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「改稿・加筆・削除」がほぼ全体に及び、個別に推敲経緯を載せるのが困難な為、【世界(推敲版)】も全文載せますです(汗) 説明描写が重複していた為、削って書き直しました。(※フリーページで差し替え済みです)============================================================光ノ章_01-00【世界】============================================================【改稿・加筆・削除/全文】 ※原文省略↓★推敲★↓ アダマストル北東部―――タブリス森林を抜ける旧街道は、古くは巡礼地を結ぶ参詣道として賑わったが、大陸行路の整備事業によって今では放棄された廃道である。 その人々に忘れ去られて久しい行程を複数の騎影と一台の箱馬車が緩やかに走る。 騎手は全て白銀の甲冑を纏った女性であり、その乗馬は頭部から頸部、胴体に至るまでを装甲化された軍用馬であった。 彼女たちが護衛する四頭立ての箱馬車は、紅の天蓋から美しく弧を描く金銀螺旋細工の施された壮麗な造りで、そこに搭乗する人間の身分の高さが窺えた。 それはアレシャイム教皇庁を目指す聖女と守護騎士団の一行であった。 娘子軍は比較的に安全を確保出来る海路ではなく、敢えて危険を伴う陸路を選んだのだ。 船旅は外敵に襲われる可能性こそ減るが、襲撃を受けた際に生じる被害率が高く、なにより海の上ではまともに戦うこともできない。 よって相対的に判断すれば、どちらも険難な道程であることに変わりは無いのである。 ならば、常道である海路を選ぶよりも、選択肢として希有な陸路を選び、外敵の目を欺こうと講じたのである。 教会船を囮として、これら全ての計略を練ったのはミルフィーナであった。 そして、ここまで細心の注意を払うのには理由があった。 西大陸の大半はメナディエル教圏であり、聖女を害しようと企てる存在など、一見皆無に思われがちだが、内情は違っていたのだ。 現メナディエル正教は大きく2つの宗派に分かれている。 ひとつは女神を唯一無二の存在として、全信徒はその神託によって導かれると定義する白十字教。 もうひとつは女神の器として聖剣戦争を勝利へと導いた神の子アルジェベータ―――聖女の血を受け継ぐ一族を神格化して崇敬の対象とした聖アルジャベータ公会である。 両宗派の教義は似て非なるものである。 偶像崇拝を禁止して原理主義を貫く白十字教の信徒にとって、聖女を神格化する聖アルジャベータ公会の教義は、メナディル正教の原典たる聖伝承の教えに背くものであるからだ。 故に聖女の存在は、その真理を根底から揺るがす悪種であったのだ。 しかし、傍から見れば滑稽で愚かしい話でもあった。 上辺では互いの教義の正当性を説いても、裏では互いに利権を巡る権力闘争でしかない。 大陸最大と謳われるメナディエル正教もまた、他の神聖宗教と同じく一枚岩ではなかったのである。 ・ ・ ・ 「フィーナ! あの綺麗な鳥はなんていいますの?」 シャルロットが箱馬車の小窓から身を乗り出すように高い木の上を指差す。 その声は好奇心に弾んでいた。 籠姫として、奥宮殿に半ば幽閉されるように育てられた少女にとって見知らぬ外の世界は常に驚きと感動の連続であった。 草原を走る風に棚引く草花、見知らぬ街、そこに住む人々の表情―――全てが新鮮なのであろう。 紙上の文字や他人の言葉ではなく自らが直接触れえる世界は確かに息づき、その瞳に飛び込む全てのものがシャルロットの興味を惹いていた。 「シャルロット様、聖女として相応しい立ち振る舞いを忘れてはなりません。 貴女さまは皆の手本となるべき存在なのです」 「あっ……」 ミルフィーナの忠言がシャルロットを座席へと押し戻す。 「ごめんなさい」 シャルロットは淑やかな物腰で乱れたドレスの裾を整えると、悪戯を見咎められた子供のように下を向いてしまった。 だが、暫くすると伏せ目がちな視線をミルフィーナへと送りだす。 ナイトクランを出立してから幾度となく繰り返された光景である。 ミルフィーナはひとつ咳払いをすると、呆れたようにその相好を崩す。 「ですが、それを心にお留め頂けるのならば今は不問と致しましょう。 シャルロット様にとって外の世界は特別なもの。 感情を抑えろと言う方が酷というものでしょう。 それに、私奴もそのほうが……」 ミルフィーナはシャルロットの生い立ちに想いを馳せて心を痛めた。 聖女としての宿命をただ享受するだけの人生。 それがアルジャベータの名を継いだ人間に与えられた唯一の選択肢だった。 なんの疑問も抱かずに―――いや、きっとそう仕向け育てられた少女に対する様々な感情がそこには含まれていた。 しかし、ミルフィーナの臣下としての領分が危うく洩らしかけた私心を封じる。 「……そのほうが?」 シャルロットは語尾を濁したミルフィーナに先を促す。 「い、いえ……。 私奴の愚意など、どうでも良いことです」 動揺したミルフィーナは己の心裡を悟られまいと横を向いてしまう。 その頬が赤らんで見えるのは夕陽のせいだけではないだろう。 「でも、わたしは聞きたいわ」 シャルロットがミルフィーナの横顔を正面から覗き込む。 こうなると、手狭な箱馬車のなかでは逃げ出すことも叶わない。 「そ、それは……」 すっかり逆転した立場にミルフィーナが口篭る。 そもそも、とりたてて隠すようなことでもないのだが、何か後ろめたい感情が含有しているのではないかと勘繰ってしまう。 「そ、そうです。 先程の質問ですが、あれは雪瑠璃といって青紫の背中に白い胸、脇腹に走る朱線模様の色彩が美しい小型の野鳥です。 大陸北東部の低山帯や亜高山帯で主に繁殖しますが、この時期は越冬する為に大陸を南下しアダマストル周辺でも多く観察されます」 ミルフィーナは多少裏返った声で一気に捲くし立てた。 どうやら気まずさに耐え切れなくなり、シャルロットの興味を逸らそうと試みたようである。 「え、あっ……そう、あの美しい鳥は渡り鳥なのね。 自由に空を飛びまわり移り往く季節を感じ自分の在り処さえ変えてしまう。 籠の中に閉じ込められたわたしとは真逆な生き方……」 シャルロットは黄昏色に染まりつつある遠景に視線を移していた。 「シャルロット様……」 ミルフィーナはほっとした反面、シャルロットの見知らぬ横顔に言葉を失う。 そこにあったのは生気の失われた能面のような表情であった。 守護騎士団の正式叙勲を授かって、シャルロットの守護役を務めるようになって五年になるが、このような無機質な様相を見たのは初めてであった。 「フィーナは自分が自由であると思いますか?」 シャルロットの口からまるで抑揚のない声が洩れる。 柔らかな斜光が箱馬車の窓越しに少女へと降りそそいでいた。 「私奴は守護騎士団の聖務に誇りを持っております。 思うままに生きるという意味であるのならばシャルロット様をお守りすることが、このミルフィーナ・ド・グラドユニオンの本懐であります」 力強く揺るぎないミルフィーナの意志。 その言葉には彼女なりの自負と矜持があった。 「わたしは……」 シャルロットは頭で理解していても“自由”と呼ばれる概念が本来どういったものであるのかの実感はなかった。 籠姫として俗世と隔絶されて育てられた為に、人種や貧富の差など、社会に存在する隔たりに触れたことがなかったのである。 故に不可視の価値を相対して比べる術を知らなかった。 「……本当のわたしを知らないから」 息苦しい沈黙のなかそっと呟くシャルロット。 外の世界に対する強い憧れと、ともすればそれと引き換えにして、自分という存在を象る全てを失ってしまう恐怖。 相反する感情の狭間でシャルロットの心は揺れ動いていた。============================================================
2010/06/29
※更に続きですフリーページで差し替え済みです。この部分はかなり酷かったので、もう少し書き直したかったのですが、先も長いので細かな部分は後に回します。============================================================光ノ章_00-03【聖船】============================================================【改稿・加筆・削除/全文】 ※原文省略↓★推敲★↓ 「うに、よきにはからいなさいですぅ……」 プルミエールの声からいつもの力強さが感じられない。 どうやらこのアメナディル号で一通りの興味を満喫してしまい、倦怠感に苛まれているようだった。 「それでしたら……。 あ、あの……おっ、怒らないで聞いてくださいますかぁ?」 アリエッタはまるで捨て猫のようにプルミエールの反応を窺いながら言葉を選ぶ。 「うにゅ、プルとアリアリの間にぶすいはむよーです」 そして、幼馴染を“下僕”扱いするのは不粋ではないらしいプルミエールから了解を得る。 「今回もまた、むだんで外出してしまわれたので、このままでは遅れているお勉強が更に―――」 アリエッタはちょうど一握りぐらいの勇気を振り絞ると、もっともらしい提言を試みようとした―――が、そこで何かドス黒っぽいものを含む視線を感じて息を呑みこむ。 「だ・か・ら?」 プルミエールは引き攣った笑顔でアリエッタに先を促す。 