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※続きです『†Princesse du sang†』 光ノ章 2-01【籠姫】光ノ章 2-01【籠姫】―シャルロットSIDE― 「私はソフィア。 アナタのお母様の双子の妹なのよ」 ソフィアと名乗る女性は優雅な所作で膝を折ると、俯きがちな少女の顔を覗き込む。 「今日は、アナタとお友達になりたいと思ってやってきたのだけど…」 「いらない」 シャルロットはソフィアの緑宝石の双眸から目を逸らすことなく拒絶した。 それは他者の思惑に屈することを嫌う少女なりの意思表示であった。 「そう言うと思っていたわ。 でも、私は我慢強いから大丈夫。 だって、今までずっと…この瞬間を待ち侘びていたのだから……」 謎掛けのように語尾を濁すと、ソフィアは気にした素振りもなく微笑んだ。 その言葉通りソフィアは見掛けによらず豪胆な性格だった。 彼女は日ごとシャルロットの私室を訪れると、乳母のサリマと共に身の回りの世話を献身的に始めたのだ。 その直向なまでに尽瘁する姿は、傍目から見ても常軌を逸していた。 それから間も無くして、ソフィア・リュズレイは時を待ったかのように父ルクサーの後妻に迎えられた。 正妻を亡くし、その喪が明けきらぬ内に後妻を娶ったことは、国内でも様々な物議を醸した。 しかし、アダマストル公国が聖女の血脈を受け継ぐ女帝制であることを考慮すれば、必要不可欠な処置とも解釈できた。 次代の女王候補であるシャルロットが成人するまでの間、王権を担える血脈者がルクサーと婚姻することが最も妥当な選択肢だったのである。 「お友達になる前に、お母さんになってしまったわね」 ソフィアは冗談めかしてそう言った。 義母となった彼女は一層深い愛情をシャルロットへと注いだ。 ソフィアは籠姫の戒律を破ることすら厭わずに、少女の元へと頻繁に脚を運んでいた。 気づくと、シャルロットは苛立ちと戸惑いをソフィアという固体に対して抱くようになっていた。 だが、少女は無関心を貫くことでそれをやり過ごそうと考えた。 そうすることで、大概の人間の心は離れていくことを少女は知っていたのだ。 だが、ソフィアは少女に何も求めはしなかった。 「(どうして…)」 そんなソフィアの心裡をシャルロットは計りかねた。 まるで腫れ物を扱うように接してくる血族たち。 忌避と畏敬の入り混じった視線を投掛けてくる王侯貴族や高位聖職者達。 煌びやかに彩られた虚構に満ちた少女の世界で、ソフィアという名の異物は無視できないものとなっていた。 「なんで…なんで……ここに居るの? 私は友達にもならないし…、あなたを母親だとも思わない!!」 それは、シャルロットが示した初めての激情だった。 少女はソフィアへと向けた視線を支えきれなくなると、その場にへたり込み大声で泣き始めてしまった。 「これ以上、私の世界に入ってこないでよ…」 ソフィアはシャルロットをその腕に抱え込むと、少女の頬に手を添えて顔を上げさせた。 「それは違うわ。 アナタ自身が望まない限り、他の誰も、喩え神様だって…アナタの世界に入ることは適わない。 私を受け入れたくないのなら拒絶すればいいの。 でもね、アナタがどんなに拒んでも私の中にはシャルロットが居る。 それを変えることもまた、私以外の何者にも出来ない」 それは、壊れかけた心を守る為に少女自身が己に課した呪縛だった。 シャルロットが必死に隠し続けてきたモノの正体に、ソフィアは気づいているようだった。 「怖かったの…」 シャルロットの目から大粒の涙が零れ落ちる。 少女はそれを拭おうともせずに、震える声で話し続ける。 「私は私が嫌いだった…、認めたくなかった……。 だから、だから―――」 シャルロットが恐れていたのは、他者に心を開くことではなかった。 誰よりも何よりもシャルロットが嫌悪する存在―――それは、自分自身であった。 そんな自分を受け入れてくれる人間が現れることを少女は何よりも恐れていたのだ。 それは忌避すべき己という存在が世界に確立されることの証明でもあったからである。 「シャルロット。 アナタがアナタであることを否定する必要はないのよ。 喩えアナタが聖女であろうとなかろうと、私の中のシャルロットは生まれた時からたった一人しかいないのだから」 ソフィアという存在は灰色に塗り込められた少女の心に差した初めての色彩だった。 ともすれば、彼女の笑顔の中に求めて已まなかった母親の姿を重ね見ていただけなのかもしれない。 だが、理由はどうあれ、シャルロットの時間はこの時から動きだしたのだった。 ・ ・ ・ 寝台に横たわったまま、ぼんやりと窓の向こう側に視線を延ばすシャルロット。 そこには澄み切った青い空が続いていた。 「(いつからだろう、こうやって見上げる空が美しいと感じられるようになったのは……)」 シャルロットはそんなことを漠然と考えていた。 幼き日に仰ぎ見た狭く切り取られた空と、今現在、視界を占めるこの空は、一体何が違ったのだろうか? そんな疑問がシャルロットの胸中を占めていた。 「そうだ…。 私に大切な人が出来る度に、ただ無機質だった周囲の風景に、様々な思い出が刻まれたいった。 お義母様や婆やの中に在る自分自身を認めた時、あの風変わりな妹たちが突然に押しかけて来た時も、爺や先生に出会ったことも―――そしてフィーナ……少し頑固で恥ずかしがり屋な彼女は、私にとってはじめての友達だった」 己の弱さすら甘受出来ずに逃げ続けていた幼き日の自分に、シャルロットは今更戻るわけにはいかなかった。 「(お義母様のお言葉通りかもしれない…。 私は何を恐れていたのだろう。 事が公になれば、全てが壊れてしまうと思っていた。 大切な人達も、帰る場所も、何もかも失ってしまうかもしれないと―――でも、違う。 私はフィーナを信じている。 無実たる得る証拠なんてなくても、私は私自身の意志で行動すればいいのだから)」 シャルロットの双眸には揺るぎない決意の色が宿っていた。 ==============================================今回は、普段書いている『心のフィルター』の延長線上にあるような話です。巧く纏めようと努めましたが、自分自身の文章力の到らなさにもどかしい限りです。※推敲はフリーページ内で行います
2010/02/28

