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2011.01.20
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カテゴリ: 経済
入院中に読もうと図書館でいろいろと借りた本のなかに「ランドラッシュ」があり、それを読み終えたので紹介します。
TPPの賛否については、政権内、学者間、メディアでもほぼ2分していて、「第3の開国」などと大げさな表現もあり、一般の庶民にとってどっちにつくか迷うところ大であるが・・・・
この本を読む限りでは、TPPに対してNOと言わざるを得ません。

「ランドラッシュ」NHK食糧危機取材班、新潮社、2010年10月刊より
p16~18
 わたしがウクライナを訪れた直後、「リーマン・ショック」が発生。世界は金融危機に襲われた。そのために、穀物価格を押し上げる要因のひとつだった投機マネーは一気に縮小する。未曾有の高騰を記録した穀物価格も、落ち着きを取り戻した。
 ところが、外国企業によるウクライナ農地の囲い込みは、それでも終わらなかった。さらに、こうした動きは、ウクライナのみならず、世界各地で勃発していたのである。
 リーマン・ショックの翌月(2008年10月)、あるリポートが発表された。国際的NGO「グレイン」が発表した「2008年食料・金融安全保障のための土地争奪」という名のリポートである。冒頭、こう記されている。
「食糧危機と金融危機が同時に発生することによって、新しいグローバルな土地争奪が始まった。食料を輸入に頼る国の政府が、食糧生産のために海外の広大な農地を手に入れようとしているのだ。一方では、深刻化する金融危機のなかで、企業や投資家が海外農地への投資を重要な収入源と見ていっる。その結果として、肥沃な農地の私有化と集約化が進んでいる。このグローバルな土地争奪によって、世界各地で小規模農業と農村の暮らしが姿を消してしまうかも知れない」
 グレインは、各国メディアの報道に加えて独自の調査を行い、世界で進行する農地争奪の実例を百件以上も紹介している。

 さらに、翌09年4月にはIFPRI(国際食料政策研究所)が「外国投資家による途上国での農地争奪」というリポートを発表した。そのなかでIFPRIは「土地や水が不足し、しかも資金が豊富な食料輸入国、たとえば湾岸諸国は海外農地への投資にもっとも積極的である。また、多くの人口を抱え、食料安全保障の面で懸念を抱える国々も、海外での食糧生産のチャンスを欲しがっている」としてサウジアラビア、カタール、リビア、中国、韓国、インドなど20ヶ国が食糧確保のために広大な農地を海外で入手したと指摘する。
 リポートは「こうした国々の投資の矛先は、生産コストがはるかに安く、土地と水が豊富な途上国に向けられている」とし、スーダン、エチオピア、パキスタン、フィリピン、カンボジア、トルコ、ウクライナなど24ヶ国を挙げている。

 なぜ、通常の輸入によって食料を手に入れるのではなく、わざわざ海外の農地を囲い込むのか?それは、「穀物市場システム」への信頼が崩壊してしまったからだ。
 実は2007年~08年の「世界同時食料危機」のとき、世界の穀物の流れに異変が起きていた。通常、小麦や大豆、トウモロコシなどは「穀物メジャー」と呼ばれる巨大な多国籍商社が生産国から大量に買い集めて、国際市場に供給する。この流れが麻痺したのだ。「市場の麻痺」をもたらしたのは、穀物生産国の「輸出規制」である。中国、インド、ロシア、ブラジル、アルゼンチンなどが穀物価格高騰の最中、輸出規制をおこなった。主要生産国17ヶ国のうち、なんと10ヶ国が「自由貿易」の建前をかなぐり捨てて、輸出を制限したのだ。
 せっかく穀物価格が上がっているのに、なぜ輸出を規制したのか?自由貿易に任せていれば、高く売れる穀物はどんどん海外に流出する。しかも、国内の食料価格は国際価格に引っ張られて高騰する。これでは、自国の食糧供給が不安定に陥りかねない。だから、生産国は輸出規制に走ったのである。「世界同時食料危機」が起きるまで、穀物市場においては、「自由貿易」は自明のルールであり、空気のような存在だった。同時に「自由貿易の推進こそが食料の安定供給を保障する」という考え方が支配的だった。
 その「信仰」が脆くも崩れたのである。
 輸入に頼っていた国々では、ふたたびこのような食糧危機が起きたときに備えて、自分たちで食料を確保しようと、おのおのが海外農地の獲得に走り出した。これが「ランドラッシュ」だ。


