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玉ねぎと人参入りのシュリンプ(小エビ)カレーをつくりました。甘みがあるのでエビ好きな子供に喜ばれます。シュリンプカレー冷凍小エビ 1袋玉ねぎ 1個人参 1/4個オリーブ油 大さじ1バター 8g冷凍鶏手羽先 6本固形カレールー 3個塩 少々こしょう 少々ブロッコリー 適量らっきょう 少々1.鍋に「手羽中と椎茸の甘辛煮」で使わずに冷凍保存した手羽先を解凍し、水を加えてスープをつくる。2.小エビを解凍し、塩とオリーブ油を振りかけておく。玉ねぎは薄切りに、人参はすりおろす。3.フライパンにバターを入れ、玉ねぎをよく炒め、人参を加えて炒め合わせ、塩・こしょうをし、手羽先のスープに入れて煮る。カレールーを加え、カレーソースをつくる。4.フライパンに小エビを入れて軽く炒め、カレーソースの鍋に加える。5.ご飯を皿に盛り、カレーを入れ、ブロッコリーとらっきょを添える。「ブロッコリーはオイル蒸し」フライパンにブロッコリーを入れ、オリーブ油・塩(少々)・水(大さじ2)を入れてフタをして蒸す。※すりおろした人参を入れると甘みがあるカレーになります。
2023年03月30日

もう一品ほしいとき、家庭でストックしている食材で。ピーマン、玉ねぎ、ちりめんじゃこの炒め物をつくります。味付けは醤油だけでも玉ねぎの甘みとじゃこの塩分で十分です。ピーマンと玉ねぎのじゃこ炒めピーマン 2個玉ねぎ 1/2個ちりめんじゃこ 大さじ2醤油 小さじ1サラダ油 大さじ11.ピーマンと玉ねぎは大きさを揃えて、縦に細切りにする。2.フライパンにサラダ油を引き、ピーマンと玉ねぎを炒め、じゃこを加えて炒め合わせ、最後に醤油を回しかける。※簡単につくれて美味しく食べられます。
2023年03月28日

餃子の皮に油揚げを使った豚肉とキャベツ入り油揚げ餃子です。いなり寿司用の油揚げを使うと簡単にできます。からし醤油をつけて食べると、とても美味しいです。油揚げ餃子豚ひき肉 100g油揚げ 2枚キャベツ 2枚ねぎ 10cm塩 少々おろし生姜 小さじ1【調味料】ごま油 少々 鶏ガラスープの素 小さじ1 塩 適宜 こしょう 適宜ごま油 大さじ1からし 適量醤油 適量1.キャベツ、ねぎはみじん切りにして塩を振り、水けを絞る。2.ボウルに、豚ひき肉、生姜、キャベツを入れてよく練り、【調味料】を加えて混ぜ、具材をつくる。3.油揚げは熱湯をかけて半分に切り、具材を詰める。4.フライパンに、ごま油を熱し、油揚げの両面をこんがりと焼き、水(大さじ2)を加え、フタをして5分ほど蒸し焼きにする。5.油揚げ餃子は三角に切り、からし醤油を添える。※油揚げは熱湯をかけると皮に弾力が出て扱いやすくなります。
2023年03月25日

こんがり焼いた鶏手羽中と干し椎茸の甘辛煮です。手羽中はコラーゲンが豊富ですが、カロリーがあるので本数は控えめに。しかし、鶏肉の手羽のなかで手羽中が一番美味しいです。手羽中と椎茸の甘辛煮鶏手羽中 6本(手羽先を切って使う)干し椎茸 4枚生姜 10gごま油 小さじ1【調味料】酒大 大さじ2 醤油 大さじ2 砂糖 小さじ2 みりん 小さじ21.干し椎茸は水に半日ほど浸けて、柔らかく戻し、縦半分に切る。戻し汁はとっておく。2.生姜は薄切りにする。3.フライパンにごま油を熱し、手羽中の皮を下にして両面をこんがりと焼く。火を止めてペーパータオルで脂を拭き取る。4.フライパンに椎茸の戻し汁と【調味料】を入れ、生姜、椎茸を加え、煮立ったら弱めの中火で落としブタをして、ときどき返しながら20分ほど煮る。5.煮汁が残っていたら落としブタを外し、煮詰めて照りを出す。※切り落とした手羽先はスープに、カレーの出汁に使います。
2023年03月23日

スモークサーモンの香りが気になるときはマリネにするとよいです。新玉ねぎと一緒に、白ワイン、オリーブ油、粒マスタードのマリネ液で。パンやパスタの付け合わせに、ご飯にも合います。スモークサーモンと新玉ねぎのマリネ新玉ねぎ 1/2個スモークサーモン 50g【マリネ液】白ワイン 大さじ1 オリーブ油 小さじ1 粒マスタード 小さじ1 塩 少々 蜂蜜 少々黒こしょう 少々刻みパセリ 少々1.新玉ねぎは薄切りにし、 10分ほど水にさらしたら水気を切る。2.スモークサーモンは食べやすい大きさに切る。3.【マリネ液】はよく合わせおく。4.お皿にスモークサーモンを並べ、中心に玉ねぎをのせる。【マリネ液】をかけ、黒こしょうと刻みパセリを振る。※砂糖の代わりに蜂蜜を使うとまろやかになります。
