まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2022.10.05
XML
すでに次作「舞いあがれ!」が始まったこともあり、

SNSの反省会タグもすっかり大人しくなったみたいです。

今では、
つまらない揚げ足取りの残りカスみたいなツイートが、
ちらほら散見されるだけですね。

「次はどの評論家をぶっ叩こうか?!」と息巻いてみたものの、

どいつもこいつも、前回の碓井広義と同じで、
例のとおり 「共感できない」と「ご都合主義だ」
一般視聴者と大差のない記事を書いている奴らがほとんどです。

逆に、この人たちは、
「共感できない」と「ご都合主義」 というタームを取り除いたら、
ほとんど何も書けなくなってしまうんじゃないかしら?
と心配になるほど、批評言語の貧弱なライターも目につきます。

そして、
そんな素人まがいの評論家にありがちな、
もうひとつの典型的で紋切り型の批判が、
「主人公が成長してない」 ってやつですね。
この主張もまあ、いたるところの記事で見かけます。




「ドラマは主人公の成長物語でなければならない」
みたいな思い込みに無根拠に囚われている人たちは多い。

朝ドラでも 「ヒロインの成長」 などとよく言いますが、
実際のところ、


年をとるほどズル賢く醜くなることはあっても、
むしろ人間の基本的な本性は、
子供の頃から変わらないのだ、というほうが正しい。
これは歴代の朝ドラヒロインについてもいえます。

たとえば「おちょやん」の千代は、
少女のころからすでに考え方が大人を上回っていたし、
逆に、父親のテルヲのほうは死ぬまでバカのままだった。
人間なんて、そんなものです。

今回の「ちむどんどん」の場合、
ヒロインの暢子はわりと早い段階で経済的な自立をし、
経営的に独立をし、その後の紆余曲折をへて、
沖縄に「野菜食」の発想と技術を持ち帰ったところが、
彼女の《料理人としての成長》だったとはいえますが、

たしかに、
人格的にはほとんど成長しませんでしたし、
成人してなお幼稚園児みたいなキャラだったといえます。
しかし、それの何が悪いのか。



もともとこのドラマは、
「愛すべき沖縄のバカ兄妹」が巻き起こす騒動の物語なのだから、
そういうキャラクターの設定で間違ってるわけじゃない。

良子といい、暢子といい、
たとえば婚約者の実家を訪問するときに、
ギトギトのサーターアンダギーをビニール袋に入れて、
心からの善意で持っていってしまったりするわけだけど、

ある意味では、
そこがこのバカ兄妹の愛すべきところなわけで、
変に気の利いた高級百貨店の手土産なんぞを持っていく姿を見せられても、
かえって小賢しくて嫌味に見えてしまうに違いありません。

結果的には、
重子さんも、家政婦の波子さんも、
そういうバカ兄妹の幼稚さと純粋さに心を動かされたわけだから、
物語の展開から考えても、ああいう描写には合理性がありました。



賢秀の破天荒なキャラについても、
一部には「沖縄人を愚弄した描写」と考える向きもあるかもしれませんが、

わたしが思うに、
「沖縄のドラマだから沖縄を全面的に美化すればいい」ってものでもなくて、
沖縄に実在するアンダーグラウンドなヤンキー社会を戒めるためにも、
そこで安易な商売が横行しやすい実態に警鐘を鳴らすためにも、
賢秀が引き起こす数々の騒動描写にはそれなりの意義があったと思うし、

もちろん本土の側にだって、
あいもかわらず詐欺に騙される人たちや、
ネズミ講などに手を出したりする人たちはたくさんいるわけだから、
そういう人たちへの注意喚起の意味でも、
ああいう泥臭い描写には一定の役割があったと思います。

朝から不愉快なもの見せられてイライラする、
と感じる人たちがいるのもおおいに分かりますが、
見ていてひたすら気分さえ良ければドラマとして優れてるのかといえば、
かならずしもそうとはいえない。

コメディのオブラートに包みながらも、
歴史や社会の不愉快な側面に目を向けさせる工夫は必要です。



最終回では、
歌子が倒れる、というお約束の釣りネタがあって、
ここでもバカ兄妹たちが、相も変らぬ騒動を巻き起こします。

医者は「出来ることは全部やった…」みたいに言うのですが、
もちろん、それは、
たんに「熱が下がらなくて目が覚めない」というだけのことで、
べつに誰も「死にそうだ」とは一言も言ってないし、

まさか、
せっかく下地先生が送ってくれた手紙を宙に浮かせてまで、
ほんとに歌子が死んだりする展開にならないのは明白なのだけど、

例によって、
この愛すべきバカ兄妹の面々は、
放っとけばそのうち自然治癒で目を覚ますのも知らないで、
あろうことかタクシーの運転手まで巻き込んで、
やんばるの美しい海にむかって、必死になってギャーギャー騒ぐわけです。

