まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2023.02.11
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GyaOの無料動画がサービスを終了するそうです。

わたしはネットのサービスに疎くて、
GyaOを利用したのはわずか1年ほどだったけど、
最後に安田公義の映画をたてつづけに観れたのは収穫でした。



それまで、
森一生や三隅研次や田中徳三は観たことがありましたが、
なぜか安田公義の映画をまったく観たことがなく、
その名前を意識したことすらなかったのですが、


「大魔神」 の第一作を観て、その美しさに驚嘆し、
さらに 「眠狂四郎」 「座頭市」 のシリーズ作品を観て、
わたしの評価は揺るぎないものになりました。

どのシリーズにおいても、安田作品のクオリティは、
他の大映の職業監督を上回っていると思う。





とはいえ、
安田公義については、
ネットにも詳しいページが見当たらないし、


ひとたび、
海外の映画祭で上映されたり、
映画評論の権威が取り上げたりすれば、
それに追随して国内のシネフィル気取りも、
さぞかし口を揃えて褒めるようになるのだろうけど、


本格的に評価しようという動きはどこにもないし、
ネット上にも、
熱心なファンと呼べるような人は見当たらないし、
まして全集が発売されたりする気配もありません。



実際、一般的には、
三隅研次のほうがはるかに評価が高い。

三隅研次は、
たしか90年代ぐらいに海外で紹介されて、
そのときに蓮實重彦の言及などもあったので、
急速に評価が高まったのだと思う。

まあ、たしかに、
三隅研次は個性的な作家ですけども、
わたしが観た範囲内でいえば、
三隅の作品にはけっこう当たりはずれがあるし、
むしろ演出家のとしての力量は、
安田公義のほうが安定して上回ってると思う。

それどころか、
安田公義の演出力は、
溝口健二さえ上回るんじゃないかと思うのです。



ただ、残念なことに、

安田公義が撮ったのは、
チャンバラとか怪獣とかオバケなどの通俗劇ばかりで、
いわゆる《芸術映画》と呼べるものが見当たらないのですね。

三隅研次でさえ「釈迦」のような大作に取り組んだのに。

三隅研次の評価が高いのは、
そのシャープな個性もさることながら、
ただチャンバラのような通俗劇を撮っただけでなく、
「剣三部作」のような文芸作品や、
「釈迦」のような大作を手がけたことが大きいのだと思う。

ちなみに、

お世辞にも出来がいいとは思えません。むしろ駄作です。


それに対して、
安田公義が評価されにくいのは、
通俗的な題材にしか取り組まなかったからでしょう。

もしかしたら、彼自身が、
あまり芸術的な大作などを好まなかったのかもしれませんが、
もし「雨月物語」や「羅生門」のような題材に取り組んでたら、
さぞかし世界的な傑作として評価されただろうと思う。



もちろん、
芸術的な映画を作るためには、
何よりもすぐれた脚本が必要ですが、

わたしの観たかぎり、
安田公義の作品は、
どの脚本家と組んでいても一定の水準を維持しており、
物語に安定的な深みがある。

たとえ通俗的な時代劇でも、
脚本が無駄なく引き締まっているし、
エログロ的な題材においてさえ、
ある種の文学性を湛えています。

それは、
彼がたんなる職業的な演出家であるのみならず、
脚本家との連携にも長けていた、ということでしょう。
あるいは彼自身が脚本制作にも関与していたのかもしれない。

安田公義の作品は、
怪物・妖怪・チャンバラのような題材ばかりなので、
なかなか傑作と呼びにくいのも事実ですが、
すべてが名作・佳作と呼ぶに値するものだし、
わたしに言わせれば傑作も含まれると思います。



ところで、
安田公義の作風には、
師匠にあたる山中貞雄からの影響があるはずです。

ただし、
山中貞雄や小津安二郎のような軽みには欠ける。
なので、コメディには不向きで、
ある程度の重みがある題材のほうに向いている。

実際、多くの作品が、
きわめて制御された手法で、抑制された表現に徹しています。
その意味では、むしろ溝口健二の個性に近いと思う。







溝口健二の場合は、
世界的な巨匠としての評価が確立しているけれど、
実際には、けっこう当たり外れがあるし、
そもそも宮川一夫のカメラがなければ、
その世界的な評価があったかどうかも疑わしい。

これと似たことは、
じつは小津安二郎にもいえる。
そもそも野田高梧の脚本がなければ、
現在のような小津の評価はなかったかもしれません。



溝口健二が女優の演出に長けていたのに対して、
安田公義の女性描写はやや紋切り型で、
むしろ田中徳三のほうが、女性は魅力的に見えます。

その点で溝口健二に比肩し得るのは、川島雄三でしょうか。





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最終更新日  2023.02.12 21:51:42


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