうはいかない。企業秘密なので詳しく書けないが、レベニューマネジャーが、<●日の▲便は単価×円で売りたい>と考えた時に、券種ごとの三角表が半自動的に完成し販売側に反映するようなシステムの仕様を考える必要があろう。さらに、5~6年前にウェブと出会うまでは自ら販売力を持っていなかった(事業として小さかった)高速ツアーバスの場合は、RM導入に際しウェブ以外の販路との価格の整合性は無視し得たわけだが、「既存組」高速路線バスの場合はそうはいかない(なお制度上だけで言えば、ウェブとリアルで運賃が異なっても問題ない)。往復割引、回数券、車内発券……そして忘れてはいけないのが、「乗車便変更」。<ダイナミックプライシング(運賃変動)を行なうのはウェブ予約・事前発券に限定し、電話予約や窓口発券は従来通りの運賃制度。便変更の際は一度払戻して再購入>と決めるなら、それはそれで一つの判断だ。オペレーション負荷は今とさほど変わらず、大きなシステム改修は必要ない。長距離夜行路線ではそれもよかろう(現行でも、東京~京阪神の「ドリーム号」や東京~岡山の「ルミナス号」などは、かなり複雑な運賃体系だ)。しかし多頻度昼行路線はそれでは済まない。<30分間隔で走っているから、復路はとりあえずちょっと遅めの便を予約しておいて、当日、用件が早く終われば一本前の便に変更して購入(あるいは往復券の復路を便変更)>といった使い方こそ、多頻度路線の成長の源だ。<事前にウェブ上で決済・発券すれば変動運賃を適用するけど変更は一切ダメ>であれば、乗客にとって事前発券を選ぶリスクが大きく、(指定席の変更が可能な上、最悪でも自由席に並べばいいJRとの競争も含めて)RM導入の効果は、事業者、乗客双方にとってあまりに小さいものになってしまう。またウェブ予約運賃を変動させる上で、変更可能な正規運賃よりも必ず安い金額を設定せざるを得ず、むしろ繁忙便の収益性を棄損してしまう。したがって、リアルタイムに変動するウェブ運賃もまた、何らかの差額徴収による便変更に対応するのが得策だ。以上ここに書いてきた全てを、予約センターまたは本社営業部門に新設されるレベニューマネジャーから、第一線のターミナル窓口、そして乗務員まであらゆるスタッフにとってハンドリングしやすい運用と、それを実現するシステムの仕様……5年、10年後の完成図を見据えながら、まずは本年度中に最初の一歩を踏み出すためのロードマップは、今ようやく、私の頭の中にぼんやりと浮かび上がってきたばかりである。【首都圏にお住いの方にお知らせ】4月27日(金)、TBSラジオ『デイ・キャッチ!』に生出演が決まりました(15:30頃~。当日の状況により変更の可能性あり)
2012.04.25
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通常の「気ままに更新」に戻って第一回。前回ご紹介したように、<この際に大都市でも、事業者別ターミナル配置ではなく方面別とし、利用者にわかりやすいようバス停を再配分したらどうか?>との意見もある。もちろん、一つの立派な見識だ。私自身、アルバイトとして現場にいた頃は強くそう考えていた。単なる「現場の美意識」というだけではない。「第2フェーズ」において地方部で高速バスの市場シェアが一気に高まった背景として、各地域における地元路線バス事業者の販売力とともに、高速バスの予約先や乗車場所が一元的に提供されていた、という点が挙げられよう。地方の人が高速バスに乗ろうと思えば、全ての便は「●●バスさん」の予約センターで予約でき、地元のバスセンターから乗車できるというわかりやすさ。若干の例外を除けば、全国どこでもそれは共通だった。それを東京や大阪でも、というのはプラスも大きいだろう。だがプラス面だけかというとそうではない。仮に東名方面は渋谷(か東京駅)、中央道方面は新宿と合理的に発着枠を当てはめたとする。今よりはずっとわかりやすい。だが、よほどうまく公平に発着枠を配分し続ける仕組みを構築せねば、発着枠は既得権益化し、事業者同士が競い合う環境は消失し業界全体の活力が失われていく。雨後の筍のような新路線ラッシュを生んだ「第2フェーズ」が、すぐに安定期に移行してしまい、その間隙を高速ツアーバスにつかれることになった背景は、無競争状態が業界の活力を奪ったからである。仮に渋谷ターミナルが東名方面を、新宿が中央道方面を一手に扱いつつ、その発着枠を既得権化させないためには、「くじ」「入札」などで定期的に発着枠を再配分する方法があるが、それだと定期的に事業者が商品を組みなおす必要があり、結局わかりづらさを誘引する。繰り返すが、私は上記アイデアをダメと言っているのではなく、制度というのは自由競争と公平性、安定性などあらゆる要素のバランスで決めるべきだと言っているのである。その意味では、乗合バス事業において制度のキモはやはり「バス停の配分」に尽きるんだなあと、この文章を書きながら再度実感している。