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数日後、フューリッドにようやくイグリスからの知らせが届く。判断は任せるという言葉が、余計に悩ませる原因になっている。「噂とは状況が違う。これを出したあとで急変したとも考えられる」まず、噂が真実とは限らず、バフタールが意図的に出したものとも読める。それでも、急変したと仮定して対抗策を考えたほうがいいのではないか。そのときのために前もって準備しておく必要があるわけだが、それで間に合うのか、という疑問はぬぐい切れない。たとえ間に合わなかったとしても、とレイトは前置きしてから、「国境沿いを斬り取れれば、最悪の場合になっても交渉材料にできる」レイトの話を聞いたゲイドモールは、別の考えを口にする。グラッカ王国を押しのけるのに時間がかかるだろう。イグリスも一時的に奪われたとしても、それで引き下がるわけではなく、取り戻すための余力は十分に残しているはずだ。「だとしても、同盟を破ったことを黙って見ているわけには・・・」むしろレイトの方が出兵に意欲的だ。しかし、ゲイドモールたちは慎重になっている。不用意に戦禍を広げるのは得策ではない、というのが根本にはある。戦争には金がかかる、その割に得られるものは少ない。滅ぼして自国に取りこめられればいいが、そう簡単にはいかない。「今回は守る戦い。これくらいのことなら任せておいても問題ない。 我々がやるべきことは、国力を高めることだと思います」レイトは納得できる部分もあるが、不安に思うところもある。「長引くくらいなら、一気に終わらせた方が費用はかからないかと」これにもゲイドモールは持論がある。費用とは出兵にかかる費用だけではなく、その間、普段できることができずに手つかずになってしまうということ。今、出兵するということは、水路計画にも影響を与えるのは必然で、これと比べれば、不利益を被るとみて間違いない。「多少、状況が悪くなったとしても援軍を出す必要はありません。 お気遣いは感謝いたしますが、これで負けるようでは、 今後のイグリスに未来はありません」レイトは今までに見たこともないゲイドモールの気迫に圧され、これ以上は何も言わず、この話を終わらせるしかない。(まさかここまで拒否してくるか。これからどうするべきか・・・)
2020/09/27
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南側のイグリス経由に比べて、北側のバフタール経由は距離が短い。「不利な状況を流せば、判断も鈍る。この時間差は大きい」しかし、イグリスの援軍要請を拒否しようにもできない可能性もある。そのときのためにグラッカ王国へ出陣要請はしてあるが、全てを防ぎきれるわけではなく、長引く前に終わらせる必要がある。作戦としては、二方面に展開して辺り一帯を制圧するというもの。これをきっかけにそのあとを有利にしていこうとしている。「準備が整い次第、動くぞ。気取られないように注意しておけよ」バフタールに攻め込まれたイグリスは、落ち着いて対処している。常日頃から意識していたこともあり、想定通りに事が運んでいる。そして、フューリッドへの援軍要請についても議題に出る。「今の状況ならわざわざ出すべきではないでしょう」このまま抑え込めるのであれば、何の問題もないが、わざわざ仕掛けてくるぐらいだから、何かしらの狙いが必ずあるはずだ。狙いが見えないうちは用心するに越したことはない。だからといって、援軍が来ることは容易に予想できるわけで、何らかの対策を施してあるとみて考えたほうがいい。「援軍を要請するなら、バフタールを一気に崩すくらい反撃していくべきです」立ち直る余力を奪うくらい徹底的にやらなければ、この先もずっと緊張感をもって対応していくことになる。もとをたどれば、フューリッドに攻め込んでいった際、バフタールとの決戦まで持ち込んでおけば・・・といっても仕方がない。バフタールが存在している限り、戦争をなくすことはできないのかもしれない。とはいえ、ゼロにしようとすると反発はとてつもないものになる。「秘策を持って攻め込んできているのは間違いない。 全力で立ち向かえられるように準備しておけ」イグリス王の判断は、ここで力の差をバフタールに見せつけることで、士気を落として抑え込む、というところまででとどめる。全てを飲み込むには時間がかかりすぎてしまう。フューリッドについても、実行するかどうかは、ゲイドモールたちの判断に任せる、とする。「フューリッドの繁栄は諸刃の剣だ。我々の力が弱まれば、 隙を突かれてひっくり返されるぞ」
2020/09/20