2023年03月21日

キャベツを芯に豚ロースで巻いたフライパン蒸しです。豚肉巻きは食べやすい大きさに切り、ごまダレでいただきます。小林まさみさんのレシピを参考につくりました。豚肉巻きのキャベツ蒸し豚ロース肉(薄切り) 12枚春キャベツ 3枚【調味料】練りごま(白) 大さじ1 砂糖 小さじ2 酢 小さじ2 醤油 小さじ1 すりごま(白) 小さじ1 水 小さじ1/2 塩 小さじ1/6塩・こしょう 少々1.キャベツは耐熱皿にのせ、ラップをふんわりとかけ、電子レンジに4〜5分ほどかける。粗熱が取れたら麺棒で軸をつぶす。2.【調味料】は混ぜ合わせておく。3.豚肉は2枚1組にして少し重ねて広げ、塩、こしょうを振る。キャベツは肉の幅に合わせて横幅を折り、クルクルと棒状に巻く。4.豚肉1組にキャベツ1本のせ、きつめに巻いてギュッと握る。同様にして計6本の肉巻きをつくる。5.フライパンに肉の巻き終わりを下にして並べ、水(大さじ2)を回し入れ、フタをして強火にかける。フツフツとしてきたら弱火にし、7〜8分ほど蒸す。6.肉巻きは3等分に切って器に盛り、【調味料】をかける。※ごまだれは、練りごまとすりごまを使うと味に深みがでます。
2023年03月18日

豚ひき肉に豆腐とニラを加えた簡単な炒め物です。ボリューム感のある栄養満点のおかずです。豚ひき肉と豆腐のニラ炒め豚ひき肉 100g豆腐 1/2丁ニラ(小束) 1ワ卵 2個【調味料】生姜 大さじ1(みじん切り) 醤油 大さじ1 砂糖 大さじ1/2酒 大さじ1顆粒チキンスープの素 小さじ2水溶き片栗粉 片栗粉+水(各大さじ1)ごま油 少々1.豆腐は紙タオルに包んで水けを切り、1cm角に切る。ニラは2cmの長さに切る。2.ボウルに水溶き片栗粉を入れ、卵を加えてよく混ぜ、卵液をつくる。3.フライパンに、ひき肉と【調味料】を加えパラパラになったら、酒と顆粒チキンスープの素を入れ、豆腐を加えて2~3分ほど炒め煮にする。4.ニラを加えて炒め、卵液を回し入れ、大きく混ぜて火を通す。仕上げにごま油を回しかける。※卵液を入れたら、あまりかき回さないで手早く仕上げます。
2023年03月16日

冬大根の美味しい季節が終わる前につくることにしました。ホタテ缶と大根をマヨネーズで和えた定番料理です。スナップエンドウをあしらって、ちょっと華やかに。大根とホタテ缶のマヨ和えホタテの缶詰 1缶(65g)大根の輪切り 3cmスナップエンドウ 適量塩 小さじ1/3マヨネーズ 大さじ2こしょう 少々1.大根は皮を剥いて、2~3mmの細切りにし、塩を振って10分ほどおく。2.スナップエンドウは塩茹でにする。 3.ボールに缶汁切ったホタテ、よく絞った大根を入れ、マヨネーズとこしょうを加えて和える。3.器にスナップエンドウを並べ、真ん中にホタテと大根のマヨ和えを盛る。※大根はホタテに合わせて細切りにします。
2023年03月14日

厚揚げを【合わせ調味料】でじっくり煮含めたおふくろの味です。すぐに食べないで何度か温め直すと味がよくしみて美味しくなります。厚揚げの含め煮厚揚げ(140g) 2枚さやいんげん 4~5本【合わせ調味料】だし汁 2カップ 砂糖 大さじ2 醤油 大さじ2 みりん 大さじ1 酒 大さじ11.厚揚げは熱湯をかけて油抜きし、1枚を4つに切ったら斜め切りにする。2.鍋に【合わせ調味料】と厚揚げを入れ、落としブタをして弱火で20分ほど煮る。3.煮汁が三分の一になったら、火を止めてフタをして30分ほど置く。4.さやいんげんを塩茹でする。5.厚揚げの鍋をもう一度火にかけ、煮汁が少なくなるまで煮含める。 器に厚揚げを入れ、さやいんげんは煮汁に一度くぐらせてから盛りつける。※お弁当にも入れられます。ブログ連載 長編時代小説 密かごと「密かごと」を終えて1月から「密かごと」(週3回、28回連続)を掲載し、歴史時代小説にもかかわらず、多くの方に読んでいただくことができましたこと、心より感謝申し上げます。木更津の料理茶屋を中心とした話ですが、後継者問題、海の守りなど今日的なテーマでもあります。歴史は過去のできごとではなく、未来の道しるべになることもあると思っています。私も85歳を迎え、これが最後の小説と思い、全力で取り組んでまいりました。これまで大病もせず、健康で過ごせたのは食事づくりを大切にし、30年以上欠かさず続けてきた気功鍛錬のおかげだと自負しています。今後も「グランマの手料理レシピ」は、健康寿命の維持を目標に続けていくつもりです。ご読了ありがとうございました。
