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2012.04.14
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カテゴリ: 政治
 湯浅誠さんがインタビューで「「おまかせ」はダメ、主権者の力を示し一つずつ変えたい」と説いているので、紹介します。

湯浅誠

湯浅誠さんへのインタビュー <政権を出た派遣村村長>
(デジタル朝日ではこの記事が見えないので、4/13朝日から転記しました・・・そのうち朝日からお咎めがあるかも)

Q:数年前とは服装が変わられましたね。なんというかこう、シュッとされた。政府で働くとそいう感じになるものなんですか。


Q:3月初めに内閣府参与を辞任されました。2年前に続き2度目の辞任ですが、民主党政権に見切りをつけたということですか。
A:違います。そもそも全肯定できる政権も、全否定できる政権もない。だったらこちらが求める政策を実現すると政府が決めた場合は、その点に限って協力する。メドがついたら辞める。そういうスタンスでどの政権にもかかわっていこうと、最初に参与を引き受ける時に決めました。辞任はその実行です。参与は政権の便利屋さんではありません。

Q:実際に政府に入ってみて、新しい発見がありましたか。
A:社会運動家としては、問題を世の中に提起し、世論を喚起することに全力を傾注してきました。でも「こっち側」の仕事は「あっち側」に問題を投げ込むまで。そこから先の調整や決定はブラックボックスの中で行われていて自分は関係ない、排除されていると思っていました。
 しかし参与になって、「あっち側」が複雑に調整の現場であることがわかりました。政治家、官僚、マスコミ、圧力団体など利害関係者が複雑に絡み合い、限られた財源の中で何かを増やすためには何かを削らざるを得ないというルールの中で、みんな必死に働きかけている。
 それに気づいてみると、「こっち側」と「あっち側」は現実には地続きで、私たちももともと調整の当事者だったということが見えてきた。これまでは自分で提訴しながら裁判に欠席していたようなもので、納得のいく判決を得られるはずがありませんでした。

Q:政権交代しても結局、何も変わらない。国民の多くは民主党政権に裏切られたと思っています。
A:そうだとしても、私たちは政治にどう働きかけていくかを考えていくしかない。鳩山政権は格差・貧困問題に強いこだわりを持っていましたが、その後は徐々に路線を変更し、いまは福田・麻生政権と同レベルに戻っています。野田政権になって官邸が遠くなったのは確かです。しかしそれを「裏切り」で片付けても、自分たちがやれること、やるべきことは見えてこない。
 個別政策の実現という点では、勝負は参院選で民主党が敗北し、ねじれ国会になった時に決まりました。法案は自公の協力なくしては通りません。うんざりするような政治状況を生んだのは、参院選でそのような投票行動をとった私たちです。社会運動の側も、鳩山政権が終わることで状況がよりよい方向にいく可能性はなかったのに、引きずり降ろされるのをただ見ていた。民主党政権だけが問題だとは、私はあまり言いたくありません。

Q:しかし民主党政権の変節を受け、社会運動は政権に深くかかわるべきではないという揺り戻しが起きているようにも見えます。
A:調整を担うと、原理原則を言っているだけでは済まなくなるからですね。これまでは往々にして「俺は悪くない、悪いのはあいつだ」で済ませてきた。私たちも調整の当事者である、主権者のひとりであるということを忘れていたと思います。主権者をやめられないのが民主主義です。私たちは権限と責任を引き受けなければなりません。
 政治家や官僚が「頑張ったができなかった」と言っても私たちは許さない。結果責任を求めます。だったら私たちも頑張った、で済ましてはいけません。これは私自身の反省でもあるのですが、もう「言いっぱなし」の社会運動はしたくない。

Q:とはいえ政治家や官僚は権力や権限を持っています。負うべき責任のレベルは違うでしょう
A:私が社会運動の人間で、自分に向けても言っているから、こんな言い方になるのかもしれません。社会運動は、やり方を工夫すれば世の中をもっと変えていける。私たちは無力で「」だけが力を持っている、という図式で物事を考えたくないのです。