では、今回示された「新高速バス」制度はバランスよい競争を生むであろうか? ウィラーやオリオンら「移行組」にバス停設置の道が開けたことは事実で、それ自体は競争促進的に見える。だが、高速ツアーバス業態が事実上禁止される以上、広い意味での高速バス事業への新規参入は一気に困難になる。仮に私が、<やっぱり自ら高速バス事業をしたい>と考えたとして(広く業界全社の黒子という立場が性に合っているので多分ないけど)、従来なら「成定ツアー株式会社」を作ればよかった。資金と商才さえあれば、貸切バス事業も併営したり、車両を運行会社に貸し与え独創性の高い商品を提供したりすることも可能だった。だが今後は「成定バス株式会社」を作らねばならない。それも、自力でバス停を確保した上で、だ。事実上かなり困難で、乱暴に言ってしまえば、高速バスの世界で競い合う顔ぶれは、今のメンバーに固定されたのだ。その点では、「常に高速バス事業者間に競争環境を」という私の理念とは相いれない。実は「あり方検討会」の公式非公式の議論の中で、「高速ツアーバスを事実上禁止する」という結論に対し、(そのメリットは十分に理解した上で)当初は抵抗したのはそれが理由だ。高速ツアーバス連絡協議会事務局長(当時)の立場だけ言えば、何度も繰り返すように今回の新制度は高速ツアーバス各社にとってメリットが大きいから、素直に呑んでもよかった話。それに抵抗したのは、あくまでも個人的なこだわりの部分からである。とはいえ、では無競争状態になるかというとそうではない。高速ツアーバス各社は、バス停と車内発券という「高速路線バス業態の強み」を手に、新しいフロンティアを求め地方路線、特に高速バス市場の「本丸」である多頻度昼行路線に進出を目指すことだろう。もちろん、すぐ「既存組」を打ち負かすのは困難だが、競争は少なくとも潜在的に激化する。そしてその激化する競争の中で、既存事業者の間で「垂直分業」も進むはずだ。レベニューマネジメント導入(リアルタイムの運賃変動)などの環境変化を考えると、従来通りの共同運行システムでは意思決定が追いつかないからだ。地元に根付いた既存の「地方型」路線バス事業者と、大都市立地の「ハブ型」事業者の関係性も変化するだろう。後者は、従来の発着権(ターミナルなど)に加え、複雑化するマーケティング手法を操るためのシステム改修やマーケティングのスキルで競い合うことになる。そして大手私鉄系、JR系など「既存組」事業者に加え、ウィラートラベルをはじめとした「移行組」も名乗りを上げる。「地方型」事業者は、比較的低い運行コストと、何よりも地元での顧客基盤を「持参金」に、何らかのフィーを支払う形で「ハブ型」事業者に我が身を預けることになる(それを拒絶することも選択肢だ。単独運行化。あるいは、マーケティングにスキルも意欲もないが「地方型」事業者に頭を下げてでも高速バスの運行だけは続けたい大都市の事業者は「お手軽な」パートナーだ)が、「ハブ型」事業者の「面倒見」がその対価に満たないなら、他の「ハブ型」事業者に乗り換えられてしまう。逆に言えば、「地方型」事業者は、どの「ハブ型」事業者と、どんな条件でパートナーシップを結ぶかをよく考えないと、一方的に「貢ぐ」だけになってしまう。両者の提携は、常にお互いを高めあうような契約内容でなくてはならない。どちらか一方にだけ「おいしい」契約は、結果的には双方の活力を奪うというのは当然の話。「勝ちっぱなし」などあるはずもない。「地方型」事業者と「ハブ型」事業者との関係を「WIN-WIN」にどう導いていくかというのが、私にとって次なる興味、高速バス分野における新しい競争だと考えている。
2012.04.16
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「バス事業のあり方検討会」の最終報告書について、本日付『東京交通新聞』第一面でも報じていただいた(上記リンクから「立ち読み」可)。とはいえ、高速バスの話より「バス・タク併用認める 同一営業所で効率運行 地域公共交通確保に一石」の方が大きな扱いなのがタクシー中心の同紙らしい。この件や「乗合/貸切併用登録」「貸切バスの営業区域」なども、機会があれば解説してみたい。さて、前回、<高速ツアーバス各社にとって、高速乗合バスに移行するのはメリットが大きい>と書いたわけだが、とはいえ「はい、そうですか」と簡単に移行できるわけではない。まずご理解をいただきたいのは、理屈ではわかっていても、これまでの自分たちのやり方を半強制的に改めさせられることは気分のいいものではないし、何より誰だって怖い。一人ひとりの生活がかかっているのである。それに、特に旅行会社からバス事業者に変わらないといけない数社にとっては、かなりの資金も必要になる。合わせてネックになるのが、やはり「バス停の確保」問題だ。