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時を同じくして、バフタールでも問題が起きている。「連絡はまだ来ねぇのか!?」イラついた怒号が広がっている。バフタール王が待ちかねている連絡は、予定を超えてだいぶ遅れている。そこへようやく連絡が届けられる。だがその結果、余計に怒らせることになる。その経緯は、バフタール船が海上で襲われ、その廃船を見つけたという。どこの誰にやられたのかを判断するに値する手掛かりを得たと。実物が一緒に届けられており、それを広げると見たことのある旗だ。「これは・・・、あからさますぎる気がします。そもそも・・・」「言うな。わかっている。だが、問いただす必要はあるだろ」「呼び出して来るとは限らないのでは?」「これを機に進められることもある。まずはこっちに来るかどうかだ」その呼び出しは壁を越えて届けられる。いきなり矢文が送りつけられ、辺りは騒然とする。最速で城内に送られ、こちらも恐々としている。「レイトの出動と説明を要求」はまさに濡れ衣としか言えない。拒否の主張が多数占める中、レイトだけははっきりと「要求に従う」と言う。「今は同盟関係が続いている。これをどんな理由であれ、壊すわけにはいかない。 少なくとも出向いていけば、手荒な真似をすることはないだろう」レイトはゲイドモールにも意見を求めるが、「それも一理あります」と尊重する。そうなると流れは定められ、レイトは話を進めていく。「護衛に割くほど人員は余ってない。が、ちょうどいい奴がいる」と言って、ひとりで準備を始めようとする。家臣たちは慌てて止めようとするが、レイトはすれ違いざまに小声で指示する。「留守を頼む。これ以上、状況が悪くならないようにこらえておいてくれ」レイトは国境に向かう途中、ナキュアに立ち寄る。「出迎え、ご苦労。また引っ張り出して悪いな」ヨーディは上官の目があるため、ぎこちなく畏まっている。少し進んで、上官が見えなくなったところまで来ると、ようやく解放される。「はあぁっ、いつ噴き出すかひやひやした」「ったく、すこしは慣れろよ。この先、大丈夫か?おまえ」レイトは不安を口にしながら、口元は緩んでいる。久々に気が緩んでいることに気付いて、ひとり噛みしめている。このわずかな時間をレイトは無意識に求めていたのかもしれない。
2020/03/29
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トワールはヨーディと別れ、レイトの元に戻ってくる。話し合った内容を伝えてトワールの任務も終了となる。「後継者についてはまだ素性が知れず、油断ならないこともあります」レイトはヨーディについても聞くが、「特に変わった様子はなかったです」と答える。これで事態は収束する。それから間もなくして、ゲイドモールが戻ってくる。「ただいま戻りました。何か変わったことはありましたでしょうか?」会議室は穏やかな口調とは裏腹に緊張感が増していく。「努めて順調です。目標についても滞りなく進めております」資料を眺めるゲイドモールの横で、すでに読み終え端を整えている者がいる。「今後はより一層、励んでもらわなければなりません。 目標についても改めて見直すことになります」すると、隣の者に目を配り、起立を促す。「本日よりこのゴーレンが補佐役として加わることになりましたので、紹介します」挨拶を促されたゴーレンは、よろしくお願いします、と言ったあとで、「特別扱いする期間は終わりました。これからはイグリス国の一員として、 国のために働かなければならないという意識を持っていただきたい」あらかじめ想定していたことではあるが、直にその言葉を聞かされると、全身に重み感じて体が硬直しそうになる。もし目標を達成することができなければ、レイトたちはその責任を取らなければならない。つまりはフューリッドが完全に消え去るということ。これがイグリスの狙いでもあるし、できうる限りの無理難題を押し付けてくるに違いない。(あとのことを考えれば、余力を少しでも残しておきたいが・・・)とは言え、そんな方法が見つかっているわけではない。「利益率の目標値ですが、南部では5%。北部では8%に設定させていただきます。 期間は半年、これはイグリスの目標値でもあります」イグリスと目標値が同じでは、異議を申し立てるわけにもいかない。「わかった。全力で取り組んでいこう」レイトは言い聞かせるように了承し、そこで確認したいことがあるという。「別々の目標値が掲げられていますが、片方が足りなかったとしても、 もう片方で補うことができれば、認めてもらえるのでしょうか?」「そう捉えていただければ結構です」その答えを聞いてレイトはひとつ安堵する。
