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2013.06.11
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カテゴリ: 気になる本
日曜日の朝日新聞に読書欄があるので、ときどき切り取ってスクラップで残していたのだが、これを一歩進めて、無料デジタル版のデータで残すことにしたのです。
・・・・で、今回のお奨めです。

・旅立つ理由 
・脳のなかの天使

今回はお二人の評者に惹かれて取り上げましたが、玉石混交の新刊から本を選ぶには評者に頼るのも一興でしょうね。
さっそく、図書館に借り出し予約するのもいいかもね。
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旅立つ理由 より
旅

<旅の醍醐味、粋に描いた短編集:内澤旬子 (文筆家・イラストレーター) >
 旅をテーマにした本を手に取るには、特別な気力を振り絞らねばならない。
 旅というものは、本来実にわがままな娯楽にすぎない。異郷の地について知るのだったら、定住までの記録や専門知識にのっとった調査による紀行文を読むほうが格段におもしろく外れが少ない。しかしそれらは、純粋な旅の記述とはちょっと違うものだ。

 旅人は、異国の地でほどよく初心者であってほしい。そして、購って得る対価以上の「なにか」は、求めずして偶然に降ってくるからこそ、響くもの。だからこそそういう出会いを求め歩いていることが透けて見える文を読むと、一気に興ざめる。ついでに言えば旅の自慢もナルシスティックな旅の言い訳も、苦手だ。
 偏屈極まりない読者であることは自覚している。ならば読まなければいいのだが、極上の「旅」が読める機会を逃すのは惜しい。

 タイトルから警戒して開いた本書であるが、旅に出る理由を語るような野暮とは無縁の、実にクールな旅の短編小説集だった。

 国境を越え両替もしないうちに入ったウガンダの食堂。次の国に行くための予防接種。ビールを求めてやっと見つけたザンジバルのバー。
 旅の途上で誰でも出会うような出来事と、人々のなにげないしぐさや会話から、彼らの民族的な流浪の背景を鮮やかに切り取り、読み手をふと浮き立つような切ない気持ちに導く。自分が移動のさなかに味わうあの気持ち。言いたくないけど言ってしまえば、旅の醍醐味。それが小説全21編にわたって嫌みなく粋に鏤(ちりば)められている。登場する土地に対する知識や語学力、観察眼や人生経験を備えているだけで書けるレベルの文ではない。こんな風に書けたらどんなに素敵(すてき)だろうと、嫉妬も忘れ素直に憧れる。唯一の難点は、旅心に火が点いてしまうこと。良書の証しとはいえ、困る。
  ◇

旦敬介著、岩波書店、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
政変でケニアに逃げてきたエチオピア人、ベリーズに流れ着いた上海娘、メキシコ湾岸に住む黒人奴隷の子孫たち…。アフリカや南米の、そのさらなる辺境に暮らすふつうの人びとの真摯に生きる表情と飾らぬ姿を簡潔に写し取りながら、現代の地球において、人はどういう理由で旅に出るのか、どうして故郷を離れることを強いられるのかを問う、21の短篇。主人公以外は日本人がほとんど登場しない、異色の日本文学。

<読む前の大使寸評>
内澤旬子さんが推す旅の本となれば、見過ごせないわけです。
わりと高価な本なので買うことはあきらめて、そのうち図書館で借りてみよう。

rakuten 旅立つ理由



脳のなかの天使 より
脳

<なぜ美を感じる? ヒトの特性に迫る:福岡伸一(青山学院大学教授・生物学)> 
 ルリボシカミキリの青を、私は限りなく美しいと感じるが、ルリボシカミキリ自身は、仲間の背中の模様を、私が感じるように感じてはいない。おそらく彼らにはそれは青色ですらない(虫は色彩をもたない)。

 美とは一体何だろうか。この思考実験からわかるように、美は客観的な存在ではなく、私たちの心の作用としてある。美術家の森村泰昌は、芸術の本質は「まねぶ」ことにあるといった。まねすることは学ぶこと。

 意外なことに、脳科学の進展は、芸術家の直感と極めて近いところに焦点を結びつつある。本書は、ベストセラー『脳のなかの幽霊』の著者が、美の起源とヒトの脳の特性を縦横無尽に論じた最新作。読まずにはいられない。
 美を感じることは、生物学的に根拠がある。生存に必要なことを自然界から抽出する操作として。青に美を感じるのは、海や大気の色だから。ダイヤモンドの輝きが美しいのは、水の反射を想起させるから。

 その抽出方法を、著者は美の原理を順に挙げ論じていく。ひとつは単離。複雑なものから輪郭、色、形状、動きなど少数の要素を取り出してみせること。もうひとつはピークシフト。単離されたものがもつベクトルをさらに強めること。ラスコーの壁画はなぜ忘れがたいほど美しいのか。バイソンは輪郭線だけで表現され(単離)、小さな頭と大きな背の盛り上がりが見事に誇張されている(ピークシフト)から。ピカソの絵が破調に見えて、なおそこに美があるのも、それが天才による極端な単離とピークシフトだから。

 ではなぜヒトは自然からことさら美を抽出する必要があったのか。進化の光を当てると見えてくる。ここからが本書の核心部分。それはある光景を思い浮かべるとき、実際にそ れを見ているのと同じ体験が可能だから。バーチャルリアリティーによってリハーサルできることがリアリティーと直面したときの準備を与え得るから。

 著者はここに、近年の脳科学の最大の発見、ミラーニューロンを結びつける。この神経細胞は特定の動作をしているとき活性化されるだけでなく、その動作を他の個体が行っているときも同じように活性化する。いわば「まねぶ」の回路。この回路を脳の他のしくみと連携させたおかげで、ヒトは遺伝子の束縛から脱し、サルと袂を分かって短期間のうちに文化と文明を築き得た。

 米国では『ゲーデル、エッシャー、バッハ』の著者D・ホフスタッターの新著『Surfaces and Essences』が評判だ。テーマはアナロジー能力がヒトをヒトたらしめたこと。まねぶ意義がにわかに注目を集めているのである。

 ◇

V・S・ラマチャンドラン著、角川書店、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
バナナに手をのばすことならどんな類人猿にもできる。しかし、星に手をのばすことができるのは人間だけ。類人猿は森のなかで生き、競いあい、繁殖し、死ぬ―それで終わりだ。人間は文字を書き、研究し、創造し、探求する。なぜ人間だけユニークな進化を遂げているのか?神経学者が解明する脳と心の謎。

<読む前の大使寸評>
福岡博士が推す本となれば、これまた見過ごせないわけです。
とにかく福岡博士の書評そのものが素晴らしい読み物になっているので・・・ええでぇ♪
「アナロジー能力がヒトをヒトたらしめた」とのこと・・・哲学的ですね。

rakuten 脳のなかの天使


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Last updated  2013.06.11 15:40:37
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