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2014.06.22
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カテゴリ: アート
柳田國男の民俗学と柳宗悦の民藝運動を並立して語るという着想もいいけど・・・


著者自ら「学術研究ではないし、一般読者向けの紹介とかいったものではない」と断ったうえで、この本の生い立ちを述べています。

<まえがき> より
 柳田國男の民俗学と柳宗悦の民藝運動とは、二人の天分に従って大変異なる方法、手段、言葉遣いで展開されたのだが、それらを生み出し、成長させた土壌は同じひとつのものだ。二人は、そのことを充分に知っていながら、まるで疎遠な兄弟のように、互いにほとんど通い合うところがなかった。

 論争も称賛も交し合うことがなかった。それほどに、二人の仕事は、歴史中の大きな困難を、それぞれの仕方で突き抜けたところにあって、説きがたい孤独な普遍性を帯びていたと思う。これまで彼らに向けられてきた崇拝、懐疑、揶揄、罵倒は、みなそのことを裏から示している。

 私もこの本は、彼ら二人の仕事をして輪唱のように歌わせたい、という願望から書かれている。声質も音域も異なり、伴奏法もまったく異なる二人に、同じただひとつの曲を交互に歌わしてみたい、という願望である。
(中略)

 そういうわけだから、これから私が書くことは、もとより学術研究ではないし、一般読者向けの紹介とかいったものではない。私は柳田と柳と、さらにこの二人をめぐる幾人かの人々の歌から注意深く採譜して、それらを繋ぎ合わせ、できれば自分なりの演奏をつくり出してみたいのである。そういうことが、できるかどうかはわからないが、この試みは、少なくとも私にとっては無上の喜びだ。それでよい。書く喜びが、最も深い動機でないような本を、私は結局のところ信用することができない。


柳宋悦といえば李朝陶磁を連想するが・・・そのあたりについて紹介します。

<柳宋悦が観たもの> p78~82より
 柳が生まれ、育った明治後半の東京は、維新以来、「文明開化」と称してなだれ込んできた西洋の文物を、言わば内面化することに、多くの知的選良がしのぎを削って競い合った場所だった。柳は、まさしくそのような選良の一人として、自身の執筆活動を始めているのである。こうした柳に転機が訪れるのは、大正3年、彼が25歳の時だった。柳より5歳年上で、目下、西洋彫刻を学んでいる浅川伯教という青年が、当時は千葉県我孫子町にあった柳の自宅を訪ねてくる。

 浅川伯教は、山梨県高根町で生まれ、明治45年に彫刻家、新海竹太郎の弟子となったが、同じ頃、甲府で朝鮮陶磁に出会い、強く惹かれるようになる。大正2年、伯教は、ついに朝鮮に渡り、朝鮮総督府山林課に勤めながら、朝鮮工芸を独自に研究し始める。翌3年、彼が我孫子の柳宅を訪ねたのは、そこにロダンのブロンズ彫刻があったからである。この彫刻は、雑誌『白樺』の「ロダン第70回誕生記念号」刊行に対するロダンの返礼として白樺派の同人に贈られたものだった。届けられた彫刻は、全部で3点あったが、そのうちひとつを、柳が自宅に預かっていた。伯教は、それを観るために、はるばる朝鮮から柳を訪ねてきたのである。しかし、その後、二人を生涯の盟友として結びつけたのは、ロダンの彫刻ではなく、伯教が手土産として持参した李朝白磁の安価な一個の壷だった。

壷李朝染付草花文瓢型瓶(日本民藝館)

 「瓢型瓶」と呼ばれるからには、この壷には、もう一段上に瓶が乗っていたのだろう。それが失われたまっまで、ただの壷として使われていた。朝鮮で日常品として使われていた古物の壷を、浅川伯教が現地で買い、初対面の柳宗悦に手土産として贈ったわけである。この贈り物こそは、昭和になって大きく展開される「民藝運動」の出発点になった。