※文字数制限値の半角10000文字を超えてしまったので2つに分けます『†Princesse du sang†』 光ノ章 2-01【籠姫】光ノ章 2-01【籠姫】―シャルロットSIDE― 「聖女に一服盛るとは、老卿も罰当りだな」 ヴィルヘルムの命で意識を失ったシャルロットを隣室の寝台へと運ぶエドゥアルト。 彼は半ば呆気にとられながらも、師の大逸れた油断のならなさに感嘆の息を漏らす。 どうやら、差し出された香草茶に睡眠薬が混入していたらしく、先程まで息巻いていたシャルロットは夢の中である。 「おっと…では、良い眠りを」 シャルロットを寝台に横たえたエドゥアルトが、傍らで控えていた侍女に押し出されるように退出する。 老卿の入れ知恵か、この繊細な美貌を持つ青年が、聖宮の女官との浮名を馳せる色情狂だと聞き及んでいるのだろう。 エドゥアルトにしてみれば、ここまで運ばせておいてそれはないだろうと憤慨したくもなるが、自身の不徳が招いた結果なので従わざるを得ない。 もっとも、彼にも彼なりの言分があり、「色恋沙汰の方が懇意に近づいてくるのだから、それを拒む理由はない」などと持論を展開する。 「俺も大概に信用がないらしい」 僅かに苦笑したエドゥアルトが不意に真顔に戻る。 「(だが、幸か不幸か…。 あの如何にも頼りなげな姫君が、聖女の名を冠するに真に相応しい人物であるのなら、長い付き合いになるかもしれんな)」 予言めいた言葉を心中に思い描くと、エドゥアルトは鼻歌を口ずさみながらその場を後にした。 ・ ・ ・ シャルロットは深い眠りの中にいた。 ―――貴女は聖女ではない…… フォン=バレル3世の言葉。 胸の中に生まれた小さな棘が少女を苛む。 記憶に染み付いた闇はシャルロットの心底まで浸透して居座り続けていた。 『私はいったい何者なのだろう?』 籠姫として忌避と同情の眼差しに晒される日々。 聖女として教義や信仰の象徴で在り続けなければならない重荷は、少女を呪縛する血鎖であった。 だが、それは同時に少女の全てでもあったのだ。 己が聖女ではないという事実は、少女が背負わざるを得なかった過去の全てを否定するものだった。 『ソフィアお義母様…』 壊れかけた心が苦痛と恐怖に軋みながら過去の記憶と融合していく。 シャルロットに自分を生んだとされるエレシアム・リュズレイの記憶は殆ど無い。 幼少期に幾度か形式的な対面を果たしてはいたが、母親は籠姫として後宮に幽閉された我が子に進んで会おうとはしなかったのである。 赤子時代のシャルロットの世話は乳母のサリマが務め、他の親族は聖女の名を継ぐ第一嫡女に近づくことさえ許されなかった。 幼い籠姫は、周囲の愛情から隔絶された空間にひとり取り残されていた。 そして、閉塞した後宮での生活が八年目に達したある日、母親であったエレシアムの死がシャルロットへと伝えられる。 「そう」 それが母親の死に直面した八歳の少女が遺した唯一の言葉だった。 それ以上でもそれ以下でもない。 シャルロットにとって、エレシアムの存在とはそういったものであった。 だが程なくして、心を閉ざし周囲の全てを拒絶していた少女の前に、ひとりの女性が現れる。 「…っ!?」 幼いシャルロットの双眸が僅かに見開かれる。 驚嘆すべきか、その人物はシャルロットの記憶に残る母親の姿と瓜二つだった。 「誰?」 だが、シャルロットは直に理解した。 その女性がエレシアムとは別人であることを―――そこには決定的な差異が見て取れたからだ。 少女の記憶の中の母親は決して笑うことは無い。 しかし、目の前の女性はまだどこか少女を思わせる穏やかな笑みを浮かべていたのだった。 ==============================================※内容を考慮した上で今回の部分を【籠姫】として、シャルロット編0-00【籠姫】を【聖女】に話名変更致しました。※推敲はフリーページ内で行います
2010/02/28

冬場になると、一ヶ月の紅茶缶消費量が10缶を超える今日この頃。最近はFauchonの紅茶を好んで飲んでいるのですが、種類を揃えておくと嵩張るので置き場所に困ります。パリのマドレーヌ広場にある本店にも一度は入ってみたいですね。・・・勿論、お菓子目当てですが…(*゚□゚)ノ☆)`ν゚)・;'.、クハッ!!
2010/02/23

※続きです『†Princesse du sang†』 月ノ章 2-08【転換】月ノ章 2-08【転換】―ミュークSIDE― 僅かに頬を痙攣させると、悲壮感に溢れた声でそれだけを口にするレムリア。 傍目にも少年の精神状態は悪化の一途をたどっていた。 「よかろう。 話してみるのじゃ」 ミュークが促すように咳払いをひとつすると、大袈裟すぎる身振り手振りと多少の脚色を加え、事の顛末を事細かに話しだすレムリア。 その間、ミュークは両眼を閉じてレムリアの話に聞き入っている。 「―――と、いうわけで、ボクは不可抗力だと思うわけです」 最期はお決まりの自己弁護で締め括るレムリア。 ミュークは悪魔的に薄く微笑すると、 「畢竟、レムには些かも責任がないと申すわけじゃな。 しかし、それではワチキの見解とは一線を隔すことになる」 ミュークはわざとらしく首を傾けて思案顔である。 だが、ほどなく是名案とばかりに両手を一拍させる。 「では、見解の整合性を計るためにも、これまでの経緯を客観的に纏めてみよう」 「は、はい」 逃げ道など最初から用意されている訳もなく、レムリアが震えながら頷く。 「当初、ワチキ等は“とある愚か者”の誤情報に惑わされて、居もしない聖女を追って教会船に密航する羽目になった。 危うく無駄足になりかけたが、ワチキの才知溢れる素晴らしい気転でそれを回避。 その場は、聖女の妹君であるプルミエール嬢の身柄を交渉役として押えることで計略的体裁を保つ。 その後、大灯台の一件を経て自由都市へと向うが、それまでの無理が祟りワチキが倒れてしまう。 これ幸いと本性を現した“とある愚か者”はワチキから無断で財布を掻っ払い豪遊の限りを尽くす。 おまけに、大事な人質―――いや、交渉役であるプルミエール嬢を賭博場などに連れ出した挙句、こともあろうに全財産を失ったと?」 ミュークは足元で蠢く柔らかい物体を足先で小突き回しながら尋ねる。 「あ、あの付かぬ事をお伺いしますが、その“とある愚か者”ってボクのことを指してます?」 頬を引き攣らせたレムリアが婉曲に意見する。 真正面から抗議すれば藪蛇になることは理解しているようだ。 金銭問題に関しては責任転嫁も可能だが、聖女を拐かす千載一遇の機会を失ったのは、明らかにレムリアの落度である。 「ワチキの口から直にそれを聞きたいのかや?」 取り合うつもりはないらしく更なる疑問詞で返すミューク。 「うっ…。 そもそもボクは聖女の誘拐なんて無謀なことは最初から反対だったのに……」 元々、ミュークが独断で引き受けた話であり、責任の一端は彼女にもある。 しかし、明確な過失が浮き彫りになっている分、形勢はレムリアに不利であった。 「……ミュークさま、もしかしてボクのこと嫌いですか?」 苦し紛れにミュークの良心へと訴えかけるレムリア。 「ワチキの口から直にそれを聞きたいのかや?」 まるで、機械人形のように冷たい言葉の羅列が反復された。 どうやら、彼女の良心はその心底に引き篭もっているらしく、会う前に門前払いをされたようだ。 「申し訳ありません……全部ボクのせいです」 遂に心が折れたレムリア。 