報告書でも、<特に、移行に際して必要となるバス停留所については、国土交通省において高速バス停留所調整協議会(仮称)の開催や同協議会における調整の指針となる高速バス停留所調整ガイドラインの策定等を実施し、関係者の協力を得つつ、その確保を支援する。具体的には、大都市圏のターミナル駅周辺などの優先度の高い地区を中心に協議会を設け、関係団体の意見やパブリックコメントの結果を踏まえて策定する高速バス停留所調整ガイドラインに基づき、調整を実施する。確保できた停留所は公平かつ客観的な基準により配分する。>とある。これに対し、既存の高速乗合バス事業者側の反応は様々だ。もちろん多くは「様子見」なのだが、現実的な事業者の中には、現在の自社バス停を死守すべく、駅の裏側や、駅前から交差点を一つ越えた辺りの「1.5等地」に新バス停を設置してはどうかと周囲と根回しを始めた会社もあるようだ。もちろん、既存事業者が勝手にバス停を「采配」できるわけでないとはいえ、少なくとも考え方としてはこれは非常に賢明な選択と言えよう。おそらく「停留所調整ガイドライン」には、新設される、または既存事業者と共用となるバス停について、高速ツアーバスから移行する事業者の「既得権にはならない」との表現が入ると考えられるものの、それでも昨日書いたように、そのバス停を使い「移行組」が短・中距離路線に参入する蓋然性は大きい。長距離夜行ではあまり集客力と連動しないバス停の位置だが短・中距離路線では大きなポイントであり、<どうぞどうぞ、この辺りでいかがでしょうか?>と先に「1.5等地」に「隔離」してしまうのは既存側にとって得策だ。逆に、<なぜツアーバスごときにバス停をあげないといけないんだ>とばかり、客観性のない理屈をこねバス停の新設や共用を拒み続けたらどうなるだろう。報告書には、<なお、これらの取り組みによっても必要なバス停留所の確保が進まない場合は、バスターミナルへのイコール・アクセスを義務付けている英国の例や混雑空港における発着枠の配分ルールなども参考に、制度整備の可能性を含め、さらなる取り組みを検討する必要がある>とある。「英国の例」とは、高速バス分野の規制緩和(需給調整撤廃)後においても「バス停の権利」がネックになって新規参入が進まなかった同国において、公共のものはもちろん既存事業者自身が運営する私有地のコーチ・ステーション(高速バスターミナル)にも、一定割合で新規参入側の入線受入を義務付けた「アファーマティブ・アクション」を指す。つまり最もアグレッシブなパターンとして、「バス停再配分の制度化」が考えられるのだ。もっともそこまで行き着かなくても、「内々での話し合い」でコトが実現しなかった場合、地域ごとに、「高速バス停留所調整協議会」を開催することとし、運輸局長名で関係者を招集することになる。既存の乗合事業者の本心では「先祖代々受け継がれた己が領地」であるバス停も、公の場に出てしまえば、そう主張することはできない。福島県であったように公正取引委員会マターとなってしまったり、誰か(誰?)のリークにより地元メディアで「●●交通、バス停新設を拒否。新規参入側は既得権益と反発」などと報じられてしまったりしたら、地元との関係を最重視する各事業者にとって得なことは何もない。あえてネガティブに考えれば、どこか1~2か所の地域において、そのような「騒動」が起こりメディアを賑わせたならば(そうなると間違いなく私はこのブログで紹介するだろうし)、全国の残りの地域では調整が一気に進み関係者の苦労は少なく済むわけだが、できればそのような事態にはなってほしくない。少なくとも、私のクライアントである乗合各社にだけは、その騒動の主人公にはなっていただきたくはない。しばらくの間、各社におかれては、バス停関係の発言(特にメディア対応)にはよく注意いただきたい。いずれにせよ報告書にある通り、<移行の成否及び時期は、バス停留所の確保の成否及び時期に大きく依存することから、関係者に対し、積極的な協力を求めていくこととする>。なお、<この際に大都市でも、事業者別のターミナル配置ではなく方面別とするなど、より利用者にわかりやすいようバス停を再配分したらどうか?>という意見もお聞きする。もちろん、それが「一つの理想」であることは認めたうえで、私自身は、今の高速バス事業にとってそれはマイナスだと考えている。5回にわたって「バス事業のあり方検討会」最終報告書について解説してきたが、(貸切バス分野について書けなかった点に消化不良感は残るものの)いったんそれは終了し、まずは上記「わかりやすい停留所再配分」という言葉を鍵にして高速バス事業の今後を考えるところから、次回以降は通常のブログの形(つまり、単に私が思いついたり記事掲載があったりした時だけ気ままに更新)に戻したい。最後にもう一度、「バス事業のあり方検討会」に関係した全ての皆様に、心から感謝申し上げる。
2012.04.09
