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昨日のブログで、「バス事業のあり方検討会」の議事は非公開だから…と書いたが、本日付の『東京交通新聞』に議事の概要が記事化されていた。ということは、私もこの内容までは語ることができる、ということだ。それにしてもさすがの取材力。記事のタイトルは『ツアーバス 「新高速乗合」移行 2年以内めどに 「停留所調整指針」策定へ』。まさに、これが決まったことである。以上。と言ってしまえば書く内容がなくなってしまうのでもう少し解説してみる。まず、記事中に国交省のコメントとして、<ツアーバス自体は禁止できず、行政指導で移行を促進していく>とあるのと、<新高速バス制度を創設するための省令・告示・通達の改正作業は、高速乗合バス規制の緩和措置を含め、原案の決定・公表(一般意見の募集開始)が最終段階に入っている>点については、何度も繰り返してきた通り。新制度の内容も変更ない。その上で新しく出てきた話が、「2年以内をめど」というデッドラインと、「バス停設置ガイドライン」策定の件。まず「2年」の件は、あくまでも平成24年度中(2013年3月まで)にバス停の調整が完了することを前提にしており、そこから1年、という見立て。合計2年以内の移行というのは簡単なハードルではないが、それに向けて高速ツアーバス各社も着実に準備を進めており、なんとかがんばってもらうしかない。むしろ課題は、多くの方が感じておられるように、「バス停の設置」。つまり後者のガイドラインの件だろう。ガイドライン自体はまさに今、原案の策定作業中であり、それこそ例えヒントでもこの場で書くわけにはいかない(書いたら暴動が起こる?)。言えることは3点。まず、このガイドラインも、3月中をめどにパブリックコメント募集を行なった上で、国の正式な文書として策定、公表される予定であること。国の政策として高速ツアーバスの新高速バス移行を行なうのだから、それに伴うバス停の新設、調整もまた、国の政策だ、ということである。次に、前述のように期限を切ってその政策を実行するわけだから、本ガイドラインの文書としての強制力の強さはともかくとして、国交省はたぶん本気で事を進めるであろうこと。そしてもう一点。一番大切なことは、本ガイドラインで示された「バス停調整」は、あくまでも新高速バス移行に当たっての時限的なものである、という点。この点は二つの読み方ができる。まず、あくまで時限処置ということは、本ガイドラインで対象とする案件(例えば現在高速ツアーバスが運行されている区間)の調整(つまりは高速ツアーバス各社の新高速バス移行)を除けば、バス停配分の仕組みが変更されるわけではない、ということ。2002年に道路運送法改正により乗合バスの需給調整が廃止され、一言で言うと「儲かる路線は自由競争(代わりに、儲からないけど大切な路線は自治体等が公的に補助)」と法律上は変わったわけだが、一方で(意識してかどうかは別として)バス停という、乗合バス事業への新規参入に欠かせない要件については、何も触らなかった。結果として、「自由競争」との理念は絵に描いた餅で終わっているという現実がある。高速ツアーバスにとって集合場所問題が(現実的な)アキレス腱であるのと表裏をなすように、既存の路線バス(高速に限らず)にとって「本来ならバス停は公平に配分されるべき」という理念もまた、事業の根幹をあやうくしかねないアキレス腱である。上記ガイドラインが「時限的」ということは、「あり方検討会」では、そのアキレス腱については触れずに済んだということだ。そしてもう一つ、このガイドラインが時限的であるということは、もしこのガイドラインをもってしても高速ツアーバスの移行に十分なバス停が確保できないなら、また別の方策を考えるしかない、ということだ。別の方策、については私の中ではアイデアはいくつか持っているが、できることなら出さずに済ませたい。その気持ちを理解してほしい。さて、『東京交通新聞』の同じ号には、先日の「発車オーライネット戦略共有会」についても掲載いただいている(上記リンク先では、1面の「新高速」の記事だけ立ち読み可。2面の発オラの記事は500円で閲覧可)。