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堀河の疑問にも構わず、正盛は話し続ける。「これでは、朝廷の威信は地に落ちてしまう。朝廷はついに、父親である義家に息子の義親の追討を命じた。ところが、義家は幸か不幸か死んでしまったのだ。それで、急遽義親追討を命じられたのが、このわしじゃ」 正盛は胸を張った。「わしは速やかに出雲へ赴き、激戦の末、見事に義親を討ち果たした。そして、義親とその郎党たちの首を持って京へ凱旋(がいせん)した。白河院をはじめ多くの貴顕(きけん…身分の高い人々)が車を連ね、京中の者たちが熱狂してわしらを出迎えたものじゃった」 その光景を思い出したのか、正盛は陶酔したような面持ちだ。そんな正盛を苦笑して眺めていた実能は、ふっと口に出した。「だが、あまりにも早過ぎたな」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年07月27日
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「ええっ!」「そして、その義親を殺して首を持ちかえってきたのが、ここにいる正盛なのだ」 今度は正盛が膝を乗り出してきて言った。「源義親はあの義家の嫡男で、武勇に優れた剛将であった。だが、父と違って、思慮分別に欠け教養もない、ただの乱暴者でな。京で散々暴れまわった挙句、手に余るとみた朝廷によって対馬守に任じられ、九州へ左遷された。ところが、その九州でも、義親はそこら中を荒らし回り、大宰府の命令も無視してどうにも押さえが利かない。とうとう大宰大弐の大江匡房に告発され、朝廷からは義親に対する追討使が派遣された。父親の義家にも糾弾のため義親を京に連れ戻すように命令が出されたのだ。義家は自分の郎党を追討使に同行させ、義親を捕えようとした。ところが、驚いたことにその郎党が義親側に寝返り、何と追討使を逆に殺害してしまった。その上、義親はそのまま九州に居座り、相変わらず乱暴狼藉を続ける始末。朝廷は、今度は義親を隠岐へ流罪に処すことにした。それでも、義親は流罪の命に従わないばかりか、今度は出雲に居を移し、そこでもやりたい放題のことをした。罪もない民人を殺し、婦女子を犯し、ついには出雲国の国司の目代を殺害した上、官物まで横領したのだ」 正盛は口から泡を飛ばしながら、とうとうとまくし立てる。 堀河の脳裏に、嬉々として針を使いながらにっこりと堀河を見上げた獅子王の顔が浮かんだ。 とても、そんな極悪非道な男には思えないが。↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年07月18日
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まさか、あの獅子王が河内源氏の御曹司だったなんて。 驚く堀河に、実能は続けた。「今から十二、三年ほど前からであろうか。東国の各地で、その義親を名乗る者が時折現れての。それらは概(おおむ)ね偽者であろうということで片がついていたのだが、一年ほど前にまたそのような者が現れ、宇治にある前関白藤原忠実殿の別邸富家殿に匿(かくま)われたという噂があったのだ。その義親が近頃忠実殿の本邸である京の鴨院に移されたというので、何か起こるのではないかと密かに探りを入れていたところ、先夜義親が郎党を引き連れて出陣し、四条大宮で合戦に及んだという。だが、その場から義親だけが姿を消した。それで、巷(ちまた)に間者を放って義親の行方を探させたところ、義親が姿を消した辺りに牛車の轍(わだち)の跡が残っていて、それがこの三条西殿まで続いていたという。だから、この御殿へ桜子を送り込み、義親を探していたわけだ」「でも、なぜそのような武将を、実能様がお探しになるのです。武者同士の小競り合いなど、ほおっておけばよろしいではありませぬか」「確かにそうだな。ただそれだけの話であるならば、私も大して興味は持たぬ。だが、一つ、どうしても解(げ)せぬことがあるのだ」「何でございます?」「それはな……義親は、もうとうの昔に死んだはずなのだよ」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年07月13日
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「なるほど、名乗らなかったか。では、私が教えてやろう。あの男の名は、源義親という」「源義親?」「そうだ。その名を聞いたことはないか?」「さあ」「それでは、源義家はどうだ」「それはもちろん知っております」 源義家は、八幡太郎という通り名で呼ばれる、河内源氏の頭領だった人物である。 義家は前九年、後三年の役で陸奥の戦乱を平定し、東国に源氏の一大勢力を築いた名高い武将だった。もう二十年以上も前に死んだが、その勇名は天下に轟き、今も人々の記憶に残っている。 京の巷では今でも、わしのすむみやまには なべてのとりはすむものか おなじき源氏と申せども 八幡太郎は恐ろしやと、今様で歌われているほどだ。 堀河は会ったことはないが、その名と武将としての功績は、父などから度々聞いたことがあった。「その義家の嫡男が、義親だ」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年07月09日
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正盛は土足のままずかずかと対の屋に上がり込むと、局に入ってところ構わず家探しした。そして、誰もいないとわかると、がっくりと肩を落として座り込んだ。 実能はその様子を黙って見ていたが、やがて正盛について来た郎党たちを下がらせると、堀河と桜子を促して局へ入り、妻戸の掛け金をかけた。そして、正盛の傍らに腰を下ろし、堀河に言った。「説明してもらおうか。あの男をどうしてこの局に匿(かくま)った?」「どうしてと言われても。わたくしはこの御所への帰り道に偶然あの男と行き会い、怪我をさせてしまったので、ここで養生させていただけです。あの男が何者なのか、わたくしは知りませぬ。自分の名すら、言わなかったのですから」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2012年07月06日
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