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副題は「『私』の謎を解く受動意識仮設」。 著者は、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の 前野隆司教授。 2004年11月に筑摩書房より刊行され、2010年11月に文庫化された一冊。 刊行されてから随分月日を経ているので、 本著に記された内容については、様々な新しい知見が発見されているでしょうし、 著者自身にも、考えや思いに変化した部分があるのではないでしょうか。 より新しい刊行物も読んでみたくなりました。 *** しかし、30歳くらいのころ、 哲学者永井均の本『<子ども>のための哲学』(講談社現代新書)を読むと、 同じ疑問が書かれていた。 同じ事を考えている人がいることをはじめて知り、 嬉しくて、永井先生に連絡を取ったものだ。 同じようなことを考える人は多くはないもののそれなりにはいるそうだ。 そして、この問題は唯我論(自分がいなければ世界もないのではないか、 という疑問についての哲学)の一種(変種!?)であるということを知った。(p.36)「自分がいなければ世界もないのではないか」ということについては、私も、幼い頃から随分色々と考えてきた記憶があります。年齢を経るにつれ、自分と関わりなくこの世は存在するという感覚は強くなっていきましたが、それでも、未だに全面的には否定しきれないでいるというのも事実です。
2022.02.27
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2017年10月に9人の遺体が見つかった死体遺棄事件について、 著者の小野さんが、犯人に拘置所で11回に渡り面会した際の記録と、 23回の裁判及び判決公判の際の記録から成る一冊。 面会した際の記録の方は、 『週刊実話 2020年8月13日号~10月29日号』に連載されたものに加筆、 裁判及び判決公判の際の記録の方は、本著のために書き下ろされたものです。小野さん自身が「エピローグ」に書かれているように、本著については、加害者や被害者の周辺を一切当たることなく書籍化されたため、これまでに読んだ小野さんの著作に比べると、事件の真相へと迫っていく緊張感や迫力は、少々物足りなさがありました。しかしながら、『連続殺人犯』を読んだときに受けた「とても人間の為せる業とは思えない」という衝撃は、本著からも十分に感じとることが出来ました。残念ながら、世の中にはこういう人たちも存在しているのですね。
2022.02.13
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信仰は持たないと言いながらも、 年中行事や冠婚葬祭、神社仏閣めぐりなど、 宗教に触れる機会は、決して少なくない日本人。 本著は、そんな日本人の宗教との関係を解き明かそうとする一冊。 序章「世俗社会の宗教」では、現代宗教とは何かを定義し、 宗教団体や教会を中心とする組織的信仰の衰退と、その枠組を超えた現状を述べ、 続く、第1章「宗教の分解ー信仰・実践・所属から読み解く」では、 宗教を信仰・実践・所属の3要素に分解するという本著の基本視座を示します。 そして、ここで示した視座に基づきながら、第2章「仏教の現代的役割ー葬式仏教に何が求められているのか」、第3章「神社と郷土愛ーパワースポットから地域コミュニティまで」、第4章「スピリチュアル文化の隆盛ー拡散する宗教情報」、第5章「世俗社会で作られる宗教ーエリアーデを超えて」で、各事例について、それぞれに分析を進めていきます。そして、葬式仏教は信仰なき実践、神社は信仰なき所属、スピリチュアル文化は所属なき私的信仰と実践として特徴づけると共に、信仰なき信仰構築という実践について言及します。さらに、終章「信仰なき社会のゆくえ」では、マーケットという観点から、次のように述べます。 戦後の新宗教の急成長をマーケットという観点から見れば、 伝統宗教が病貧争の解消という需要を引き受けられず、代わりに、 救済のための教えと方法を示した新宗教がその受け皿になったと理解できる。(p.194)しかし、宗教組織が衰退した現在、次のような状況が生まれていると言います。 現在マーケットを主導するのは教団ではなく、消費者だという。 そして重要なのは、消費者が優位になったことで、 宗教組織以外にも、様々なアクターが スピリチュアル・マーケットに参入することになったことである。(p.194)そして本文最終部で、伝統宗教そのものに信仰なき宗教としての性格が強い日本は、宗教が商品として世俗環境に溶け込みやすいのだと、著者は述べます。また、多くの日本人にとって、宗教は、それなりに特別な情緒を得たり、気分転換するための清涼剤のようなものだとも。まさに、現在の「宗教と日本人」について、的確に指摘した言葉だと感じました。