国交省の谷口バス産業活性化対策室長が新制度のポイントや最新事情を説明したことと、私が高速バス事業者のIT戦略のポイントをアドバイスしたことが紹介されている。実は谷口室長の説明も、私の講演も、本ブログをお読みの皆様ならおそらくご理解なさっている内容だ。ただ私の印象としては、これまで私は、わざわざ私にお金を出して(年間契約から単発の社内講演、フォーラム参加まで内容は様々ながら)話を聞いて下さる事業者さんや、仕事にはならなくとも情報交換したいと私が思う担当者さんとしかお話ししたことがなかったから、全国から集まった皆さんの中には、情報感度が十分でない方も少なからずいらっしゃるんだなあ、と感じた。「新高速バス」制度に関する情報量はもちろん、楽天トラベルのような予約サイトの立ち位置への認識。そもそも高速ツアーバスに関する理解、認識。あるいは行政は自分たちを守るためにあるのだという思い込み。感度が高い事業者、担当者ならここ5年で乗り越えてきた道が、なかなか乗り越えられないでいる。性格上、そういう方を見ると、<感度の低い会社は無視。わかってる会社だけで先に進みましょう>と言い放ってしまうのだが、一方でそういう方からコンタクトをいただき話をしてしまうと、一転、なんとかお手伝いしたいと必要以上におせっかいをやくのも事実。もっとも、現実の私は今のお取引先様で手いっぱい。新制度対応の進捗は様々ながら確実に前に進んでいる各事業者さんが頼もしい。「既存組」は「移行組」より一歩先に新制度の恩恵を受けられるわけで、その第一号事例を本ブログでご紹介するのが今から待ち遠しい。
2012.02.27
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事前に公表されていた議題(「高速ツアーバスの『新高速バス』への移行について)が議題だったためか、あるいは前日の「発車オーライネット戦略共有会」で皆の前で、<明日は「あり方検討会」>と言ったためか、23日午後の「バス事業のあり方検討会」の結果について多くの方からご質問をいただいた。議事自体は非公開(後日、議事概要は公開される)だし手元資料にも「委員限り」のものが多いので全て書くわけにはいかないが、ざっくり言うと、「あり方検討会」のテーマの一つであった「高速乗合バス(本ブログでは高速路線バスと記載)と高速ツアーバスの一本化」については無事に議論を終えることができ、あとは実務的な作業が(山ほど)待っている、という状態になった、と断言していいだろう。繰り返すが、私自身は今回の結論は100点満点だとは考えていない。今回のオペレーションが完了した後、高速バス事業への新規参入は今より困難になる。もちろん、参入のハードルが低すぎることは安全性などにおいて問題を誘引することになるが、高すぎれば競争原理が働かずサービス水準が低下(価格の高止まりも含め)し、結果として業界全体の成長を阻害する。冷静に議論できればさえ、新規参入のハードルを上げずに高速ツアーバスが抱える問題を解決することは不可能ではなかったとは思うしその点では不満が残るが、まあ80点、手前味噌かも知れぬが十分に合格点がつく新制度ではなかろうか。むしろ「既存組」高速路線バス事業者の中には不満も大きいことはよく承知しているが、十分に議論が重ねられた上の結論であることだけは、よく承知しておいてほしい(それどころか、このような会議が持たれたこと自体、「既存組」のリクエストによるものだ)。いや、今回の結論は、必ず「既存組」にとって大きなメリットをもたらすはずだ。失礼を承知で言いきってしまえば、今回の結論を「ツアーバス寄り」だと非難するならば、それは今後起こり得る高速バス市場の変化について想像力が不足しているだけである。さて、終わってみればそうなるより他ない結論を皆で導き出すまで1年以上がかかったことになるが、時間がかかった大きな理由の一つが、相互の無理解だったような気がする。私自身の経験が、そう思わせるのである。6年前、「市井の一マニア」だった私は楽天に転職した。その時の思いはあくまでも「既存組」高速路線バスを販売力のある楽天トラベルで取扱って成長を助けたい、というもので、その時点ではガチガチの「アンチ・ツアーバス」論者だったと言っていい。