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本日付の『日経MJ』でも、「高速乗り合いバス規制緩和 バス各社、対応分かれる 名鉄、一部運賃3割下げ 富士急、制度の内容見極め」と非常に大きく報じていただいた。<新制度ではツアーバスの仕組みを取り込み、乗り合いバスも増便や柔軟な運賃設定ができるようになる>として、名鉄バスの、<「顧客ニーズをいち早くつかみ、新制度移行後の運賃も検討する」>という前向きなコメントが紹介されている。一方、<「高速バスは共同運行便も多く、1社だけで簡単に価格を決められない」との声もある。富士急行は「制度の内容を見極める」として当面、価格や本数を据え置く構え>。後者の声は多くの事業者から聞かれるわけだが、利用者には全く関係ない話であり、少なくとも共同運行が多い件を新制度への不満に置き換えていただきたくない。引き続き報道を確認しだいご報告する。さて昨日書いたように、また上記『MJ』でも紹介されているように、高速ツアーバス企画実施会社は全社、新制度への移行を希望している。何度かご説明したが、<気の合う仲間と一緒に旅行やスキーの仕事をしたい>程度で立ち上げた会社たちが、気付けば数百人の雇用、生活に責任を負うまで成長したのだ。これまでがむしゃらにやってきた(まあ、その「がむしゃら感」に賛否はあろうが)彼らだが、より永続、安定へ舵を切るべき正にその時機に、制度改正の話が降ってきたことは運命的ですらある。上司やプロジェクトに恵まれポンポン出世するような幸運なヤツが時々いるが、制度改正にたずさわった張本人である私さえ、彼らをいささか妬ましく感じるほどだ。さらに営業面では、彼らはこれまで、長距離夜行中心に成長した。だがそれはいつまでも続かない。5年前、販売側の責任者として、まず首都圏~京阪神、次に「B路線」首都圏~名古屋・仙台、最後に「C路線」首都圏~青森・金沢・徳島などへと業界のリソースを1年単位で傾斜配分する戦略を立てた私自身こそが、その限界を知っている。そもそも、圧倒的に総移動量が大きい首都圏~名古屋・京阪神と、夜行移動が定着している首都圏~北東北以外は、夜行路線の事業規模など大きくはない。高速バス市場の「本丸」は大都市(東名阪)や中核都市(仙台や福岡など)と地方部を結ぶ多頻度昼行路線であることは明白だ。彼らが次に目指すのは短・中距離の多頻度路線への進出であり、それには「わかりやすいバス停」「車内発券」がもたらす「気軽に乗れる」高速乗合バスの制度の方が圧倒的に有利である。純粋にビジネス的観点から見ても、「乗合化」は利点の方が大きい。つまり、「ツアー」と「乗合」を比較した場合、参入の容易さと、運賃など細かい部分の柔軟さでは高速ツアーバス業態が上でも、経営的観点から事業として見た場合、高速乗合バス業態の方が有利な点が多い。そして今回の制度改正では、その柔軟ささえ高速乗合バスに追加され、営業面だけ見ると新制度はまるで高速ツアーバスそのもの。定められた集中移行期間内に移行を完了すれば、「開かずの扉」だったバス停も国交省が設置の支援をしてくれる……ここから2年、歯を食いしばってハードルを越えることさえできれば、今よりずっと安定して事業継続、成長できるというのが高速ツアーバス各社の「本音」だろう。ただ、ここまでご紹介してきた考えは全て、高速ツアーバスの「企画実施会社」のものだ。だが「運行会社」すなわち貸切バス事業者の立場は少し異なる。企画実施会社の子会社に当たる運行会社や、特定の企画実施会社と密接な関係を作り上げ高速ツアーバスの運行業務に強い思い入れがある事業者は別として、一般的な運行会社の悩みは深いだろう。よく高速ツアーバスは「安い仕事」と言われるが、絶対額はともかく比較においてはメディア系旅行会社の募集モノの仕事より単価はそれなりに高いはずだ(もちろん金額に不満はたくさんあろうが、そんなの、私がいただくコンサル料もそうだが、どの業界でも仕事をもらう側に不満がないはずがない。それを「搾取」と叫ぶか素直に感謝するかの問題だ)。雪道やら海水浴渋滞やら知らない道を走るわけでもなく、通年で安定して仕事がある。ところが新制度に移行後は、そう気軽に受けるわけにはいかない。書面上は「管理受託」の大臣許可を得ることになるが、それ自体はおそらく普通に貸切バス事業を営んでいれば問題なく通るだろう。だが、受託した以上、事故はもちろん重大な法令違反があれば委託者(つまり発注元)にも罰則が与えられる可能性がある。今ならば、監査等で法令違反が露見しても自ら罰則を受ければ済む話。まじめな企画実施会社からは「切られる」かも知れないが、所詮は自業自得。これからは、発注元にも迷惑がかかる点が異なる。仮に、だ。私の仕事に置き換えてみれば、私が何か法令違反をやって、それが原因で●●電鉄バスや××交通に罰則……私は多分、バス業界から二度と仕事をいただくことはできないだろう。まっとうな貸切バス事業者が、これまでと同じようにウィラーやオリオンの運行(今後は管理受託)を続けようと考えるなら、今日この瞬間から、法令違反と事故をゼロにするよう心するしかない(受託の許可の際に累積点数が問われる。