よく見ると、こめかみの辺りで青筋がぴくぴくとしていた。 「お、おひまなら、少し、おべんきょうなどを……」 実のところ、アリエッタがプルミエールの行動を努めて制止しなかったのには訳があった。 この難局をどうにかやり過ごせば、アレシャイム教皇領到着後に聖女の一団と合流することも可能だと考えていたからだ。 シャルロットから直接帰郷を促されればプルミエールも従わざるを得ない。 旅路で遅れた勉学の機会さえ取り戻せれば、全てを有耶無耶に出来るかもしれないと思索していた。 意外にも冷静に事の成り行きを推察していたようである。 「い、いえ……事情を話せば、司祭さまも喜んでプルミエールさまのおべんきょうをみて下さると……」 もっとも、このままでは敬愛するミルフィーナに会わせる顔がない。 それでなくてもお馬鹿で学業が遅れがちなプルミエールである。 今回も騒動だけを引き起こして、更にお馬鹿に拍車が掛かればアリエッタの立つ瀬が無い。 「そ・れ・で?」 子羊の骨付きローストを右手に掴んだままのプルミエールが、威嚇するようにアリエッタとの間合いを詰める。 ここまできて「それで」もないのだが、主人の怒気を敏感に察知したアリエッタが食卓を挟んだまま数歩後ずさりする。 そんなやりとりが、数秒続いたが――― 「も、もちろん冗談ですよ!!」 力いっぱい前言を撤回するアリエッタ。 「教皇庁にはヴィルヘルムさまもおられますし、わざわざこんなところでおべんきょうする必要なんて……」 続けて、アリエッタが放った一言にプルミエールの表情が凍りつく。 「あ、あぅ……ぅ」 食欲に対して謹厳実直だったプルミエールの動きが不自然に停止して、石人形の如く固まっていた。 次第にその小さな体がぷるぷると震えだす。 「あ、あの、プルミエールさま……。 どうかしましたですか?」 アリエッタが心配になって尋ねる。 大量、いや超量の料理を胃袋に詰め込んだプルミエールが食あたりか何かに陥ったと勘違いしたようである。 序に言えば「できれば航海中ずっと寝込んでいてくれればいいな」などと不謹慎に思ったりもしたが、ちょっぴり生まれた下克上の心意気をそっと飲み込む。 バレたらことである。 恨まれるというより、きっと呪われるだろう。 「アリアリ!! “きょこうちょう”にはヤツがいるのですか!?」 プルミエールは軌道上に存在する全ての物品を蹴散らしながらアリエッタに詰め寄る。 それにしても、メナディエルの現状を考えれば“―虚構(きょこう)―庁”とは上手く揶揄したものである。 ただ残念なことに、今回は発信者がただお馬鹿なだけだったので例には洩れていた。 「あわわわわわ……。 ヴィルヘルムさまは主席枢機卿ですので、ふだんは教皇庁にいらっしゃるとおもわれますぅ~」 アリエッタは跳ね上がった食卓に押し潰されそうになりながら手足をバタバタと空転させていた。 周辺には甲高い音を響かせながら跳ね回る食器や盃が散乱している。 「アリアリ! いますぐお城にかえりますよ!!」 プルミエールは食卓の下からアリエッタを引き摺りだすと、その首根っこを引っ掴む。 「い、いくらなんでも……それは無理かとぉ~」 既にナイトクランを出港してから4日目になる。 今更引き返せもないものである。 「いいから船をもどしなさいですぅ~」 「む、むりですよぉ……んぎゅっ!?」 みなまで言わせずプルミエールの手がアリエッタの喉を締め上げた。 そのままアリエッタの身体をガクガクと前後左右に揺すっている。 「ア~リィ~ア~リィ~! プルはおしおきなんてイヤです!!」 プルミエールにとってヴィルヘルム・アンスバッハは教育係でもあり“天敵”とも云える存在であった。 「ヴィルヘルムさまはとてもお優しい御仁ですので……。 わ、わけをお話すれば―――」 切羽詰ったアリエッタは、理不尽な現実に涙しながらも必死に訴えかける。 でも、途中で理由のほうに無理がることに気がついた。 「む~り~ですぅ~! あのへんくつ石アタマは、なぜかプルにだけはやさしくないですぅ!!」 それはプルミエール本人に原因があるのだが、利己主義の塊なので理解できていない。 「ぐ、ぐぐ……ぐるぢぃぃ……れふぅ~」 既にアリエッタの顔色は青から白色に変わっていた。 ぱしぱしとプルミエールの手を必死に叩く。 そしてアリエッタが下僕的に2階級特進を覚悟した時――― ―――ギィィィィ ふたりの背後で扉の開く音が響いた。 そこには、見慣れないふたつの小さな人影。 「わちきはミューク・ウィズイッド。 以後、お見知りおきをお願いするのじゃ」 短めの茶髪を綺麗に肩上で揃えた娘が優雅な所作で腰を折ると、プルミエールとアリエッタに向けて深々と一礼した。============================================================※その他、誤字脱字の訂正、細かい形容などを追加致しました。
2010/06/27
※続きです============================================================光ノ章_00-03【聖船】============================================================【改稿・加筆・削除/全文】 ※原文省略↓★推敲★↓ 「なんですかソレは~?」 プルミエールが怪訝そうな目を向けてくる。 その視線の先にはアリエッタが後生大事に抱えている手記らしきもの。 表紙の原皮には『アリアリのこうかい日記』と表記されていた。 傍目には、“航海”ではなく“後悔”ともとれる表題だ。 「あぅ……な、なんでもありませんですぅ」 アリエッタはまるで悪戯が見つかってしまった子供のように、不自然な仕草をおり交ぜて日記を机の下に隠す。 見られて困るようなものなら目の前で書かなければ良いのだが、幼い頃から続けてきた習慣は変え難いらしい。 「そ、それにしてもすごいご馳走ですね」 アリエッタは話題を逸らそうと卓上に視線を移す。 綺麗なレースのあしらわれた純白の机掛けの上には、アリエッタが見たこともないような豪勢な料理が所狭しと並んでいた。 蒸し大海老のステパノ風 竜鳥と自家製ハーブの腸詰 牛肉と天霧茸のパイ包み 子豚の丸ごと石窯焼き 子羊の骨付きロースト ジャガイモとポロネギの冷製ポタージュ ・ ・ ・ 今は丁度夕食の時間。 室内には食欲をそそる香ばしい匂いにが充満していた。 ひとりで食べるのは味気ないというプルミエールの一言で、アリエッタも豪勢な夕食にご相伴預かることになっていた。 「うにぃ……。 アリアリはお気楽でイイですねぇ~」 「はぁ、もうしわけないです」 アリエッタにしてみれば聞き捨てならぬ発言だったが、日記の事を追求されるよりは遥かにましであった。 もっとも、アリエッタの知るプルミエールは他人の秘密や醜聞を好み、一度興味を抱いたら骨までむしゃぶり尽くす勢いで喰いついて放さない性分である。 普段と比べると今のプルミエールは拍子抜けするほどあっさりしていた。 「あの、もしかしてどこかお体の具合が悪いのですか?」 アリエッタが恐る恐る尋ねてみる。 毒蛇が潜む藪の中を突いて回る危険な行為だが、守護役という立場上致し方ない。 「んぐぅ……。 うぎゅん……がぐぅ~」 しかし、当のプルミエールはアリエッタの気苦労など何処吹く風。 かわいい呻き声を洩らしながら蒸し大海老と格闘中であった。 明らかに言動が一致していない。 「んがぁ!!」 プルミエールが不気味な雄たけびをあげて咥えた大海老を殻ごと喰い千切る。 見目も美しく食べてしまうのが勿体ないぐらいな料理の数々が、食事作法というより肉食獣が獲物を喰らう感じで次々とその胃袋のなかに収められていった。 今回の航海には、大教皇に次ぐ聖位を与えられた七枢機卿の中でも、美食家として名高いハンス卿お抱えの料理人が数名同行している。 おそらく彼等が惜しみなくその腕を振るったのであろう。 だが、寄航することのない長期の航海は物資を調達する術が皆無に等しく、水や糧食などは必要最低限度に節約するのが常道である。 供された料理を大量に残せば少しは調節されるのだが、底抜けの大食漢でもあるプルミエールが毎食きれいに平らげてしまうので、その都度料理の量が増えてしまい現状に至る。 この分では何処かの港に寄港しなければ、糧食が尽きるのも時間の問題だった。 「お、お元気そうですね……」 アリエッタは気疲れしたようにそう洩らすと、自身の皿に料理を取り分けようと立ち上がる。 既に大半の料理はプルミエールに平らげられており、残すは子豚の丸ごと石窯焼きだけであった。 「うっ……。 ブタさん……わたしは悪くないです」 だが、子豚の暗い瞳孔から発せられる無言の威圧感に、アリエッタの腰は完全に引けてしまっていた。 「んっ、がっぐぅうぅぅ……」 そんなアリエッタの目前で躊躇なく子豚が丸呑みにされていく。 人生とは無情なものであった。 「アリアリー。 なにか楽しいことはありませんかぁ?」 空腹と満腹の関係に兼ね合いをつけたプルミエールが話題を振り戻す。 「もうしかして、飽きてしまわれたのですか?」 アリエッタは今までのプルミエールの発言を総合的に咀嚼して要約してみた。============================================================※その他、誤字脱字の訂正、細かい形容などを追加致しました。
2010/06/27