だから私は、自分で選んだ仕事とはいえ高速ツアーバス各社の経営者、担当者と会うのが嫌だった。むしろ、彼らが怖かった。高速ツアーバスを企画している中小旅行会社の経営者など、さすがにヤ○ザとは言わないが、法の網の穴をついて、既得権益に風穴を開けてやろうと暗い情念に燃えている(イメージで言えば、瞳の中に青白い炎が見えるような)連中だとばかり思っていたのだ。だが仕事だから会わぬわけにはいかない。実際に会ってみると、彼らの屈託のなさに驚いた。<成定さん、今度こんなアイデア思いついたんだけど売れるかなあ?>。それをやったら「既存組」は顔を真っ赤にして起こるだろうということまで、思いついたことが嬉しくて仕方ない様子で話しかけてくる。最初、その感覚が理解できなかったのだが、ある日、そうかと思い当たったのだ。考えてみれば単純な話で、旅行会社や貸切バス会社を自ら作ってしまった人たちである。お客様が喜ぶアイデアを思いつき、それを形にしていくことが、ただ楽しくて仕方ないのである。彼らは皆、オフィスの社長席などに座っているより、自ら旗を持って添乗に出ていたい人たちなのである(その辺り、『バスラマ』前号での平成・田倉社長の、また最新号のウィラー村瀬社長のインタビューをぜひ読んでいただきたい←ついでに『年鑑バスラマ』の私の原稿もぜひ)。私自身が、同じ理由でホテルという就職先を選んだ身だから、そう思って見てみると彼らの気持ちは手に取るようにわかる。ただ、路線バスという世界に立った場合、その屈託のなさが、まるで喧嘩を売られているように見えていたのである。皆、<ツアーバスの連中は(人間的に)信用できない>という思いが先に立っていたのだろうが、1年間議論を繰り返す中で、少なくともその場にいる皆さんは、相互に理解が進んだと理解できよう。さらに高速ツアーバス各社の経営環境の話もある。もともと気の合う仲間と作った(ほとんどが、当時人気の絶頂だったスキーの愛好家たちがスキーツアーの会社を作ったパターンだ)小さな会社が、今や100人、数百人の生活を支えるまでに成長した。これまではがむしゃらに走り続けてきたが(その「がむしゃら感」に賛否あるとはいえ)、そろそろ、事業の安定や永続を考えるフェーズに入ったのだ。これまでの事業モデルを捨て移行するのは物心両面で不満がないわけではないが、いろいろ考えた末に皆が決断をした、ということなのだ。私自身も、彼らから「乗合の手先」と非難されても仕方ない環境のなかで、真摯に彼らの説得に努めてきたつもりだ。そのことは、全委員にご理解いただけたと思う。先日の「発車オーライネット戦略共有会」での質疑応答など聞いても、その辺りの理解は、未だ全ての「既存組」事業者に進んでいるわけではないようだが、高速ツアーバス各社が最終的に理解してくれたように、彼らにも真摯にご説明を繰り返すよりないだろう。さて、本日は某社の高速バス車内。明日朝イチの新幹線でも間に合う出張だが、初めての街で本を読みながら一人でお酒を飲むのが趣味の私は、高速バス+前泊を選んだ。昼行便にしては長い5時間の乗車もそろそろ終着。ひと月ほど前ならもう薄暗くなっていたこの時間でもまだ明るい。北風の中、実は日差しは強くなっていて、また周期的に降る冷たい雨が春を呼ぶこの2月後半は、季節の歩みを実感できるので一年で最も好きな時期。着実に進む季節のように、業界全体も、自分自身も、成長を重ねることができるか。新しい季節は、すぐそこまで来ているはずだ。
2012.02.26
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儲かっているかは別として、出張や会議が続きかなり時間がタイトなのは事実。ブログ更新も遅れがちで、書きたいこと伝えたいことの半分も書けない。本日は取り急ぎ近況報告。まず2月14日(火)に、高速ツアーバス連絡協議会の臨時総会を開催した。120人を超える参加があり、毎年7月の定時総会や過去何度かの臨時総会を上回る最多人数だった。それだけ新制度への会員の関心が高いということだろう。国交省から会員向けに新制度のご説明をいただくのももう数度目だ。かなり細かい部分まで質疑応答も行なわれた。そしてその臨時総会に前後して、会員に対してあらためて「新高速バス」制度への移行するつもりかどうか、調査を行なった。