まあ、繰り返すが普通にやっていれば問題ないレベル)。そして、そのハードルを越える自信がない事業者は、申し訳ないがこの仕事を続けることはできない(再々度繰り返すが、普通にやっていれば問題ない)。いずれにせよ、いい加減にやってきた企画実施会社、運行会社がもしあるならば、仮に書面上は移行を完了しても事業継続は難しい。「乗合事業者になる」という事実の重大さを認識し、相応の覚悟を持って臨んでほしい。その覚悟ができないなら、残念ながら移行への努力は無駄に終わるだろうし、すなわち(法的には禁止されないものの、「大人の事情」で)本事業を継続することは事実上困難であることもまた、認識する必要がある。ただ上に書いたように、そのハードルさえ越えたならば、事業の安定とさらなる可能性が待っている。そして既存の高速乗合バスから見れば、<そんなことならツアーバス業態のままでいてもらった方がよかった>という思いもあろう。私自身、1年3ヶ月の議論の中で、何度そう提案しようと考えたか。ただ、そんなことを言えば誰かに焼いて喰われそうな雰囲気だったので…とは冗談だが、<ツアーバス全面禁止!>と叫んだのが既存側であることだけは、忘れないでいただきたい。ともあれ高速バス業界内の競争は激化する。足元だけで言えば、煮え湯を飲まされる事業者も出てこよう。だが私は確信している。そこで生まれる競争こそ、高速バス全体を、そしてあなたの会社を、今よりもっと強くしてくれるはずである。
2012.04.06
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「バス事業のあり方検討会」最終報告書は、既にご報告した『毎日新聞』等(共同通信配信)や『日本経済新聞』のほか、昨日付『フジサンケイビジネスアイ』でも報道された(『SANKEI BIZ』で閲覧可。また同紙は昨年10月10日1面トップでもこの問題を紹介いただいた)。今回の見出しは、<「ツアー」VS.「乗合」競争激化>。一部を引用すると、<「両者の競争が激しくなるのは確実」(大手バス会社)>な中、<高速ツアーバス業界は、乗り心地の良さや付加価値の高いサービスで差別化を図る>としてウィラーやオリオンの事例を紹介する一方、<大手バス会社に目立った対応策がなく>と断言されるなど、高速乗合バス事業者には「トホホ」な論調。もっとも、<報告書自体が乗合事業者を「アホ」やと言うてるようなもんやから>と乗合バス事業者の管理職の方が嘆いておられたから、見事に本質をついた?記事ということか。つづいて、昨日の日経の記事をベースに、昨日夕方のFNN(フジテレビ系)『スーパーニュース』でもご紹介いただけた(動画をFNNサイトで閲覧可)。日経記事をなぞって、制度柔軟化を歓迎するJRバス関東のコメントと、<全社移行という方針>と高速ツアーバス連絡協議会の方向性を紹介。なおこちらも昨年11月20日の同番組の続報である。引き続き、各メディアでの報道を確認しだい、本ブログでご紹介する。さて本日このブログは、昨日までと視点を変え、高速ツアーバス各社への影響、がテーマ。実は記者さんをはじめ、<高速ツアーバス各社は本当に新制度に移行するのか>というご質問が多い。特に乗合事業者の皆様はかなり疑念的に感じておられるようだ。一方で現実は、既報の通り、<新制度への移行義務はないが、高速ツアーバス各社が加盟する高速ツアーバス連絡協議会(東京・品川)によると、最大手のウィラー・アライアンス(東京・港)など、加盟する約40社のほぼ全社が移行する方針>(日経)なのである。もちろん、実際にはハードルは決して低くない。現在、法令上は「乗合」も「貸切」も求められる安全性は同じだが、現実問題としては各種運用の差などもあって乗合の方が高い安全性を求められる。監査の頻度、瑕疵があった際の罰則の大きさ(特に「服喪」)などを考えると、「募集型企画旅行+貸切バス」形態よりは事実上の縛りは強いだろう(なお事業許可の取得自体は困難ではない。2002年の需給調整撤廃以降、乗合バスの新規参入に法令上の大きな制約はない。あるのは「バス停の権利」という見えない壁だけである)。さらに高速ツアーバス業態では、運行する貸切バス事業者が事故を惹起した場合、顧客対応上の全責任は企画実施会社にある反面、法令上の責任を負うことはない。運行事業者に重大な法令違反が判明しても、社会的責任を除けば、企画実施会社が問われるものは何もない。だが新制度に移行した場合は、「受託者」にあたる貸切バス事業者の瑕疵が、一定程度の割合で「委託者」の罰則を招く。現在、<安ければどこでもいい>という感覚で貸切バス事業者を選定している企画実施会社がもしあれば、改めないと自らの身に返ってくる。そして何より、現状ではバス事業者でない純粋な企画実施会社においては、まずは(自社ブランドで運行する台数のうち最低でも3分の1に当たる車両数を保有する)バス事業者にならなければ新制度に移行することができない。