 また、中国のレアアース輸出制限にはビックリしたが・・・・
仁義なき資源囲い込みに動きだした中国を見て、そんなの有りか?と、東亜のなかでも仁義の多様さ(仁義の無さ?)に恐れ入る大使である。

 覇権を求めるG2であるが・・・この本にあるように食糧危機の元凶はアメリカなんですね。
p224~225
 現在、世界はつねに「北(先進国)では食料過剰」「南(途上国)では食料不足」の状態にある。食料は公平に分配されているわけではない。誤解されがちだが「世界同時食糧危機の」の2008年でさえ、農産物の総量は世界の人口を養うのに十分なだけ存在した。
 このような「食料の南北格差」を解消するにはどうすればいいか。
 先進国なかでも穀物を重要な輸出品とするアメリカは、ずっと次のように主張してきた。「食料の南北格差を解消するには、それぞれの国が『得意な産業分野に特化する』のが一番。だから、主食の穀物の生産はアメリカなどに任せ、途上国は農業よりも工業を発展させるべきだ。農業を行うにしても、コーヒーや綿花などに特化して外貨を稼ぐ方が得策だ。穀物はアメリカなどから安く輸入すればいい」
 この考え、いわゆる「構造調整計画」は、世界銀行やIMFなどの国際機関によって実行に移された。途上国において主食の生産をやめ、工業化することを条件に、多額の援助を行ったのである。
 外国企業も、国際機関の援助を追い風に次々と進出、大規模化・大型機械化を推し進めた。化学肥料や農薬を大量に使用、遺伝子組み換えを含む品種改良を進め、現地の在来種は次々と姿を消した。
 その結果、途上国の農業は一変した。
 「地産地消」の文化は破壊され、輸入依存体質へと変貌した。そして途上国はアメリカにとってのお得意様になった。

 一方、農業大国アメリカの悩みは「穀物ができすぎる」ことである。途上国を輸入体質にすることで、余剰生産物のはけ口を創出することができた。その結果、アメリカ国内の農家は利益を増やした。
 さらに大きな利益を得たのは、巨大アグリビジネスだ。肥料や農薬を作る農化学産業として知られるモンサント社やシンジェンタ社、穀物メジャーと呼ばれるカーギル社やADM社などである。
 なかでもカーギル社は、アメリカ政府との間に太いパイプを持っている。アメリカでは「回転ドア」と言われるように、政権交代などの度に多くの民間人が政府入りするが、こうした制度の下で両者は相互に人材を行き来させ、「官民一体」でアメリカ産の穀物を世界に売りさばいてきた。
 アメリカ政府は「自由貿易の旗手」を自認しながら、その実、農家への補助金など莫大な金を投入して穀物を安値で輸出している。そして、穀物メジャーは圧倒的な集配・貯蔵・運搬ネットワークを構築し、穀物流通を牛耳っている。こうしてアメリカは、世界の穀物市場における影響力を圧倒的なものにしてきたのである。