「いいえ」「保留」の2社を除き全社が「移行する意向(ダジャレかよ)」との回答。その2社も、今では高速ツアーバス事業から撤退した企画実施会社などだから、原則全社、という理解でよかろう。むろん、あくまで現時点での意向を確認しただけで何ら強制力ある調査ではないわけだが、「新高速バス」への意欲と期待を表わしていることは間違いない。また協議会としては、この調査結果をもって、<国土交通省など関係諸機関に対し、バス停の設置に関して協力の要請を図っていく>旨の決議を行なった(どことは言わないが独禁法に抵触しかねない文書を出す団体があるが、他人のふり見て我がふり直せ、で、様々な方にご協力いただきかなり配慮して決議を行なった)。念のため書き添えると、「あり方検討会」中間報告書にある通り、2002年の道路運送法改正(需給調整撤廃)により、募集型企画旅行による通年の都市間商品(要するに高速ツアーバス)を乗合類似行為として禁止する旨の通達は廃止された。以来、高速ツアーバスというビジネスモデル自体は違法でも脱法でもない(なぜかそう思い込んでいる人が多いのは事実だが)。だから法的には、別に皆で「新高速バス」に移行する必要などない。ただし、集合場所でのバス輻輳など個別の問題があるのは事実だ。また、最初は気の合う仲間と作った小さな会社が、いつの間にか数百人の雇用を担うまでに成長していて、制度のあるべき論とは別に、「新高速バス」に移行することが事業の安定につながるなら、多少の不満はあれどハードルを越えて行こうという各社の思いもある。その結果としての決議である。2月22日(水)には、東京・新橋で開催された、株式会社工房による「発車オーライネット戦略共有会」で講演一本。奇しくも前週のツアーバス協議会とほぼ同じ130人ほどの規模、会場も徒歩5分ほどの近い場所だったのが何とも面白い。もちろん、こちらの参加者は全国の「既存組」高速路線バス事業者達だ。上記協議会と同様、国交省による「新高速バス」制度説明や同社の開発方針の発表のほか、新しい風景として楽天トラベルや高速バスドットコムもプレゼンを行なった。私はその冒頭の交通整理の講演をお受けしたわけだが、懇親会の中締め挨拶までお引き受けすることになり、全国の既存事業者の担当者さんと情報交換できた。なお翌日23日(木)午前には、同「戦略共有会」のオマケとして、同社の商品展示会の一角で高速路線バス事業者向け「無料相談会」も行なった。新制度の説明を聞いた上での、各事業者担当者クラスの率直な不安、疑問などお聞きすることができた。話は変わるが、21日(月)付の『旅行新聞』の特集「日系3社就航で『LCC元年』 LCCが観光に与える影響」記事中で大きくコメントを採用いただき感謝。まずはLCCが高速バスに与える直接の影響として、<長距離の夜行高速バスは顧客層が重なることは明白で危機感を持>っていることは間違いない。またあえてコメントでは触れなかったが、現実にはLCCそのものとともに、それに対抗するためにレガシーキャリア(既存航空会社)や鉄道の運賃が低下したり、各種マーケティングに積極的になることはもっと怖い。いずれにせよ「既存組」の高速路線バス事業者は、高速ツアーバスがどうのと言っている場合では実はない。その部分も引用すると、<「高速バス業界を考えると、これまで運賃は航空、鉄道、高速バスの順で硬直し一定の棲み分けができていたため、事実上の無競争だった」という。そのため、マーケティング意欲が低下し大都市など、大きい潜在需要の取りこぼしにつながっていると主張。それが急激なLCCの成長により既存の高速バス事業者が危機感を持つことで「結果として高速バス市場の拡大につながるのではないか」と期待を込める。>また同紙のこの特集にあたり私がご取材をいただいたのは、単にLCCの競合輸送モードである高速バス業界を代表して、ということなのだが、実はその枠を踏み越え旅行・観光産業全体にかかわる展望についてもコメントし、同特集のまとめに採用いただいた。長くなるが引用すると、<さらに、旅行業界全体に広げた視点では団体旅行用のIT運賃の存在感低下を招くと予測。「既存旅行会社のフリープランや現状のウェブのダイナミックパッケージなどの存在意義は漸減していくとともに、フルパッケージの団体旅行から『LCC+着地型』への移行が進むだろう」と語る。