「改稿・加筆・削除」がほぼ全体に及び、個別に推敲経緯を載せるのが困難な為、【聖船(推敲版)】も全文載せますです(汗) ※半角二万文字オーバーしたので三つに分けます。============================================================光ノ章_00-03【聖船】============================================================【改稿・加筆・削除/全文】 ※原文省略↓★推敲★↓ ―――ジャーーン、ジャーーン、ジャーーン…… 船の出港を告げる硬質な打撃音が海と空の蒼に溶け込んでいく。 アメナディル号へと乗り込んだ二人の少女を、奇異と好奇の眼差しで眺めていた水夫たちが慌ただしくそれぞれの持ち場へと戻る。 「俺様はバルバロト。 この教会船アメナディル号の船長を十七年……いや、十六年か? 確かアレは……あ~っ、駄目だ……細かいことは覚えられねぇ。 まぁ、お嬢ちゃん達が生まれる前からやっているのは確かだ。 大船に乗ったつもりで寛いでくれ」 バルバロトはそう言うと熊のような大きな手をプルミエールに差し出してくる。 「うにゅ、よきにはからいなさいですぅ♪」 プルミエールとバルバロトは漢と漢の友情を誓い合うようにガッチリと力強い握手をする。 バルバロトはその見た目通りに中身の方も大雑把な男であった。 そこに王族や聖位に対する畏敬の念など微塵も感じられない。 隣のザゼルはあからさまに顔を顰めているが、当のプルミエールが快く応じているので取り立てて咎め立てるつもりはないらしい。 「そっちのお嬢ちゃんも宜しくな」 「は、はい。 よしなにお願いします」 アリエッタがバルバロトの巨体にビクつきながら頭を垂れる。 「まぁ、それでだ。 このアメナディル号はイプス岬を抜けサリナハーム東岸を北上した後、ソウルガイス諸島群ルブリス島を目指す予定だ」 バルバロトは鈍った肩の筋肉を解すように腕を回しながら目的地までの進路を簡潔に説明する。 この時期に南西から吹き込む季節風を捉えるには最適の進路である。 だが、イプス岬近海は荒々しい岩礁帯であり、南方から吹く暖かな季節風とリザロス湾沿岸の寒流がぶつかる局地的な濃霧地帯でもある。 視界を閉ざす濃い霧が帯状となって常に発生している為に、船乗りの間では“船の墓場”と呼ばれる魔境であった。 通常の航行ならば、イプス岬は大きく迂回する進路をとるのが通例である。 「まっ、心配しなさんな……。 この大海原はガキの頃から俺様の庭のようなもんだ。 何を隠そう以前は世界中の海を股にかけて暴れまわっていたしな。 死の海域だかなんだか知らねえが、俺様にかかればお茶の子さいさい、赤子の手を捻るようなもんだぜ。 がっははははっ!」 バルバロトの本気とも冗談ともとれる大言に、周囲の船員から感嘆と冷やかしの混じりあった口笛が一斉に響いた。 「おいおい、また船長が“馬鹿話”をはじめたぞ!」 風向きに合わせ帆の角度を調節していた船員が大声で冗談めかすと、甲板が笑い声に包まれる。 「てめえっ何言ってやがる!? それと、いま笑った奴らぁ全員出て来い! 残らず海に叩き込んでやるっ!!」 バルバロトが逃げ惑う船員達を追い掛け回す。 だが、その体格が災いしてか、まるで小回りが利いていない。 どうやらこの余興は暫くの間続きそうだった。 「ア、ハ……ハハ……」 アリエッタが乾いた笑いを洩らす。 このバルバロトという大男はプルミエールと同質同類の人間だ。 アリエッタはそう確信していた。 「ヤレヤレ……まったく、ひとさわがせですねー」 プルミエールが他人事のように溜息をつく。 アリエッタもそれに同意しかけ―――やっぱり、やめた。 「お、おほん……。 そ、それではお二人はこちらへ」 ザゼルはわざとらしく咳払いをすると、プルミエールとアリエッタを騒動の輪から遠ざける。 そして、船楼扉の傍で控えていた数人の女神官に目で合図を送った。 「理由あって当初の予定は変更された。 お前達には此度の船旅の間、アダマストル第二王女であらせられるプルミエール様がご不便なきよう身の回りのお世話を申し遣わす」 女神官達はザゼル司祭の言葉に驚きを隠せないようだったが、黙って立っていればそれなりに愛らしいプルミエール。 見た目で獲物を誘い込む食虫植物さながらに、未来の犠牲者たちの心を取り込んだようだ。 「わたくしはアリエルと申します。 アレシャイムへの船旅の間、なんなりとお申しつけください」 女神官の中でも最年長者とみられる女性が一歩前にでると淑やかな口調でそう述べた。 「うにゅ、よきにはからいなさいですぅ♪」 語呂が気に入っているのか、それはプルミエールの口癖になりつつあった。---------------------------------------------------- こうかい日記 ~1日目~(晴れ) 気づいたら船に乗っていました。 船に乗るのは生まれてはじめてです。 グラグラと揺れてとても怖いです。 きっと、とっても不幸なのですが負けずにがんばろうと思います。 P.S. プルミエールさまはとても豪華なお部屋に、わたしはふつうの船室に案内されました。 さっそく格差社会の縮図を体験です。---------------------------------------------------- こうかい日記 ~2日目~(くもりのち晴れ) わたしとプルミエールさまが乗り込んだ船、アメナディル号は順調なこうかいを続けているそうです。 お日様が昇ると、プルミエールさまも本格的な活動期に入ったようで、ちょこまかと走りまわっておられました。 どうやら水夫さんたちのおしごとに興味をお持ちになったらしく、“帆布の手入れ”、“風や波の読み方”などをはじめ、細かい雑用にまで首をつっこんでいらっしゃいます。 いろいろと無理難題をおしつけられ、数名の船員さんが怪我をしてしまったようで心配です…… でも、プルミエールさまはバルバロト船長や船員さんたちとはとても仲良しなので、わたしとしてはありがたいです。 P.S. あらくれ者どうし気があうのかもしれません。---------------------------------------------------- こうかい日記 ~3日目~(晴れ) 大事件です。 朝起きると、プルミエールさまがお部屋から姿を消していました。 どうやら、早朝礼拝がイヤだったらしく、トンズラしたようです。 みんなで手分けして船内を探しまわりました。 けっきょく、日も暮れかけたころ、厨房の大なべのなかで発見されました。 できるだけ、教会の方たちとも仲良しになってほしいです。 P.S. どんだけ~---------------------------------------------------- こうかい日記 ~4日目~(快晴) いつの間にか、バルバロト船長の片腕にまでのし上がったプルミエールさま。 短い時間なら舵を任されるようになっていました。 怖いのではやく船を降りたいです。 誰か助けてください…… ・ ・ ・ 「アリアリ……ナニしているのですか?」 アリアリ……ナニをしているの――― そこまで書いてしまって、アリエッタは羊皮紙の束から顔を上げ周囲を見渡す。 自身に宛がわれたちょっと小奇麗なだけ”の船室とは違い、ここは装飾の趣・居住性の良さとも最上級の特等船室だった。 金満家の好むような絢爛豪華な宝飾とは幾分異なるが、趣のある繊細な意匠が凝らされた内装は見る者の心を奪うのには十分に思える。 部屋の主人―――プルミエールと目が合うとアリエッタは慌てて開いていた冊子を閉じる。============================================================※その他、誤字脱字の訂正、細かい形容などを追加致しました。
2010/06/27

蒸暑いので涼しい感じの壁紙を製作致しました。本来なら「蒸暑い」=「露出」に走りたいところですが、えっちぃ壁紙ばかりだとアレなので、実用性を兼ねたシンプルなブツとなっております。サイズは自分用なので1920x1200のみです。こちらは序に製作。
2010/06/25
