まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2023.09.02
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朝ドラ「らんまん」第22週。
かなり難しかったけど、たぶん重要な内容だった。



森有礼が暗殺されるやいなや、
アメリカ帰りの田邊教授が失脚して、
ドイツ帰りの徳永教授に入れ替わりましたが、

明治の日本って、
全般的にドイツ系の勢力が台頭するのよね。

明治憲法でも、

君主大権を目指すドイツ (プロイセン) 型が模範にされる。
※森有礼は、その憲法が発布された日に殺されたのです。

イギリス帰りの夏目漱石は官職を退くけれど、
ドイツ帰りの森鴎外は陸軍軍医総監にまで昇りつめる。

徳永教授がドイツ語で講義をする様子からは、
そんな時代背景もうかがえます。

日本は帝国主義戦争の時代に突入して、
清やロシアから台湾だの満州だのを獲得していきます。



台湾のシーンはほんの少しでしたが、
それはたぶん、牧野富太郎自身が、


しかし、ドラマ的にいえば、
この台湾の経験が大きな転換点になるのだと思う。



牧野富太郎が、
日清戦争の直後に台湾へ行ったのは事実だし、

台湾の現地語 (awkeotsang) を取り入れたのも史実です。

しかし、
「ピストルを持たなかった」というのは史実に反する。
牧野はピストルを購入して持参していました。

実際、
明治初期にはピストルの購入が可能だったらしいし、
日本の統治下に入った台湾も治安が悪かったからです。
※台湾でも乙未戦争や抵抗運動があり、原住民の首狩りの風習もありました。



一方、
牧野富太郎が、
事前に台湾語を学ぼうとしたかは分からないし、
現地で病気 (マラリア?) になったのかも不明。
※オーギョーチに解熱作用があるのは事実らしい。

また、
台湾語の使用について、
国や大学と確執があったかどうかも分からないし、
そもそも、牧野が、
植民地の同化政策に批判的だったのかも分かりません。



…とはいえ、
あえて虚実をまじえて構成したところに、
今回の脚本の意図があるのだろうな、とは思う。



万太郎は台湾で《最後の本草学者》になったのです。



たしかに植物分類学は時代おくれでしたが、
万太郎はそこに 民俗学的な意義 を見出したのでしょう。
そのことが「学名に現地語を使う」という行為に表れている。

それは、ある意味で、本草学への回帰です。



中国由来の本草学は、
けっして植物だけを研究するものではなく、
「人の暮らしとのかかわり」をも含めた学問体系です。
なぜなら、本来の目的は薬学だったから。

実際、後年の牧野富太郎は、
その民俗学的な側面をとても重視していたように見える。
一貫して現地名 (地域の呼称) にこだわっていたし、
安易な漢名に訳したりすることを痛烈に批判していました。

『植物一日一題』は牧野が84歳の時に刊行した随筆集であるが、この中でたびたび語られるのは、 日本の植物に用いられた漢名が誤用であるという指摘 だ。
「ジャガイモに馬鈴薯の文字を用うるのは大変な間違いで、ジャガイモは断じて馬鈴薯そのものでないことは明白かつ確乎たる事実である。こんな間違った名を日常平気で使っているのはおろかな話で、これこそ日本文化の恥辱でなくてなんであろう」「サクラは桜桃ではない」「アジサイは紫陽花ではない」「カキツバタは燕子花ではない」。
牧野はこの種の漢字表記における間違いを激しく糾弾し、日本の植物の名前はすべてカタカナで表記した。

▶ https://brutus.jp/makino-tomitaro_nakao-sasuke/?heading=1



民俗学に接近した植物学者といえば、
まずは南方熊楠が思い浮かぶのですが、
じつは牧野富太郎にもそういう面があったかもしれない。

しかも、それは、
当時の柳田国男が推進していたような、
官製の"一国主義的な民俗学"ではなく、
もっとユニバーサルなものだったかもしれない。

…ってのが、
おそらく長田育恵の見立てなのだと思う。



それが史実かどうかは分からないけれど、

すくなくともドラマの万太郎は、
この《時代おくれの本草学》を継承すべく、
念願の大辞典の完成へ向けて邁進していくはずです。



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最終更新日  2023.09.05 02:09:57


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