「消費行動が一気に変わるとは思えずあくまでも長期的な動き」と前置きをしつつ、<「将来的には、『ショッピングカート型』のイメージで『往路のLCCと2次交通の昼行高速バス、宿泊、着地型ツアー、復路の夜行高速バス』をすべて込みでオンライン決済できるサービスが普及すればおもしろい」と展望する。>あらためて、ということになるが、高速バス事業は間違いなく観光・旅行産業、苦境にあるこの国を今後リードしうる数少ない産業の重要なプレイヤーの一人であることを、私自身も深く実感させてくれる記事だった。取り急ぎ近況報告まで(今日はきちんと推敲できていないので誤字脱字はご容赦を→誤字を発見したので1ヶ所修正しました)。
2012.02.23
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私の古巣である楽天トラベルでの高速路線バス取扱いは順調に拡大しているようで、最近では阪急バスの大阪~品川・池袋線、ならびに国際興業/庄内交通の渋谷・池袋~鶴岡・酒田線と東京駅~鶴岡、酒田線、そして京浜急行バス/西武高原バスの横浜・羽田空港~軽井沢線が新登場したようだ。西武観光バスと西武高原バスは西武バス、小田急シティバスは小田急バス、西鉄高速バスは西日本鉄道の「直系」とみなすことができるだろうから、大手私鉄直系事業者では京成、西武、小田急、京急、京阪、阪急、南海、西鉄が楽天のサイト上に並んだことになる。「直系」とは言えないかも知れぬが大手私鉄系という意味では東北急行バス(東武系)、西東京バス(京王系)はかなり初期から取扱いがある(なお東武バス本体も、募集型企画旅行商品の取扱いはある)ので、高速バス事業からほぼ撤退した東急、相鉄を除けば、専業大手の国際興業も含め首都圏の大手私鉄系は網羅したことになろう。私が現役の頃に契約してくれよと言いたい気持ちもないではないが、本格的に高速路線バス基幹システムと楽天のウェブ販売システムの連携が実現するまでの間、「とりあえず」で始めた高速路線バスの「管理画面方式」での取扱いが、ここまでの社数、路線数になるとは正直最初は思っていなかった。こうなると、むしろシステム側の対応が遅れている状況ともいえ、そのあたりの段取りもスピードアップしていかねばならない。もっとも今では私は、楽天の側ではなく路線バス事業者のお手伝いをする立場から段取りをしていくわけだが。そうなると当然、システム連携先の候補は楽天だけではなくなる。昨年11月の「高速バス・マネジメント・フォーラム2011」で高速路線バス取扱いへの意向を表明した、「高速バスドットコム」(同サイトは「YAHOO!トラベル」などにもOEM提供)、「じゃらんネット」もまた、重要な候補だ。業務用基幹システム(「発車オーライネット」「SRS」など)は、事業者ごと(少なくとも路線ごと)に統一されていることが理想的なのに対し、販路は数が多いほど望ましい。発オラやSRS、楽バスなどに車両登録したら自動的に楽天トラベルや高速バスドットコム、じゃらんネットでも予約できる、というのが理想だ。ただしそれはあくまでシステムの「つなぎ方」の問題である。むしろ課題は、どのような条件(契約内容)で連携するか、だ。例えば、現実に「バスぷらざ」と「JTB高速バス予約」は発オラと連携して高速路線バスのウェブ発券、コンビニ発券を行なっている。一見、楽天の高速路線バス取扱いと同じ構図に見えるかも知れないが、実態は全く別物である。まず「バスぷらざ」「JTB」の手数料率は決して高くない。その代わり、事業者側はこの両サイトで扱う席数について、上限を設けることができない(理論上は、1台丸ごとJTB扱い、ということがあり得る)。さらに、各事業者の公式サイト(ホームページ)から両サイトにリンクが貼られていたりして、各事業者の公式なサービスの一部をなしている。例えばANAのサイトから同社の予約システムに入り込んで航空券を予約、発券するように、あるいは帝国ホテルのサイトから同社の予約システムに入り込んで宿泊予約をするように、●●バスのサイトからバスぷらざに入り込んで高速バスを予約発券するのである。だが楽天トラベルらは、原則としてそのような形を選ぶべきではない。