※続きですフリーページで差し替え済みです。大まかな流れに変化はありませんが、冒頭、アダマストル公国の紹介描写の改稿。伝令関連の描写の削除。乗船を希望するプルミエール関連の描写の加筆。の3点をメインに推敲致しました。============================================================光ノ章_00-02【夜冠】============================================================【改稿・加筆・削除/全文】 ※原文省略↓★推敲★↓ 「講釈中悪いが、その話はご破算だ」 老司祭の頭上から野太い声が振り落ちる。 「な、お前は……」 ザゼルが船縁を見上げると、そこには酒瓶を抱えた巨大な影がヌッと山のように聳えていた。 「残念だが、お目当ての人物は来ないぜ。 やんごとなきご身分の御方はこんなむさ苦しい船には乗りたくなくなったそうだ」 桟橋からは逆光となり表情は見えないが、声が笑っている。 どうやらプルミエールと老司祭のやり取りを酒の肴に楽しんでいたらしい。 「バルバロト船長……出港前の飲酒はあれほど控えるようにと……。 い、いや、それよりも今の言葉は聞き捨てならぬぞ。 この神聖なる教会船内で嘘偽りは許されませんぞ」 「嘘はついちゃいねぇよっ……と」 バルバロトと呼ばれた大男は巨体に見合わぬ身軽さで上甲板から桟橋の上に飛び降りる。 「まだ夜も明けきらぬ内に、直接この船に伝令があったのさ。 急遽、予定が変更になったとよ。 こっちはこっちで与えられた役割を全うせよとのお達しだ」 喧騒の輪に混じると、バルバロトは髭面をニタリと歪めて人懐っこそうに笑う。 左目に被り眼帯、残った隻眼から放たれる眼光は野獣の気配を匂わせている。 三つ編みにされた長い黒髪の束が巨躯を覆う漆黒の長衣の上で揺れていた。 きっと海賊を抽象化して絵に描いたらこのようになるのだろう。 爪先立ちをしたプルミエールが無意味に大きさを張り合っているが気にした風もない。 「私は聞いておらぬぞ。 それにそのような重要事項をなぜ隠しておった」 ザゼルは顔を真っ赤に紅潮させて喚き散らす。 頭に血が上りすぎて今にも卒倒しそうである。 「そりゃ、司祭殿はついさっきまで惰眠を貪っていたからな」 一方、バルバロトは気にした風もなく豪快に笑っていた。 「それに、司祭殿は口は堅いがすぐ顔にでる」 フォローになっているのかいないのか微妙なことを言うバルバロト。 「端からこっちは囮に使う腹積もりだったのだろうさ」 「まさか、そんな……」 大務を任されたと信じ込んでいたザゼルは茫然自失だ。 「俺様もこのアメナディル号をダシに使おうって小賢しい魂胆が気に食わない。 なんなら、ばっくれちまっても構わないぜ。 どうする、司祭殿?」 「い、いや、これも女神が与え賜うた試練なのやもしれぬ。 我らが役割が囮であるのならば、それに務め徹すことが、延いてはメナディエルの為となろう」 バルバロトは老司祭の言葉に「信仰深いことで」と呆れたように小さく呟く。 「まっ、この船の最高責任者はアンタだ。 こっちはそれに従うまでさ」 そこでバルバロトは何か名案を思いついたように大きく手を打つ。 「おい、そこのちっこいのふたり」 「ムカー! プルは小さくな―――ふぐぅ」 激昂するプルミエールの口に手を当て蓋をするアリエッタ。 これ以上事態をややこしくしたくないようだ。 「ど、どうもお騒がせしました。 それじゃ、わたしたちはこれで……」 アリエッタはその場で深く一礼すると、事態の収拾を図るべく会話に終止符を打とうと試みた。 「いや、待て。 この船に乗りたいのなら乗せてやってもいいぜ。 囮なら囮らしく、それらしいお方を乗せておいたほうが、なかの奴等もなにかと張りがでるだろうしな」 「はぁ、そうですよね。 やっぱり迷惑でしたよね―――って……ええ!?」 アリエッタはバルバロトのあり難迷惑な申し出によって平和的自己完結を阻害されて鼻白む。 「い、いえ、それは慎んで遠慮し―――ぐふぅ」 プルミエールの肘鉄の一閃で桟橋に沈むアリエッタ。 「なかなか話のわかる“毛むくじゃら”ですね♪ よきにはからえです」 プルミエールは片足でアリエッタの頭部を踏みつけると、勝ち誇ったように八重歯を剥き出しにする。 その一連のやり取りにザゼルは口をポカンと空けたまま唖然としていたが、小さく咳払いをすると、 「致し方ありません……。 お若いが守護騎士殿もご一緒なら心配も無用でしょう」 ザゼルはアリエッタの上衣に縫いこまれた刺繍が、娘子軍として名高い“ガーディアン”の紋章である事にも気づいていたようだ。 正規の守護騎士と間違われたアリエッタの顔が一瞬だけ嬉しそうに綻びるが、直ぐに事態の深刻さに気づいて汗だくになった。 「先ほどまでの非礼の数々、弁解の余地もございませぬ。 ご無礼の段は平にご容赦下さりますよう」 どうやらザゼルの腹は決まったようで、プルミエールを王族として教皇庁まで送り届けるつもりらしい。 「何をしておる、早く此方のお二人を教会船へとお通しするのだ」 ザゼルは事態を飲み込めず唖然としている神官兵を叱責すると、聖職衣の胸元で聖印を切る。 「さっ、どうぞこちらへ」 神官兵は先頭に立つと、プルミエールを上甲板へと丁重に先導する。 残されたアリエッタは、あたふたと周囲を見回して思わぬ展開にとり乱していた。 「さあ、守護役の騎士様もどうぞこちらへ」 「あ、あの……、考えなおしたほうが……はっ!?」 アリエッタはそこで、はたと気づく。 ここで余計なことを口走り船に乗れなくなれば、まず間違いなくプルミエールは暴れだすだろう。 その理不尽な怒りの矛先が果たして何処に向けられるか? 考えるまでもない。 「あは……はははっ」 ガクガクと膝が笑うほどの恐怖がアリエッタを襲う。 「どうされました?」 ザゼルがアリエッタの挙動不審を訝しみ脚を止めて尋ねる。 「い、いえー。 えへへ……」 アリエッタは折れそうな心を自力で矯正すると、不自然な作り笑いを浮かべた。 既に悪魔に魂を売った以上、何も失うものはないと無理矢理に自分を納得させる。 「アリアリ、なにをモタモタしているですか!」 プルミエールから叱責が飛ぶ。 アリエッタが見上げると、甲板へと掛かる渡し板の上で諸悪の元凶がいつも通りに無い胸を張っていた。 相変わらず偉そうである。 勿論、下僕なので口にだしてそんなことは言わないし、言えなかった。 こうしてアリエッタは、一足先に王都を立ったシャルロットと守護騎士団の一行を追い、海路で教皇庁アレシャイムに向かう羽目に陥った。 ―――今日もリザロス湾から眺める空は青く高かった。============================================================※その他、誤字脱字の訂正、細かい形容などを追加致しました。
2010/06/23
「改稿・加筆・削除」がほぼ全体に及び、個別に推敲経緯を載せるのが困難な為、【夜冠(推敲版)】も全文載せますです(汗) ※序に半角一万文字もオーバーしたので二つに分けます。============================================================光ノ章_00-02【夜冠】============================================================【改稿・加筆・削除/全文】 ※原文省略↓★推敲★↓ アダマストル公国はベルムーテス五公国連合に属する大国である。 建国後、三百年に亘り聖女アルジャベータの血脈を守護する女帝制が布かれていた。 国地の大半を占めるデュミナスカ半島は、サーリュクルト大河の河口デルタ地帯が齎す西大陸最大の穀倉地帯としても名高い。 加えて首都のナイトクランはリザロス湾に面する大陸最大の貿易港を有し、異国情緒溢れる美しい街並みを誇っていた。 市街地を走る街路は広く、整頓された石畳が敷き詰められている。 轍が刻まれた中央街路の両側には一段高くなった側道があり、十字路ごとに常夜灯が整備されていた。 中央広場には大陸教でもあるメナディエルの大聖堂が座し、巡拝の名所でもある。 都市の南部を占める産業地区には、西大陸の海の玄関口でもあるリザロス湾を取り囲むように、数多の屋台や露店がひしめき合っている。 市場は熱気に包まれ、生鮮品の類から製材、打刃物、家具、建具に到るまでところ狭しと陳列されていた。 バールペオル大陸では珍しい南部原産の香辛料や東方産の天然香水などの稀少品まで商いされている。 大陸行路の終始点、即ち南部の制海権を一手に握るアダマストルは、交易関税が生み出す莫大な富を背景に、一公国でありながら様々な影響力を大陸全土に誇っていた。 大陸各地、数多に点在するどの都市も、このナイトクランが生み出す財の前では霞のようなものであろう。 ・ ・ ・ 「いいから、とおしなさいです!」 舌足らずな子供っぽい声が、周囲の静観をぶち壊すように響き渡る。 「なりません」 「ムカー! “平民”のぶんざいでナマイキですねっ!!」 これらは既に、数刻に亘り繰り返された押し問答であった。 「ここを通すわけには参りません。 どうかおひきとり下さりますよう」 橋守の神官兵は極めて事務的な応答を返す。 ここは大港の最深部にあたる公室専用港。 白大理石を基調に様々な貴石で紋様を施された特別地区である。 教会船の停泊した桟橋の上には小さな人だかりが出来上がっていた。 「あ、あのプルミエールさま。 もう帰りましょうよ~」 アリエッタが今にも泣き出しそうな声で自重を促す。 件の二人組みは、市場の活気溢れる風趣には目もくれず、目的の場所へと辿り着いていたようだ。 「ダメです! あの冷血女の魔の手からシャル姉さまをお助けするのです!!」 プルミエールはアリエッタから聖誕祭の詳細を聞き出すと、大まかな理解と盛大な誤解を胸に物騒な決意を固めてしまっていた。 「あうぅ……」 アリエッタは、まるでこの世の終わりだとでもいうように、がっくりと肩を落としている。 相手が王族とはいえ機密事項を漏洩したことがバレれば、ガーディアンの正式叙勲は暫くの間、見送られそうであった。 「ど、どうか、おひきとりを……」 「ガルルルル……」 神官兵は今にも噛みつかんばかりのプルミエールに対して、明らかに気後れしつつあった。 プルミエールの常人より遥かに低い我慢限界値が沸点に達しかけた時――― 「わざわざ私を呼びつけるとは何事じゃ」 教会船に掛かった桟橋を白髪混じりの老人が覚束ない足取りで駆け降りてくる。 「む、なに奴ですか!?」 プルミエールが唐突に現れた第三者へと不審の眼差しを向ける。 