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2014.06.17
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カテゴリ: 歴史
岸元首相の“見果てぬ夢”を追うかのような安部さんの集団的自衛権であるが・・・・
安部さんのやや古いパッション(というか危ういイリュージョン)を、司馬史観に照らしてみようと思うのです。

父から引き継いだ1999年刊『司馬遼太郎が語る日本(未公開講演録愛憎版5)』というムック本の中から日露戦争あたりを読んでみます。


<ロシアの内部事情で日本は助かった>p94~96より
 普通、大会戦をするときには、予備軍というものを控えておかなければなりませんね。十万人を展開するとすれば、1万人、あるいは2万人ぐらいは司令部に控えておく必用がある。
 ところが日本軍はこの予備兵力まで動員し、三つの大会戦をやっています。絹糸一筋を張りめぐらせるように、常に横一線に全兵力を展開した。
 ロシア軍は遠くからこれを見ていまして、これは大軍だと勘違いをした。後ろに何万の予備軍がいるかもわからない、これは困ったと思って引き下がります。むろん、その間に激戦はありますが、常にロシア軍は日本軍が重大な手傷を負う前に引き下がってくれました。最後は奉天大会戦であり、ここでもロシアは引き下がってくれた。
 日本軍は奉天の段階で勝つことは勝った。しかし、横一線の、いわば虚仮おどしが成功しての勝利です。この時点で優秀な将校も少なくなり、弾もほとんどなくなっていた。

 しかし当時の日本の政府にはリアリズムがありました。こうなることはわかっていて、手を打っていた。
 アメリカに調停をしてもらおうと、軍人もシビリアン(文官)も挙げてそのつもりでした。金子堅太郎というシビリアンがハーバード大学でセオドア・ルーズベルトと同級生なものですから、早くにアメリカに行っていました。ルーズベルトに戦争をうまく止めてもらった。
 ルーズベルトはこれでノーベル賞をもらうんですけれども、ノーベル賞よりも何よりも、日本が生き返ったわけであります。
 そしてロシアは、もっとやるぞという力を秘めてはいましたが、ロシア帝国は滅びかけていた。ソ連をつくったコミュニストの前の段階の人たちが非常に暴れておりまして、ひそかに日本はそういう人たちにお金を出していた。
 当時、明石元二郎という大佐がヘリシンキあたりに行って、ロシアの革命党にずいぶんカネを出した。それがすべてはもちろんありませんが、内乱があり、ロシアも困っていた。
 ロシアとしてもこれ以上戦争を続けていくとマイナスばかりだというので、兵を引いた。ですからロシアは決定的に負けたわけではない。ルーズベルトの仲裁がなければ、日本はおそらく滅んでいただろう。
 ロシアの内部事情が悪化していたから日本は助かったのであり、元気いっぱいのロシアなら、滅んでいただろうと思います。
 そういう認識があれば、日本は太平洋戦争をやらなかったでしょう。

(中略)

 日露戦争が終わったあと、日本は全部オープンにすべきでした。日露戦争はきわどかったんだ、もうあれ以上やったら負けていたんだと。
 それはしませんでした。それどころか日露戦争が終わると、日本人は戦争が強いんだという神秘的な思想が独り歩きした。小学校でも盛んに教育が行われた。
 そんなばかな教育は、例えば夏目漱石も受けたことがないし、正岡子規も受けたことがありません。日露戦争の軍人たちもそんな話は聞いたこともなかったと思います。
 「日本軍は世界一強い」
 とんでもない話ですね。

 明治末年や大正時代に生まれた人たちから教育が始まった。私もその一人です。日本は強いと。そんなばかな国ですから、結果は皆さんご存じのとおりになりました。私も1945年の8月15日に、なんでこんなばかな国に生まれたんだろうと思いました。



<比較を拒絶すると国を滅ぼすことに>p98より
 ノモンハン事件は昭和14年の出来事でした。日本軍の総司令官は、モスクワ駐在の武官をしていた。つまりソ連軍の実力をいちばんよく知っている人だったはずであり、日本の陸軍省や参謀本部にずいぶん報告したはずです。それが仕事なのですから。しかしどうも報告した気配もない。報告すると出世しなかったそうですな。

 ソ連は往年のロシア軍ではないぞ、日露戦争のロシア軍ではないぞといって、きちっとした報告をした人が出世しない。中将になる人が少将で終わったそうです。比較をする人間を、軍はむしろ積極的に圧殺していったのです。

 きょう申し上げたかったことは、防衛というものは、国家にとって第一に大切なことであると。しかし、日本の防衛というのは、歴史的にも現実的にも線を越えることが極めて難しい。

 日本を防衛するためには、周辺の国を取ってそこに陣地をつくらなければ平和は保てないという考え方まで空想的に起こした人たちが、かつていた。
 よその国にご迷惑をかけるというヒューマニズムの問題以前に、兵力が全く分散してしまいます。そんな防衛をしていたら、防衛になるはずもない。
 当たり前のことであります。だから日本は、非常に聡明な人が防衛の基本線を考えねばならない国だということですね。

 繰り返し言いますが、フランスの防衛はたやすい。伝統的にドイツが攻めてこないようにするだけでした。
 イギリスは、全世界に情報を持っていて、ブリテン島が海に浮かんでいるというよりも、情報で浮かんでいる。
 日本もそうあるべきなのに、比較の嫌いな、比較を拒絶した時代がありました。1945年よりも前の少なくとも20年間、比較嫌いの政治勢力が日本を支配していた。

中国の脅威がこれだけ大きくなるとは、司馬さんの想定外なのかも知れないが(笑)・・・
司馬さんが、日本の安全保障はどうあるべきかを語っているこのあたりの史観は、司馬史観というやや揶揄した言い方で聞き流すことはできないと、思うわけです。


【司馬遼太郎が語る日本(未公開講演録愛憎版5)】
司馬

ムック本、朝日新聞社、1999年刊

<目次>より
ロシアについて 防衛と日本史 総合雑誌の歴史 うその思想 医学の原点 建築について 土佐人の明晰さ 小説の衰弱 松尾芭蕉の感動と失望 私と八木一夫 発掘!司馬さんの青春時代の短編小説 特集「司馬遼太郎と台湾旅行」を語る会 グラビア 同行カメラマンが撮った司馬さん インタビュー 小説を書き始めた頃 司馬さんの習作を追いかけて 座談会 老台北、安野光雅さんが語った司馬さん

<大使寸評>
この本は父の蔵書を受け継ぐものですが・・・・
古書なので、japanorderのデータです。

japanorder 司馬遼太郎が語る日本(未公開講演録愛憎版5)






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Last updated  2014.06.17 21:35:57
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