そもそも情報を精査するまでもなく最初から勝機など無かったのである。 「まぁ、過ぎてしまったことを兎や角云っても始まらぬし宥恕しよう。 それでは、報告の続きじゃ。 他になにか変わったことはなかったかや?」 思いの外、呆気なく話題を掏り替えるミューク。 どうやらこの馴れ合いを楽しんでいただけらしい。 「それなら最初から許してくれればいいのに……」 レムリアは恨みがましい目でミュークを睨む。 「ん、何か云ったかや?」 「なんでもありません。 それでは報告を続けます」 拗ねたように口先を尖らせてはいるが、基本は従順なレムリアだった。 「幾つかミュークさまのお耳に入れておきたい噂があります。 賭博場での会話で、真意の程は定かではありませんが、宜しいでしょうか?」 「レムが全財産を掏られた賭博場とな?」 性懲りも無く件の話題を蒸し返すところがミュークの悪癖である。 「うっ…」 思わぬ不意打ちを受けて絶句するレムリア。 「冗談じゃ。 して、それはどのような風聞じゃ?」 「アレシャイムで教皇フォン=バレル3世が暗殺されたそうです。 そして、その首謀者は聖アルジャベータ騎士団の団長であると実しやかに囁かれています」 レムリアから齎された情報はミュークの想像を遥かに超えたものであった。 「ほう、なかなかに聞き捨てならぬな」 人や金の集まる酒場や賭博場には思わぬ情報や儲け話が転がっていることがある。 なかでも各国の世情や政治的動向などは、傭兵稼業は勿論、交易商人にとっても、金相場や物価変動に直結する問題なので得難い情報だろう。 しかし、その大半は流言蜚語の類であり、真実を見抜く経験と千里眼がなければ痛い目をみるのが関の山である。 「(だが、この話に限っては信じてもよかろう)」 理由は簡単、噂はそれを信じるに足る理由付けがあって初めて成立する。 教皇の死などという大それた虚偽を流布しても、直に偽りだと見破られるだろう。 加えて噂を流した発信者に到っては、身元を特定されれば教会法で罰せられ兼ねない。 「それと、どちらかというとこちらのほうが大事だと思いますが……」 「まだ、何かあるのかや?」 レムリアが何処となく言い難そうに再度口を開く。 「教皇庁内で聖女シャルロットが行方不明となっているそうです―――って、うわ!?」 悲鳴を上げながら後退るレムリア。 ウネウネと常軌を逸した蠕動運動で迫り来る人影に気づいたからである。 「むががー!!」 ブチブチと繊維物が千切れるような音が室内に響き渡り、プルミエールに噛み切られた猿轡が床の上に落ちる。 「レムレム、そこに直りなさいです! シャル姉さまはどうなったのですか!?」 恐るべき咀嚼力を披露したプルミエールが、条件反射で逃げ回るレムリアを追い回す。 捕まったら、肉どころか骨まで噛み砕かれそうであった。 「(機は得難くして失い易しとは良く云ったものじゃな…)」 経済的困窮に加え、聖女が行方不明と思案投首な難題が山済みである。 どうやら、今後の指針を一から練り直す必要があるようだった。 ミュークは薄汚れた天井を仰ぎ深く長嘆した。 ==============================================展開的にも、そろそろ『シャルロット編』に戻る予定ですが、向こうは良くも悪くも真面目な登場人物ばかりなので固い話が続きそうです。※推敲はフリーページ内で行います
2010/02/22

※文字数制限値の半角10000文字を超えてしまったので2つに分けます『†Princesse du sang†』 月ノ章 2-08【転換】月ノ章 2-08【転換】―ミュークSIDE― 「やはり、レムが持っておったか」 レムリアが差し出した巾着の口紐を緩めて、その内側を弄るミューク。 彼女の足元には、荒縄でふん縛られた状態のプルミエールが転がされている。 「むがー…ぐがぃ…ぐぅぅ」 固く結んだ猿轡を噛み切らんばかりの恨みがましい唸り声が室内に木霊する。 ミュークはなるべく下を見ないように指頭に触れる小指ほどの実を数個摘み出すと、それを器用に弾いて口内に抛り込む。 「ふぅ…」 強く奥歯で噛み砕くと、口腔内に甘い酸味と鉄の味が広がり、彼女の身体を苛む渇きの衝動が嘘のように退いていった。 「それで、レム。 病躯のワチキを蔑ろにして今まで何処に行っておった?」 落ち着きを取り戻したミュークは、言葉に多少の棘を含ませて尋ねる。 「え~と…、信じてもらえないかもしれませんが……。 夕刻までは、ここでプルミエール姫の監視をしていた筈なのですが…」 己の言葉に確信が持てないのか、レムリアの口調は歯切れが悪い。 「そ、その、気づいたらゴミ捨て場で寝ていて…。 その間の記憶が一切ないんです」 俄かには信じ難い奇異な話である。 「確かルムも一緒に居た筈なのですが、何か知ってる?」 レムリアは猶予うような口調でミュークの肩越しに佇む双子の片割れに訊く。 「拒絶する」 一拍遅れて室内に響いたルムファムの声。 その声に真っ先に反応したのは、無慈悲に質疑を取り下げられたレムリアではなくミュークであった。 「……ルム、いつからそこにおった?」 ぼやくような口調で嘯きつつ背後を振り返るミューク。 部屋の片隅にルムファムの姿を視とめ半ば呆れたように苦笑する。 「ずっと」 ルムファムから返る言葉は常に端的である。 「そ、そうか……」 この無闇矢鱈に気配を絶つ“一人幽鬼ごっこ”をいい加減に辞めさせないと、その内、身近な者が心臓発作で本物の幽鬼になり兼ねない。 「突発性の夢中遊行症かなにかなのかな…」 ひとり暗澹たる面持ちで眉根を曇らせるレムリア。 「ふむ、身体の異変など思い至る節はないのかや?」 仕方なくこの安手な推理劇に付き合うミューク。 「そういえば、何処かにぶつけたのか、頭に大きな瘤がありました。 やっぱり、気味が悪いですよね」 レムリアが後頭部を擦りながら答える。 「(なるほどの…)」 半眼になったミュークが室内を見渡すと、容疑者と思しき人物と刹那的に視線が交差する。 が、それも一瞬で、避けるように明後日の方向へと顔が逸れた。 あからさま過ぎるルムファムの反応である。 「(状況証拠だけで真実に到りそうなものであるが、大方、その無自覚さ故の惨事なのであろうな)」 早々にレムリアの失言が齎した悪因悪果だと決め付けるミューク。 もっとも、相手の記憶が飛ぶ程、問答無用で撲りつけるルムファムの豪胆振りにも少なからず問題はある。 「(雉も鳴かずば撃たれまいに…)」 などと、心裡で達観したミュークだが結論を口には出さなかった。 そのほうが見ていて面白いからである。 ちなみにこの場合、“雉”がレムリアで“猟師”はルムファムである。 「ところで、巾着のなかにあった金嚢のことなのじゃが。 どのような不吉の前触れか、中身が空じゃ。 何か申し開きしたいことがあるなら聞いてやってもよいぞ」 当事者間の問題(人為的な怪異)はさて置き、ミュークは己も実害を被りそうな題材に話を切り替えた。 「うっ…」 見る見る内にレムリアの顔中に汗の玉が浮き出る。 「あ、あの…怒らないで聞いていただけますか?」 ==============================================※推敲はフリーページ内で行います