(中略)
 柳は20歳の時、偶然通りかかった神田神保町の骨董店で、李朝の牡丹紋の壷をひとつ買っている。初めて買った器だった。学生が大枚3円をはたいて買ったと、後年柳は書いているが、それは、ほんとうに不思議な経験だったと言うほかはない。西洋近代への憧れで頭を一杯にしていた学習院高等科の学生が、なぜこの壷の、すでに半面は消えかかっている染付の味わいに強く惹かれたのか。柳が物を観る目の澄みきった天性は、いつも彼の知識、思惟、経験にはるかに先立っていた。浅川伯教が持ちこんだ草花文の瓢型壷は、さらに大きな倍音を響かせたに違いない。ふたつの李朝壷は共鳴し合い、柳が負った真の天分を、彼の心底から沸き上がらせた。

(中略)
 李朝陶磁は、その姿、焼肌、色合い、模様のいずれを取ってもまことに慎ましく、柔らかく、何か寂しい心持ちを与えるものでさえある。それらは、奔放で自由だが、内に沈み込んで、自足しているものでもある。そこに溢れる自然への謙譲は、喜びのある農の道徳から育ったものにほかならない。大陸から来る強大な明文明の圧力に対して、李朝の器こそは、守るべき朝鮮の心を、遂に、最後に、暮らしの道徳において守りきったとでもいうような佇まいを持つのである。



【民俗と民芸】
民俗

前田英樹著、講談社、2013年刊

<内容紹介>より
柳田國男の民俗学と柳宗悦の民藝運動―。異なる方法、言葉遣いで展開されたそれらを、成長させた土壌は同じひとつのものだ。それを本書で著者は“原理としての日本”とよぶ。時期を同じくしながら、交わることの少なかった二人の仕事によりそい、二人の輪唱に誘う力作。

<大使寸評>
柳田國男の民俗学と柳宗悦の民藝運動を並立して語るという着想もいいけど・・・
それをなぜ書きたいかと説明する「まえがき」がええでぇ♪

著者自ら「学術研究ではないし、一般読者向けの紹介とかいったものではない」と断ったうえで、この本の生い立ちを述べています。

amazon 民俗と民芸


ところで、中朝の陶磁器をめぐって面白い論争があったので、茨木のり子著「ハングルへの旅」より紹介します。(蛇足かもしれないが)

一年分のキムチや味噌を入れて、庭さきに置かれるトックという飴いろの甕も、作りは実に無雑作で、底が平らでないのか、がたぴしした姿で並べられている。大量生産である筈のこの甕も、整然とはしていない。
 大小さまざまの甕が、いびつなんかどこ吹く風、というように庭さきや屋根や堀の上に泰然と鎮座し、ぴっちり蓋をかぶされ、おもいおもいの姿で陽を浴びて、中のものをゆっくり発酵させている図は、隣国ならではの安らかな風景である。
 隙のある美しさ、欠けたるところのある良さ、を十分に享受できる資質を持った日本人が、いざ物を作ろうとすると、完璧志向があらわれる。シンメトリーが気にかかる。一部の隙もないものを作れなければ一人前の職人とはみなされない。
 鑑賞と製作のこのアンバランスはおもしろい。ふしぎである。
 いつか、中国の陶器を熱愛する友人に、「李朝のものがいいたって、中国の逸品に比べたらぜんぜん駄目。絶対にかないっこない」と挑まれ、中国の陶器をさほどいいと思ってない私は「中国の陶器は精巧だけれど、一部の隙もなくて、こちらがパーンとはねかえされるような硬さがある。見事ですね、で終わり。特に景徳鎮のものなんて厭じゃア」
 とか言って、相手も負けてはいず、
 「高麗磁器なんか、あなた、あれは金かくしの色よ」
「冗談じゃありません!」
 お互いに一歩も譲らず喧々諤々、言い争ったことがある。好みの問題ばかりはどうしようもないけれど。


好みの問題はいかんともし難いが・・・このところの嫌中気分もあり、朝鮮の方に軍配が上がりますね♪





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Last updated  2014.06.22 00:15:17
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