2023年03月11日

いわしの蒲焼き缶詰は、生のいわしに比べて栄養価が高いといわれています。DHAは1.6倍、EPAは2.3倍もあり、骨が含まれているのでカルシウムもあります。いわしの蒲焼き缶を使って「蒲焼き丼」をつくりました。1缶を2人でシェアしたので、ブロッコリーと茹で玉子を添えました。いわし缶の蒲焼き丼ご飯 2杯分いわし蒲焼き缶 1缶もみ海苔 全形の1/2ブロッコリー 適量茹で玉子 1個粉さんしょう 少々奈良漬け 4切れ1.卵(2個)を茹でて、マヨネーズ(大さじ1)と醤油(小さじ1)に1日ほど漬けておく。今回使う茹で玉子は1個だけ。2.ブロッコリーは塩水を振って、レンジで2分ほど加熱する。3.フライパンに、いわし缶を汁ごと入れて温め、汁だけをご飯にかける。 4.ご飯の上に海苔を敷き、いわしを載せ、茹で玉子とブロッコリーを添え、粉さんしょうを振る。5.鰻丼を真似て、奈良漬けを添える。※江戸時代より奈良漬は鰻の脂っこさを抑えると、鰻丼に付け合わせていたそうです。ブログ連載 長編時代小説 密かごと最終章 柘植の櫛さちの告白人はなんらかの過去を背負って生きている。避けられないことではあるが、いつまでも重荷にするのは止めようと、さちは封印してきた自分の過去に決着をつけることにした。佳乃は進之助の前では何も言わなかったが、手箱の中の櫛についてきっと聞いてくるに違いない。結婚したいまの佳乃ならば、さちの言葉にも耳を傾けてくれるだろう。さちは袱紗に包んだ櫛を懐に収めると、湯から上がったばかりの佳乃を呼び止めた。「お前が気にしていたあの櫛だけど」「おばばさん、やっぱり、何かあるのね」櫛が母寿美のものではなく、祖母のものであるらしいことは佳乃も薄々感じていた。「あの櫛は然(さ)る、お方から・・・」「然るお方?」「ここには御船手衆の方がよくお見えになることは、お前も知っているだろう。そのお方は御船手同心で菊地彦十郎様というお方で」「えっ、先日、お見えになった菊地弥太郞さんとも関係が?」佳乃は菊地と聞いてすぐにぴんときた。あのときの祖母の様子が何か意味ありげだったからだ「弥太郞様は、その方のご子息だったんだよ」さちは過去の記憶をたぐり寄せるように、菊地彦十郎との出会いを語りはじめた。 * * * *菊地彦十郎は定湊廻りのお役目の後、木更津の船持たちに頼まれて、子どもたちに向井流の泳ぎを指南していた。向井流は御船手泳ぎともいわれ、海の侍たちのために考案された泳法だった。御船手頭向井将監によって創設され、御船手衆に代々引き継がれている。菊地彦十郎は立派な体格の持ち主で、向井流のお泳ぎの名手だった。その頃、さちの亭主作治は酒と女に明け暮れ、江戸へ行って戻らない日が続いていた。それもまるっきり行ったきりではなく、ときどき思い出したように帰ってくるので、夫婦の体面はなんとか保たれていた。二人の間には子ができず、さちが子を産める時期も限られてきた。子はどうしてもほしい。このままでは跡継ぎがいない。満たされぬ心は行き場を失ない、さちは焦っていた。 菊地彦十郎が、お役目でまた訪れたのはそんなときだった。木更津船の廻船状況を調べた後、この日も褌姿で現れた菊地彦十郎は、子どもたちに向井流の泳法を指南した。船から落ちたときなどに役立つ『立泳(たちおよぎ)』と基本の『平水(へいすい)』を子どもたちに教えた。それを遠巻きに見ていた木更津船の水主(かこ)たちに、今度は実物の船を使って舷に飛びつく『諸抜手(もろぬきて)の跳飛術』を披露した。水主たちから歓声の声が上がると、菊地彦十郎は実際に役立つ『平泳ぎ』、長距離をゆっくり泳ぐ『平掻(ひらかき)』、泳力を養成する『抜手』、流水渡りなどに用いる『肩指(かたさし)』など、向井流の技を次々に見せた。菊地彦十郎は精悍で気迫に溢れ、風貌はまさに海の侍だった。折に触れて見せる笑顔には懐かしさがあり、話しぶりの優しさは人を魅了した。その夜の梅乃井は、御船手同心の菊地彦十郎が主客の宴席だけだった。二階の座敷に集まった船持たちは、向井流泳法の奥義を披露してくれた菊地彦十郎に感謝し、代わる代わるが酌をした。菊地彦十郎は酌責めに合い、昼間の指南で体力を使ったせいか、酒のまわりが早く、すっかり酩酊し、都々逸を口ずさんだ。嫌いなお方の親切よりも 好きなお方の無理がよい 皆が称賛の拍手を送ると、菊地彦十郎は陽気になり、さちにも酒を勧める。