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今更ながら初めて読む石田作品。いやぁこんなにすてきな文章を書く作家だったのかと正直驚いた。「ふたりの名前」のラスト、「その名前は二人だけの秘密だ。」と読者に語りかけるしゃれた文章。いいねぇ~。自分と同じ世代で若くないのもお気に入り。甘々な恋愛小説定食って感じだけど、さくって読めて、ちょっとほのぼのというのが、疲れたときに読むにはちょうどいい本だ。タイトルの小説も、内容は単なるポルノ小説だが、こんなに美しい小説に変身させるのはすごい。30歳過ぎの人の恋愛を意識して描いたとのことだが、遥かに年をとってしまった自分には理解できないシチュエーションもあるのだが、登場人物たちの一本気さ、まじめさが伝わってきて心地よい。で、次は反動でドロドロの愛欲小説でも読みたくなってしまうのだ。
2005年06月26日
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白毫寺朝から猛暑。真夏の気温。この分だと、35度くらいになりそう。ならまちの宿からひたすら百豪寺を目指す。情緒たっぷりな古い土塀の残る町々を30分くらい歩いて到着と思ったら、登りの石段が延々と続いている。石段の両側は萩がずっと植わっていて、秋はさぞかしきれいなことだろう。山の上まで登ったので、見晴らしは最高。さっそく宝蔵の中の仏像を見に行く。重文の閻魔王坐像の前でおばあさんがずっと祈りをささげている。やはり本当に信仰をしている人に出くわすと一介の仏像ファンとしては少し恥ずかしくなる。閻魔大王の右にいる書記をする司録像。こちらの方が、細い目がつり上がって悪意のあるような顔で、閻魔大王の怒りの顔つきよりも怖い。本尊の阿弥陀如来。すかしの入った光背が一部分折れてしまったのだろうが、それはそれで、ろうそくの炎のような形になっていて美しい。太鼓をたたく化仏もすてき。本堂にある観音菩薩と勢至菩薩のそれぞれ40センチくらいの坐像。立膝をついたり、腰を持ち上げたりして、大原の三千院の仏像のミニチュア版といった感じ。新薬師寺ここも30年振りの寺。入ってびっくりするのが、大きなステンドグラス。数年前にできたそうだ。奥の一画でタレントの「はな」がナレーションをしている新薬師寺の紹介ビデオが流されている。十二神将の1200年前建立当時の彩色をコンピューターグラフィックスで再現した様子が放映されている。極彩色の衣装に青い顔のバサラ大将。もう、これは見事のひとこと。それにしても十二神将たちの手、武人のわりには皆、細く美しい指をしている。本尊の国宝薬師如来坐像。目元ぱっちりの明るいお顔で、見る人を笑顔にさせる。何を拝んでも、OK!っと言って、太い右手を差し伸べてくれるような感じだ。それにしても、中の受付兼売店にいる若いお坊さん。携帯をいじっているのはいいけど、ずっと着信音をシャカシャカ鳴らし放し。堂内にずっと響いている。かなり態度悪い。こちらは拝観料500円も払ってるんだからね。考え物だよな~。近頃のお坊さんも常識がないね。
2005年06月25日
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ささやきの小道をとおり、春日大社を参拝後、東大寺に入る。法華堂本尊の国宝不空羂索観音を中心に仏像のオンパレード。巨大な不空不空羂索観音。宝冠から光背から、針金のようにつんつんとんがっている。パンフレットの写真にあるように明るくはない。やはり脇侍の日光・月光菩薩像のクールな顔立ちにうっとり。阿形の金剛力士像。新薬師寺のバサラ大将のように頭がつんつんしているが、こちらの方がよりとんがっていておしゃれ~。ここは、畳の台座になっていて、ゆっくりと座って鑑賞できるので良かった。大仏殿やはり東大寺でも一番人気。大勢の参拝客。修学旅行生も多数。今更ながらとにかくスケールの大きさには圧倒される。大仏はじめ脇侍の如意輪観音坐像・虚空蔵菩薩坐像も見応えがあるのだが、やはり大きすぎて落ち着かないので早々に退散。戒壇院こちらは、大仏殿と正反対。まったく人が来ない。30分間貸しきり状態。とにかく見ものは四天王像。やはり右手に筆を持った廣目天が一番好きだ。決して視線は合わないのだがが、どこにいてもずっと見つめられている感じがする。多聞天のウェストのくびれはすごい。胸騒ぎの腰つき。いかめしい顔つきに腰の細さのアンバランスさがおしゃれだなぁ。ところで、ガイドブックや仏像写真集では光背が写っていないのだが。実際には火炎光背がつけられていた。受付の人によると写真撮影の時は取り外しをするとのこと。また建物の天井板に手の跡や足跡が多数残っている。京都の正伝寺のような血天井かと思ったら、当時の職人の足型、手形とのこと。油汗が板に染み付いたとのこと。これも面白い発見。ここで、あまりの暑さと空腹さのため、体力の限界となり、南大門まで戻らず、奈良駅に向かい昼食。