Q:お話を聞いていると、湯浅さんは政権に取り込まれてしまったのではないかと思ってしまいます。
A:はい、よくそう言われます。しかし私は数年前からこういうスタンスです。自民党政権の頃も、差し迫った問題を解決するために自民党の有力議員に会い、お願いもしてきた。困っている人、明日死んでしまうかもしれない人を前にして、「いつか政権交代して今よりいい世の中になる。それまで待ってて」とは、私は言えません。
 こういう社会を目指す、という原理原則を持っていることは大事だし、政権批判も大いにやるべきです。しかし原則的な立場を堅持していれば原則が実現するわけではない。課題によっては調整や妥協をしながら取れるところを取っていく。そこは二面作戦だと考えます。

Q:この間、窓口を一本化するワンストップ型の相談支援事業の予算化など個別政策では成果を上げられました。しかし参与・湯浅誠への期待は、政策決定過程や政治文化そのものの変革にあったと思います。
A:政府に入れば大きなことができるというのは幻想で、社会運動への期待の低さを逆に反映していると思います。主権者としての自分たちの力を過小評価し、政治家や官僚のそれを過大評価していると、過度な期待と失望を繰り返すだけです。

Q:結局、局所戦を積み重ねていくしかないということですか。
A:どんな立場になっても、やっているのは結局「角のないオセロ」のようなものだと実感しています。オセロでは角を取れば一気に多くのコマをひっくり返せますが、現実にはそんな角はない。一個ずつ地道に反転させていくしかないのです。
 若い人によく聞かれるんですよ。「自分は何をやればいいですか?」と。世の中をガラガラと変えるような大きなことをやらないと意味がないと思っている人がいる。だから私は「限りある時間と能力の中で、あなたが最も有効だと思うことをやってください。魔法のボタンはどこにもありません」と答えます。

Q:オセロの盤そのものをひっくり返そうという闘い方もあるのではないですか。機能不全に陥っている「」とオセロを続けて、本当に社会がよくなるのでしょうか。
A:少なくとも私は、コマを一つ一つひっくり返す積み重ねの延長でしか、盤をひっくり返すことはできないと思っています。既成政党、議会制民主主義が機能していないからといって、見限ってしまうことがよい結果をもたらすとは思えません。
 1億2千万人が住んでいるこの社会はそもそも複雑なものです。議会制民主主義は、10ある利害をできるだけ切り捨てないようにして玉虫色の結論を出すシステムです。一方で今待望されているのは、10の利害から1を取って9を捨てられる強いリーダーですね。しかしそこで切り捨てられるのは誰か。おそらく私たちでしょう。
 議会制民主主義には改善すべき点が多々ありますが、複雑なものを無理にシンプルにしよう、ガラガラポンしてしまおうという要求の高まりには危機感を覚えます。

Q:橋下徹減少ですね。
A:橋下さんが支持を集めているのは「決めてくれる人」だからで、その方向性は問われません。「おまかせ民主主義」の延長に橋下さんへの期待がある。「あっち側」に期待するか、批判するかの違いはあれど、決定に至るまでの調整を誰かにまかせて、観客のような、評論家のような気分でいるという点では、橋下さんを支持する人たちと社会運動はともすると同じ図式の中にはまりこみかねない。どちらも民主主義の形骸化という意味で問題です。

Q:政治家にならないのですか。
A:少なくとも今は、社会運動家として何ができるのか、そのことで頭がいっぱいです。日本の民主主義の現状は危機的です。「おまかせ」の回路を何としても変えたい。主権者としての力を示したい。この2年間の経験を持ち帰り、社会運動に何ができるのかを追及したいですね。

<取材を終えて>
 湯浅さんは「メビウスの輪」だと、私は思っている。理想主義と現実主義。優しさと冷徹さ。直線上の両極が重なり、敵か味方か峻別しようと真ん中にはさみを入れても大きな一つの輪になる。そして湯浅さんへの問いは反転し、私たちに返ってくるのだ。「あなたは社会を変えるために、何をやりますか?」
(聞き手:高橋純子)


この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップ に収めておきます。
湯浅誠さんが内閣府参与として見てきたこと をWeb毎日より紹介します。





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Last updated  2012.04.15 08:30:51
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