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重苦しい空気が漂い始めたそのとき、「働ける者はこの国のために尽くさねばならぬ、 この町に縛り付けておくのはもったいないこと、そうは思わぬか?」長老の一言で意見はまとまっていく。「移動を希望する者は名乗り出てくれ。現時点での人数を確認したい。 条件があるなら、それも教えてくれ」各町への説得も順調に進み、受け入れるための住居が急いで建てられる。それが終われば、民の移動が始まり、本格的な計画が遂行される。ここまでくればヨーディたちの任務は完了、戻って報告する。「よくやった。そもそも失敗すると思って行かせてはなかったけど」二人だけの時以外で砕けた言い方をしてしまうほど、レイトも喜んでいる。ヨーディはついに、エインテルとして堂々と認められることになる。それは、レイトの傍で日々を過ごす、ということを意味している。「お前にとっては、ヒマな時間が増えるかもな」「謹んでお受けいたします」ヨーディはあくまで丁寧に頭を下げる。そうは言ったものの、やはり今後のことも気にはなる。「ですが、最後まで見届けさせてもらえないでしょうか?」手に汗を握りながら、ヨーディは希望を出してみる。「やっぱりそうなるよな。最後までやってこい」ヨーディは三度、北上していく。フューリッドでは水路計画が着々と進んでいく一方で、バフタールでも、とある計画について話し合いが行われている。「もうそろそろ出来上がる頃だと思うが、うしろについてはどうするべきか?」うしろとは、フューリッドのことを示している。以前、レイトへの手紙を送ったものの、これといった動きはない。「あてにならないものをあてにしても意味はないでしょう」「そうは言うが、挟まれることになれば、さすがにきついぞ」「ということは、動かなければいい、というわけですか」条件を付けて引き入れようとすれば、余計な出費もかさむ。その資金を足掛かりに、繁栄されるのもまた困ったものでもある。「イグリスからの要請があったら、動かざるを得ないのでは?」「そうなる前に戦功をあげる。向こうに状況が伝わるのは、 南側で遠回りするしかなく、どんなに早くても三日はかかる」
2020/09/13
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ヨーディたちはオポアに出向き、話し合いの場の中にいる。「残る者たちにまで保障、ですか。言いたいことはわかりますが・・・」あとに続く言葉は、そこまでの予算はない。「金銭面だけではなく、待遇面で調整しましょう」いつでも好きな時に、とまではいかないまでも、故郷に帰れるように考慮する。期間についても希望を聞き入れられるようにすれば、移動して来る者たちについては、補償金を抑えられるはずだ。「なるほど。それなら家族を残して出てくる者も増えるかもしれない。 予算には限度があります。それだけは忘れないようにお願いします」フューリッドにとって無理難題になっては元も子もない。ヨーディたちはそれぞれの地方に分かれて交渉に向かう。ヨーディは町長の元を訪ね、話をしていく。話を聞き終えた町長は、急な話に困惑気味で、懐疑的でもある。以前、バフタールに途中で投げ出されたことが、記憶に残っている。期待させるだけさせておいて、結果的には何も変わっていない。「それでも戻ってきたのは、ここが我々の故郷だから、です」貧しい暮らしだとしても、この町には愛着がある。その想いを押しのけてでも移動を要請するというのなら、なんとしてでも完成まで足を止めることは許されない。「それができますか?」町長は眼光鋭く見定めてくる。ただ残念ながら、すべての人を救い上げることはできない。ならば、一部の人だけでもまずは救い上げることによって、その人たちが残された人たちに手を差し伸べてもらうようにする。そうすればいずれ、みんなに行き渡るようになる。「これはやり遂げなければならないことだと認識しています」ヨーディは深々と頭を下げてお願いする。「そこまで申されるのであれば、協力いたします」協力するにあたって、移動先の住居を確保する必要がある。希望する人数を知るためにも、住民に説明する機会が求められる。翌日、朝から住民に対する説明が行われる。期待と不安が入り混じるものの、やはり別の町に造られる、ということで否定的な意見が多くなる。だとしても、今後の町の在り方を考える時が来ている。このままではいずれ廃れていくことには変わりはない。
2020/09/06
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