2005年06月25日
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南円堂ちょうど特別拝観の最中。普段は年一回10月17日にしか見られない、国宝の不空羂索観音と四天王像を見ることができた。不空羂索観音、正面から見ると威厳のある顔立ちが、左斜め下から見上げるとやさしい顔立ちに変わる。東大寺法華堂の観音のようにつんつんとんがっていないので、落ち着いて眺めることができる。大きな宝冠もすてき。国宝館本尊の千手観音もでかくて迫力があるが、やはりここでは阿修羅像だろう。戦う神のわりには優しい少年の顔立ち。細い腕が今にも蜘蛛のようにうねうねと動きそう。合掌していない手の指先が落ちているのが痛々しい。後姿はどうなっているのだろうかと気になってしまう。他の少年の顔をした五部浄像や沙羯羅像もすばらしい。ここで、時間は4時近く。さすがに体力と気力も限界に達し、東金堂はパス。次回のお楽しみ。駅まで戻り、特急で京都へ帰る。駅ビルの回転寿司で生ビールを堪能した後、のぞみで東京へと戻る。もうしばらく、仏像は見なくていいかなと思う。
2005年06月25日
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なんと言っても長谷寺で美しいのは、この本堂まで登る全長約200メートル、399段の緩やかな登廊だろう。均等な間隔で建てられた柱の間、屋根からは同じく均等な間隔でつり灯篭が下がっている。同じ形を延々と続けることで、整然とした奥行きが感じさせられて美しい。例えば伏見稲荷の延々と続く赤い鳥居も同じ効果があって好きだ。さて、本堂にあるのは国内最大という10メートルの重文・十一面観音菩薩立十一面観音。さすがにでかい。左手に持つ花瓶もでかい。あまりに大きすぎて、印象も大まかになってしまう。本堂は清水寺のような舞台になっていて、周りの山々を見渡せる。心地よい風が吹いていて幸せな気分。振り返ると巨大な額には大悲閣とある。なるほどここは観音堂だからね。ちょうどアジサイの季節でもあり、山々のあちこちに青や紫のいろどりを添えていてこれもまた美しかった。これで、奈良まで戻り、ホテルにチェックインした後、ならまちに飲み屋を探しに出かけた。
2005年06月24日
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ここのところ、興福寺展や唐招提寺展とか、続けて開催されているので、これは本家本元に出かけて、仏像を見ようと1泊2日の奈良旅行。みうらじゅんといとうせいこうの「見仏記」を読んだのもきっかけ。終わってしまった五木寛之の百寺巡礼の第一回目も確か室生寺だった。朝、6時半過ぎの新幹線。京都経由で室生寺に着いたのが11時半過ぎ。ほぼ30年ぶりの室生寺。室生口大野からのバスはおばさまたちの間に黒一点の私。女人高谷へ向かうのだからさもありなん。まず30年前は断念した奥の院までひたすら上がる。風評では相当きついとのことであったが実際に登ってみると思いのほか楽だった。見晴らしがもう少しよければ登り甲斐もあったのだがなと思う。数年前の台風で倒壊した国宝五重塔も無事再建されていて嬉しい。国宝の本堂で如意輪観音を拝観いや見仏か。厨子の中に入ったこじんまりした仏像。左手で掲げる法輪が暗闇にほんのりと浮かび上がっている。さほどインパクトは強くない。これも国宝の金堂に下る。内陣まで入ることができないようになっており、縁側で拝観。じっくり座って見れないのが残念。内陣まで入れてくれればいいなと思う。それでも古寺特有の匂いが漂う。久々のこの香り。仏像ファンにはたまらない。さて、国宝釈迦如来立像を中心に、やや大きめの薬師如来に、文殊菩薩、地蔵菩薩、十一面観音が整列しており、その前面に小振りの十二神将が左右対称にずらっと並んでいる。いとうせいこうが言うように仏たちはまさにオレンジ色の軍団。室生川のせせらぎの音と鳥の声が心地よい。メインは、やはり国宝十一面観音。そのムチムチとした顔や肩のラインが、なんとも言えずに色っぽい。光背の彩色もよく残っていて鮮やか。お堂の左右に照明を浴びない蔵王権現や聖観音もしっかりチェックして、弥勒堂に下る。ここは階段から中を覗くだけ、国宝釈迦如来坐像。これも全体的にぬべっとしてインパクトに乏しいと思う。小ぶりの弥勒菩薩はかわいい。バス停前の茶店でくずきりを食べたあと、1時半のバスで室生口大野まで戻る。
