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獅子王は乱れた髪を掻き上げながら帳台を出て、堀河の肩に優しく手をかけると言った。「逃げる? わしが何をした。何も言ってはおらぬではないか」「それが逃げるということじゃ!」 堀河はそう言うと、獅子王の手を肩から邪険に振り払った。 獅子王はなぜ堀河が怒るのか、わけがわからぬらしい。裸のまま堀河の傍らに肩を落として座り、所在なさげに俯いた。堀河は獅子王の方を見ずに言った。「わたくしはそなたが誰かも知らぬ。どんな家の生まれか、どんな風に生きてきたのか、妻や子がいるのか……何も知らぬが、それでも、そなたと共にいたいと本気でそう思うた。だから、聞いたのじゃ。ずっと一緒にいてくれるかと。それなのに、そなたは何も答えない。どうせ、傷がすっかり癒え、わたくしの身体に飽きたなら、こっそり姿を消すつもりであったのであろう。わたくしを利用するだけ利用して……」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年02月20日
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獅子王は答えなかった。 堀河は少し身を起こし、獅子王の顔を見た。 獅子王は眠ってはいなかった。目を開いたまま、じっと帳台の天井を見つめている。 その態度は、堀河が以前何度も体験したものだった。 堀河は唇を噛むと、俄かに起き上がった。側にあった単を乱暴に身に着けて帳台を出る。 獅子王は当惑したような表情で身を起こすと言った。「どうかしたのか?」 堀河は獅子王の方を見ずに、吐き捨てるように言った。「もうよい。わたくしが愚かだった」「何のことだ?」「男などにまた心惹かれ、信じようとするなど、愚かなことじゃ。今まで散々痛い想いをして、ようやくそれを悟ったつもりだったのに。結局、そなたも他の男たちと同じ。女が夢中になったと思った途端、すぐに逃げようとする」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年02月15日
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不安は少し残ったが、夜になって獅子王の腕に抱かれると、堀河はすぐに播磨のことなど忘れてしまった。 獅子王の手が堀河の乳房を痛いほど握り締め、頂きを熱い唇が含んで柔らかく歯を立てる。そのじんわりとした刺激に堀河は思わず呻き声を上げて、獅子王の胸に縋り付いた。 獅子王の胸は少し痩せてはいるが、滑らかで力強かった。あれほど無数についていた傷跡も、今は跡形もない。 堀河はその胸を掌で撫で、乳首を唇に含んだ。舌を使うと、腰の辺りがびくりと熱く屹立する。堀河は身体をずらして獅子王の唇を奪いながら、腰を動かして獅子王を自分の中に導いた。獅子王は低く呻きながら、堀河の背を折れんばかりに抱きしめると、激しく腰を突き上げる。堀河は我を忘れて、獅子王の肩に爪を立て、長い黒髪を乱れさせた。 波が静まり、胸の鼓動が治まると、堀河は獅子王の胸に頭を預け、小さな声で呟いた。「このまま、ずっとこうしていたい」 獅子王は眠ってしまったのか、何も答えない。堀河はすっと指先を獅子王の胸に這わせながら、もう一度呟いた。「そなたとはもう離れたくない。ずうっと側にいると言っておくれ」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年02月09日
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だが、何となく気になるので、堀河は獅子王に念のため今日は帳台の中に篭っているように言い残すと、二つの文箱を持って急いで寝殿の御前に戻った。 しかし、女房たちの群れの中に、播磨の姿はなかった。 夕方になってようやく実能が帰った後、堀河は播磨を探したがどこにもいない。ようやく上役の中納言の君を捉まえて聞いて見たところ、播磨は気分が悪くなったとかで急に里に下がったという。 堀河には不審を確かめるすべはなくなってしまった。 だが、播磨と堀河は同じ御所に勤めているというだけの間柄だ。あまり好きではないので、話しかけたこともほとんどない。播磨に関わるような思い当たりが、堀河にはまるでなかった。 知られて困ることと言えば、男を局に隠していることくらいだが、そんなことはちょっと行儀の悪い女房なら誰でもやっていること。播磨にとやかく言われる筋合いはない。↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年02月08日
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堀河はふいに不安になって、急いで自分の局に戻ってみた。 局の中では、獅子王がいつも堀河の座っている畳の上に寝転んで、堀河の歌の草稿がしまってあるあの料紙箱の中身をめくっていた。 少し青ざめた堀河の顔を見て、獅子王はすぐに起き上がって謝った。「勝手に見て悪かったか? 少し退屈してな。歌の勉強でもしようと思ったのだ」 堀河はそれを遮るように言った。「そんなことは構わぬ。それより、今ここに、誰か来なんだか?」 獅子王は首を傾げた。「さあ、誰も来なかったと思うが。何かあったのか?」「それなら良いが……」 堀河はそう言って、辺りを見まわした。 どこといって変わりはない。自分の思い過ごしだろうか。↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年02月06日
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堀河はそそくさと御前を下がり、東北の対の屋に行った。 薄暗い御母屋を探して見ると、目当ての文箱はすぐに見つかった。 ちょうど良い。ちょっと獅子王の顔を見ていこう。探すのに手間取ったと言えば、少々遅くなっても構うまい。 堀河は二つの文箱を袖に包んで抱え、いそいそと自分の局へ戻ろうとした。 だが、建物の角を曲がった途端、誰かと鉢合わせしてぶつかりそうになった。驚いて見ると、それは新参女房の播磨であった。「こんなところで何をしておる」 堀河が問うと、播磨はいえ、べつにと小さく呟いて、足早に渡殿を渡って去って行った。 おかしなもの。ここには旧西の対の古道具が詰め込まれているだけで、後は堀河と兵衛の局しかない。播磨の用事などありそうになかった。 それに、ただでさえあの実能が来ているのだ。美男好きな播磨が興味を持たぬはずはないのに。↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年02月03日
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「堀河!」 突然、待賢門院に呼びかけられて、堀河は急に我にかえった。上段の御簾の内で、待賢門院が手招きしている。「何をぼんやりしている。恋しい男のことでも考えておったか」 冗談めかして言う待賢門院に、謀らずも図星を指されて、堀河は真っ赤になって檜扇の陰に顔を隠した。それを見て、実能もからかうような微笑みを浮かべながら言う。「先程から何度も呼びかけられておるのに気づかぬとは、よほど心を奪われておると見える」 堀河が滅相もないと頭を振ると、待賢門院は笑いながら言った。「もう良い。そなたの局のある東北の対の屋には、白河院のお手蹟の入った文箱がまだいくつか置いてあるはず。法金剛院で一緒に供養したいから、捜して持ってきておくれ」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年02月02日
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