「たまには、一緒に飲もうじゃないか」さちの腕をつかむと、自分の杯を握らせて酌をした。「お酔い遊ばされたようでございますので、しばらく、ご休憩なさていかれた方がよろしゅうございますね」さちがさりげなく言うと、居合わせた船持たちもその方がよいと勧め、菊地彦十郎は酔いを覚ましてから宿泊している船宿に戻ることになった。さちは、そっと席を立つと別室に床の用意をした。菊地彦十郎は船持の一人に支えられ、さちの敷いた床に入ると、船持たちは帰っていった。 さちは胸の動悸を押さえようと板場に向かった。湯飲み茶碗に水を入れていると、「女将さん、何かまだすることはございますか?」板長の佐助に声を掛けられた。「いえ、何もありません。皆さん、お帰りになりましたから、もう休んでください」「それじゃ、お休みなさい」佐助は寝泊まりしている奥の小部屋に引き上げて行った。さちは水をひと息に飲み干し、茶碗を洗うとまた水を入れ、盆に載せて二階へ上がった。菊地彦十郎は天井を向いて寝ていた。月明かりに浮かぶ顔は、眠っているのか起きているのかわからない。さちは布団から少し離れたところに座わるが、水を入れた茶碗を持つ手が震えている。菊地彦十郎はまだ天井を向いたままだった。根くらべのような沈黙が続き、菊地彦十郎が突然、寝返りを打つ。眠ってはいなかった。さちが目の前に座っているのは気づいていた。驚いた様子もなく、さちの持っている茶碗に手を伸ばし、茶碗を受け取ると水を飲む。男の喉仏(のどぼとけ)が波打っているのを、さちは固唾(かたず)をのんで見守っていた。菊地彦十郎は酔った振りをしていたのだ。さちはゆっくりと浴衣の帯と腰紐をほどき、体を這わせるようにして菊地彦十郎のもとに擦り寄った。「お許し下さいませ」さちは囁くと自らの体を菊地彦十郎の体の上に重ねていく。〈どうか、新しい命をお授けください〉さちが心のなかで呟くと、菊地彦十郎は優しく受け止めてくれた。忘れかけていた男との交わりは密かなるものへと封じこめられていくのだった。 * * * * 「菊地彦十郎様に運をまかせたのだよ」さちは話し終えると、絞り出すような声で言った。佳乃は言葉を失い、呆然としている。「寿美は御船手同心の菊地彦十郎様の子なんだよ」「えっ!」佳乃が驚きの声を上げた。「それじゃ、おっかさんも、あたしも、御船手のお侍さんが父親なの?」「そういうことだよ」さちは自分の胸にだけ収めてきた『密かごと』を初めて佳乃に打ち明けた。菊地彦十郎とは一度だけの関係だった。さちは弁天様に願を懸けて祈り続け、身ごもっていることがわかったときは、作治の娘として産み、作治の娘として育てることにした。それは偽り人生の始まりで、重荷を背負うこととなった。「おじじさんは、あたしの、おっかさんが自分の子でないことは」「知っていたかもしれないし、知らなかったかもしれない」作治は薄々感じていて、さちを困らせることで自分の気持に折り合いをつけていたのかもしれないと、さちは後年、思うようになった。佳乃は、祖母がそんなことまでして母を産んだことに得心がいかなかった。「人は生きていると覚悟をしなければならいときがあるんだよ」「それは、おばばさんの言いわけ?」「あのときの、おばばの覚悟がなかったら、寿美もお前も、この世にいなかったことになるんだよ」そんなふうに言われると佳乃も返す言葉がなかった。「おっかさんは実の父親のことを知っていたの?」「いや、話していない」「どうして話してやらなかったの」「もっと早くに、話してやればよかった。寿美を傷つけるのではないかと、怖くて話せなかったんだよ」寿美は生まれたときから暗い宿命を背負わされていた。父親の作治からは冷淡に扱われ、忙しい母親からは愛されているという実感がなかったので、一緒になれる当てのない男の子でもよいから産みたかったのかもしれない。「おっかさんは、ひょっとすると、おとっさんが実の父親でないことを知っていたんじゃない?」「どうして?」「あたしが父無し子だったことを知っていたように、おっかさんも知っていたのかもしれない」「まさか!」さちはそう言うと懐に手を入れ、袱紗に包んだ櫛を握りしめた。椿を彫ったこの柘植の櫛が、御船手同心の菊地彦十郎から送られてきたのは、あの夜からひと月後だった。文が添えられ、平安の時代には櫛を贈るとまた再会できるといわれていたと書かれていた。だが、菊地彦十郎との再会は叶わなかった。さちは贈られた椿が彫られた柘植の櫛を一度も髪に挿したことがない。どうしても挿すことができなかったのだ。(了)
2023年03月09日