2005年06月24日
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平日の日中だったが、そこそこの人出。それでも、アナウンスガイドを借りて、ゆったりと鑑賞することができた。子どもの頃から、ミイラと聞くとなぜか、わくわくしてしまうミイラファンなもので、今回も楽しみ。楼蘭の砂漠の中から発見された木製のミイラがあったが、これには疑問符?。どうして、ミイラ化した遺体をわざと木で作る必要があったのか。4000年前の不思議。きれいな衣装にくるまれた赤ん坊のミイラには泣けてしまう。子を思う親の気持ちは全世界、いつの時代でも同じなんだなぁ。仮面をかぶったミイラの衣装。本当に華麗な衣装とユニークな仮面だ。たぶん仮面の下は、ほとんど髑髏だったのだろうが、仮面をかぶることによって、この人物は2000年の時を超えている。西安の壁画「狩猟出行図」。ジェリコーの「エプソムの競馬」と同じ。フライング・ギャロップだったのがおかしかった。
2005年06月23日
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三都といっても、横浜、台中、光州をめぐっての連作短編集。日本、韓国、台湾プロ野球界に属する選手、コーチ、スカウトやそれに連なる人々がそれぞれの主人公になって物語が展開する。船戸与一特有のギトギトさは、さほど濃くなく淡々と話が進んで行く。それでも、球団という組織内の軋轢や、社会情勢に翻弄される台湾や韓国での登場人物の葛藤が物語の柱となっている。実際に起こった元プロ野球選手の事件やが、著名球団や監督・選手などを思い起こして楽しめた。
2005年06月20日
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「秘密」「白夜行」「幻夜」に繋がる作品と文庫本の帯にあったので期待して読んだ。小学校の時からいけ好かない奴だと感じていた男。何をやっても負けてしまう。単なる同級生というわけでもなく家庭的にも何か自分との間に秘密がありそうな雰囲気。それが、十数年後、刑事と容疑者という立場で再会してみると相手は、自分が入試をあきらめた大学医学部の助教授であり、おまけに自分の初恋の相手と結婚していたという設定。宿命というタイトルから、この二人の間にある秘密は、何だろうかと思いながらずっと読んでいたのだが、結局最後まで気づかなかった。「白夜行」「幻夜」にみられるような、読んでて心が重くなるような人間の怨念、執念、悪意などはさほど描かれていないのでちょっと物足りなさは残った。けれども、予定調和的なラストでありつつも、さわやかな終わり方で好感を持てた。
2005年06月18日
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湖畔の別荘地で4家族が子どもの中学受験対策合宿をしている。主人公のもとを訪れた愛人を妻が撲殺するという事件が起こるが・・・なにやら胡散臭い登場人物たち、どんな背景があるのだろうかとすごく期待していたのだが、何だこの程度の話か~それにしてはちょっと設定に無理があるのではなどと感じてしまい、今ひとつ盛り上がりに欠けた本であった。中学受験をめぐる設定にもまったく共感できなかったし、どうせなら、他の作品のようにもっと悪意に満ちた人物を登場させ、読者に葛藤を強いても良かったのではないか。役所広司主演の映画になったとのことだが、どんな出来だったのだろう。
2005年06月11日