2022.02.13
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副題は「変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」」。 著者は、2012年から2019年までソニーの社長兼CEOを務めた平井一夫さん。 連結最終損益4年連続赤字(2011年度は過去最大の4,550億円の赤字)から、 1917年度には連結営業利益7,348億円、20年ぶりの最高益を更新した方。 SCEA(ソニー・コンピュータエンタテイメント・アメリカ)、 SCE(ソニー・コンピュータエンタテイメント)、 そして、ソニー本社と、3度の経営再建を任された経緯や、 各危機をオートパイロット状態にまで回復させた様子が丁寧に綴られていきます。 また、第1章「異邦人」では、父親の転勤の関係で、小学1年生の時から、ニューヨークやトロント、サンフランシスコと、日本の公立小学校、アメリカンスクール・イン・ジャパンとの間で転出入を繰り返し、最後は国際基督教大学で学んだ様子が記され、著者の原点を知ることが出来ます。何より驚かされるのは、その文章の読みやすさ。ビジネス書であるはずなのに、まるで小説やエッセイのようにスラスラと読み進めることが出来ました。これも、平井さんの「伝える力」の一端を示すものなのでしょう。
2022.02.06
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6つの短篇と解説から成る一冊。 本著の最初に付された頁番号が9、 そして、最後の解説が232頁から237頁までとなっているので、 1話平均37~38頁の作品群です。 まず、6つの短篇は、次のような内容。メトの教育部門にアシスタントプログラマーとして勤務する美青と、弱視の少女との出会いを描く「群青 The color of Life」。大手ギャラリーの営業部長として世界中を駆け回る姉・なづきと、父の最期を看取った弟・ナナオを描いた「デルフトの眺望 A View of Delft」。なづきと同じギャラリーに勤務し、共に大きな商談にも当たる橘あおいと、高齢者住宅で独り暮らしをするその母親を描いた「マドンナ Madonna」。某県地域振興局内「パスポート窓口」で受付業務に当たる柏原多恵子と、そこにパスポート申請にやって来た御手洗由智を描く「薔薇色の人生 La vie en rose」。かつて現代アートのギャラリーで勤務していた下倉紗季と、そこを辞する契機となったIT起業家・谷地との別れを描く「豪奢 Luxe」。新表現芸術大賞の審査員を務める時代の寵児で美貌の持ち主・貴田翠と、そこに出品された一枚の作品に隠されていた事実を描く「道 La Strada」。「デルフトの眺望 A View of Delft」と「マドンナ Madonna」は、「仕事と親の介護」をテーマにした作品です。『ハグとナガラ』でも、介護の問題はじっくりと描かれていましたが、マハさん自身が、このことについて常に意識されていることが伺えます。また、お話としては、「道 La Strada」がミステリー要素もあり、マハさんらしくて楽しめる作品だなと、私は思いました。そして、次の一文には、激しく同意します。音楽でも、似たようなことが言えるかもしれません。 作品が観る者の関心を奪うのには1秒もかからない。 第一印象が決まるのには3秒。 細部が見えてくるのに10秒。 それがすぐれた作品と察知するのに、もう10秒。 25秒あれば、作品の全体像がつかめる。(p.191)そして、最後の「解説」は、上白石萌音さんによるもの。ドラマや映画だけでなく、音楽でも活躍されている萌音さんですが、この「解説」もなかなかのもので、一読の価値ありです。本当に多彩な方ですね。
2022.02.06
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