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2014.02.07
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カテゴリ: 気になる本
日曜日の朝日新聞に読書欄があるので、ときどき切り取ってスクラップで残していたのだが、これを一歩進めて、無料デジタル版のデータで残すことにしたのです。


・失われた名前
・花森安治伝―日本の暮しをかえた男


さっそく、図書館に借り出し予約するのもいいかもね。
***************************************************************

失われた名前 より
名前

<互いが慈しみあう生活を求めて:角幡唯介(ノンフィクション作家・探検家)>
 英国に住む今は平凡な主婦となった女性の回想録だが、内容は驚愕の一言に尽きる。
 マリーナ・チャップマンは自分が出生時に何と名付けられたのか知らない。名前だけでなく生まれた場所もわからない。5歳ぐらいの時に何者かに誘拐され、それ以前の記憶が残っていないからだ。

 誘拐された後、彼女はジャングルに置き去りにされた。花柄のワンピースを着たひとりぼっちの少女が何年も密林で生き延びることができたのは、ひとえにサルの群れと出会うことができたからだった。最初は同じ物を食べ、鳴き声を真似るなどしただけだったがが、そのうち家族同然で過ごすようになり、サルの感情や言葉を理解できるようになる。ある時などサルは明確な意思をもって病気の彼女を助けたことさえあった。
 失礼かもしれないが、本書はまるでサルが書いた本のようだ。もちろん悪い意味ではなく視座がサルのそれと同じなのだ。彼女の描くサルは人間のように会話をし、愛情たっぷりで個性豊かだ。それは言葉を覚えたサルによるサルの生の報告であり、どんなに優れた研究者の本にもこんなサルは出てこない。一方、サルから見た人間の姿は残酷で獰猛で傲慢で不条理だ。人間が現れた時、サルたちは恐怖に怯えて警戒するが、それを読むと動物にとって人間がどういう存在なのかよくわかる。

 それにしてもこれは本当の話なのだろうか。人間社会に戻った後も彼女の人生は売春宿に売られ、路上生活をし、犯罪者家族から命を狙われ……と転変を極める。居場所が変わるたびに別の名前を与えられる、そんな奴隷のような生活から何度も逃走を試みるが、それはただサルと暮らしていた時のような互いが慈しみあう、愛情のある生活が欲しかったからだった。
 14歳で初めて彼女はそれを人間から与えられるのだが、その件(くだり)を読んだ時は胸に熱いものがこみあげてきた。
    ◇

『失われた名前』 マリーナ・チャップマン著、駒草出版、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
誘拐、サルたちとの生活、売春宿、そしてストリート・チルドレン…。数奇で過酷な運命をへて幸せをつかんだ、ある少女の真実の物語。

<読む前の大使寸評>
「まるでサルが書いた本のようだ」という書評に、興味をそそられるのです。

rakuten 失われた名前



花森安治伝―日本の暮しをかえた男 より
花森

<「まちがった後」を生ききる:内澤旬子(文筆家・イラストレーター) >
花森安治といえば、センス抜群のイラストとグラフィックデザイン。そして広告を潔く排し、地道すぎるほど地道に行われた商品テストを載せた雑誌「暮しの手帖」。
 1980~90年代、広告収入に依存した雑誌全盛の時代、すでに花森亡き後であるが、この雑誌の、消費社会に徹底抗戦するかのごときたたずまいは、書店で孤高のオーラを放っていたのだった。それが世紀が変わり、景気の悪さも板に付いた頃か、若い世代からのいわゆるロハス的な視点の再評価が始まった。嬉しい一方、何か引っかかる。

 本書を読んで腑に落ちた。花森安治には、第2次大戦時に大政翼賛会の宣伝部に在籍し「お国のために」懸命に働いていた時期があった。
 後年、「暮しの手帖」が百万部越えの国民雑誌となり、女装の反戦論者として有名になると、戦時中はあんなことをしていたくせにという揶揄があがったという。
 黙してなにも語らなかった花森の真意はどこにあったのか。裕福でなかった家庭、帝大在学中の就職と結婚、化粧品会社広告部に就職するも、1年で出征。そして病で除隊となり大政翼賛会へ就職。著者は丹念に戦前からの花森の軌跡を追い、才能に恵まれながらも妻子を抱え、先の見えない世情に翻弄される若者の姿を浮かび上がらせる。

 戦後、花森は「女性の暮し」を良くすることで日本を変えようと「暮しの手帖」を作る。個人の責任で判断し発信するため、一点の妥協も許さずすべての組織と無縁に、君臨する。まるで「紙の砦」。そんな偉業をなし遂げた万能編集長、どこにもいない。長らく編集長を経験した著者ならではの花森への共感と距離感が心地よく響く。
 人はだれでもまちがう。その後、どう生きるかだと著者は説く。今度こそまちがわないという、狂気じみた覚悟で花森は「まちがった後」つまり戦後を生ききったのだ。
    ◇

『花森安治伝―日本の暮しをかえた男』 津野海太郎著、新潮社、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
戦後最大の“国民雑誌”はなぜ創刊された?花森が黙して語らなかった、真の理由ー。希代の編集者の決定版評伝。『暮しの手帖』誕生の秘話。

<読む前の大使寸評>
センス抜群の男の壮絶な贖罪の人生ということで、気になる存在である。
女装することに、狂気じみた覚悟があったのでしょうね。

rakuten 花森安治伝―日本の暮しをかえた男


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朝日デジタルの書評から35
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Last updated  2014.02.07 00:06:00
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