2010/02/22
同様の描写が連続していた部分の細部改稿を含め下記の推敲を致しました。============================================================月ノ章_02-07【渇血】============================================================【改稿・加筆/中庭の描写と小動物】 頸部に朱線の痕を残したまま、ミュークは夢遊病者のように覚束ない所作で立ち上がる。 そのまま硝子の破れた明り窓から差し込む月明かりを避けながら、暗い歩廊へと踏み出す。 腐植土の堆積した廃れた中庭を囲む長い廻廊を無言で進むミューク。 一定の間隔で、剥きだしの内壁に穿たれた暗闇の奥には、調度や飾りのない朽ち果てた部屋が続いていた。 「ん?」 その時、屍族の鋭敏な聴覚が、常人なら聞き逃してしまう程の微かな音を聞き咎める。 その音に誘われるように歩みを速めると一枚の扉の前に辿り着く。↓★推敲★↓ 頸部に朱線の痕を残したまま、ミュークは夢遊病者のように覚束ない所作で立ち上がる。 そのまま硝子の破れた明り窓から差し込む月明かりを避けながら、暗い歩廊へと踏み出す。 「ほう…」 ミュークの目前には腐植土の堆積する廃れた中庭が広がっており、それを囲むように長い廻廊が張り巡らされていた。 剥きだしの内壁に穿たれた暗闇の奥には、調度や飾りのない朽ち果てた部屋が続いている。 「(かなりの規模を誇る建築らしいが、打ち捨てられて久しいらし―――)」 唐突にその思考を打ち切るミューク。 ミュークの視界の片隅、中庭の木立と枯葉の間を縫うように小さな影が跳ね上がったのだ。 一瞬の出来事だった為に、明確な種の判別まではつかなかったが、それは明らかに小動物の類であった。 「……低劣な畜生の生血でも渇きを癒す手助けにはなろうが、捕えるにはそれ以上に骨が折れそうじゃな。 阿呆らしい」 だが、あっさりと自身の意見を却下する。 それに費やされる労力と齎される報酬との均衡が著しく崩壊していたのだ。 しかし、獣の気配を察知する為に、五感を張り詰めていたことが思わぬ幸運を呼び込むことになる。 「ん?」 屍族の鋭敏な聴覚が、常人なら聞き逃してしまう程の微かな音を聞き咎めたのだ。 その音に誘われるように、石段を登り、更に歩みを進めると一枚の扉の前に辿り着く。============================================================【改稿/ミューク台詞】 「万事巧く成したならば、こういう無茶苦茶な手合いをワチキ好みに調教するのも楽しみじゃ」↓★推敲★↓ 「万事巧く成したならば、こういう無茶苦茶な手合いをワチキ好みに調教するのも一興か」============================================================【改稿/意識を取り戻すプルミエールの描写】 合わなかった目の焦点が急速に定まって、自分を押し倒す者の正体を知るプルミエール。↓★推敲★↓ 合わなかった目の焦点が急速に定まって、自分を覗き込むように見下ろす者の正体を知るプルミエール。============================================================※その他、誤字脱字の訂正、細かい形容などを追加致しました。
2010/02/17

※ちょっぴり「えっちぃ」描写があります。一般小説にも掲載される程度の描写に止めていますが、嫌悪感を抱く恐れのある方はスルーして頂ければ幸いです。『†Princesse du sang†』 月ノ章 2-07【血渇】月ノ章 2-07【血渇】―ミュークSIDE― ゆっくりとその双眸を開くミューク。 早鐘を打つ心臓の鼓動が、この目覚めが現実世界のものであると裏付けていた。 「(なぜ、今更このような夢を…)」 滲んでいた視界が次第に鮮明になると、無機質な灰色の天井が映りこむ。 幌を張っただけの簡易寝台から身を起こしたミュークは、注意深く周囲の状況を確認する。 「ここは―――」 そう声に出した瞬間、その身体を九の字に折るミューク。 喉元に伸びた手指が狂ったように細い首筋を掻き毟っている。 「っ…っう……喉が…灼ける……」 魂の最奥から侵食する血の渇望に、思考の持続が儘ならなかった。 屍族が有する吸血本能は、その種が生来備える種族的な特徴である。 人族で例えるなら“食欲”と“色欲”を併せ持った根源的欲求である。 強靭な肉体と精神を誇る屍族であっても、それに打ち勝つ術を見出した者は未だいない。 「ちと、力を使い過ぎたようじゃな……」 彼女は修道衣の腰帯に手を伸ばすが、そこに求めた感触は感じられなかった。 金嚢と共にプリウスの実を入れた巾着が無くなっていたのだ。 「(まぁ、最悪の場合、手短に血液の提供者は幾らでもおるしの…)」 暫し、呆然としたが、心中で物騒な了得をするミューク。 それに、巾着に関しては、意識を失ったミュークに代わりにレムリアが預かっていると考えるのが妥当である。 どちらにしても、今は双子と合流して、身体と精神を蝕む渇きの衝動から解放されることが焦眉の急であった。 「それにしても、病人のワチキを置き去りにするとは…どういう了見じゃ」 頸部に朱線の痕を残したまま、ミュークは夢遊病者のように覚束ない所作で立ち上がる。 そのまま硝子の破れた明り窓から差し込む月明かりを避けながら、暗い歩廊へと踏み出す。 腐植土の堆積した廃れた中庭を囲む長い廻廊を無言で進むミューク。 一定の間隔で、剥きだしの内壁に穿たれた暗闇の奥には、調度や飾りのない朽ち果てた部屋が続いていた。 「ん?」 その時、屍族の鋭敏な聴覚が、常人なら聞き逃してしまう程の微かな音を聞き咎める。 その音に誘われるように歩みを速めると一枚の扉の前に辿り着く。 「誰かいるのかや?」 問い掛けるが、扉の向こう側からの返答はない。 再度、尋ねる。 しかし、ミュークの誰何は廃屋を包む静謐な空気に虚しく溶ける。 焦れたミュークは赤茶けた金属性の取っ手を捻り、それを躊躇なく内側へと押し開く。 室内から零れた幽光が、回廊の石畳に伸びていく。 「ふむ」 部屋の中央には樫木の卓子があり、淡い橙色の光を燈す青銅の角灯が据え置かれていた。 更に見渡すとミュークの抱く幾つかの疑問が解消される。 ひとつは先程の音に関して、奥壁に造りつけの暖炉があり、薪の爆ぜる音韻に合わせ炎が踊っている。 