いや、老人の纏う高位聖職衣に敵愾心を燃やしていると描写したほうが正確だろう。 過去のいざこざから、教会とプルミエールは水と油の関係であった。 無論、教会関係者は一方的な被害者である。 「ん!? こ、これはプルミエールさまではありませんか」 老人はプルミエールの存在に気づくと畏まって低頭する。 様々な意味で名を馳せているこの第二王女に覚えがあるようだ。 信心深いメナディエル教徒にとって、聖女の血統を受け継ぐリュズレイの血脈は、それだけで神聖なる存在であることに変わりはないようだった。 「私はこの教会船アメナディル号の船上司祭を務めるザゼルと申します。 それで、このような場所にどのような御用でございましょうか?」 教会船の目と鼻の先で引き起こされた珍騒動は、船上司祭をも呼び寄せる事態にまで発展していた。 司祭不在の孤島や小教区に司牧訪問する目的で造られた教会船には、本格的な礼拝堂が設けてあることが通例であり、船上司祭とは海上での祭事を執り行う最高責任者である。 「ザゼルさま、じつは……」 プルミエールと果敢に張り合っていた神官兵がザゼルに耳打ちをすると、 「ふむ、残念ですがこればかりは罷り通りません。 ルバドス副宰相殿からプルミエール様を国外に出すなときつく言いつかっております」 「むぅ、あのシロヒゲだるまめぇ……こしゃくなヤツ。 帰ったら逆さヒゲ吊りの刑にしてやるですぅ」 プルミエールは聞いてるだけで痛そうな刑罰内容(おしおき)を口走ると、しかめ面で歯軋りをする。 もっとも、返り討ちできつく仕置かれるのはもっぱらプルミエールの方である。 「なにより此度、当船は公国直属の勅命を担っているが為、如何なる理由があろうと乗船を許可するわけにはまいりません」============================================================※その他、誤字脱字の訂正、細かい形容などを追加致しました。
2010/06/23
※続きですフリーページの方でご覧いただければ幸いです。============================================================光ノ章_00-01【妹姫】============================================================【改稿・加筆・削除/全文】 ※原文省略↓★推敲★↓ ・ ・ ・ 「それにしても…ムカムカするカタマリですね」 プルミエールは引き攣った顔で不愉快の権化を足蹴にする。 「はぅ!?」 胸元に得体の知れぬむず痒さを覚えたアリエッタは唐突に意識を取り戻した。 その視線を違和感の発生源に移すと、プルミエールの足の動きにあわせてユサユサと跳ね躍る量感のある大きな胸。 「わっ、んひゃう……。 あうぅ……」 たまらず、鼻にかかった可愛い呻き声を漏らすアリエッタ。 同年代の少女の甘い声に感化されたのか、プルミエールの頬にも僅かに朱が差している。 「へんな声だすなーっ!!」 「んぎゅ!?」 限りなく理不尽に、本日二回目の鉄拳制裁。 アリエッタは薄れゆく意識のなかで、三度目の目覚めこそ平穏であって欲しいと切に願っていた。 ・ ・ ・ 「あ、あの……」 一刻後、アリエッタは心ならずも再度の失神から回復していた。 もっとも、その身体は荒縄で縛り上げられた挙句、床に転がされている。 平穏どころか、最低限の人権さえ失っていた。 「それで……これはなんの冗談ですかぁ?」 アリエッタはまるで腫れ物に触るようにおずおずと口を開く。 「ゆーずーのきかない“お友達”への愛のムチ(おしおき)です。 なにか不満があるのですか?」 アリエッタは壊れた首振り人形のようにぶんぶんと首を横に振る。 いつの間にか例えが「親友」から「友達」に格下げされているようだが、今は些細な事であった。 「そ・れ・で♪ お友達は隠し事などしないものですよねぇ?」 プルミエールの回りくどい言い回しが更にアリエッタの不安を誘う。 「そ、それは時と場合に……い、いえ、きっとしないものだと思いますぅ~」 一瞬、否定しかけたアリエッタ。 しかし、プルミエールに三白眼で睨まれると、滝のように冷汗を流し肯定する。 視線で人を殺せるとしたら、きっと今の状況を指すのだろう。 「では、“アルジャベータ聖誕祭”なるモノのしょーさいを教えなさいです♪」 既に友達ですらないような命令口調でプルミエールが告げる。 「……え」 プルミエールが尋ねてきた内容は、よりにもよって守護騎士団の機密事項にあたるものだった。 アルジャベータ聖誕祭は三大祭祀のなかでもリュズレイ公家に縁深いものである。 故に国内外の祭典で度々問題行動を起こすプルミエールには内密にことが進められていた。 まだ、騎士見習いでしかないアリエッタにしてみれば、自身の失態でプルミエールが教皇庁に乗り込むような事態になっては一大事である。 なにより敬愛するミルフィーナからきつく口止めをされているのだから尚更であった。 公国内でプルミエールを直に制御出来る人材は数少ない。 姉であるシャルロットを除けば、その後見人として国を治めている祖父のウィルホードと、姫君達の教育係として招聘されたヴィルヘルム老だけだった。 無論、常にその三人がプルミエールの傍にいるわけもなく、困り果てた家臣と教会関係者が導き出した結論は、このお転婆姫に対し、触らぬ神に祟りなし天機洩らすべからずであった。 「さいきん、どうもシャル姉様のご様子がよそよそしかったのですぅ……」 アリエッタの苦渋に満ちた心中を知ってか知らずか、プルミエールは可愛らしい唇を不満気につきだしたまま更に続ける。 「しんぱいしたプルが手下数人(※お付の侍女)にわけをたずねた(※しめあげた)ところ。 どうやらそのお祭りとカンケーがあるらしいとわかりました」 小さな腰に手をあてて偉そうに踏ん反りかえるプルミエール。 だがすぐに不満顔に戻ると、その場で激しく地団駄を踏む。 「きっと、またあの冷血女(ミルフィーナ)がカンケーしているはずですぅ!!」 プルミエールが足踏みをする度に、膝上で広がる紅と黒のコルセット風ドレスの裾が捲くれ上がる。 当然、下から見上げるかたちのアリエッタには白い下着が丸見えである。 もっとも、当人はそういったことに関して至って無頓着であるようだ。 アリエッタのほうも踏み潰されないように顔面蒼白で左右に身を捩っているので、それどころではない。 「む~、もちろんアリアリも同意見ですね?」 「き、きっとミルフィーナ団長にもいろいろとお考えが……」 本音も事実も明かせないアリエッタはしどろもどろである。 「ふみゅ、よーするにアリアリはワケを知っているのですね?」 既に状況は危険水域にまで達していたようで、お馬鹿にも現状が理解できたようだ。 無論、プルミエールが誘導尋問などという高等弁術を駆使するわけもなく、単なる偶然の賜物である。 「お・し・え・ろ♪」 プルミエールが表面上は笑顔で命令する。 「あぅ……」 アリエッタがぞくりと身震いする。 否定すれば、とてつもなく不幸になりそうだった。 しかし、肯定しても同じくらい不幸になりそうなので困る。 そんな究極の選択にごくりと唾を飲み込む。 「そ、それはミルフィーナ団長に堅く口止めを……」 「ほほ~う、アリアリはあの女のみかたですかぁ?」 プルミエールは唐突に踵を返すと、広い詰め所の壁際の方向へつかつかと歩いていく。 行く手の石壁沿いには口広の大型瓶がずらりと並び、様々な形種の武器が所狭しと立て掛けられていた。 「シ・ネ♪」 プルミエールの声と共に、アリエッタの鼻先に鈍い輝きを放つ硬質な物体が突き立っていた。 アリエッタは不自由な姿勢のまま恐る恐る目線だけを上下させて現状を把握する。 「ひぃぃぃ……」 小さな悲鳴をあげるアリエッタ。 唯一自由に動く首を不自然なまでに傾けて壁際を見やると、プルミエールが剣術の模擬戦に使用される長剣を片手に笑みを浮かべている。 「なにか言いのこすコトはありますか?」 プルミエールは長剣をぶんぶんと振り回しながらアリエッタへとにじり寄る。 修練用に刀身を丸めてはあるが鍛錬の為に幾分重く設計されているので、当たれば怪我どころではすまない。 アリエッタは全身の血の気が退いていくのを感じていた。 「あ、あわわわ……、全部丸ごと隠すことなくお話させて頂きますですぅ~」 あっさり悪魔に魂を売るアリエッタ。 人としての尊厳とか自尊心などは、目先の安全の前ではとても儚く脆いものだったようである。 「うみゅ、ちゅーじつなる“げぼく”アリアリ。 よきこたえです♪」 プルミエールは人差し指をぴっと立てて微笑む。 短時間に「親友」から「友達」、「友達」から「下僕」と急下降した自身の立場にアリエッタは涙の粒を滲ませる。 だが、そもそも最初から下僕扱いだった気がしないでもない。 「それじゃあ、しゅっぱつです! アリアリ案内しなさいです!!」 アリエッタは「何処に?」―――と聞き返そうとしたが、胸元で括られた荒縄が唐突に引かれて息を飲み込む。 本日一番の不幸を背負い込んだ少女は不自然な海老反り状態で引きずられていった。 「ふええぇぇ~、せめて縄をほどいてくださいぃ~」 「にげるからダメですぅ♪」 下僕の儚い訴えをきっぱりと拒絶する主人。 アリエッタの垂れ目気味の大きな瞳から涙の雫が零れ落ちて石床に消えた。 もっともこの時までは、二人にとって“いつも通り”に分別される平穏な日常だった。============================================================※その他、誤字脱字の訂正、細かい形容などを追加致しました。