この点、私としては、公式非公式な各種議論の中で実は若干抵抗した部分である。既に鉄道や運送事業において認められているよう、車両を1台も所有せずとも乗合バス事業に参入することを認めるべきだと主張した。「経営・企画」と「運行」は別々の会社でも事業は成立するはず、という意見だ。ただ、<実際にバスを1台も所有・運行しない会社が、いざというときにバス事業者の気持ちを理解して何かを判断できるだろうか?>という反論(他人同士はなかなか分かり合えないもの、という論理であったので、関係者は「他人性議論」と呼ぶ)も十分に理解でき、主張を取り下げた。一連の議論で、私が自らの意見を曲げた数少ない個所である。この、<旅行会社からバス会社に「生き様」を変えないといけない>点については、新制度に関わった身として、該当する数社に課せられた苦労の多さに申し訳ない気持ちもある。それでも、上述のように移行義務はないのに全社が移行を表明してくれた。ほとんどの企画実施会社が、貸切バス事業者をM&Aするとか、近しい貸切バス事業者と合弁で新しくバス事業者を設立する、あるいは自らバス部門を立ち上げるために必要な人材を揃えるなど、自らの方向性を決め、例えば金融機関との融資の調整など具体的な準備に入っている。たしかに、昨日の日経にあるように、<資金力のない中小の中には「採算が合わず撤退する会社も出る」(業界関係者)>という例があるやも知れぬが、万一そういう事例が発生しても、優秀で意欲ある担当者たちなら、「即戦力」として他の事業者で腕を鳴らしてくれるだろう。では、高速ツアーバスの各企画実施会社が、「生き様」を変えハードルを越えて新制度に移行する理由は何か? 一つは、法的に高速ツアーバス業態を明確に禁止しないとはいえ、「検討会」での議論を踏まえ、私たちが「大人の対応」を各社に真摯にお願いし理解してもらえたことは事実。そしてもう一つ、やはり何をどう考えても、経営的にみると、「高速乗合バス業態の方が実は有利」なのである。次回は、その「実は有利」の具体的な内容を検証したい。
2012.04.05
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昨日発表された、「バス事業のあり方検討会」最終報告書について、共同通信配信で『毎日新聞』や全国の地方紙に簡単な記事が掲載されたとともに、『日本経済新聞』では総合面で大きく伝えていただいた。制度の柔軟化についてJRバス関東のコメントとして、<「ゴールデンウィークなど需要の多い時期に増便するなど、新制度を積極的に活用する」と歓迎する>と引用しているほか、高速ツアーバスの移行については、<新制度への移行義務はないが、高速ツアーバス各社が加盟する高速ツアーバス連絡協議会(東京・品川)によると、最大手のウィラー・アライアンス(東京・港)など、加盟する約40社のほぼ全社が移行する方針>と紹介いただいた。引き続き各社のご取材は続いているので、報道を確認しだい随時ご紹介したい。さて、昨日のブログの続きを。既存の高速乗合バス事業者が「実は出遅れてしまった10年」とは、具体的に何で、どうすれば克服できるのか。報告書には以下のような記述がある。<新たな高速乗合バス規制は、高速ツアーバス事業者等の乗合バス業態への移行の円滑化に資する面もあるが、当然ながら、従来から高速乗合バスの運行を行っている高速乗合バス事業者にとっても、飛躍的に向上する供給面での柔軟性を活用して効果的な営業施策を講じることにより、競争力や収益性を強化するチャンスである>。そして、<チャンスを実際の成果につなげるためには、供給量が中期的に固定された中での価格設定という従来のビジネスモデルから供給量を短期的に柔軟に調整できる中での供給量調整と価格設定という新たなビジネスモデルへ変容する必要があり、発想の大胆な転換ときめ細かなデータ分析、機動的な意思決定、効果的な宣伝・販売が求められる>と続く。あえて付記すれば、機動的な意志決定や効果的な宣伝・販売に注力されていなかった背景としては、高速乗合バスの事業モデルが「供給量」を固定されがちであった点に加え、各事業者の本業である「平場」の路線バスが地域独占事業であったため、努力や工夫により「需要量」を増加させる可能性に目が向かなかったという点も挙げられよう。ではそこで求められる「新たなビジネスモデル」とは、具体的にどのようなものか。報告書では大きく二つの要素が挙げられている。一つは、「インターネットを活用した総合的な情報提供・販売」である。報告書は、これまで高速乗合バス各社がインターネットによる拡販に消極的だった理由として、<供給量が中期的に固定された中での価格設定という従来の高速乗合バスのビジネスモデルにおいては、需要波動への対応も限定的であり、ポータルサイトを通じた宣伝・販売を含め、手数料等の支払いが必要な宣伝・販売のアウトソーシングは抑制的に考えられることも多かった>とする。