そして、もうひとつは――― 「睡眠は子供の甲斐性だが、育つのが悪態ばかりというのは如何なものじゃろうな」 暖炉の向かい側の長椅子の上に、惰眠を貪るプルミエールの姿を見咎め嘆息するミューク。 足元の敷布の上には聖なる十字が刺繍された白い法衣が無造作に脱ぎ捨てられている。 「このような廃屋に身を隠しておるとは、ワチキが意識を失っている間に、教会船での一件に手が廻ったのやもしれぬな」 あらぬ方向に勘違いを展開しつつあるミュークだが、賭博で大負けした挙句、一文無しになって宿を追い出されたなどと、常人に想像出来る範疇ではない。 どちらにしても、プルミエールが五体満足で傍らに留まっている点から推測しても、双子が無事であることは証明されていた。 レムリア独りでは、この人族の少女を御せるとは到底思えない。 かといって、ルムファムだけでは別の意味で無事でない可能性が高い。 些か無用心ではあるが何か理由があって出払っているとの帰結に至るミュークだった。 「それにしても…」 プルミエールの処女雪の肌にミュークの視線が吸い込まれる。 「万事巧く成したならば、こういう無茶苦茶な手合いをワチキ好みに調教するのも楽しみじゃ」 ミュークは少女の頬に流れた金色のひと房を指先で掬い取ると、僅かに身を屈め、くんくんと鼻を鳴らす。 「この鼻梁をくすぐる甘く芳しい香り…堪らぬわ」 ミュークの紅眼に好色な光が宿る。 熱い息がプルミエールの顔にかかり、血よりも赤い口唇が湧き上がる欲求を抑えきれないように少女の首元へと移動する。 「ぅ…ん?」 上から覆い被さる気配を敏感に察知したプルミエールの意識が半ば覚醒する。 「少しぐらい味見をしても罰はあたらぬじゃろうて……」 しかし、ミュークに自重する気配はない。 あくまで己の欲望に殉ずる腹積りらしい。 通常であれば強靭な自制心でそれらを押さえ込む場面も、様々な要因が重なり合って理性のタガが外れてしまっているようだ。 「聖女アルジャベータの血脈。 一度、味わってみたいと思っておった♪」 ミュークはごくりと唾を飲み込むと、少女の首筋を毒々しいくらい赤い舌が舐めるように蠢く。 どす黒い渇望が身裡より生まれ、それはミュークの精神を蝕んでいた。 「にゃにゅ!?」 肌を這いずる湿った感触に、プルミエールの両眼が驚いたように開く。 慌てて跳ね起きようとする少女の身体を、ミュークの細くしなやかな指先が封じる。 上掛けが滑り落ち、肌着を身に着けていなかったプルミエールの上半身が露になる。 まだ幼い膨らみが外気に晒されていた。 「…っ、痛いです!」 プルミエールの顔が苦痛にゆがむ。 ミュークの爪が喰い込んだ少女の肌に血が滲んでいた。 「無理矢理というのも、これはこれでそそるものがある」 合わなかった目の焦点が急速に定まって、自分を押し倒す者の正体を知るプルミエール。 「みゅーみゅー!? なにするですかっ!!」 状況設定に興奮するように歪んだ喜びを体現するミュークと、理解不能な現状に慌てふためくプルミエール。 「歳相応と云えなくもないが、随分と貧相な乳肉じゃな」 ミュークは腕の中で滅茶苦茶に暴れる小さな肢体を適度に泳がせ、挑発的に震える発育途上の隆起を観察する。 その相貌は屍族特有の退廃的な妖艶さに満ちていた。 「差し詰め洗濯板といったところかの。 どうじゃ、ワチキが揉んで大きくして―――」 「ムカ!! 誰が洗濯板ですか!?」 言うが早いか跳ね上がったプルミエールの右膝がミュークの鳩尾に突き刺さる。 激痛に堪えかねるように、食いしばった奥歯の間から苦悶の息を洩らすミューク。 「ぐぅ……この、じゃじゃ馬娘め。 お、大人しく…手篭めにされて…おれば……よいものを……」 思わぬ反撃にミュークの拘束が緩む。 その僅かな隙を見逃さず束縛から逃れ出るプルミエール。 「ヘンタイ牛チチお化けめっ! プルがせいばいしてあげるです!!」 両腕を激しく振って、湧き上がる怒気を体現するプルミエール。 逆恨みや見当違いなど、余計な不純物が付与しない稀有な憤懣であった。 「だ、誰がヘンタイじゃ!? ワチキは屍族にしては常識人だと屍族世界では有名な筈じゃぞ…たぶん」 こちらは妙な形容詞を上乗せされ、大人気なく反論するミューク。 その表情からは、先程までの毒気が完全に削ぎ落ちて、いつもの調子に戻っていた。 最も、屍族の一般常識が人族の聖人君主像からかけ離れていることは疑う余地もない。 そして、双方共にそんな状態であるから、第三者が室内に侵入していることにも全く気づかない。 「そんなに有名なのですか? …ていうか、ミュークさま、意識を取り戻されたのですね♪」 いつの間にやら現れたレムリアが、何処となく複雑な表情でミュークの復帰を喜ぶ。 「それで、一体何をなさっているのですか? ああ…別に言いたくないなら無理強いはしません。 触らぬ神に祟りなしといいますが、放っておいても巻き込まれそうなので、保険として聞いてみただけなので」 相も変わらず一言多かった。 ==============================================全く意味がなさそうな展開ですが、ミュークがプルミエールの血を求めるという描写は、それなりに意味がある行為なので「えっちぃ」でも許してたもれ。※推敲はフリーページ内で行います
2010/02/15
スロットとかまったく興味ないのに、悪魔城ドラキュラ アンジェラVerの実機を衝動買いしそうになった今日この頃。それもこれも、お金に目が眩み、版権を切り売りしたコ○ミ様が悪いのです!(違鳥山 明先生的に云えば、「自分の子供を賭博屋に売るとか、超サイアクー(*´・ω・)(・ω・`*)ネー♪」な所業なのです!!これは云うなればこんな感じだと思います(`・ω・´)・・・おっとう(作者)「すまんのぉ…ワシの身体が病弱なばかりに…ゴホ、ゴホッ」むすめ(作品)「おっとさん、寝ていなきゃダメじゃない」おっとう「お前には苦労をかけてばかりで…」むすめ「それは言わない約束でしょ。 それに家のことはアタシがなんとかするから心配しないで」―――ガタン越後屋(賭博屋)「ちょっと、お邪魔するよ」おっとう「また、来たのか。 あの話なら断った筈だ! 出て行ってくれ!!」越後屋「まぁ、待ちなさい。 話はアンタにではなく、娘さんの方にあるのさ。 どうだい、娘さん、ワタシに連いて来れば、おっとさんの薬代ぐらいすぐに稼げますよ」むすめ「ほ、本当ですか?」おっとう「ダ、ダメだワシのことは―――」むすめ「アタシ行きます!!」越後屋「こんな孝行娘を持ってアンタ幸せ者だ。 それじゃ、この薬代と引き換えに、娘さんは此方で預からせてもらうよ」バタン…・・・と、いった薄幸萌え展開を妄想しましたが、そもそもコ○ミ様のグループ内には、パチンコ・パチスロ機器製造会社があるわけで、ここは、【越後屋】のところを【叔父さん】に変更して、血族間で繰り広げられる3割増しの背徳感を楽し… (*゚□゚)ノ☆)`ν゚)・;'.、クハッ!!