たとえシステムが連携したとしても、各便ごとに何席をどのサイトで取扱うかは、基幹システム(発オラなど)管理画面上で事業者が自らコントロールする形を選ぶべきだ(当然、その席数はリアルタイムに変動させられることが前提だ)。金曜の夜行便など、サイトの力を借りなくとも事業者側が満席にできる自信がある便については、何も手数料を払ってサイトで売る必要はない。しかし埋めきれないと判断した便については、事業者側が能動的にサイトに登録する。もちろん、各事業者の公式サイトから楽天などにリンクを貼る必要は一切ない。予約サイトは、自らの腕で、新規需要を喚起することに徹するべきだ。その代わり、手数料率は高い。そしてもちろん、その高い手数料率があるからこそ、ウェブ上で様々なプロモーションを展開することができ、新規需要開拓につながる。当然のことながら、楽天ら予約サイトにすれば、高いコストを投下して新規需要を開拓する以上、同サイトを経由して予約した利用者が、次回以降は発オラなどの自社サイトに移ってしまったのではコストの持ち出しになってしまう。なんとかして、次回以降も予約サイト経由としてもらえるよう、FGP(ポイントプログラムなど)の充実や、わかりやすくストレスが少ない予約画面づくりなどに必死になる。同じバスの座席を満席にするという目標のために、自社サイトと予約サイトが競争する。その競争が、双方を強くしていく。事業者は、その競争を活用し、席を埋めていくのである。高速バスの座席の販売主体は、あくまでも運行事業者自身である。間違っても、<楽天さんに任せた>などとは言ってほしくない。いま貸切バスの分野では「旅行会社悪玉論」がさも当然のように語られるが、販売の全てを旅行会社に丸投げしておいて、何をかいわんや、である。いやむしろ、私が楽天トラベルに転職し、高速ツアーバスを徹底的に育て上げるとともに(当初は不可能だと思われた)同サイトでの高速路線バス取扱いの実現に大きなエネルギーを割いた理由がそこにある。「需要は天から降ってくる」「めんどくさい販売作業は人任せ」ではバス産業の未来は明白だ。自らの手で席を埋めていく苦しさと楽しさを、まずは高速バス分野だけでも皆が味わってくれることが、苦境にあるこの産業全体にとって何かのきっかけになる。私はそう信じている。
2012.02.17
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前回、レベニューマネジメント(RM)のことを少し書いた。ここで皆さんに少し考えていただきたい。「ビジネスクラス」と言えば航空の高級座席を指す。一方で「ビジネスホテル」は低価格のホテルだ。よく似た名前の両者だが、なぜ正反対の性格を持つのだろう?前回の内容を振り返ると、出張客は価格に無頓着でプレジャー客はシビアだ。つまり出張客はバジェット(予算。支払意思)が大きくプレジャー客は小さい。前者は利用直前に予約を入れ(リードタイムが短い)、後者は前もって予約する(同・長い)。だからざっくり言うと、前もって安い運賃を提示してプレジャー客を集めておき、出発直前には高い運賃で出張客を狙い撃つ。ただし、路線環境によってそれが通用しないケースもある。その環境とは、おおむね鉄道等との競合の話だ。競合が少ない路線では上記の理屈が成り立つのに対し、激しく競合している路線では出発が近づくほど運賃を上げていく手法は通用しない。その原因は主に、出張客の行動特性にある。鉄道と競合が激しい路線ながら高速バスを選んでくれる出張客とは、すなわち会社からは鉄道運賃をベースに出張旅費を受け取り、実際には安いバスを使うことで差額をポケットに入れているケースが多い(もちろん、私のような個人企業の場合など例外は少なくないが)。それゆえ上記に挙げた「出張客は価格に無頓着(価格弾力性が小さい)という前提が成り立たず、だから「右肩上がり」の運賃曲線は有効でない場合が多い。というのが前回の骨子だ。同様の事例は宿泊マーケットにも存在する。米国企業では、社員の出張などに企業がけっこうお金をかける。彼らは実は、社員(といってもホワイトカラーということだろうが)の労働環境にかなり配慮する。日ごろから社内の食堂やフィットネスクラブが無料の企業も多いという。