シェイクスピアを翻案した時代劇というと黒澤明監督の「蜘蛛巣城」「乱」の二作品があることはご存じでしょう。ここで紹介する「炎の城」と黒澤監督の二作品に共通するところは、時代背景を戦国時代にしていることと、 4
大悲劇にもとづいていることです。加藤泰監督は、黒沢作品「羅生門」ではチーフ助監督をやっていました。
「蜘蛛巣城」からはモノクロで水墨画を思わせる画面と力強さで描かれていますが、「炎の城」は華やかな美しい色彩感覚の映像の中に細やかな心理劇が展開されていきます。ラストの燃えさかる城の凄まじい変化の状態を描いていきますが、その中での殺陣の場面は東映時代劇の要素を見せないものになっているといえましょう。
加藤監督は「炎の城」は”失敗作だ”と自戒の言葉を残した最大の理由には、ラストシーンにありました。当時のスター中心の考えの会社側との意見の違いから思うように撮影できず、不条理な結末にしてしまったことです。
◆第 68
作品目 1960
年 10
月 30
日封切 「炎の城」
王見正人 大川橋蔵
六角雪野 三田佳子
王見時子 高峰三枝子
王見師景 大河内傅次郎
多治見庄司 黒川弥太郎
六角直之進 薄田研二
六角祐吾 伊沢一郎
相楽宗恵 坂東吉弥
王見勝正 明石潮
陀七 河野秋武
シェークスピアの有名な「ハムレット」を時代劇風に脚色、1560年頃の瀬戸内海沿岸の玉見城を舞台に繰り広げられる復讐劇。
留学先の明から帰国した王見城の若殿・王見正人を待ち受けたのは父・勝正の急死だった。叔父の師景が正人の母・時子を妻にして城主となり、悪政によって民を苦しめていることを知った正人は、乱心を装って周りの目を欺き、父の死は師景の謀略であることを追及、討とうとするが・・・。
真相を確かめるのだ
海岸沿いの映像・・・今から 400
年近く以前、瀬戸内海の沿岸に・・・
場所は王見城、六角直之進に城主王見師景は、昨夜正人の乗っている船が嵐にあって沈む夢を見た、これが正夢ならわしは運がいい男だ、と話しているところへ、物集港から早馬で正人の姿を見たという知らせが届いたのです。
その知らせを聞いた王見城の若い家臣達は正人の帰るのを希望をもって待ちこがれ、また、時子に仕える雪野もまた正人の帰りを喜んでいます。師景と直之進は正人の帰国をどう迎えるか考えている頃、多治見庄司が 小舟でやって来た正人を出迎えて
いました。父上のこと、叔父師景の悪事と師景の妻となった母時子のこと等、 変ってしまっている王見城の様子を教えてくれた庄司に正人は感謝する
のです。
このままでは、叔父師景にも母時子にも会えぬという正人。
庄司が、正人にこれからどうされるのかと聞くと、
正人「真相を確かめるのだ、証拠をにぎるのだ。父上が急病で亡くなったというの
は表向きのことで、その本当の死因については、いろいろなことをいう者が
いると、お前いったではないか」
ひとまず城へ帰らないと・・・という庄司に、明国へ連れて行った供の者達を先に返してある、といい父上が亡くなってお役御免になり国へ帰った老臣二人から何か聞けるかもしれない、と訪ねます。
まずは一色主女を訪れたが。すでに この世の人ではなくなっていました
。お役御免になって帰って来ると、すぐ城からの使者が来て、先君の殉死を求め、その場で切腹させたというのです。「恐らく、主女殿は 何か大事なことを知っていた
のです」と庄司がいいます。
正人は庄司に先に城へ帰るように、そして、「雪野に俺も間もなく帰るからと伝えてくれ」
海の向こうの新しい知識を得、誰も彼もが安穏に暮らせる天国にしたかった、しかしそのために父が一番自分を必要とした時にその場に居合わすことが出来なかった、と 正人は悔やみます
。
正人は庄司に先に城へ帰るように、そして、
正人「雪野に俺も間もなく帰るからと伝えてくれ」
といい、もう一人の相楽伊賀亮を訪ねます。が、伊賀亮もこの世の人ではありませんでした。国へ帰って来た翌日、裏の沼で釣りをしているところに、急に矢が飛んできて胸板を貫いた、というのです。城へ訴えたが何の音沙汰もなく泣き寝入りで・・・ それでいやになって百姓になった
、という息子宗恵の気持ちを思い、
正人「無理もないことだと思う・・・が、 伊賀亮に聞きたいことがあって来たん
だ
」
その言葉に宗恵が正人の方を振り返ったとき、「より合いだあ」という声が聞こえに、「何事だ」と聞くと、宗恵は正人を誘い村の話を聞いてほしい、と。
宗恵「今村は大変なことになっている、 みんな正人様の帰りを待っていたんだ
」
正人「・・・ うん
」
続きます
。
炎の城・・・(2) 2024年05月18日
海賊八幡船・・・(18) 2024年04月27日
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