しかし、<地方の高速乗合バス事業者は地元では路線や自社サイトの認知度が比較的高いが、大都市側の利用者に対する知名度や認知度に乏し>く、大都市での認知拡大は喫緊の課題である。そしてそのため、「一般的な旅行サイトなどの他社サイトの活用」、「新たなビジネスモデルに対応した利用者目線での自社サイトの改良」、および「業界横断的なサイトの構築」(成定注:楽天トラベル等は一つ目の「一般的な旅行サイト」なので、ここでは「全ての高速バスを紹介する公的なサイト」を想定している。なお、楽天等とこの「公的サイト」との意味合いの違いは、機会があれば後日ご説明する)の三本柱が提示されている。そしてもう一つの「新たなビジネスモデル」が、<航空分野や宿泊分野などにおける取り組みも参考にしつつ、高速バス分野におけるレベニューマネジメント(RM:収益を最大化するために消費者の動向を予測し、販売座席数と運賃・料金を最適化する経営手法)や情報技術(IT)の導入・高度化>である。実際にいま私は、複数の高速乗合事業者にお邪魔して、新制度を前提としながら、実際の運用面(たとえば、便によって運賃が異なる場合の乗車便変更の扱いなど)を考慮しつつ、高速乗合バスにRMを導入するための基幹システムの改修準備を進めている。既存の高速乗合バス事業者にとっては全く未知の領域であり、正直、私自身でさえ乗合事業者にお邪魔し「乗合アタマ」になってこの問題に取り組んでいると、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまうことがある。だが、老舗ホテルでRMを導入した際、古株社員から、<そんなこと、ホテルの格式に係るからやめてくれ>と文句を言われ、高速ツアーバス各社にRMを説明した際は、<成定さん、ホテルには合うかも知れないけどバスには合わないよ>と拒絶されながらも、それぞれRMが定着した経験のある私には、高速乗合バス各社にもRMは定着すると楽観的だ。高速バスの事業モデルは、ホテル同様、「繁閑の差」に収益性を大きく左右される宿命にあることは明白だ。これまで高速乗合バス各社は「ほどほど」の収益性で満足だったかも知れない。だがこれからは、きちんと収益化を追求し、そこで得た新たな収益をサービス水準向上や新商品開発、積極的なプロモーションに再投資するサイクル、すなわち「筋肉質な高速バス」モデルを構築できなければ、それに成功した他の事業者(高速ツアーバスからの「移行組」も含む)によって市場から退出を求められるだけのことである。昨日、本日と高速乗合バスについて厳しいことを書いてきたが、一方で高速ツアーバス各社にはどのような影響が考えられるのか、について、次回以降ご紹介したい。※お問い合わせがあったのでパブリックコメントについて補足説明。昨日、報告書発表と同時に「道路運送法施行規則、旅客自動車運送事業運輸規則、一般乗合旅客自動車運送事業標準運送約款及び関係通達の一部の改正案について(案)」についてパブコメ募集が開始された。これが正に今回の制度(省令等)改正である。なお、追って追加の改正があるかも知れない。合わせて、報告書に示された「高速バス停留所調整ガイドライン」と「高速バス表示ガイドライン」については、別途あらためてパブコメの募集が行なわれる予定である。
2012.04.04
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一昨年12月から1年3ヶ月にわたって議論を続けてきた「バス事業のあり方検討会」が終了し、本日、最終報告書が発表され、同時に省令等の改正についてパブリックコメントの募集に入ることができた。座長の竹内先生をはじめ学識経験者、有識者の先生方ならびに事務局(国交省自動車局旅客課)の皆様方には、難しい議論をよく導いてくださったとお礼を申し上げたい。委員の中には、会の途中で人事異動になったり体調を崩されたりして交代になった方もいらっしゃるが、一人ひとりに心から感謝している。また、直接は関係ない高速バス分野の議論にもお付き合いいただいたばかりか、貸切バス分野の議論では明らかに不当な言われ方(議論の趣旨はともかく、相手の尊厳を否定するような言い方は、曲がりなりにも政府の会議でなされるべきではないと思う)をしてフラストレーションが溜まったであろう旅行業界の委員の皆様にはお疲れ様でしたとお伝えしたい。さて、中間報告書の際と同様、何回かに分け検証したい。本報告書は、「1.開催の経緯等について」「2.高速バスの健全な発展に向けて」「3.貸切バスの健全な発展に向けて」「4.今後の課題」の4部構成だ。まずは「2」高速バス分野の「1.はじめに」の部分から。この章は、ほぼ中間報告書の該当部分をトレースしたものであるが、ここまでの高速バスの成長の軌跡と現在発生している課題がまとめられている。