2010/06/21
「改稿・加筆・削除」がほぼ全体に及び、個別に推敲経緯を載せるのが困難な為、【妹姫(推敲版)】は全文載せますです(汗) ※序に半角一万文字もオーバーしたので二つに分けます。============================================================光ノ章_00-01【妹姫】============================================================【改稿・加筆・削除/全文】 ※原文省略↓★推敲★↓ 「アリエッタ~~~っ!!」 澄んだ早朝の空気に周囲の閑静など一切はばからない元気な声が木霊する。 「ふぇ!?」 アリエッタは自らを名指しで呼ぶ声に気づくと、碧色の団栗眼であたふたと周囲を窺いだす。 年の頃十二・三歳のまだ幼さを残した容貌ながら、その外見に不釣合いなほど大きく発達した胸元が特徴的な少女である。 「う~ん……」 寝ぼけているのか、アリエッタの瞳は焦点が定まっていない。 少女が見回した石造りの室内は、普段と代わり映えのしない見慣れたものだった。 ここは聖アルジャベータ守護騎士団、通称“ガーディアン”の居館―――アダマストル本宮殿を取り囲む城砦の一部である。 もっとも、現在、ガーディアンの面々は公国の特務に召集されてこの場には居ない。 未だ見習い騎士の身分であるアリエッタだけが、周囲の喧騒から一人取り残され、兵士詰め所のなかで待機していたのだった。 普段は団長であるミルフィーナの小間使いとして随伴しているのだが、今回は留守番を任されていた。 要は足手まといを連れて行く余裕がなかったのだろう。 そもそも、ガーディアンとは、若い娘だけで構成される、大陸最強の娘子軍である。 団員にはアダマストル正規軍とは違い、国家の威信にすら優先すべき血務が与えられている。 それは、聖アルジャベータ公会の精神的象徴であり、殉ずるべき存在でもある“聖女”の血を守護する事。 その特務は全ての事項に優先されるものであった。 高潔優美、才知と武勇共に優れたガーディアンの存在は、アダマストル公国のみならず、近隣諸国の娘達にとっても憧れであり、その一員となることは大変な名誉だった。 公国各地から集められた団員候補生達は、幼き時より公国と教会が共同で設けた娘子軍養成学校に入り、騎士として必要な技術、神官として学ぶべき知識を叩き込まれる。 そして、中でも心身共に優れた成績を修学したものだけが、ガーディアンの一員となることが許されていた。 故にアリエッタの存在は例外中の例外であり、本来、ガーディアンには未熟な騎士見習いを置く制度はない。 この娘―――アリエッタ・ルーンフォルテがガーディアンに推薦された経緯はかなり異質なものであった。 アリエッタはアダマストルでも有数の良家の末娘として生を享け、物心ついて間も無く、公国の第二王女の相談役として公家に仕えることになった。 それは公国への忠誠の証として、悪く言えば人質のようなものであったのだが、有力貴族の庶子が公家の女官となることは、この時代珍しくはなかった。 アリエッタは第二王女の話し相手兼、護衛として守護騎士団の心得を学んでいるのである。 「アリエッタ~~~っ!!」 再度、自分を呼ぶ聞きなれた声。 小気味よく石畳を打つ足音が兵士詰め所へと徐々に近づいてくる。 「はわっ」 アリエッタも声の主にようやく合点がいったようだ。 長机に垂れた涎を袖口で拭い取り惰眠を貪っていた痕跡を消し去る。 そして、慌てたように扉口へと駆け寄ると、頑丈そうな蝦錠に鉄製の閂を填めこもうと試みた。 だが焦っている為か、はたまた不器用なのか、いや、恐らくその両方だろうが、一向に閂が通らない。 「グガッ! んぎゅ!?」 と、不意に鋼鉄の扉が蹴破られて、アリエッタの両眼に火花が散る。 遅れて石床の上に重たいものが崩れ落ちた。 「むっ!? この“きんきゅーじたい”にノンキにねているとわー! しょくむたいまんです!!」 桜色の頬をぷくぷくと膨らませた金髪の少女が、冷たい石床の上で目をまわすアリエッタを見下ろしていた。 右眼は深い紅色、左眼は綺麗な紫色―――その双眸には人間では珍しい魔力の象徴とも不吉の前触れとも謂われるオッドアイが宿っていた。 「プ、プルミエール様。 な、何か御用ですかぁ?」 アリエッタが驚くべき回復力で身を起こす。 この突如、出現した人間台風の名はプルミエール・リュズレイ。 アダマストル公国の第二王女にして、アリエッタの仕えるべき主人であった。 「うにぃ~、そうでした! そこになおりなさいですっ!!」 プルミエールの興奮した口調にあわせ、頭の左右で結われた金色の髪束がぴょこんと跳ねる。 王族としての威厳を間違ったカタチで体現しているプルミエールだったが、其々の所作が愛らしく嫌味にはなっていなかった。 当人には遺憾だろうが、子供っぽさばかりが強調されている。 アリエッタにしてみれば、プルミエールのそういった行動には慣れていたし、本人に悪気が無い事も十二分に承知していた。 それでも咄嗟に扉に鍵を掛けようとしたのは、アリエッタの自己防衛本能が無意識に働いたからであろう。 「な、なななっ……なにがあったのですか!?」 アリエッタは目を白黒させると、年の割に大きく発達した胸元を両腕で挟み込むような姿勢をとる。 「むっ」 プルミエールは一声唸ると、身体的格差が生み出したアリエッタの豊かな双球と、自らの発育不良な胸の盛り上がりとを交互に見比べている。 「あっ……」 更に持たざる者に追い討ちをかけるようにアリエッタの胸元から鈍い破裂音。 内側から生じた強い圧力に屈した真鍮製の留金が、これ見よがしにプルミエールの足元まで転がった。 「うに……。 ぐ、くぅ……」 一瞬、プルミエールのこめかみに青筋が浮くが、珍しく自力で溜飲を下げたようだ。 そのまま、不自然な笑顔と共にアリエッタへとにじり寄る。 「プルとアリアリはふか~いふか~いキズナで結ばれた“しんゆー”同士ですよねぇ?」 アリエッタは尻餅をついたまま腕だけで後ずさる。 過去の経験からそれが不吉な予兆であることを敏感に察していたのだろう。 プルミエールの我侭に振り回され続けた苦渋の日々が走馬灯のようにアリエッタの脳裏を掠めた。 「と、とっても勿体無いお言葉ですが……。 どちらかと言えばぁ……今までずっと奴隷扱いをされてぇ……」 ふっ、とアリエッタの頭上を翳りが覆う。 真上から迫る物体がプルミエールの踵だと気づいた時には、アリエッタの小さな世界は、再度の白光に包まれていた。============================================================※その他、誤字脱字の訂正、細かい形容などを追加致しました。
2010/06/21
最近の楽天ブログさまは半角一万文字オーバーしても投稿できるのですが、公式でなにも連絡がない以上、制限内に収めたほうが無難ですよね(汗)============================================================光ノ章_00-01【聖女】============================================================【改稿/アルジャベータと古き慣わし】 ※原文省略↓★推敲★↓ アルジャベータとは、聖剣戦争の折、神の器としてその身に女神を降臨させ、邪悪を打ち払った聖女の名である。 メナディエルの教義が統べるこのバールペオル大陸において、アルジャベータは畏怖と崇敬の対象として信仰されている。 そして、アルジャベータの『名』と『力』は代々、その直系でもあるリュズレイの血筋のなかでも、第一嫡女にだけ受け継がれるものとされていた。 シャルロットは生後間も無く、その身に宿る聖女の『血』と『力』を守る為、聖霊環、別名【霊環アシュタリータ】と呼ばれる神聖具で拘束された。 それから今日まで、古来より続く慣わしに従い、俗世との接触を完全に絶たれ育てられたのだ。 教会祭事の執行や公国の式典など、特殊な行事を除けば、近親者と一部の忠臣、敬虔なメナディエル教徒以外の人間は、その姿を見ることさえ禁忌とされていた。 此度の旅路は、教皇庁で執り行われるアルジャベータ聖誕祭に於いて定められた役割を担う為のものだった。 聖誕祭とは聖霊祭、収穫祭と並ぶメナディエル三大祭祀行事のひとつである。 そして、今回の聖誕祭にはシャルロットにとっては特別な意味がある。 それは、間も無く訪れる十六度目の聖誕節に於いて、成人の儀を迎えるシャルロットは、その最終日に執り行われる脱環の儀に於いて聖女としての役割を終えるからである。 それは少女が不自由な籠姫としての拘束から解かれることと同義であった。============================================================【改稿・加筆/不機嫌なシャルロット】 ※原文省略↓★推敲★↓ シャルロットは拗ねたように少しだけ唇をを尖らせる。 湯に中てられて僅かに赤みを帯びた少女の肌が更に紅潮したようにみえた。 「皆、それだけシャルロット様の事をお慕い申しあげているのです。 だからこそ、喜びよりも先に不安が立ってしまうのです」 今までじっと沈黙を保っていたミルフィーナが口を挟む。 しかし、ここ数日幾度も繰り返されていた問答に少女は気分を害してしまったようだ。 シャルロットは己の裸体から丹念に水滴を拭き取っていた侍女達の手を唐突に振り払うと、そのまま誰の助けも借りずに普段より幾分大人びた装いの下着を纏ってしまう。 それは、常に身の回りの全てを侍女達に任せ、自らは最低限の所作しか行わなかった少女の無言の抵抗であった。 自分が独りで生きていけるという類の意思表示でもあったのだろう。 だが、その儚い反抗心も豪奢な天蓋のついた寝台に視線を移した所で停止してしまった。============================================================【改稿/シャルロットのサリマに対する想い】 ※原文省略↓★推敲★↓ 「婆やはわたしにとって良き友人でもあり、ソフィアお義母様と共に母親代わりでもあった大切な人。 それ以外の言葉は必要ありませんわ」============================================================※その他、誤字脱字の訂正、細かい形容などを追加致しました。