肉厚の生椎茸を焼いて、山芋と一緒に梅肉あえにしました。まろやかな酸味が食欲をそそり、これだけも、ご飯が食べられます。焼き椎茸と山芋の梅肉あえ生椎茸 3個山芋 3cmの輪切り梅干し(赤じそ漬け) 2~3個かつ節 2g醤油 小さじ1刻み海苔 少々1.生椎茸は水で洗わず、汚れを拭き取り、網焼き(フライパン焼き)にする。粗熱が取れたら千切りにする。2.山芋も千切りにする。梅干しは種を除き、よく叩いておく。3.ボールに、梅、 かつお節、醤油を入れてあえ、椎茸と山芋を加えて味をなじませ、器に盛り、刻み海苔をのせる。※焼いた生椎茸はコリコリした山芋とよく合います。ブログ連載 長編時代小説 密かごと第5章 幕府水軍3.坂上進之助、木更津へ 坂上進之助が木更津を訪れるのは、佳乃の婚礼以来だった。役目を離れて梅乃井に一人でぶらりと現れた。「お久しぶりでございます」さちが愛想よく迎えてくれた。進之助が遠島送りの役目で三宅島に行っていたことを告げると、「まあ、左様でございましたか」さちは遠島送りと聞くと、江戸で暮らしていた頃を思い出す。『流人船』と書かれた白木綿の幟(のぼり)をつけた船が、日本橋川を下っていくのを見たことがある。漢字で『流人船』と書かれていると軽い罪の者を乗せた船で、仮名で『るにんせん』あると重い罪を犯した者を乗せた船だった。生きて帰れば赦免もあるが、命を落せば万事休す。遠島送りは三途の渡り川だと、父久兵衛が言っていた。「重い罪の人たちも・・・」さちが聞くと、「八丈島送りが1名」進之助が答えた。「八丈島にも行かれたのですか」「いや、三宅島の役人が日和を見て、八丈島へ流罪人を送ってくれることになった」「それじゃ、重罪人と三宅島までは一緒だったんでございましょう」「重罪人と言っても、人殺しではありませんよ」進之助は笑いながら、蘭学者と通じて御政道を誹謗した罪人が八丈島送りになったのだと言った。「それだけで八丈島送りですか」「源八郎という名の男だが、人騒がせな男で」進之助は役目を無事に終えた安堵感から、つい口を滑らせてしまう。流人船は新島で3名を下ろし、海上13里先の三宅島へ向かうことになった。ところが、春嵐に見舞われ、海は大しけとなり、船を出すことができず、しばらく新島で様子を見ることになった。この嵐では罪人たちも逃げ出すことはないだろうと、進之助たちは油断をし、流人小屋の鍵を確かめなかった。朝になって雨が止み、小屋を開けると三宅島送りの3名はいるが、八丈島送りの源八郎の姿が見えない。小屋抜けをしたと大騒ぎになり、皆で手分けして島の探索がはじまった。新島は南北に二つの山を持ち、白い砂浜が弧を描くように続く、美しい島だった。見つけたとき源八郎は砂浜に座って海を眺めていた。島抜けをしようとしたのではなく、嵐の収まった海を見にきたのだと言った。進之助は、源八郎の挙動に不審な点はないと思った。ところが、目付役の古屋好太郎は島抜けをしようとして海の様子を見に来たに違いないと、源八郎の言い分を信じない。無断で小屋を抜け出したことは事実であり、自分たちが鍵を掛け忘れたことが問われては困る。源八郎は鍵をこじ開け、島抜けをしようとしたのだと古屋好太郎は保身をはかる。島抜けとなれば死罪は免れない。源八郎は不運な男だった。蘭学者の使い走りをしていただけで捕らえられた。人に騙されやすく、利用されやすい男だったのだろう。それだけに罪を犯したという自覚がなかったのだ。進之助は、船頭役の大野房二を説得し、源八郎は島抜けを思い留まったということにした。死罪にはならなかったが、後味の悪い出来事だった。「侍が、つくづく嫌になりました」「坂上様ともあろう御方が・・・」さちは気弱な進之助を見るのは初めてだった。「この後、御船手組がいつまであるか」「えっ、御船手組がなくなるのですか」「いや、すぐということではない」進之助は、昨今の国の動きを掻い摘んで話した。「そうでございましたか」梅乃井にとって御船手衆は大事な客人だけではなく、さちにとっても切っても切れない関係にある。行灯の火がふっと吹き消されたように過去の闇が、さちの心に押し寄せてくるのだった。進之助が訪れたことを知った佳乃は座敷に現れると、「おいでなさいまし」若女将としての挨拶をする。「おお、若女将としての貫禄も付いて・・・」進之助は目を細めて佳乃を見た。「真吉とは仲睦まじく過ごしおります」さちは二人の夫婦仲がよいことを強調したかった。「それは何よりだ」進之助は父親らしい気持を覗かせると、懐から櫛を取り出し、三宅島の土産だと言った。「これをわたしに?」佳乃は櫛を見て思わず、さちの顔色を窺った。さちは胸の前で両手の指を強く絡ませて黙っている。佳乃が、さちの手箱で見つけた柘植の櫛には色が付いていなかったが、進之助のくれた椿の櫛には真っ赤な彩色が施されていた。「柘植の櫛は、使えば使うほど味が出るそうだ」進之助がそう言葉を添えると、「有り難うございます。大切に使わせてもらいます」佳乃は素直に受け取った。進之助は佳乃の言葉に頷き、父子の新しい関係が持てそうな気がするのだった。(つづく)