2010/02/09

『†Princesse du sang†』 月ノ章 2-06【幻影】月ノ章 2-06【幻影】―ミュークSIDE― 黒、黒、黒… 全てが漆黒に塗り込められた始原の闇。 自分自身が目を開けているのかさえ定かではない。 何処を見渡しても闇のみが蠢く虚無の世界。 ミュークの意識は常闇の一部に溶け合うように微睡んでいた。 ―――…カチ……カチ 何かを感じた。 『……音?』 ―――カチカチカチ それは、一定の間隔で音階を刻み続ける。 ミュークは脳内に反響するその音を頼りに、自分の存在を知覚していた。 ―――…カチカチ …… ―――……さま …………? 「ぅ……ん?」 微かに身じろぎをして、ひとりの少女が目を覚ました。 天蓋付きの寝台から身を起こす少女。 片手で紗幕を払うと、ぼんやりと濁った紅眼だけを動かし、瀟洒な調度品が並ぶ室内を見渡している。 「ミュークお嬢様」 少女の虚ろな視線が、足元で傅く人物へと落ちる。 声の主は、黒髪を肩口で綺麗に切り揃え、屍族特有の青白い肌に前掛け型の仕事着を纏っていた。 僅かな逡巡の後、そのうら若い娘が、この古城に傅いている下級屍族の使用人であることを思い出す。 「お身体の具合は如何ですか?」 先日、母親の提示した条件を呑み、二十二家に伝わる夜を継承した少女の身体は、数日の時を経ても尚極度の疲労を訴えていた。 「案ずるなや…多少、気色は優れぬがそれだけじゃ」 その言葉通り額に掛かる前髪を気怠げにかき上げる少女。 「あ、あの…、アルフォンヌさまがお呼びになっておられます」 召使の娘は、少女の紅眼が放つ排他的な翳に怯えるように身を震わせた。 加えて、言付けの内容が主人の機嫌を損ねる可能性をよく理解しているのだろう。 「あの女がかや? どうせまた聞くに堪えない雑音の類じゃろう」 少女は不機嫌そうに鼻を鳴らすと、一糸纏わぬ姿で大理石の露台へと歩み出る。 腰まで届く長い栗色の髪が吹き寄せる風に散り散りに乱されるが、気にする素振りもない。 「(人族の祝祭に、なぜ屍族であるワチキが参列せねばならぬじゃ…)」 アルフォンヌの抱く所懐は聞くまでもない。 近日、王都で開催される記念祭への参加を強要する腹積りであろうことは、少女にも容易に推量できた。 「ワチキは愚劣で低脳な人間共と馴れ合うつもりは無い、とでも―――いや、まて」 少女は己の心裡に蟠る不快感を吐き捨てようとして、ふと思い止まる。 まるで、悪戯を思い付いた子供のように、その血色の口唇がゆっくりと吊り上がる。 「ワチキも王国の禄を喰み、特権を享けた身であるからな。 遅れるが王都には必ず参上すると、あの女には伝えておけ」 先程までの不服気な調子は完全に消失し、柔和な笑顔で少女は振り返る。 紅と蒼、天上に輝く双月を背後に、その紅眼は危険な燐光を宿していた。 ・ ・ ・ 『愚かな…』 血を吐くような思いで過去の幻影を見下ろすミューク。 だが、そんな感慨も一瞬―――再び意識が闇と混濁する。 ・ ・ ・ ―――カチカチカチ ・ ・ ・ ―――…カチカチ 「……弱さとは悪じゃ」 聞きなれた声に呼び起こされるように、ミュークの意識が“少女の世界”へと接触する。 そこは人族最古の王国ヤガ=カルプフェルト。 雷鳴が乱舞する曇天の下、屍族の少女は首都リューゲルトの中央街路を大股で歩いていた。 昨夜まで、建国記念祭を祝して華やかに彩られた街角は、今や血臭に満ち、降りしきる雨に叩かれた人血が、赤い血飛沫をあげている。 「ふん」 少女の冷たい双眸にも血反吐と嘔吐物を撒き散らしながら、断末魔の苦悶に喘ぐ人族の姿が複数映り込んでいる。 それは指物、地上に再現された地獄絵図とでも例えるべきか。 「(使い捨ての玩具程度と概算しておったが、あの男―――ナシュードといったか……思わぬ拾い物だったようじゃな)」 驚くべきことに、少女にとってこの凄惨な光景は、ただの予定調和でしかない。 惨状を鑑みるに、ナシュードの計画は滞りなく遂行されているのだろう。 「ふむ、これは赤砂蜥蜴の毒か……」 其処彼処で朽ち果てた遺体の状況から少女はそう判断した。 赤砂蜥蜴の毒は即効性の致死毒ではない。 宿主の体内に毒巣を生成後、内側から細胞を枯死させる寄生毒素である。 「(大方、都市の水瓶である地下貯水池に、件の毒が投げ込まれたのだろう)」 水道橋によって齎された新鮮な水は、無味無臭の毒水となり、地下水路を通じて街中に運ばれた。 少女の明快な頭脳は、ひと目で正鵠に近い所感を導き出す。 「王位を簒奪された前国王の息子らしいが、人の世の宿業とは螺旋の如く巡るらしい」 少女は鮮血が齎す高揚感に突き動かされるように高らかに哄笑を放っていた。 ・ ・ ・ そこで、再びミュークの意識が少女のそれと切り離される。 『ナシュード…』 その名を忘れる筈も無い。 人族を虫けら同然に捉えていたミュークにとって、初めて興味を抱いた人間の固体がナシュードだった。 あの日、ミュークはウィズイッドの居城の周辺に広がる古代樹林で、今にも朽ち果てようとしていた人族の青年を拾った。 それは、彼女にとって、傷ついた小動物に対し一時の保護欲を抱いたに過ぎない小事だった。 故に、男の世話を使用人たちに下名したまま、その存在も程なく失念してしまう。 数ヵ月後、傷の癒えた男が請うてきた拝顔を容認したことも道楽の一環であった。 男はナシュードと名乗った。 その名にはミュークも聞き覚えがあった。 数年前、王宮で大規模な火災が起こり、その際、前国王オルフと共に、焼死したとされる一粒種の王太子と同名であったからである。 ナシュードの口から語られた真実は、不精と怠惰に時を重ねていた屍族にとって実に興味深いものだった。 ミュークは彼を傀儡として操り、人の世の混乱を存分に興じようと考えた。 それは、暇潰しの戯れ程度のものであったのだが、ナシュードの苛烈なまでの利己性は、ミュークの玩弄物として収まる器ではなかったのである。 ミュークはそれと知らずに、ナシュードの裡に眠る“野心”という名の竜に、天を目指す翼を与えていたのだった。 『いや、今にして思えば、ナシュードという固体の裡に、己と同質の“何か”を見出したからやもしれぬ』 ナシュードはミュークも与り知らぬ謀計を着々と張り巡らせていた。 先ず、ナシュードは赤砂蜥蜴の猛毒を用いた大禍を引き起こし、王国に疑心暗鬼の楔を打ち込んだ。 その後、現政権内で虐げられていた父の側近だった者達との気脈を通じ、政治的術策を用いて王宮内の反乱分子を纏めあげた。 更に彼は国民共通の“仮想敵”を用意する。 屍族との共存を図るといった旧態依然たる社会体制に不満を持つ不穏分子を煽り、あの大量虐殺の全てを屍族の犯行と位置づけ、現王政から民意を遠ざけたのだ。 諸侯や市民の推戴を得たナシュードは屍族を討伐する救国の英雄―――正当なる王位継承者として新政府を確立した。 