 大使が子どもの頃から急速にパン食が広まったことや、今やアメリカ産穀物抜きの畜産が成り立たないことに、思い当たりますね。

p226~228
 穀物市場における「アメリカ覇権」。これを側面から支援したのが世界銀行やIMFなどの国際機関である。こうした国際機関による「アメリカびいき」が2008年の食料パニックを招いた、という指摘がある。
 たとえばメキシコでは、トウモロコシの国際価格が暴騰したことで、主食のトルティーヤが買えなくなってしまった。国民の不満が一挙に高まり、大規模なデモにまで発展した。なぜこのような事態になったのか。
 事の起こりは、80年代初頭に遡る。このとき、メキシコは債務危機に陥り、世界銀行とIMFから多額の資金を借り入れることになった。これが転落の始まりだった。世界銀行とアメリカ財務省は、メキシコに対し融資の見返りを求めた。それは、「関税の大幅な引き下げ」そして「自国農業への助成廃止」だった。
 しかも、メキシコ政府の予算は、「世界銀行などへの返済を最優先」とされた。メキシコ政府の財布は、実質的に世界銀行やIMFが握っていたから、政府も自国民の救済を後回しにせざるを得なかったのだ。
 そこへ、アメリカから補助金付きの安価なトウモロコシが大量に流入し、メキシコの農家は大打撃を受けた。こうして「トウモロコシ発祥の地」メキシコは、穀物メジャーから主食を買い入れる「純輸入国」へと転落した。自給力を奪われたメキシコは、2008年の「食糧危機」で」、為す術もなくパニックに陥ったのだった。

 海外農業開発の現状に詳しい池上甲一・近畿大学教授はこう話す。
「2007年から08年の食糧危機は、グローバリゼーションによる『国際分業』の結果であり、世界銀行とIMFが推進してきた『構造調整計画』の当然の帰結です。補助金付きの安い穀物を送り込まれた途上国では、小農民は競争力を失い、農村を捨てて都市に流入しました。このため、食糧危機で価格が上がったり、輸入が止まったりしても、国内の食糧生産基盤が完全に破壊されていたため、ただ飢えるしかなかったのです。『構造調整計画』によって、一時は減少傾向にあった飢餓人口が逆に増加した事実。これは、ほとんど知られていません」
 付け加えれば、現在、世界銀行の総裁を務めるのはロバート・ゼーリックだが、彼はかってアメリカ政府の国務副長官、そして投資銀行ゴールドマンサックスの幹部を務めた人物だ。ゴールドマンサックスなどの金融機関は、穀物価格を押し上げた「投機」の主要プレーヤーでのある。そして、日本が主催した「責任ある国際農業投資の促進に関する高級実務者会合」を共同主催したのが、この世界銀行である。

 また、国際開発経済・金融に詳しい毛利良一・日本福祉大学教授は「食糧危機の深層にはWTO(世界貿易機関)の存在がある」と言う。
「WTOは『自由貿易を推進する』という美名の下に農産物貿易を国際ルールの下に置きました。そこではアメリカを始めとする『大農場国』が自分たちに都合のいいルールを『国際スタンダード』にしています。アメリカは、製造業に代わって新しく国家を支える産業としてアグリビジネスを選び、WTOを使ってそれを成功させました。その結果、穀物の生産がアメリカなど少数の国に集中し、食料供給の基盤そのものがいびつで脆弱なものになったのです。」
 アメリカの穀物戦略に則り、国際機関の支えによって強固に形作られた「食料システム」。
 食料危機は、図らずもそのシステムが持つ深い「病巣」を露わにしたのである。


ここまで読むと、「構造調整計画」の光と影が見えてきます。アメリカが昨今、提唱するTPPは言って見れば環太平洋構造調整計画みたいなもので・・・・


TPPは、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国によって2006年に発効し、APEC加盟国に参加の道を開いている。
しかるに2009年、オバマ大統領がTPPへの関与を表明したことにより、TPPは「米国主導の一大経済連合」に変化するわけですね。
これで若し、日本がTPPに参加するなら、実態は「日米FTA」のようなものになるわけで・・・・
アホな日本が陰謀に陥るという危うい面ばかりが気になる(攘夷派の)大使である。

関さんが「 農産物関税を撤廃してはいけない理由 」を述べています。





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Last updated  2011.01.21 16:29:29
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