2023年03月07日

季節を迎えた菜の花が主役の混ぜご飯です。菜の花は茹でて昆布じめにし、ご飯は酢飯にせずに梅干しを使います。昆布の香りがして、菜の花がおつな味になります。菜の花の昆布じめ菜の花 1束塩 少々水 大さじ2昆布 3枚(15×20cm)1.菜の花は全体を20分間ほど水につけ、シャキッとさせる。2.フライパンに、菜の花を入れて塩を振り、水を回し入れる。フタをして強火にかけ、蒸気が出たら上下を返し20~30秒ほど蒸し、粗熱を取る。3.ラップに昆布を1枚を敷き、菜の花の半量を並べ、同じ大きさの昆布をのせる。同じように残りの菜の花を昆布で挟み、ラップでぴったりと包む。2時間ほど冷蔵庫におく。※昆布じめにした菜の花が余ったら、お刺身に添えたり、酢の物にも使えます。菜の花入り混ぜご飯菜の花と一緒に6種の具を、ご飯に混ぜると華やかになります。酢飯にしないで梅干しを使うので、お寿司ではなく混ぜご飯です。米 3カップ(普通に炊く)菜の花 100g塩昆布(細切り) 30g梅干し(シソ漬け) 2~3個卵 2個生椎茸 4枚白ごま 大さじ4もみ海苔(全形) 1枚塩 少々酢 1~2滴酒 大さじ1薄口醤油 大さじ11.梅干しは種を除き、包丁でたたく。昆布じめの菜の花を細かく刻んでおく。2.卵は塩と酢を加えて、炒り玉子をつくる。3.生椎茸はフライパンで焼き、細かく刻み、酒と薄口醤油に浸して、汁けを絞る。4.温かいご飯に、白ごま、梅干し、塩昆布、玉子、椎茸を加え、もみ海苔と『昆布じめの菜の花』を散らして大きく混ぜる。※菜の花は昆布じめにしなくても、茹でて薄口醤油を振ったものを使ってもよいです。ブログ連載 長編時代小説 密かごと第5章 幕府水軍2.御船手衆の行方坂上進之助が遠島送りの役目から無事に戻ると、船手衆のなかでは異国船打払令が撤回されるという話題で持ち切りだった。これまで幕府は異国船の度重なる脅威に対し、日本に近づこうとする異国船は理由にかかわらず打ち払い、上陸しようとする外国人は逮捕し射殺してもよいとしてきた。その異国船打払令が撤回されることになったのだ。船手衆のなかには、この法令撤回を契機に異国船が攻撃してくるのではないか、これが幕府の命取りになるのではないかと危惧する者もいた。坂上進之助は詳しい状況を知るため、船手屋敷に与力の菊地弥太郎をたずねた。「どうして、異国船打払令を撤回したのでしょう?」坂上進之助の問いに、「清国が英国に敗れたことにあるようだ」と与力の菊地弥太郎は答えた。老中の水野忠邦は、阿片戦争で清国が英国に敗れたという知らせを受けると、異国船打払令を改め、薪水給与令(しんすいきゅうよれい)を発令した。薪水給与令は異国船には柔軟な対応をし、食糧や薪や水を与えて温和しく帰っていただくというものだった。「触らぬ神に祟りなしですか」「そういうことだな」「しかし、一時凌ぎの方策ですね」「異国から国をどう守るか、順当な対策でないことは確かだ」江戸湊の守りをしてきた船手組与力の菊地弥太郎にとっては、幕府が海防という問題を先送りにしたとしか思えなかった。「ところで、浦賀奉行が廃止されるそうですね」「ああ、そうだ」「どうしてです?」「浦賀奉行の役割が代わったのだ」「代わった?」「浦賀奉行が海防の最前線となったのだ。下田奉行が復活し、新たに羽田奉行も任命されるそうだ」「幕府は異国船の脅威に対し、着々と手を打っているんでしょうか」「海防策を強化せざるを得ないのだろう」江戸開府以来、江戸湊の警固は三浦半島や房総半島に知行地を持つ、幕府水軍の旗本である向井将監を中心とした船手衆が当たってきた。幕府は海防の強化として、川越藩に相模、今治藩に房総の警備を命じ、会津藩と白河藩には相模と安房の沿岸に御台場の建設を命じた。諸藩に負担を課したのは、幕府の財政難に加え、天保8年(1837)に米国の商船モリソン号の来航があったからだ。「モリソン号が日本人漂流民7名を乗せ、通商を求めてきたのは知っているだろう」「ええ、浦賀沖で我が国の砲撃を受け、江戸湾を退去した事件ですね。