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「いま将棋界は将棋ソフトメフィス3と人間との対決で持ちきり。人間側はプロが負けてしまい将棋連盟には時田名人しか残っていない。その夢の対決が実現する直前、メフィス3の開発者の安西が遺体となって発見された。見た感じ事故のようだが、どうも何か不自然なところがある。殺人か? はて、なんかソファに粉が付着してるぞ、なんだろう」
「あらこんなところに将棋盤が。王手指されたまま止まってるね。安西と助手の人がやってたみたいだけど、開発者の三人とも将棋は全くの素人みたい。人工知能開発の一環として協力していた将棋連盟の曽根崎会長もこんな強くなると思わなくて内心かなりビビってたって。とりあえず動機ありそうなのはこの人かな」
「会長はその時間パーティに出席していたというアリバイがありました。もう一人疑わしい時田はアリバイもありませんがどこか飄々とした態度ですね。この時田名人は本当に天才と呼べる人で異例のスピードでプロ棋士となり、あっさり七冠達成という凄まじい方。おや、同期の方に坂口さんという女性の方がいますね。女性は普通女流棋士という別枠がありますが、この方はあくまで男性の中で棋士となろうとし、当時女性初のプロ棋士誕生かと思われましたが結局ダメだったようです。あれ、この人安西の助手の彩子さんじゃないですか」
「当時高校生だった彩子さんにとってプロ棋士になれなかった挫折は大きなものだった。だから大学に入ったら新しい人生を始めようと思い研究室の扉を叩いたそうだ。それがどうしてまた将棋ソフト開発に関わっているのかと思ったが、あくまで目的は人工知能作成の一環に過ぎないと言っている。将棋の手の数は宇宙に存在する粒子の数より多い、その中から答えを見つける人間の頭脳を解き明かす――そのための電脳戦は、予定通り行う気らしい」
「時田に坂口のこと訪ねたらあからさまにとぼけたな。時田にとって坂口との対局はプロ棋士になった決定的な勝利だったから忘れるわけがないのに。なんか裏がありそうだな、当時を知る関係者に話を聞いてみるか……は、彩子が負けたのは時田の番外戦術のせい?」
「実は彩子には当時付き合っていた男がいたんだが、時田との対局直前に一方的に別れ話を切り出された。動揺した彼女は対局に負けてしまいそれがきっかけで将棋界を去ることになってしまった。しかし三年前男と偶然再会、そこで衝撃的な事実を知る。男はバイト先のマスターに別れるよう強要されたんだそ。しかもそれは、時田がマスターに頼んでやらせたことらしい。だから今度の対局は彼女にとってリベンジなんだろう。だけど、だったら安西殺す理由はないよな。下手すりゃ電脳戦がパァになったかもしれないのに。――ん? 研究室のパソコンにシール貼ってあるのとないのがある。これはいったい――」
「現場にあった百合の花粉、同じものがパーティ会場にもあったね。やっぱり曽根崎はあの日来てたみたい。でもいったいなんのために――え、裏取引?」
「研究室には研究費で買ったシール付きの備品の他に個人で買ったものが多くありました。安西は資材を投げ打って研究を続けてもう貯金も残ってませんでした。だから曽根崎に八百長を申し込んだんです。金さえくれればメティス3に負けさせると。金を出す気で当日やってきましたが、将棋盤を見て一手動かし、こんなレベルの低い将棋しか打てない奴らに負けるわけがないと確信し蹴っちゃいました。……ん、一手動かした?」
「ついに始まった時田VSメティス3の電脳戦。両者一歩も譲らず激戦が繰り広げられている。メティス3を操作するのは彩子だそうだが……ん、なんか様子がおかしいらしいぞ?」
「結果は……時田の勝利。彩子としてはきついだろうなあ。あんだけ心血を注いでこの一線にだけ全てを賭けてきたのに。しかも、安西まで殺してしまった」
「あの将棋盤、曽根崎が一手指したはずがその前のまま現場に置かれていた。犯行の際ひっくり返しちゃって、事故に見せかけたかった犯人がそれを知らないまま再現しちまったんだ。そんなことできるのは盤面を全部記憶できる奴、棋士くらいだな」
「リベンジに全てを賭けてきた彼女にとって八百長なんて許せなかったんだね。人工知能を作ることのみ考えてる安西を止めようとしてもみ合いになり、殺してしまった。でも、そこまでやっても時田を倒すことはできな……違う? どういうこと?」
「実は、途中からメティス3を無視して彩子が自分で指してたんです。どーしても自分の手で打ち負かしたい衝動に勝てなかったんですね。結局それでも敗れましたが……彼女が、もう一つ間違っていることがあります」
「実は彩子が付き合っていた男は彼女以外にも何人もの女性と関係しているとんでもない奴で、そんな奴と付き合ってていいわけないと時田がマスターに頼んで別れさせたのだ。でもその時ちゃんと自分との対局が終わったあとに別れさせるよう頼んだが、対局は接戦となり翌日に持ち越され、それを知らない男が別れのメールを送ってしまった。時田自身、彼女を蹴落そうなどと思わず、互いに切磋琢磨し将棋界を歩んでいくライバルと思っていたのだろう。それがこんな結果になるとはな……」
「将棋の手は粒子の数ほどあっても、生き方は一つしか選べなかったんだろう彼女は。しかし、コンピュータが人間に実際勝てるのかねえ」
「チェス、オセロはもう相手にならないそうだがな。将棋は今実際に勝負してて現在50:50だそうだ。いずれ完全敗北する日も来るのかなあ」
現実VS虚構(ニッポンVSゴジラ) 2016.08.31
レビュー企画 相棒Legend12 2015.09.20
レビュー企画 相棒Legend11 2015.07.28
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