王権を担うに値する人間の殆どが毒害されていたこともあるが、ナシュードは自身の才覚でその全てを成し遂げていた。 その後、間も無くして、ミュークの母アルフォンヌ・ウィズイッドは屍族との共存を目指した旧穏健派の裏切りによって処刑されることになる。 しかし、アルフォンヌの生死に関しては、もうひとつ、真しやかな噂が囁かれていた。 それは、彼女の該博深遠な知識を惜しんだ者達の手により“首人”と化し生き永らえているといったものだ。 ミュークが事の成り行きを知り得たのは、ヤガ=カルプフェルトを逃げ延びた後であった。 『母上を死地へと追いやったのはワチキじゃ…』 ==============================================ナシュード君の細部設定を決めていなかったこともあり、前王の外戚だったり、許婚だったりと、様々なパターンで書き上げた挙句、最初に決めた息子verで落ち着きました。破棄した大量の文章も無駄にならないと信じたい今日この頃(涙※推敲はフリーページ内で行います
2010/02/07

※続きです。【さ行】◆ザクルフォルド[国・村]サリナハームとアルル=モア、両公国の国境線に建築された自由都市。 市場規模でこそ海都ナイトクランに劣るも、バールペオル中の物資が集束する大陸貿易の中心地である。◆サドクリア山脈[地理]サリナハーム北東部に連なる山岳。◆屍血姫-[シケツキ][敬称・異称]主人に忠誠と隷属とを誓う闇姫。その役割によって屍姫と血姫とに分類される。◆屍姫-[シキ][敬称・異称]『屍血姫』の片割れ。己の心臓を太古の秘法で絡めとり半恒久的な不死を得た闇姫。◆屍族-[シゾク][敬称・異称]ロードムアに於ける吸血鬼の総称。◆白十字教-[シロジュウジキョウ][宗派]メナディエル正教の分派。光の女神メナディルを崇め、原理主義を根底とする宗派。◆白の間[建築]大聖宮最大の白亜の広間。 様々な行事が執り行われる。◆祝福のキス[その他]メナディエル正教の信徒が聖女の手の甲に接吻する行為。◆水晶の塔[建築]水晶細工技術の粋を集めて作られた宝塔。教皇が女神メナディエルの信託を授かる聖域であり、教皇位を世襲するフォン家の人間以外の立ち入りを禁じられている。◆枢機卿会議[機関]教皇直属の最高諮問機関。◆聖アルジャベータ騎士団-[Guardian][騎士団]大陸最強の娘子軍。聖アルジャベータ公会の精神的象徴であり、殉ずるべき存在でもある“聖女”の血を守護することが血務。◆聖アルジャベータ公会[宗派]メナディエル正教の分派。女神の器でもあった神の子アルジェベータを神格化し、聖女の血を受け継ぐ一族を崇敬の対象とする宗派。◆聖剣戦争-[セイケンセンソウ][戦争]大凡300年前、バールペオル大陸(西大陸)に於いて、支配階級であった屍族に対し勃発した人族の反乱。◆聖伝承-[セイデンショウ][書物]厳しい閲覧制限が設けられた秘匿本。メナディエル正教に伝わる古き文献でもあり教義の一部でもある。◆聖堂騎士団-[セイドウキシダン][騎士団]教皇庁直属の正規兵。◆セナートル金貨[貨幣]古代王国ニクネベェンの空中都市でのみ鋳造・使用されていた幻の貨幣。◆セラディム[国・村]教皇庁の中心都市。 古色蒼然とした街並みを有し、メナディエル正教の聖地。 別名『神殿都市』。◆セラフィムガード[建築]アレシャイムに築かれた大聖宮。 空中庭園を有する。◆戦車の血統アルカナ-[Der Wagen][能力]夜の7番目の意志。軍神の力を宿し黒炎の車輪。継承者は紅黒炎と蒼黒炎、2つの炎を操る力を得る。◆船上司祭-[センジョウシサイ][地位]教会船の最高責任者。◆千年壺毒(蠱毒)-[センネンコドク][術式]オルカザード家に伝わる太古の秘法。◆ソウルガイス諸島群[地理]オルド湾に位置する諸島群。断崖に囲まれたルブリス島にはアレシャイム教皇領が在る。【た行】◆ダスト・ウィズ[商店]ダストシティでゴルダが経営する闇商店。◆ダストシティ(墜ちた街)[国・村]ナイトクランの裏の顔。 裏社会の闇商人や奴隷商人等の巣窟。公国の行政の対象から完全に切り離された無法地帯。◆脱環の儀[祭事・式典]聖誕祭の最終日に執り行われる祭事。成人した聖女を、聖霊環(別名【霊環アシュタリータ】)の拘束から解く儀式。◆タブリス森林[地理]アダマストル北東部に在る古森林帯。◆血姫-[チヒメ][敬称・異称]『屍血姫』の片割れ。その生涯を通じ主人の渇きを癒す呪約と共に不老を得た闇姫。◆テトラモルフ大灯台[建築]イプス岬に築かれた大灯台。嘗ては、大屍族グリムデンの根城であった。◆デュミナスカ半島[地理]広大なデルタ地帯で西大陸有数の穀倉地帯。【な行】◆ナイトクラン[国・村]アダマストル王国の首都。リザロス湾に面する大陸最大の貿易港を有し、異国情緒溢れる街並みを形成する。 別名『海の玄関口』。◆ナシード[建築]ナイトクラン旧表通りに建てられた旅亭。アダマストルに於けるミュークの根城。◆7枢機卿-[Sacred Cardinals][地位]教皇に次ぐ聖位。◆ニクネベェン[国・村]古代王国期の空中都市。◆日記[その他]この物語では主にアリエッタの習慣となっている。【は行】◆バールペオル大陸[地理]世界ロードムアの西に位置するこの物語の舞台。◆東大陸古来種の支配が根強く残る大地。◆不幸請負人[その他]この物語では主にレムリア・グリンハルトを指す。◆プリウスの実[動植物]味と酸味が豊富で人間の血液と酷似した含有成分を持ち、屍族の吸血欲求を満たす代用品。 多量の麻薬成分が含まれ摂取を控えねば廃人と化す。◆ベルムーテス大公国王国に対抗する為に、『ガザロフオード公国』・『アダマストル公国』・『アルルモア公国』・『サリナハーム公国』・『クロスメイデン公国』の5公国が形成した連合国家。 5公国同盟の総称であり実体は存在しない。【ま行】◆魔術師の血統アルカナ-[Der Magier][能力]夜の1番目の意志。その能力は不明。◆真名-[マナ][その他]夜の意志に与えられた真の名前。◆ミュミュ[動植物]西大陸では最もポピュラーな愛玩動物。ウサギ科に属する草食哺乳類であり、女神メナディエルがその遣いを創造した際に、神の使いとして生贄の器となったとされる神秘的な生物。人工繁殖されているものが殆どで、寿命は30年ほど。野生の個体は非常に珍しく未だ、その生態は謎に包まれている。◆メナディエル[神]法の最高神でもある光の女神。◆メナディエル正教[宗教]西大陸最大の神聖宗教。 女神メナディエルの教えを礎とする教義。【や行】◆ヤガ=カルプフェルト王国[国・村]バールペオル大陸で最も古き人族の王国。◆ヤ・フリファス・レディ[神]混沌神の一柱。 豊穣の女神でもある。◆雪瑠璃-[ユキルリ][動植物]紫色を帯びた濃い青色の背中に白い胸、橙色の脇腹の色彩が美しい小型の野鳥。 西大陸北東部の低山帯や亜高山帯にかけての山地や丘陵で繁殖する。【ら行】◆リエルローザン神教[宗教]混沌の一柱であるヤ・フリファス・レディと、その兄弟神を崇める多神教。力を持って行なうすべての行為に対しての平等を説いている。ヤガ=カルプフェルト王国の国教。◆リバート湖[地理]西大陸最大の古代湖。◆ルーンフォルテ家[人物・家名]宗教世界にも大きな影響力を持つアダマストルの名門貴族。◆ルルワイン[動植物]アルナ科に属する多年草。西大陸ではイプス岬周辺の塩湿地帯にのみ群棲し、その実は観賞用よりも、寧ろ食用に重宝されている。◆レベス湖[地理]アレシャイム教皇領に在る死湖。法の女神メナディエルと死の女神グラトリエルが相打った場所と伝えられる。◆レムギサロス大聖堂[建築]教皇庁に座す西大陸最大の聖堂。◆ロストワード[文字]古来種が遺した碑文。【わ行】【その他】