あのときは拙者も間近で目撃していました」「幕府水軍の船は蛇に見込まれた蛙のようだったな」「飲み込まれたら、一溜まりもありませんね」「まさに、大蛇の如しだ!」「装備の大砲も、またすごかったですね」「御台場の大砲では太刀打ちできないこともわかったのだ」幕府水軍の装備が時代に即したものではないことは、菊地たちにもわかっていた。「通商を求めてきたということは」「開国を迫ってきたということだ」「幕府内には、開国止むなしという考えもあるそうじゃないですか」近ごろは進之助たち同心の間でも、開国すべきだという意見が大半を占めている。「開国にしても、鎖国を続けるにしても、異国船が脅威であることに変わりはない」菊地弥太郎は海防政策の立て直しが必要だと言った。幕府は秘かに海軍創設を進めていたが、世上に反幕的な動きがあり、計画が外部にもれることを恐れ、秘密裡に海防を充実しようとしていた。「それはそうと、養子縁組の件はどうなった?」菊地が急に話題を変えた。「貧乏同心のところには、なかなか来てくれませんよ。武家の養子婚姻の規制で、養子を迎えることは難しくなりました」「御役目を返上するのか?」「それしか、道はありません」「そうか」菊地には後を継いでくれる息子が一人いる。「これも因果と、あきらめています」「因果とは大仰な!」「いや、そんな心境でございます」進之助は二人の息子に死なれ、妻にも先立たれ、迎えた養子には逃げられ、若き日の過ちが禍しているのではないかと思うこともある。「ひょっとすると、そなたは気楽な身分かもしれん」「気楽ですか?」「いや、妻子の心配をせずにすむからだ」「どういうことで?」「船手組のこれからを思うと・・・」「船手組が、お取り潰しに?」「いやいや、そういうことでは」菊地は慌てて言い直したが、海軍創設の機運が盛り上がれば、幕府水軍の解体もあり得ることだった。進之助は陰鬱な気分で組屋敷に帰ると、待っているのは布巾をかけた夕餉の膳だった。飯の煮炊きを頼んでいる老婆が、進之助の帰る時刻に合わせて用意してくれたものだ。妻お登勢を亡くしてからは、こんな暮らしが続いている。独り暮らしには慣れたはずなのに、この夕餉の時刻になるといまでも辛くなる。ひとりで黙々と食べる味気なさは、言葉には言い尽くせぬ寂寞としたものがあった。与力の菊地弥太郎は、足手まといとなる妻子がいないので気楽な身分だといったが、それは家族がいる者の台詞だ。かっての進之助も妻や子がいた頃は、家族は自分を縛り付ける疎ましいものだと思ったことがある。その疎ましさが、いまは懐かしくさえあった。夕餉を食べ終え、汚れた器を洗っていると男やもめの淋しさが胸に沁みてくる。こんな夜は酒の勢いを借りて、ぐっすり眠り込むしかなかった。(つづく)
2023年03月04日

千切りのねぎを豚肉で巻いてソーテーし、ポン酢でいただきます。ご飯のおかずに、お酒のおつまみにもなります。豚肉のねぎ巻き豚肉薄切 3枚 ねぎ 1/2本 小麦粉 少々 塩 少々こしょう 少々サラダ油 小さじ1/2ポン酢 大さじ1グリーンリーフ 2枚 プチトマト 4~5個1.ねぎは半分に切って、千切りにする。 2.豚肉に、塩、こしょうをし、ねぎの千切りをのせて巻き、小麦粉を全体的にまぶす。3.フライパンに油を熱し、豚肉に焼き色が付いたポン酢をかけ、フタをして弱火で焼く。お皿にグリーンリーフを敷き、豚肉を盛り付け、プチトマトを添える。※ねぎがかたい場合は輪切りにすると食べやすいです。ブログ連載 長編時代小説 密かごと第5章 幕府水軍1.伊豆船遠島送りの季節がやってくると、御船手の同心たちの間では誰が、その押送(護送)の役目につくかと戦々恐々とする。毎年、春と秋の二回、御船手組頭の向井将監の配下の同心が、流人を新島や三宅島などに運ぶことになっていた。危険を伴うわりに手当が薄く、同心たちは「因果番」といって敬遠している。向井将監は公正を期すため、祐筆、目付役、船頭役の同心の中から籤で三人を選ぶことにしていた。この春は祐筆から坂上進之助、目付役から古屋好太郎、船頭役から大野房二に決まった。三人とも遠島送りは初めてだった。町奉行からはすでに流罪人は7人と御達しがきている。出帆の問い合わせが町奉行から来る前に、流人を運ぶ御用船の手配をしなくてはならない。流罪人は小伝馬町の牢屋敷に囚禁され、流人船に乗せられて遠島送りになるのを待っている。坂上進之助は御用船となる雇い船の手配に、目付役の古屋好太郎、船頭役の大野房二と共に品川浦へ向かった。