2010/06/19
(※投稿時に一万文字オーバーが確認されたので、二つに分けておきます)全体推敲も並列して進めていこうと思います。ただ、初っ端から量が多かったです(汗)数話分まとめて推敲していこうと考えていたのですが一話でこの量は想定外です。============================================================光ノ章_00-01【聖女】============================================================【改稿/冒頭】 ※原文省略↓★推敲★↓ そんな宮内の雑踏にさえ紛れることのない白い影がひとつ。 白金の長髪に端整な面立ち、一見、良家の令嬢と見紛う容姿を兼ね備えたその娘は、宮内の回廊に警戒の眼差しを這わせながら大股で歩を進めていた。 その身に纏った白銀の全身鎧の胸元には、大陸教でもあるメナディル正教の十字に身を絡めた飛竜の紋章が刻まれている。 それはこの女性がリュズレイ公家を護る守護騎士団(ガーディアン)の一員である事を意味していた。 不意に女騎士の足が止まる。 どうやら目的の場所に辿り着いたようだ。 「シャルロット様のご支度は?」 「あっ、ミルフィーナ様!? 聖女様はただ今、身を清める為に湯浴みをなさっています」 鎧の娘、ミルフィーナの問いに、扉の前で控えていた部屋付の侍女が慌てたように応える。 「室内のサリマ侍女長にお取次ぎなさいますか?」 「それには及びません。 暫くここで待たせて頂きます」 ミルフィーナは首を横に振りその申し出を丁重に辞退する。 そして、侍女の横に並ぶように直立不動の姿勢をとる。 侍女は少し困ったような表情を見せると、躊躇い気味に口を開く。 「あ、あのやっぱり……」============================================================【改稿/サリマとミルフィーナ】 ※原文省略↓★推敲★↓ サリマは一拍おくと、小さくため息をつき続けた。 「そのような物々しいお姿で後宮内を彷つかれては皆が不安になります。 騎士様方におかれましては本宮殿でお待ち頂ければ幸いです」 サリマは優しく説伏せるよう調子でミルフィーナを諌めた。 「……申し訳ありません。 ですが、シャルロット様の御心を慮ると、安穏と待っていることなど到底出来ません」 ミルフィーナは僅かに視線を下に落とすとその心中を吐露する。============================================================【改稿/王族の航海例】 ※原文省略↓★推敲★↓ 従来、公家の人間が船旅をする際に用いられるのは公国直属の船籍船であることが常である。 だが、今回は特別事情が違うようだった。============================================================【改稿・加筆/湯浴みをするシャルロット】 ※原文省略↓★推敲★↓ シャルロットは開け放たれた天蓋の先、水を張った黒大理石の浴槽のなかで無造作に佇んでいた。 惜しげもなく晒された美しい裸体から光の粒が零れる。 「シャルロットさま……」 ミルフィーナの視線がシャルロットの肢体に釘づけとなる。 同性である女性を魅了する辺り、この少女が聖女の生まれ変わりだと讃えられる由縁が改めてわかるようだった。 だがその首元で奇怪な輝きを湛える翡翠石の首飾りだけが異なる彩りを少女に植えつけている。 「フィーナ、もう少し待ってくださいね」 シャルロットはにっこり微笑むと、憂いを含んだ紅玉色の瞳でミルフィーナを見つめる。 「は、はい」 我に返ったミルフィーナは、少女の裸身に目を奪われていたことを恥じ入るように俯いてしまう。 シャルロットは軽く頭を振り湿り気を帯びた長い金髪を後ろへ流すと、床一面に敷かれた絨毯が濡れる事もいとわずに、私室と浴室とを遮る金銀糸の飾り紐をつけた垂布を通り抜けた。 そのまま、化粧台に置かれた大きな姿見の前まで来ると乳母と若い侍女を部屋に招き入れる。 「姫さまは、ご立派に成長なされました」 サリマは水浸しとなった絨毯の酷い有様に僅かに眉を顰めたが、表面上は快くシャルロットの傍らに畏まり、少女の濡れた身体を手にしたシルク織りの布で丁寧に拭取っていく。 「婆は、このまま時間が止まってしまえばよいとなんど思ったことか……」 姿見に映し出されたしみや疵の一切見当たらない白い裸身。 サリマは慈愛に満ちた瞳で少女の成長を、どこか物悲しく見つめ呟いた。============================================================【改稿/サリマの返答】 ※原文省略↓★推敲★↓ 「滅相もございません……。 姫様のご成長は婆の誇りでもあります」============================================================※その他、誤字脱字の訂正、細かい形容などを追加致しました。
2010/06/19

この背景ですが、主線に関しては樹木数本しか描いていません。残りはテクスチャ加工+多重フィルタが齎した産物です┃壁┃ω・o)ノいやー人間、楽を覚えちゃいけませ…(*゚□゚)ノ☆)`ν゚)・;'.、クハッ!!
2010/06/16

最近、連続で彩色した弊害か、同じ系統の色ばかり使用している気がします(汗)このモノクロとアニメ塗りを併せた彩色方法は私のようにベジェを多用する人間にはとてもあっているように思えます。後は、日々精進といったところです。そろそろ、新しい背景を描きたい今日この頃┃壁┃ω・o)ノ
2010/06/15

過去UPの半ラフアーネルさんを彩色しようとしたところ、あまりに原画部分が酷かったので、主線の補正を大幅に施しました(汗)まったりと空いた時間に塗りたいと思います。=========================================最近、彩色時にMISIAさまの曲を聴く機会が多いのですが、「逢いたくていま」という曲名が、どうしても、「逢いたくてくま」に見えてしまいます(* ̄(エ) ̄)クマー
2010/06/13

前回に続き、以前挿絵で描いたものを彩色致しました。モノクロ+アニメ塗りです┃壁┃ω・o)ノ原画(主線)に彩色向きではない部分が多々ありました(汗)最初から、モノクロ仕様で塗るつもりがなかったのが原因なのですが、やはり、彩色のことまで考えて描かないといけませんね。
2010/06/10

以前、【妹姫】の挿絵として描いたプルミエールを若干の主線補正後、彩色してみました。「アニメ塗り」と「モノクロ塗り」を併せております。この系統で攻めてみるのも、個人的にはありかなと感じていますが、見た目よりも手間が掛かるのが難題です(汗)
2010/06/07

ブログのテンプレに合わせて568x568の枠内に収めました。前回まで700x665だったので、かなりキツキツなのですが、アイコンの補正などで、どうにか乗り切っています(汗)今回、新に描き足したのはアルフォンヌ(首人)だけです。ただ、ユイリーンに関しては元画がかなり昔のモノだったので、軽く線の補正や微着色を施しております。相関図全体に関しては、第三幕から血脈線よりも関係線に重点を置いた配置になっておりますが、なにせスペースが狭いのでかなり無理があったりもします。ただ、狭い枠内で如何に表現するかという無意味なポリシーを今後も貫いていく次第です(笑)
2010/06/05
うさぎ風船の暗黒面うーたんです(`・ω・´)キリッ無理矢理感は否めませんが【シャルロット編】【ミューク編】の2章が終了したので一段落中です┃迷い家┃ω・o)y-~~~小説モドキに関しては若干の試行錯誤などもあり、文体の微妙な変化も重なったので、全体の整合性を図りたいと思います。最初の頃、平気でカタカナ用語連発してますしね(汗)それと、登場人物の一人称問題があります。シャルロット・リュズレイ「私(わたし)は―――」ファティマ・イス「私(わたくし)は―――」漢字で表記すると、判別不可能なので、ルビを振るか、一人称を平仮名に変換しようかなと考えています。===================================まずは、章終わりの人物相関図を作ろうと思います。ある意味これが一番厄介なのですけどね。イラストもこの間に何枚か描こうかなと思っていますが、伝奇の方が不定期更新になっているので優先順位に迷うところです。