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やはり、昨日で梅雨入りだった。昨日の続き。常設展も小林古径展に合わせて展示替えされていた。岸田劉生麗子像の代わりに代々木上原の切通しを描いた「道路と土手と塀」。決して美しい風景画でもないのだが、近づいてじっくり眺めると赤土がものすごい勢いで迫ってくる。古賀春江の「月花」。「海」のようなきっちりと固い絵もいいが、この「月花」のようなメルヘンタッチのやさしい絵が好きだ。岡本唐貴の「制作」。キリコのマネキン人形とマンガチックな自画像?がユーモラス。北脇昇、ダリのようなシュールリアリズムの絵もあったが、「クオ・ヴァディス」というタイトルの絵に惹かれた。青い背景によれよれの背広にずた袋を担いだ人物。二つに分かれた道標のところで立ち止まっている。一方の遥かかなたの先には赤旗を掲げた隊列、もう一方は嵐。それぞれの先にどんな思想があるのかは分からないが、人生の岐路に立たされた人間の悩み苦しみとさらなる一歩を踏み出す時の勇気や清清しさが伝わってきた。日本画では、徳岡神泉。「蓮」や「狂女」はリアルな絵。「狂女」は着崩れした着物に髪を振り乱した青白い顔の老婆。おまけに手にはフォークを持っている。鬼気迫る一枚。ところが、「仔鹿」は一転して、やさしくそしてどこか哀しい一匹の小鹿。近づくと油絵のような厚塗りで表面は溶岩のよう。6時半から堂本右美さんの「自作を語る」というギャラリートークがあるという館内放送。合気道の稽古があったため、後ろ髪を引かれつつ美術館を後にする。何しろ明日は昇段審査があるもので。
2005年06月11日
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多分、今日が入梅ではないかと思えるような金曜雨の午後。お堀の緑も雨に濡れて鮮やか。ちょっと前までのゴッホ展の熱気に比べると小林古径展はひっそりとしており、寂しい感じさえする。だから絵を鑑賞するにはもってこいの環境だ。小林古径の描く線は美しい。ためらいがない。それは、何回もの下書きの成果だということがこの展覧会で分かった。日本画展に珍しく、製作過程の下絵、デッサンや習作も多数展示されていた。まず、初期の「闘草」という作品。もろ肌脱いだ子どもの着物のブルーの淵取りが何ともいえず美しい。この輪郭線の美しさは最後の「観音」まで続く。それぞれの絵の美しさにため息をつきながら見とれていたのだが、印象に残ったのは、「加賀鳶」という絵。加賀藩のお抱えの火消しが、火事場に直行している。奥には紅蓮の炎をあげて燃える家と舞い散る火の粉。屋根に登る火消したち。反対に火事場から逃げ出す人々。絵画ではなくて、映画を見ているような気がするほどリアルな表現。遠近法を駆使して描かれている。日本画には珍しいのではないだろうか。テレビ東京の「美の巨人たち」に取り上げられそうなテーマだなぁ。ほとんどの作品が前期と後期の入れ替えとなっているため、後期にもう一度楽しめる。ちなみに切手にもなった有名な髪の毛を梳かす半裸の女性を描いた「髪」も後期の出品。
2005年06月10日
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根津のはん亭に行ってきた。有名な木造3階建ての明治時代の建物。昔は下駄屋さんだったとか。現在、登録有形文化財。道路に面した暖簾のかかった引き戸を開けるといきなりそこはレトロな世界。1階はテーブル席。白い蔵を横目に2階に上るとお座敷となっていた。さっそくビールを頼む。野菜スティックとキャベツの盛り合わせ。味噌をつけて食べるとおいしい。何気にうさぎさんになったよう。その後、いろんな種類の串揚げが6種類出てくる。一串一串とても上品な見た目と味わい。そこで1膳目終わり。2の膳を追加注文。また違った串揚げ6品目の登場。さらに3の膳注文。ビールも焼酎も追加。アルバイトの店員さん、勧め上手だが、我々はここでストップしてもらう。さほど満腹にならなかったが、普通の居酒屋の倍以上のお値段だった。まぁ予想の範囲内、たまにはおいしいものをということで良しとしよう。
2005年06月08日
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いやぁ、笑わせてもらった。なおかつ読後感すっきり。伊良部先生バンザイ。先日、阿部寛のドラマを見たのだが、キャラクターがちょっと違っていた。阿部寛ではカッコよすぎ!釈由美子はそのままでOKだったな。伊良部先生のハチャメチャぶりに当初は当惑し、憤り、バカにする登場人物たち。それでも何故かすっぽりとはまってしまい、最後には決まって癒されて行く。ひょっとしたら伊良部先生は計算づくでバカの演技をしているのではないかと疑ってしまうほど。きっとこれは作者の思惑通りなんだろうな。そういえば、うちの職場にもどうしようもないのが一人いたな。今日は昼食食べている時に、思いっきり目前で鼻をかまれた。確かに悪意はまったくなく、よく言えば天真爛漫。やる気も一応あるみたいだし。やはり長い目でみるしかないのか。伊良部先生のように大バケしてくれないかなぁ~