御用船は遠島先に比較的近く、水主(かこ)たちも海路に通じている下田、網代、宇佐見などの伊豆船が使われる。伊豆船が江戸湊で船留めできるのは品川浦と決められていた。進之助たち三人は、八ツ山下船着場から艀(はしけ)に乗り込み、沖に浮かぶ一艘の伊豆船に向かう。「あの船か?」目付役の古屋好太郎が、艀を漕いでいる水主にいった。「へえー」艀の水主に前もって目星をつけさせておいた伊豆船だ。「おい、船頭(ふながしら)はおるか!」古屋が伊豆船に向かって叫ぶと、「手前が船頭の助次郎に御座いますが」帆筒のところにいた男が答えた。「御船手組だが、どの浦から来たのだ?」船頭は御船手組と聞くと表情を強張らせ、「下田ですが・・・・」恐る恐る答えた。「おお、それは好都合だ!」古屋は笑みを浮かべ、進之助と大野を振り返える。「上がるぞ!」古屋を先頭に、進之助と大野も伊豆船に乗り移った。「これからの廻船は、どうなっておる?」古屋が尋ねると、「荷を下ろし終えたら、すぐに下田に帰(けえ)りやすが」船頭が答えた。「そうか、ではこの伊豆船を遠島送りの御用船と定める」古屋好太郎は有無を言わせずに申し渡す。船手組が伊豆船を探しているといえば、流人を運ぶための御用船となることを船頭も知っていた。品川沖出航が他の伊豆船に遅れを取ったため、目星をつけられてしまったのだ。遠島送りの御用船になるのは割の合わない仕事だった。暴れる罪人もいれば、海がしけると近くの島に船留めすることもある。御用船の手当は、廻船で得られる利得とは比較にならないほど少ないので、どの伊豆船も徴発されるのは避けたかった。船頭の不満そうな表情を見て取ると、「これは上意である」目付役の古屋好太郎は透かさず申し立てる。そして、下田に戻ったら船中に仮牢をつくるようにと命じた。伊豆船は遠島送りの御用船に決まると船牢をしつらえ、その中に便所もつくらなくてはならない。黙って従うしかないのだ。祐筆役の坂上進之助は懐から二枚の書附けを出し、矢立と筆を使って船名と船頭の名を書き入れ、御用船に決まった伊豆船にその書附けの一枚を船頭の助次郎に渡した。「仮牢が出来次第、即刻、江戸に戻ってくるように、出帆の日時などは、そのときに沙汰致す」古屋が間髪を容れず申しつける。伊豆船は御用船となることを嫌うので、船手組では手際よく渡りをつけるようにと申し送りされていた。進之助たちは艀に乗り移り、八ツ山下船着場へ戻ると日本橋方面に向かって歩き出した。芝の増上寺の五重塔が見えたところで、目付役の古屋好太郎が足を止めた。「此度の遠島送りに、凶悪な者はいないだろうな?」古屋は5人の子持ちで、子煩悩で知られている。「凶悪かどうかわからんが、人殺しを指図したという者はいる」囚人の名前や年齢、罪状などが記された書附けは、町奉行所から祐筆の坂上進之助のもとに届いている。人殺しの手引きをしたり、人殺しを手伝ったり、いかさま賭博をした者など、死罪を免れた者が遠島送りとなった。「ところで、坂上殿、此度は八丈島送りはいるのか?」船頭役の大野房二が聞いた。「ああ、1名いる」町奉行所からの書附けには、新島に3名、三宅島に3名、八丈島に1名とあった。「えっ、八丈島にも行くのか?」古屋が顔をしかめた。「いや、八丈島送りは三宅島の役人に托すのだそうだ」三宅島で手続きが済めば、こっちの手は離れると進之助が説明した。「無事に送り届けるまでは気が抜けんぞ!」大野は空に浮かぶ綿雲を見上げ、船頭役としては囚人よりも天候の方が気掛かりだった。春船で遠島送りに行った連中が、秋まで船待ちさせられたこともあるからだ。進之助も三宅島に着いたが半年の間、島に留まることになったという記録を読んでいる。「因果番とはよく言ったもんだ」古屋がぼやくと、「一度行った者は、二度と行きたくないというのもわかるな」進之助も調子を合わせた。「風待ちも困るが、暴風に遭うともっと往生する。海に安心という文字はないんだ」皆の命を預かる大野としては気が抜けないのだ。「坂上殿は家族がおらぬので、水盃を交わすこともないな」「古屋殿、それは拙者を羨んでいるのか、それとも憐れんでおられるのかな」進之助は切り返したものの、古屋の言う通りだった。水盃をして別れを告げる家族はいなかった。天保11年(1840)、幕府は跡取りのいない武家が、養子を迎えたり、婚姻関係を結ぶことを規制し、武士の人員削減がすでに始まっていた。(つづく)
2023年03月02日
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