また治安がさほどよくないので、安ホテルは危険という理由もあるだろう。結果として、飛行機は高級座席を使い、宿泊はウェスティンやハイアットでなければ、商談相手からも信用してもらえない。だから出張客のバジェットは大きい。一方で我が国は対照的だ。社員一人ひとりも共同体意識が強く、節約に協力的だ。<あの人、えらくなっても安いホテルに泊まって、いい社長さんだねえ>という清貧志向もある。さらに出張旅費の精算方法が影響した。旅費規程で「課長クラスは1泊8000円」などと決められ、実際に泊まるホテルが高ければ自腹、安ければ差額はその夜のビール代に化ける。まあ、福利厚生というか、自宅で食事できない分の食費補填というような要素もあったのだろう。したがって総じて日本の出張客のバジェットは小さく、でも出張客のリードタイムが短いのは変わらないので、日本のホテルで「右肩上がり曲線」が成立しづらいのだ。つまり、米国を中心とした国際線航空のマーケットでは出張(ビジネス)客のバジェットが大きいので「ビジネスクラス」は高級座席となり、日本における出張宿泊マーケットではビジネス客のバジェットが小さいので「ビジネスホテル」(和製英語)は低価格。つまり、このねじれの背景には、出張をめぐる「文化の違い」が存在するのだ。ただ、ミクロに見ると変化もある。日本でも、これまでの「渡し切り出張旅費」をやめ、領収書に基づき実費精算する企業が増えてきたのだ。企業側は、確実に経費削減になる。「サラリーマン」(これも和製英語)にすれば、出張時の「ささやかな楽しみ」が徐々になくなりつつある。とはいえ、それへの対抗策も生まれてきた。ホテル側が、宿泊者本人に利得がある商品をたくさん作っているのだ。その代表が、「楽天スーパーポイント10倍プラン」「QUOカード付きプラン」だ。従来、旅費規程8000円の会社の社員が7000円で宿泊すると1000円分、懐に入った。一方、領収書方式になると1円も得しない。そこでホテルは1000円のQUOカードを仕入れ、その分を上乗せして8000円の宿泊プランを作ったのだ。実費精算への動きは出張交通費にもみられる。少し前まで、出張旅費の精算時に「公共交通機関は領収書不要」とする企業が多かった。JR(国鉄)など領収書自体を出してくれなかったのではないか。だが、特に航空運賃が多様化する中、出張交通費の精算にも領収書提出を求める企業が増えている。とすると、だ。出張における高速バス利用の典型例として挙げた「会社から鉄道運賃を受け取り実はバス利用」というスタイルが成立しなくなる。実際にどれくらい減っているのかデータでは証明できないが、影響はゼロではないだろう。ならば、上記ホテルの事例を参考にできないか。「QUOカード付きプラン」成功の背景は、「宿泊者(出張者)本人に利得がある」ことだ。だが、QUOカードを渡すわけにはいかない。「新高速バス」では運賃が柔軟になるとはいえ、それは通達の範囲内だけであり、法律で禁止されている「運賃の割戻し」は当然認められない。QUOカードのような換金性が大きい特典は、「運賃の割戻し」と判断される蓋然性が大きい。仮に、従来4000円だった路線について、基本運賃額を5000円、下限運賃額を2500円と届け出た場合、2500円まで値下げすることはできるが、「QUOカード1000円分が付いて3500円」とするのは厳しい。ただ、もう少し俯瞰してみよう。従来は鉄道運賃相当の費用がかかっていた企業にすれば、高速バス運賃で済むなら(少なくとも直接費用としては)大きな節約になる。その節約額のうち相当分を、出張日当に上乗せして出張者本人に還元する仕組みを作ればいいのだ。各企業の出張旅費規定に、「東京まで高速バス利用なら日当は●円」などと書いてもらうのはどうだろう。実現すれば、領収書精算になったことのマイナス分の補填どころか、企業側が社員に積極的に高速バス利用を勧めてくれる可能性さえ広がる。もっとも、それを実現するためには、バス事業者が地元企業をコツコツ回って営業して歩かないといけない。実は一番のネックは、各事業者の営業マインドかも知れないなあ。
2012.02.01
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