2020/03/22
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これが事実だとすれば、フューリッドはまだ民から見放されてはいないということだ。アロギラは「これ以上、貧しさが続けば、どうなるかぐらいはわかるだろう」と言い、トワールは必ず応えてみせる、と誓う。ヨーディはずっとビルクを見ていたが、一度も目を合わせることなく終わる。(トワールには、いえねぇよな・・・)「いきなり出てくるとは思ってなかったな。で、なんか気付いたことあるか?」ヨーディは我に返って取り繕う。「俺らと同世代、かな?」「身内じゃなさそうだな。いったいどういうつながりがあるのか?」ヨーディにもどういうつながりがあるのかはわからないが、リーダーとアロギラが顔見知りなのかもしれない、と感じる。トワールはそうだな、と言ったあとで「アロギラの方はどうだ?」と聞く。ビルクのことで頭がいっぱいになっているヨーディは、言葉に詰まる。なんとか絞り出したのが、「雰囲気は護衛隊長に似てる気がする・・・」「向こうはやっぱりお前に興味持ってたな。お前は引いてたけど」「なんだよ。あのじいさんはただの一兵卒なんだろ?」ヨーディに興味がないのは、トワールがあえてアロギラの情報を最小限にとどめていたからだ。その理由は、ヨーディの態度から感づかれるのを防ぐためだ。今更伝えられたヨーディは、「もうおせぇだろ!」とツッコむ。「おそかねぇよ」とトワールは言う。今後も続いていくわけだから。(あのじいさんがエインテルなら、問題なさそうな気もするけど。 存在を隠してるのは、やっぱりなにかあるってことか・・・)「これで正々堂々、面が割れたな」「向こうとの約束はこれで終わらせて良いのか?」「大丈夫だろ。そう簡単に文句が言える状況じゃないし」アロギラの心配は今後の方針にも及ぶ。それに対してもビルクは、「これからも天秤にかける。イグリスも含めてな」「あくまでもフューリッドには属さない、というわけか・・・」そうは言ってないだろ、と前置きしたうえで、「あのことは必ず清算させる」ビルクはそう言うものの、アロギラにはその計画の詳細は知らされていない。アルケデニックはもうこの世にいない。それでどうやって清算させるというのか?「アルケデニックの部下が処罰されたという情報は入ってきてない。未だに、な」今の状況で人材を減らすのは、フューリッドのとって不利益でしかない。そんなことをすれば、イグリスに飲み込まれていくのは目に見えている。「だから、時間与えてやってるだろ?待っても無駄になるかもしれねぇけど」
2020/03/15
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二人は部屋で待つように言われる。その二人に会いに行くまでの会話。「思ったより時間かかったな。で、あいつが来た、か。 あんたの希望が叶ったってわけだ。うれしいんだろ?」「お前もうれしいんじゃろ?本当は」「あ?次々来るから、うざくなっただけだ」扉が開いて二人が入ってくる。ヨーディは二人目を見て心臓が飛び出しそうになる。(ここにビルクがいるってことは、そういうことなんだよな)ヨーディは驚きを隠していると、トワールが合図を促しているのが見える。「本日はお忙しいところ、お時間を作っていただき・・・」そう言い終わる前に、「滅相もない。本来であれば、こちらから向かわねばならぬのに、誠に申し訳ない」アロギラはヨーディを見るなり目を光らせ、「いやしかし、此度のエインテル殿はお若いですな!」ひとりで盛り上がっている姿に他の三人は唖然とする。「おっと、すまぬ。