わたしは、
そのバカっぷりに大笑いしながらも、ボロボロ泣いてしまうわけですが、

あの最終回こそ、
いつまでも成長しないバカ兄妹たちが、
最後に辿り着いたバカっぷりの集大成だったわけだから、

あれに本気になって目くじら立てて文句を言うほうが、
かえって滑稽で無粋じゃないのか、
…というより、
ほとんど無理解・曲解に近いんじゃないかと感じずにはいられない。


〈バカ兄妹の最後のさけび〉




わたしは、
つねづね疑問に感じているのだけど、
「うんうん、ヒロインも成長したねえ!私と同じように!」
などと満足げに論評してる人たちってのは、
いったいどういう目線でドラマを見てるのでしょうか?

たとえば今回のドラマでは、
《他人に忖度できる大野愛》と、
《他人に忖度できない比嘉暢子》とを比較して、
「他人に忖度できるようになってこそ人間の成長!」
みたいなおかしな主張がSNSに湧き上がったのですが、

その種の炎上に「同調」したり、
その種の風潮に「忖度」しながら記事を書いたりして、
みんなで徒党を組んで大声をあげている人たちを見ると、

この人たちは、
周囲の空気を読んで、同調して、忖度しながら、
集団でバッシングをしたり、いじめをしたりする行為のなかにこそ、
自分たちの「成長」を実感しているのではあるまいかと、
なにやら寒気がしてきます。

むしろ、
集団的ないじめや炎上に加担しないためには、
空気も読めず、忖度もできないことのほうが、
よほど人間としてすばらしいんじゃないかとさえ思えてくる。



まあ、

ドラマやコメディのお約束が理解できず、
大真面目になって目くじらを立ててしまう滑稽な視聴者や、
何が何でも些末な粗探しをしつづけねば気が済まないと、
そこに自分の存在意義を賭けようとする視聴者がいたとしても、

それはそれで個々人の行為としてなら問題ないのだけど、

よりによって、
評論家やら、大学教授やら、政治家までが、
そういう集団的な炎上に便乗してしまうのだとすれば、
これはもう、職業的な意味で「不適格」と言わざるをえません。

とりわけ、
大学教授やら政治家にかんしては、
「そんなことまでして自分の名前を売りたいのか…。」
と、これまたうすら寒い気持ちになるのです。

だいたいにおいて、
大学で「メディア論」なんぞを教えているような自称大学教授は、
ほぼほぼ胡散臭いと相場が決まっているのですが、

今回の件で、
SNSの炎上騒動に便乗して名前を売ったような連中は、
学者倫理の観点からいっても完全にアウトというべきでしょう。

それから、
元農水副大臣の礒崎陽輔にかんしていえば、
この人は、
おおかた政界への復帰に向けて、
必死でネット民に同調しようと画策しているわけですよね。

元来が極右のアベトモだし、
統一教会シンパの疑いもありますが、
かつての安倍や麻生がそうだったように、
俗情に媚びる手法がいまだに有効だと考えているんでしょう。

大分県選挙区


ちなみに、
今回の苛烈なバッシングを裏側から見ると、
テレビ視聴率の下落傾向を食い止めるための手段として、
SNSの「炎上」が逆に利用されてしまってる面もありますから、

じつは正義感を振りかざして必死に叩いていた人たちは、
NHKの策略にまんまとハメられていた可能性もなくはない。

とはいえ、
メディアやジャーナリズムが炎上を煽る状況はけっして健全ではないし、
ましてアカデミズムや政治なんぞが安易に乗っかるべきではありません。



こちらの記事を読むと、
news.yahoo.co.jp/byline/suzukiyuji/20220917-00315564
実際にSNSで酷評していたのは「ラウドマイノリティ」の人種ではないか、
との推察もあるようです。

わたしも、
今回の炎上を牽引していたのは、
いわゆる「ラウドマイノリティ」の可能性が高いかなと思う。
つまり、 たんに書き込み回数が多いだけの少数者 ですね。
ツイッターの場合はフォローによる相互連携の作用なども関係してくると思います。

実際のところはよく分からないし、
べつにラウドマイノリティの言論を抑圧する必要はないんだけれど、

すくなくともメディアの側は、
その主張をあたかも「世論」であるかのように報じるべきではないし、

かりにラウドマイノリティと実数的な世論とのあいだに乖離があるのなら、
それを把握するための技術や方法論をはやめに確立すべきだと思います。






にほんブログ村 テレビブログへ ジャンル関係無しなんでもレビュー 映画ブログ・テーマ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2024.06.17 16:17:34


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: