話飲徒然草(S's Wine)

話飲徒然草(S's Wine)

2013年12月29日
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カテゴリ: ワインコラム
さて、断続的に続けている表題の考察ですが、最近はさすがに読者のみなさんも飽きてきたのか、あるいはあまりに内容がマニアックになりすぎたのか、このネタのときには露骨にブログへのアクセス数が減ってしまいます。数字にすると100〜200件ぐらい少なくなります。
ちなみに、このブログのタイトルでもっともアクセスの多いのは何かというと、 「週末セール情報」 だったりすのですが(笑)。

とはいえ、まだ考察半ばのネタもあるので、もうすこし断続的におつきあいいただければと思います。

未解決のテーマのひとつに、 「外部からの酸素の侵入(供給)なしでワインは熱劣化するのか?」 というものがあります。

先だっての 「脱酸素パック検証ワイン会」 では、 夏場35℃になる常温環境に3年 置かれていたにもかかわらず、明確な劣化は見られませんでした。(セラー保存のものとの違いはありましたが。)


「ワインの高温劣化は温度そのものによるのではない」
http://www.foodwatch.jp/secondary_inds/winedist/12231

南さんのスクリューキャップの30℃、60℃の湯煎実験でも明確な差はなかったというのがあります。
http://plaza.rakuten.co.jp/romantei1925/diary/200707010003/

一方で、平野弥さんから送られてきた 「スクリューキャップの熱劣化ボトル」 をテイスティングしてみたところ、私の知見では明確に熱が原因によるものだと断定はできないものの、たしかに酸化傾向が感じられました。 劣化したスクリューキャップのボトルは実在 しました。

また、私自身の経験に照らしても、昨夏に誤って常温で送られてきた蝋封のフーリエのボトル(推定40〜50℃×2日)は熱による影響を受けていました。

ただし蝋封やスクリューキャップは平時の密閉度は高くても、急激な温度変化による圧力には耐えられないのではないかという意見もあります。実際、我が家の蝋封フーリエは蝋の内側で液体がコルク越えて噴いた状態になっていましたし、T氏の実験によれば、スクリューキャップでさえ、60℃×4回の温度変化で液漏れを起こしたそうです。

というわけで、このテーマについて、私の中でも未だに結論は出ていません。年越しです。


ところで、もし、外 部からの酸素供給(侵入)なしで熱劣化が起きるとすれば、それはどういうメカニズムで起きるのでしょうか?

「ラジカル反応」 というものがあって、熱により、液体内の分子の結合が外れ、はずれた分子は不安定になって他の分子と新たに結合しようとする。それが連鎖的に起こる、したがって、外部からの酸素供給がなくても熱劣化は起こるとのことでした。
しかし、これがいわゆる 「高温になると化学反応が早まる(熟成が進む)」ことと同義なのかどうかは未確認のまま です。
「ラジカル反応」とワインの劣化の関係について、ネットでいろいろ検索したのですが、そのような内容の記事は(少なくとも日本語では)ひとつもヒットしません。ラジカル反応に言及したワインブログって、ひょっとしたら私が初めてかもしれません(笑)。


これら両論の辻褄があうような仮説があるとすれば、私は以下のようなものではないかと勝手に考えています。


〜しかし、外部からの酸素の侵入を完全に遮断しても熱劣化は起きうる。
〜それは、温度変化がスイッチとなってワインの中に最初から含まれている酸素を起点に「ラジカル反応」が起きるからである。
〜ただし、ワイン内の溶存酸素の量はそれほど多くはないので、外部からの酸素を遮断できてさえいれば、極端な高温や長期にわたる高温環境下でない限り、一般的に知覚できるような劣化には至らない。
~同様に「振動」によってもラジカル反応はおき得るが、酸素の流入を伴わないので、しばらく安置することにより、ほぼ元の状態まで回復できる。
(光による劣化のメカニズムについては未検証)


ワインの中には酸素は存在しうるのか ということです。

ワインを組成する物質は酸素を好む、すなわち酸素と結合しやすいさまざまな物質のオンパレードであると聞いています。
実際、前にも引用した、Rainer Jung博士によるリースリングワインに対する充填条件と充填後の保管条件の実験では、いくつかの酸素濃度のワインを用意して充填したところ、溶存酸素量は0.2mg/bottleから6.0mg/bottleまで幅広い結果となりましたが、 それらはおおむね300日以内に吸収された というデータがあるそうです。

一方、ワインを酸化させないワインセーバー「WHY NOT」で知られるフレッシュテックさんのHPに「WHY NOT」の酸化試験のデータが載っていて、それによると、 ワインにはもともと1.5〜1.9ml/Lの酸素が含まれている という記載があります。

http://www.whynot-btg.com/freshkeep/kensyo/index.php

この二つのデータの整合性がよくわからず、フレッシュテックさんにメールで問い合わせたところですが、年末ギリギリだったこともあって、今のところお返事はいただいていません。
なんとなく想像できるのは、ボトルが若いうちは、コルクを通じた流入やコルクそのものに含まれていた分などにより、ストックとしてでなくフローとして一定量酸素が存在している可能性。あるいは、瓶の内部と外部との酸素濃度の均衡がちょうどそのぐらいの水準である可能性、などでしょうか。

いずれにしても、ワインの中に日常的に2ml/L弱の酸素(酸化物や酸素との化合物でなく)が含まれているというのであれば、燃料を外部から投入しなくても自前である程度賄えることになり、熱劣化が起こりえるというのは合点が行く話です。この部分って実際のところどうなんでしょうか。

そんなところに、平野さんからまた新しい情報をいただきました。(つづく)





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Last updated  2014年01月05日 15時53分44秒
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Comments

shuz1127 @ Re[1]:Ch.リヴェルサン2018(10/16) Henryさんへ おお、オーメドックいろいろ…
Henry@ Re:Ch.リヴェルサン2018(10/16) 私も最近、オー・メドックを愛飲してます…
shuz1127 @ Re[1]:家族でトゥールダルジャン(09/25) Henryさんへ こんにちは。グランメゾンに…
Henry@ Re:家族でトゥールダルジャン(09/25) 大変貴重な現地レポートありがとうござい…
shuz@ Re[1]:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) うまいーちさんへ お久しぶりです。コメ…
うまいーち @ Re:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) コロナですか。お大事に。 私もなりました…

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