告白の大御所はラブレターでござる。

告白にゃラブレター、を書こうと思い立つ。それはそれでいいんだが、

どう書けばいいんだ。

つまり真心をこめる。「好きだ」と書け。

何度も書き直してやっと仕上げる。いや、冷静になれ、

一晩過ぎてから読み直すと恥ずかしい。

自分の大便はでたてはそんなに臭くないが、だんだん臭くなる。の理論。

で、赤面して書き直したりする。

このへんであきらめる場合も多いが、ひとかたならぬ根性で書き上げたとする。

「好き」という気持ちはすばらしい。

これを封筒に入れて靴箱に入れるのだ。

ロッカーの扉の隙間でもいい。デスクの大きな引き出しでもいい。手渡しでもいい。

どう渡したらいいかは、好感度の問題である。相手の身になって考える。

つまり、自分を好きな娘がいるとして、この娘は意外にかわいいとして、

一所懸命、その純粋な愛を自分に伝えようとしているとして、せつない恋心を手紙に書いて、

どうやって渡そうかと悩んでいるとして、

そういうのは、なかなかかわいい。

がんばれ、あきらめるな。はずかしがらないで。

なんのこっちゃ。いや冷静に。

もう一晩寝てみよう。

もう一晩寝てから手紙を読み直すと、心配になる。誤解を生むかもしれない、こりゃ欲望の断片が見え隠れしている。

大便してからトイレから出て、入りなおすと、他人の便の臭いがする。の理論。

で、ちょこちょこ書き直すと、ただの時候のあいさつみたいになってきた。

だって、張り出される心配だってある。まるで、痴漢にあったように動揺され、壁に張られ公開されたらどうするんだ。

最悪の場合でも文面は社会生活を継続できる程度の告白にとどめておかねば。リスクが大きい。

張り出されないまでも、昼食時に他の女子と回し読みして嘲笑されるかも。それすら取り返しのつかないことではないか。

家に持って帰って、しつけの厳しい親父さんに見せられて、呼び出され、正座で2時間。

ネットに公開されて、情報化社会の食い物にされるかも。さらし者だ。

母親がコープに買い物にいけなくなったり、父親の植木がこわされたり、ポチに石が投げられたりするかもしれないじゃないか。

いくさに負けて殺されて、首をはねられた上にさらし首とは、いくらなんでもひどすぎる。

どうして他人の心理的苦しみを快楽にできるのか、この世は無常のかたまりである。

シカト（無視）かもしれない。ノートやデスクに落書きされる。お前、ナニ様だ。明日までに50万円もってこねえとわかってるだろうなあ。このド変態野郎。わたしの靴をお舐め。だれか助けて。事なかれ主義。村八分。パンとコーヒー牛乳買って来いや。セクハラ。吊るし上げ。階段から突き落とされる。車道に突き出される。ホームから突き落とされる。ブレイクダウン。土下座。椅子に画鋲。トイレのデッキブラシ。心的外傷後ストレス障害。靴にゴキブリ。鍵穴にアロンアルファ。マンション10階のベランダ。引きこもり。3回まわってワンと言え。集団リンチ。裸の写真をばらまくぞ。万引き強要。給食費滞納。根性焼き。ノイローゼ。アル中。生きジゴク。家庭崩壊。毒入りギョーザ。統合失調症。円形脱毛症。

拝啓

突然のお手紙お許しください。

あなたの近くに、あなたのことを好きだというのがいるので

お気を付けください。

がんばってください。

敬具

P/S 匿名をお許しください。