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2012.05.06
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カテゴリ: 映画
バトル・オブ・ブラジルとも呼ばれるテリー・ギリアム監督とユニヴァーサル社COEとの壮絶な確執を見てみましょう。

リドリー・スコット監督も会社の方針に抵抗してディレクターズ・カット版を作ったようだが・・・・
ギリアム監督の作品のほうは上層部が作品を理解できなかったというから、作品自体が異端だったのかも(笑)


【テリー・ギリアム映像大全】ボブ・マッケイブ著、河出書房新社、1999年刊
<未来世紀ブラジル> p118~122より
 しかしながらアメリカ人はもう少しさめていた。映画の製作中にユニヴァーサルの支配層が変りシドニー・J・シャインバーグという名の男が責任者となった。シャインバーグはギリアムについて確信を持てなかった。自ら製作会社をプープー(うんち)・ピクチャーズなどと呼び、社用箋に尻に矢をつきたてたボッシュの絵画の人物を使うような男を彼はあやしんだ。『未来世紀ブラジル』の144分版についてもいっそう彼は怪しんだ。シャインバーグの主な不満は単にその長さだけではなく、むしろ映画の調子にあった。彼はもっとロマンティックなものを求め、ハッピー・エンドさえ欲しがった。つまるところ彼は映画をいっさい理解していなかったのだ。

s-ブラジル

 辛辣な風刺で管理機構を突いた一作が官僚をほほ笑ませることに失敗しても意外ではない。それは1985年1月23日、ユニヴァーサル・スタジオのアルフレッド・ヒッチコック劇場で重役向けに行われた最初の試写の後、明らかになった。「最初の重役向け試写の後、僕は映写室にいて、連中の頭と肩がこわばるのを見てたんだ」ギリアムは振返る。
(中略)
 こうして火蓋を切った“バトル・オブ・ブラジル”は12月まで続いた。ギリアムは当初、映画を11分短縮するカットに同意していた。が、それでもシャインバーグは納得せず映画配給に応じないと脅かした。これはミルチャンにとって数百万ドルの損失を意味しており、ギリアムは製作者の彼に最終的編集権を放棄するよう説得される。ただちにシャインバーグは撮影された映画のフィルムをそっくりLAに輸送するよう求めた。LAには彼の率いる編集者チームが映画の3分の1を切り詰め、ロマンス要素を増強し、ハッピーエンドにすることで完全に映画を去勢しようと待機していた。(ここで編集されたものは後に米TV放映版となっている)
 この間、ギリアムは映画を救おうと必死に努めた。計画された南カリフォルニア大学でのアーサーナイトの映画講座における学生向け試写は、ユニヴァーサル側の弁護士の主張で開幕直前に中止された。ギリアムはシャインバーグの子分格スピルバーグのために試写をして彼を味方につけようとした。大いに気に入ったスピルバーグだったが、よき指導者を追い打つ動きに乗ろうとはしなかった。
(中略)
 最初の試写からほとんど1年後の1985年の12月、アーノン・ミルチャンはLA批評家協会のために内々の試写を何度か用意した。批評家たちはこれに応え、未公開の映画『未来世紀ブラジル』に作品賞、脚本賞、監督賞を贈った。ギリアムはこのニュースを『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観て戻ったところで耳にした。他に方法を見いだせぬまま、ユニヴァーサルは133分のアメリカ編集版を同じ月、アカデミー賞選考の対象となる週に封切った。映画は後に、脚本賞と美術賞2部門でオスカーの候補となった。が、1986年2月、ようやく全米公開にこぎつけた映画はユニヴァーサルのあまり熱心ではない宣伝のせいもあって興行的成功は手にいれそこなった。

 とはいえ最終的にギリアムは勝利をおさめている。彼の映画は公開され、あらゆる人の目にふれた。当時、彼はむしろ喜んでいた。「いやな経験をここまでできるものじゃないよ」と勝利の報せを聞いた彼は「デイリー・ミラー」紙に語っている。「顔の見えない輩を公の場に引きずり出したんだ。彼の言葉が彼自身を糾弾しているよ。でも僕はシドがほんとは好きでシドもきっと僕を好きだと思う」『未来世紀ブラジル』を作った男にしては驚くほど楽天的なコメントだが――。
 「おかげで長いこと僕を悩ませていたものから自由になれた」と当時、ギリアムは述懐している。「要は20世紀後半に生きる要求不満からかな。人の生活はより豊かになったように見えるけれど、実は制御しにくくなっただけだ。『未来世紀ブラジル』はアメリカで、安易に定義づけられた公式に従うみたいな映画作りの方法に抵抗して蓄積されていた多くのエネルギーの核になった。僕は連中の型に押しこめられることを退け、だからこそ擁護されたんだ」

――多くの人間が『未来世紀ブラジル』をテリー・ギリアム映画の決定版とみています。ご自身の最高傑作だと思われますか?

ギリアム;どうなんだか。恐らくもっとも個人的で悪魔祓い的な映画ではあるだろうね。これを作って解放されることが必要だった1本、僕を怒らせるものごとを、より多く含んだ1本だった。僕のどの映画よりもこの映画をみんなは話題にするね。映画好きを、そしてお騒がせ好きな連中を他の映画より強烈に刺激した1本。
 『未来世紀ブラジル』に何があるのか、僕には分からない。ただ何かがあるって感じが大事なんじゃないかな。封切り当時、批評は控え目にいっても割れていたんでね。勝手気まますぎるとか、視覚的不協和音だとか、人間が描けていないとか思われていたんだ。批評はジョナサン・プウライスに触れようにもしないでさ、デザインとかルックやらを云々するのに忙しくてね。明らかに僕はあそこにまだ誰もしたことのないようなひとつの世界を、空気を創りだした。でも僕としてはあれはドイツ表現主義芸術、あるいは『メトロポリス』や『カリガリ博士』といった映画から踏襲したものにすぎないんで。
 ただ『ブレードランナー』がしなかったことをしようと努めはしたな。だってあの映画はラストで魂を売り渡してしまってるから。『ブレードランナー』のエンディングが大嫌いだから。『未来世紀ブラジル』の結末はあの映画への反発となっている部分も多いね。実際、素晴らしい映画で、僕の期待を膨らませておきながら、いきなり夕陽に向かって去っていくあのとんでもないラストになってしまうんだから。


『ブレードランナー』のエンディングを嫌ったギリアム監督は、『未来世紀ブラジル』では編集権をほぼ守り通したようですね。そのあたりについてウィキペディア「ディレクターズ・カット」を見てみましょう。


wikipedia ディレクターズ・カット より
アメリカのハリウッド映画では伝統的に映画の最終的な編集権(ファイナル・カット)は映画の製作者であるプロデューサーが有する。そのため、映画監督(ディレクター)は成功するとプロデューサーを目指す(他に映画はプロデューサーのものとされているため)。ディレクターズ・カットは、プロデューサーによって不本意な編集を行なわれた監督が、当初劇場公開されたバージョンとは別に、改めて編集した映画のバージョンを呼ぶ。映画館で再公開されたり、ビデオでリリースされる。


ちなみに大使としては、COE、プロデューサーの権限が強すぎるハリウッド映画を見限っているんですけど。





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Last updated  2012.05.06 12:13:19
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