まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2022.10.03
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カテゴリ: ドラマレビュー!
遅まきながら、
日テレ「初恋の悪魔」最終回を見ました。

とくに後半の展開には、
坂元裕二の不穏で暗い面を感じていましたが、
やっぱり、ちょっと怖い内容でしたね。



第2章がはじまったとき、
「馬淵と鹿浜は最後に救われるのかしら?」
と注目していたのですが、


馬淵のほうは、ほぼ救われたように見えるけど、
鹿浜のほうには、はっきりとした救済が与えられない。
むしろ孤独の底へ突き落とされたようにも見える。

こういう底のない孤独の描き方が、
いかにも坂元裕二らしい怖さなのよねえ。
思えば「最高の離婚」にも、そういう描写がありました。



医学的なことはよく分かりませんが、

わたしは、てっきり、
2人のセスナの人格 (というか記憶) が、


けれど、実際は、
片方のセスナが消えてしまう、…という寂しいラスト。

彼女は結局、
リサにも会えないままに消えてしまった。
そして鹿浜は、




もともと、
「馬」と「鹿」と「小鳥」という名前自体が謎でしたが、
なぜ「鹿」にだけ救いが与えられずに終わるのでしょう?
そこにも坂元裕二という作家の謎が隠れている気がする。



さて、

怖いといえば、
殺人鬼の描き方もかなり怖かったですね。

坂元裕二のドラマで、
これほど人が死んだり殺されたりするのは初めてでは?

…そして、結局、
「初恋の悪魔」 というタイトルの意味は何だったの??

馬淵の兄・朝陽 (毎熊克哉) のセリフには、
「雪松さんは初恋の人のようなものです」 というのがあって、
その雪松がじつは殺人鬼の父であり、

朝陽は、
初恋のように尊敬していた上司に殺されたわけなので、
そこにタイトルの意味があったのかもしれません。

しかし、
そこに作品の中心的なテーマがあったとも思えない。



ちなみに、このドラマのタイトルは、
英語では 「Love with a Case (外箱への恋) となっています。
この「Case」というのは、
中身の人格ではなく、人間の肩書や容姿のことでしょうか?

つまり、「Case(外箱・器)」とは、

一方では、
殺人鬼の父としての「中身」とは異なる、
尊敬すべき上司としての「器」のことであり、

他方では、
人格的な「中身」は2つあるのに、
見た目の「器」は1つというセスナのことでもある。

…そんな感じ?

※なお、「case」には、
「事例」「症例」などの意味もあるし、
「病人」「変人」「哀れな人」などの意味もあるようです。



さらに怖いといえば、

わたしがいちばん怖かったのは、
いとも簡単に冤罪を生み出してしまう警察署内の描写!
あの妙に明るいノリが、かえって怖かった。

うすうす「冤罪じゃないか」と疑念をもっていても、
上層部の意向に逆らってまで捜査しようとしないし、
「上が決めたんだし、もうコイツが犯人でいいじゃんw」と、
じつに朗らかな雰囲気で冤罪を作り出していく。

その様子が、やけに能天気で明るい。

一人の人生を狂わせかねないことだというのに、
上層部の権威に対する忖度が優先され、
さらには職場内の同調性のほうが優先されてしまう。

まさに、日本社会の縮図。

余計なことは考えず、
難しいことも考えず、
周囲の空気にも逆らわず、
ただ明るく笑ってやり過ごそう、…という同調圧力。

余計な疑問を差し挟む人間のほうが、かえって忌避される。
前例や権威に逆らう人間のほうが、厄介者だと見なされる。
恐るべき日本人の「権威主義」と「忖度主義」と「同調主義」…。



おりしも、
朝ドラ「ちむどんどん」では、
他人に忖度できない沖縄人に対して、
「忖度できる心を養うことが人間的な成長だ!!」
という主張が SNS のなかに湧き上がりました。

まさに、これが、
今も昔も日本の大衆のなかにある集団的無意識。
SNSの論調じたいが集団的な同調主義で成り立っています。




これに対して、
坂元裕二が描き出したのは、

そういう日本人の「同調主義」や「忖度主義」こそが、
警察署内でいとも簡単に冤罪を生み出しかねない…
という恐るべき悪夢なのでした。



さらに、もうひとつ驚いたのは、
(実際のところはどうなのか知らないけれど)

冤罪で収監されていた人が、
何のサポートもなく社会に放り出されることですね。

リサ (満島ひかり) が刑務所から釈放されたとき、
彼女を迎えに来ていたのは、唯一、セスナだけでした。

警察や司法関係者が謝罪に来るでもない。
弁護士が保護しに来るでもない。
公的な機関がサポートしてくれるでもない。

数年間の人生を理由もなく奪われた末に、
いきなり社会へ放り出されてしまう。

これもまた怖すぎます。


「刑事補償(冤罪補償)」という金銭的な制度はあるようです。
…って、それだけかよ。








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最終更新日  2022.10.04 16:58:10


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