2005年06月07日
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何を今更なのだが、昨日、職場のおばさんと竹内結子と中村獅童の結婚の話をしているうちに、絶対にタオル2枚必要になるから、読んでごらんとドンと机上に置かれた。(でも、これって職場の本)あれ、これって黄泉がえりと一緒じゃないかって竹内結子のイメージを追いながら読んでいた。あ~指が透けるなんてまさに黄泉がえりだ~それに、中村獅童が巧ねぇ。まあ、壊れた役作りうまいからなと浪人街の赤牛のハチャメチャぶりをも思い出す。なるほど、これが「いま、会いにゆきます」って落ちなのかと感心はするが、泣けるには今ひとつ。それよりも、父と息子の2ショットのシーンの方が感動した。特に映画館に置き去りにされた息子と父親の会話の方が切なかったなぁ。映画の方は、レンタルされるようになったら借りてみてもいいかなと思う。職場のおばさんにこんな感想を話したら、次はセカチュー読めって迫られそう。
2005年06月04日
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ちょうど今日で2ヶ月の期限が切れるので、出張の帰りに思い切って国際フォーラムの相田みつを美術館に寄る。相田みつをは、書店に平積みされていた本を立ち読みしたり、連れ合いが日めくりカレンダーをもらってきたりして、もう20年前から知っていたのだが、最近も木梨憲武のドラマになったり、金八先生が授業で取り上げたりとマスコミに露出していて、ちょっと食傷気味だった。そんなわけで、銀座にあった美術館の無料チケットをもらっても、つい行きそびれていた。国際フォーラムにあるこちらは、1年半前に銀座から移ってきた新しい美術館なのでいろいろな展示のしかけがあって、実におもしろい。大きな本の見開きページがスクリーンになっていて、そこを筆でこすると絵や文字が浮き出る電子ブック。回廊に映写される絵。覗き込むと書や絵が映し出される井戸。手のひらに書が投影される手水鉢など、子どもが見ても楽しめるのではないか。次回の企画展は夏休み特集ということなので息子を連れてきてみよう。またあちこちにイスが多い、ほの暗い回廊にも窪みがあって、ベンチになっている。座ってみると穴倉にもぐりこんだような感じ。男一人で座っていると何か照れくさい。平日昼間なのにけっこうギャラリーが多かったので。今回の企画はサブタイトルに相田みつをデザインの世界とあるように、書よりも暖簾とか、包装紙などの展示が中心となっていた。中で気に入ったのが、いろいろな虫が染め付けられている幼い息子のために作った浴衣。息子への愛情がと伝わってくる。あたり前のことをあらためて気づかせてくれる相田みつをの美術館。マイフェイバリットスペースとなった。
2005年06月02日
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この人の本を読むのは久しぶりだ。昔、「黒い家」を読んだ時の衝撃。おぞましい家の描写、本当に怖かった。映画での大竹しのぶも怖かった。さて、「硝子のハンマー」。第58回日本推理作家協会賞受賞ということで、期待して読んだのだが・・・前半は、密室殺人事件について、いろいろな推理が組み立てられ、つぶされていく展開なのだが、これがまどろっこしく感じられた。トリックのシチュエーションがなかなか頭に入らない。防犯コンサルタントと弁護士のキャラクターは、けっこういい味が出ていると思ったので残念だった。後半は犯人の視点からの話。こちらの方は面白かった。ヤクザの街金からの追求から逃れるため、名前や故郷を捨て、頭脳の限りを尽くして必死に生きる青年。東野圭吾や宮部みゆきが好きな自分としては、こういう犯罪小説の方がぐっと来る。ところが、せっかく応援していたのにあのラストはないよなぁ。やはり殺人はダメってことだろうが。密室トリックものが好きな人に受けての推理作家協会賞なのだと思うが、小説全体としてはまとまりがない印象だった。
2005年06月01日
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