2010/02/02

用語集を作成致しました。自分自身の混乱防止も兼ねて、物語の序盤で登場した特殊な用語・造語を纏めました。9割方、本編中に登場している用語ですが、一部『†Curse of blood†』用語集から移植しております。※半角10000文字を超えたので2つに分けます。【あ行】◆アアル=セナートル[神]古き創造の神。◆アシュタリータ[武具]女神メナディルがこの世界に遺した3神具のひとつ。【聖霊環】とも呼ばれ、アルジャベータの遠き子孫でもあるリュズレイ家に代々伝わる秘宝。◆アセリエル大湿原[地理]サリナハーム南東部に広がる大陸最大の湿地帯で、古亀や沼地鹿などの小動物から大型の肉食獣までが分布する動植物の宝庫である。◆アタナシア[動植物]寄生植物。 詳細は不明。◆アダマストル公国[国・村]ベルムーテス大公国に属する一公国。デュミナスカ半島のつけね、サーリュクルト大河の河口に位置する大国。◆アメナディル号[乗り物]メナディエル正教の布教を目的とした教会船。◆アリグノートス[武具]女神メナディルがこの世界に遺した3神具のひとつ。魔を退ける聖鎧。◆アルジャベータ[人物・家名]聖剣戦争の折、神の器としてその身に女神メナディエルを降臨させ、邪悪を打ち払った聖女の名。◆アルジャベータ聖誕祭[祭事・式典]聖霊祭、収穫祭と並ぶメナディエル3大祭祀行事のひとつ。 聖女の聖誕節にあたる双影蝕の砌に教皇庁で執り行われる。◆アルジャベータの聖女[敬称・異称]アルジャベータの直系でもあるリュズレイの血筋でも、代々、第一嫡女(長女)にだけ受け継がれる資質。◆アルハバネ[国・村]サリナハーム公国内に広がる貧民窟。バルカー湾に面す水上生活者の街。◆アルル=モア公国[国・村]ベルムーテス大公国に属する一公国。◆アレシャイム教皇領[地理]教皇の名の下に女神メナディエルを崇める独立領。◆アンディーン[国・村]アルル=モア公国の首都リバート湖に浮かぶ水上都市として名高い。◆アンネ・シュティフ[武具]女神メナディルがこの世界に遺した3神具のひとつ。魔を滅する神の剣。◆異端審問[宗教]メナディエル正教に於いて、正統信仰に反する教義や、邪悪な存在と認定された者を裁判する為に設けられた制度。◆イプス岬[地理]濃霧と岩礁帯に閉ざされた魔の海域を臨む岬。 近海には座礁した船の残骸が数多く横たわる別名“船の墓場”がある。◆ウィズイッド家[人物・家名]『女教皇』の血統アルカナの継承血族。大戦以前、西大陸を支配した五大屍族のひとつ。 大戦時、人族に組した唯一の屍族。 ヤガ=カルプフェルト王国の相談役として、宰相職を歴任していた。◆ウルムドラ[地理]西大陸北西部に位置する極寒の大地。 年間を通じて雪と氷に閉ざされた山岳辺境の氷河地帯。 現オルカザード領。◆ウンディーブルク城[建築]アダマストル公国王城。◆運命の輪の血統アルカナ-[Rad des Schicksals][能力]夜の10番目の意志。継承者は『時を断つ』力を得る。◆エルダー[称号]近親婚を繰り返すことによりその血脈の純血性を保ち、『血統アルカナ』と呼ばれる特異な力を継承し続ける大屍族の総称。◆エンシェントガーデン[建築]教皇庁に建築された最初の大聖堂。その地下には『贖罪の牢獄』と呼ばれる大陸最古の牢獄があると噂されている。◆オルカザード家[人物・家名]『魔術師』の血統アルカナの継承血族。大戦以前、西大陸を支配した五大屍族のひとつ。 上級屍族の中でも最も古く強大な力を持った二十二家と称される名門血族である。◆女教皇の血統アルカナ-[Die Hohepriesterin][能力]夜の2番目の意志。継承者は『精神操作・記憶探知・意志伝達』の三柱の力を得る。【か行】◆ガープ硬貨[貨幣]西大陸で標準使用される本位貨幣。ガープ金貨1枚は、同銀貨10枚に匹敵し、銅貨なら100枚分の価値がある。◆海竜船-[カイリュウセン][乗り物]水上都市アンディーンの名物、都市観光用の遊覧船。◆鏡の回廊[建築]聖宮セラフィムガードの中央回廊。◆籠姫-[カゴヒメ][敬称・異称]聖女の資質を持つ者が、成人の儀を迎える16歳の誕生日まで、俗世との接触を完全に絶ち育てられることに擬えた異称。◆ガザルフォード[国・村]ベルムーテス大公国に属する一公国。◆カラクリ[その他]巨人族の失われた技術。◆渇きの継承[儀式・式典]別名『夜の継承』とも呼ばれる。二十二家の大屍族が『血統アルカナ』を力を継ぐ為の儀式・試練。◆貴紅酒-[キコウシュ][飲食物]プリウスの果汁を発酵させた果実酒。◆教皇聖女と並びメナディエル正教の最高聖位のひとつ。代々、フォン家が世襲する。◆首人-[クビビト][その他]屍霊術の秘法によって半永久的な命を与えられた生物の異称。生前の記憶を保ったまま永久の時を生きる喋る生首。◆グラドユニオン家[人物・家名]代々、聖アルジャベータ騎士団の団長を輩出している武門の名家。◆グリムデンの竜鳥[動植物]貪欲そうな狂眼と鋭く長い嘴、暗紫色の羽毛に覆われた巨大な翼と体躯を誇る夜行性猛禽類。グリムデン家最後の当主ベルムード三世がこの地に放った怪鳥。◆黒真珠の塔[建築]海都ナイトクランの商人ギルド評議会を治める三大商王ヘリソン・マーロウの塔邸宅。◆クロスメイデン[国・村]ベルムーテス大公国に属する一公国領土の大半が山岳氷河に覆われている為に地下都市が発展している。◆血壊-[ケッカイ][病]屍族固有の死病。◆元老院[機関]教皇庁の政務機関。その面々は首人で構成されているとの噂。◆公会議[機関]教会の最高会議。◆蛍輝石-[コウキセキ][鉱物]聖伝承では女神の涙とも云われる。脈打つように鼓動し、純度の高いモノほどより強い輝きを放つ貴鉱石。◆黒死蝶-[コクシチョウ][動植物]摂取した栄養を糧に浸潤と変異を繰り返す内部寄生虫。※誤字訂正
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