2010/06/03

『†Princesse du sang†』 光ノ章 2-08【神韻】光ノ章 2-08【神韻】―シャルロットSIDE― 殿廊の終着点に行き着くと、巨大な鉄門が一行の前に立塞がった。 肩をほぐすように腕をまわしたエドゥアルトが扉に両手を置く。 青年が全力を篭めて押し込むと、それは大きく軋みながらゆっくりと内側へと開いていった。 「……ほう」 エドウアルトが目前に展開された光景に感嘆したように軽く口笛を吹く。 広大な地下空間には天と地を繋ぐ鍾乳石群が深々と立ち並んでいた。 自然洞窟を利用して造られているのか、地底湖剥き出しの岩肌が所々で露出して蒼白い輝きを放っている。 「鉱石成分に蛍石を含有しているのだと思います。 ルブリス島一帯は西大陸でも最大の蛍輝石の産出地でもあるのですから」 シャルロットが博識振りを披露する。 蛍輝石は石の生命とされる光核が脈動することにより光を放つ。 別名、生命石とも呼ばれ、洞窟全体が生き物のように鼓動していることからも、純度の高さは疑いようがない。 「これだけあれば一生遊んで暮らせるな……。 いや、国のひとつやふたつ容易に買えるかもしれない」 エドゥアルトの口が呆けたように半開きになっていた。 蛍輝石はその特質から様々な分野で利用される希少価値の高い鉱物だけに、青年の考察は当らずも遠からずといったところだろう。 「残念ですが、ここは教会領有地内ですわ。 自然物を含めた全ての物権は教会に属することになります」 ファティマ・イスが別角度から所見を付け加える。 「ファティマ・イス猊下には夢がないな」 「現実主義だとよく言われます」 げんなりと返すエドゥアルトの愚痴を受け流すと、ファティマ・イスの視線は物欲とは別の場所、目近な鍾乳石の一柱へと向けられる。 「そして、恐らくここが霊廟の本殿なのでしょう」 ファティマ・イスの見立てどおり、巨木の様相を呈する鍾乳管には幾つもの大穴が穿たれており、そのひとつひとつに古ぼけた石棺が収められていた。 「だが、ここは霊廟というより何かもっと別の……、 そう、何か呪術や秘儀を執り行う儀式的な祭壇のように思えるな」 エドゥアルトが緩やかな勾配を降りながら気味悪そうに周囲を見渡している。 岩肌から滴り落ちる水音と蛍輝石の鼓動との共鳴は、まるで巨大な生物の体内にいるかのような錯覚を抱かせた。 神韻縹渺たる廟内を暫く進むと、不意に視界が開ける。 「ふぅ……もう、驚くのにも疲れたな」 エドゥアルトがぼやくような口調で呟いた。 鍾乳石の森が割れた先に、規模な城砦程度なら丸ごと収まりそうな巨大な地底湖が佇んでいた。 「フィーナ!」 シャルロットが悲鳴にも近い声を張り上げる。 その両眼は湖面に生えた石柱に四肢を縫いとめられたミルフィーナの姿を捉えていた。 「ファティマさまこれを」 シャルロットはアンネシュティフを半ば押し付けるように女枢機卿へと手渡すと、湖縁へと駆け寄る。 「聖女さま危険です」 ファティマ・イスの制止も耳に入らずに、シャルロットは纏った外衣を脱ぎ捨てる。 そのまま聖職衣が濡れることも厭わずに湖水へと脚を踏み入れていく。 「まったく手の掛かるお姫様だ」 エドゥアルトが少女の後を追い疾駆する。 疾駆しながら衣の内側から細剣を抜き放ち、ミルフィーナを拘束する鉄鎖目掛けて投擲した。 そして、それは寸分違わず対象の四肢を絡め取った鉄鎖の支点となる環を突き砕く。 「きゃ……」 崩れ落ちるミルフィーナを受け止め損ねたシャルロットがその場に尻餅をついてしまう。 既に水深は少女の膝上まで達しており、少女は全身ずぶ濡れであった。 「フィーナ、フィーナ……」 シャルロットはミルフィーナの身体を胸元に抱き寄せると、涙ながらの呼び掛ける。 だが、人形のように何の反応も見せないその姿に少女の心に暗い考えが過ぎる。 「心配ない。 息はあるようだ」 エドゥアルトがミルフィーナの口元に手を翳し呼吸の有無を確かめる。 「それよりも、この辛気臭い湖水に長く浸かっているほうがいろいろと問題がありそうだ。 さっさと戻るとしよう」 エドゥアルトは意識を喪失したままのミルフィーナを器用に背中へと担ぎ上げ、湖縁へと歩き出す。 「は、はい」 改めて湖面へと視線を落としたシャルロットは血の気を失っていた。 湖底は白骨化した遺骸に埋め尽くされていたからである。 この霊廟本殿が贖罪の牢獄の仮の姿あるならば、足元に堆積する骨片は行方不明になった人間たちの成れの果てなのかもしれない。 「それと、いい目の保養にはなったが、これからはご自分の立場を弁えた行動を願いたいな」 エドゥアルトがシャルロットを無遠慮に眺めまわす。 水に濡れた教会衣が素肌に張り付き、少女の丸みを帯びた身体の線を殊更に強調していた。 ミルフィーナに至っては破れた囚人衣の下に何も身に付けていないらしく、艶かしくも引き締まった肢体が所々垣間見えている。 「貴方は―――」 エドゥアルトに平手打ちを見舞おうとしたシャルロットが体勢を崩してよろける。 殿廊の方角から凄まじい轟音と共に、途方もない熱量が押し寄せて乱立する鍾乳管をなぎ倒していく。 「一難去って、また一難か……」 「人為的かどうかまでは判断しかねますが、大聖堂側で何かあったと考えて間違いないでしょう」 駆け寄ってきたファティマ・イスが状況を理知的に分析する。 先程の爆風で傷を負ったのか、女枢機卿の左頬には紅線が滲んでいた。 「帰り道の心配をしたいところだが、どうやら杞憂に終わりそうだな」 エドウアルトの不吉な予感のままに、地下水脈の一部が決壊したらしく、四方から途方もない水量が押し寄せる。 白い飛沫を伴った膨大な質量は成す術もなく四人を飲み込んでいった。 ==============================================当初、神殿(贖罪の牢獄)内での戦闘シーンなども書いていたのですが、あまりに長くなってしまったので、前話の文末を書き換えて霊廟部分で二章を終焉させる運びとなりました。ミューク編でも触れている通り、行方不明になるという点は当初の設定のままです。※推敲はフリーページ内で行います
2010/06/02
※文末を少々変更させて頂きました。============================================================光ノ章_02-07【首人】============================================================【改稿・加筆/※文末全般】 「其方たちの目的地、贖罪の牢獄は霊廟本殿の先にある。 この聖地に最初に建築された大神殿―――エンシェントガーデンこそ贖罪の牢獄の正体じゃ」 首人の発した最後の言葉は闇の中にから響いてきた。 「やれやれ今度は古の大神殿ときたか。 よくよく霊験新かな場所に縁があるらしいな」↓★推敲★↓ 「其方たちの目的地はこの先の霊廟本殿となろう。 じゃが努々油断することなかれ。 其方たちの崇めるメナディエルは法の最高神などではない。 アレはもっと別の―――」 首人の発した最後の言葉は闇の中に溶けて聞き取ることは適わなかった。 「聖女さま……」 背中越しに掛かった声にシャルロットが振り返る。 向き合ったファティマ・イスの表情には苦渋が色濃く滲んでいた。 「お気になさらないでください。 私はファティマさまのお心の準備が整うまで待つことに致します。 なにより、私にそれを催促する資格はありませんもの」 シャルロット自身、水晶の搭で知り得た己の過去を周囲に隠匿していた負い目がある。 ファティマ・イスの抱える過去に興味はあったが詮索する気にはなれなかったのだ。 「それでも宜しいのですか?」 ファティマ・イスの口調には幾許かの安堵が窺えた。 「はい、それよりもファティマさまはお人が悪いです。 端から私の身の上をご存知だったのですね?」 シャルロットは僅かに頬を膨らませると上目遣いに訊ねる。 首人がエレシアムの実子とファティマ・イスの関係を示唆したことからも、この女枢機卿がシャルロットの生立ちを存知していたことは確かである。 「……申し訳ございません」 ファティマ・イスは困ったようにシャルロットから視線を逸らす。 このファティマ・イスという人物、一見して酷薄無情な人柄だと思われがちだが、実は人間味に溢れていることがわかる。 その外見と異端審問官という役職柄、自他共に抱く警戒心が災いしているのだろう。 「ゴホン……。 俺は天地神明に誓い知らなかった。 そもそもシャルロット姫が聖女であろうとなかろうと俺には関係の無い話だからな。 俺にとって重要なのは姫が見目麗しき美貌と淑やか女体を兼ね備えているという点だけだ」 わざとらしく空咳をしたエドゥアルトが、どうでもいい自己主張をした。============================================================※その他、誤字脱字の訂正、細かい形容などを追加致しました。
2010/06/02
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