こっちにいるのがビルクだ」紹介されたビルクは丁寧に頭を下げる。何食わぬ顔で話しているビルクをヨーディはまじまじと見つめている。軽い話を終えたところで、トワールは今後の協力体制を申し込む。だが、一転アロギラの表情は曇り、以前、疑われたことを持ち出す。「そのような関係から協力というのであれば、それなりの利益がなければなりますまい」トワールは用意していた条件を提示する。それでもアロギラの表情は変わらない。「我々にとってこの土地はかけがえのないものであると、理解が足りぬようで・・・」バフタール領となったあの日、周りの者たちは移住を選択していく中で、アロギラたちだけは移住を拒み、この土地に居続けることを選ぶ。他の町が手つかずのままなのに対して、この街だけが成長を遂げる。「そなたらにわしらの苦労が、そう簡単にわかるはずもない」この言葉にトワールが食い下がる。「俺もバフタールで苦渋を呑みました。気持ちはわかるつもりです」しばらく時間をおいて、「我々にとって重要なのは利益。相手がどこであろうと関係ない」トワールは提案を書き換えて差し出す。「別の場所にも拡大させていく場合、その資金を援助させていただきます」それでようやく、前向きに検討する、と返ってくる。「手土産、というわけではないが、どうぞこれを」アロギラから渡されたのは、これまでに逃亡した者の一覧表だ。「調べればわかることだが、ほとんどは前科者か放浪者だ」
2020/03/08
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レイトはその後継者に会いたいと言うが、アロギラは丁重に断りを入れる。「将来のことを考えれば、ここで顔見知りになっておきたいのですが・・・」アロギラは汗が滲む手をごまかしながら、しばらく戻らないので、とだけ言う。レイトはこれ以上言うことをやめ、「こちらに来るときにはぜひ」と終わらせる。「本人にもそのように伝えておきます」と言うアロギラと別れる。拠点に戻ったレイトは絵描きに耽っている。その絵を持ってみんなを集める。「この顔に見覚えはあるか?」そう聞かれた一同の中で、重鎮たちが口を開く。口々に出てくる名前は同じだ。「では、あのエインテルということで、間違いないな」「しかし、それならば疑う必要はないのでは?」「いや、身分を明らかにしなかったことが、何かを隠してる証拠だ」「そうですね。もしかすると後継者がもう実権を握っているのかもしれませんね」だが、その後継者がすんなりと姿を現すとは考えにくい。「この件についてはトワールに継続して当たってもらう」了解しました、とトワールは頭を深々と下げるものの、(これ以上、どうやって調べればいいんだ?)と困惑する。そんな表情を読み取っているのか、レイトは「ヨーディを連れていけ」と一枚の紙を渡す。ヨーディをエインテルとして連れていき、アロギラに揺さぶりをかけるという作戦だ。後継者の情報を何かしらつかんできてくれ、とレイトたちは帰還の準備をする。トワールはひとり見送ったあと、すぐさま西へと向かう。ヨーディは汗だくになりながら、死にそうな顔をしている。そこへ教官から呼び出しを食らう。「急げ!早く来い!」ヨーディが走っていくと、誰かが笑っているようだった。(チッ、ふざけやがって)「こんなんでへばってるようじゃ、ダメだな。どうすっかな・・・」ヨーディが睨みつけると同時に誰だかわかる。「トワール・・・?」「せっかく来たし、こいつは預からしてもらいます。ちゃんとしごいておきますから」教官たちはレイトの手紙もあったことで反対するはずもなく、二人を送り出す。「まさか、お前を呼ぶことになるとはなぁ」ヨーディはトワールから状況を説明され、自分の役割が何かを知る。うまくいけば、後継者を引っ張り出すことができる。たとえ失敗したとしても、やる価値は十分にありそうだ。「一兵卒だったと言ってるし、前のエインテルについて知ってることもあるだろ。 その辺から聞き出していくかな」「身なりは崩すな、ってのは無理か。ありのままの方が受け入れられるかもな」
2020/03/01
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