特に注意すべき点は、高速ツアーバスという事業モデルについて、制度面と事業面との両面で、その成長の背景があらためて整理されている点である。<この高速ツアーバスは、平成12年及び平成14年に実施された貸切バス事業及び乗合バス事業の需給調整規制の廃止による規制の変化と、その後の貸切バス車両の増加・実勢運賃水準の低下やインターネットの普及による広告宣伝・予約・決済コストの低下等の環境の変化が相まって発展したものと考えられる>つまり、制度面では、【1】平成12(2000)年の貸切バスの需給調整撤廃、【2】平成14(2002)年の乗合バス需給調整撤廃が要因であるとする。そして事業面ではインターネット(以下:ウェブ)の普及が【3】広告宣伝費用の低下(効率のいいマーケティング)と、【4】運用(予約・決済)コストの低下を誘引し、高速ツアーバスの成長につながったとしているのだ。そのうち、【3】【4】については詳しい解説はもう不要だろう。1984年頃から、業界では「クローズドドア共同運行制」が定着し、大都市側、地方側双方の既存路線バス事業者どうしが大都市と全国津々浦々とを結ぶ高速バスを共同運行するようになった。地方では地元路線バス事業者の存在感から高速バスの認知が高まったのに対し、複数事業者が方面別に事業を展開する大都市では市場開拓が遅れていた。ウェブという高効率なマーケティングツールが登場しそれを活用したことで、高速ツアーバスはその大都市圏で需要を喚起した。また、ウェブ上での予約・決済の普及は、「駅前一等地に窓口(店舗)を持つ」といった旧来企業のアドバンテージを(高速バス分野のみならず一般的に)急速に奪っていった。一方、【1】と【2】については両者を混同して理解している方が少なくない。まず、【1】が高速ツアーバスに与えた影響は、貸切バスの新規参入が増加したことで単価(チャーター代)が下落し、運行コストが下がった点である。つまり、貸切バス分野での需給調整撤廃は、本質的には、制度面ではなく【3】【4】と同様、事業運営面で影響を与えたのだ。逆に【2】は、より直接的に制度面から高速ツアーバスの成り立ちに影響している。報告書から引用すると、<即ち、規制緩和前は乗合バス事業・貸切バス事業ともに免許制の下、需給調整規制が存在し、乗合バス事業者の経営を保護する観点から、貸切バス事業者が乗合バスに類似したサービスを提供することが厳しく制限され、スキーバス、帰省バスなどの2地点間を結ぶ高速ツアーバスのようなサービスは従来から存在していたものの、高速乗合バスの需要の浸食を防止するため、通年運行は行わないものとされていた>つまり、1986年に発出された通達(北都観光の「会員制高速バス」問題に端を発したもの)により、今日でいう高速ツアーバスの事業モデルは禁止されていたが、2002年乗合バス需給調整撤廃によりその通達は廃止された。それ以来、<需給調整規制は撤廃され、高速乗合バスと高速ツアーバスが理念的には競合するようになった>。未だ高速ツアーバスを違法、脱法呼ばわりする人がいるが、まずは本報告書のこの部分をよく読んでいただきたい。私はこの場で、高速ツアーバスの正当性を主張したいのではない。私は決して高速ツアーバス各社の成長のみに責任を負っているわけではないし、一部の貸切バス事業者のコンプライアンス体制が十分でないなど高速ツアーバスに事業運営上の様々な問題があることは事実なのだ。だが、自らが寄って立つ法令に大きな変化があったことを10年も見過ごしてきた各高速乗合バス事業者の姿勢に危うさを感じざるを得ない。乗合バス需給調整撤廃の意味、当時の関係者の意図を、これでは理解できていないと言われても仕方がない。法改正の趣旨を理解できなければ、それに対応して事業を成長させることなどできようもない。私が今回、報告書の冒頭に制度の変遷を入れていただくことにこだわったのは、全国の高速乗合バス事業者に、まずは10年分の反省をお願いしたいからだ。いや、<高速ツアーバスは違法だ>と主張すること自体は自由である。だが【2】の事実やその背景をいっさい認識しないまま法改正前の感覚で「違法」と主張し続け、その反面で本当に大切な事業運営面での環境変化、すなわち【1】【3】【4】の動きに背を向け続けた責任は大きい。全国の高速乗合バス事業者は、10年の遅れを反省し、意を決して環境変化(競合の増加や、ウェブマーケティングによる新規需要開拓と比較検討の容易さ。すなわち「お客様がバスを選んで乗る時代」の到来)への対応を急がねばならない。そしてその具体的なヒントは、本報告書に実は丁寧に説明されている。次回以降、それらの点をご説明する。※本ブログでは「高速路線バス」という表記を続けていますが、本報告書関係の記事のみ、報告書に合わせて「高速乗合バス」と表記します。
2012.04.03
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