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2014.09.27
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カテゴリ: 気になる本
図書館で、川上未映子のエッセイ集『人生が用意するもの』を見つけて借りたのだが・・・
決め手は先日借りた『六つの星星』という対談集が良かったからです。
これらの対談に、わりと奇抜で本質的な思考が垣間見えたけど、さて、エッセイのほうはどんなかな。

大使は普段、週刊新潮を読まないので、「オモロマンティック・ボム!」というコラムがあることを知らなかったが・・・
このコラムのエッセイを集めて、エッセイ集『人生が用意するもの』が刊行されたとのこと。(2011年から2012年まで連載分、これで3冊目、今も連載中)



川上

川上未映子著、新潮社、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
「世界のみんなが気になるところ」を論じ、あの三月を思い、人生のデコボコに微苦笑しながら、読者の意表を突きまくる最新エッセイ六十余篇。断酒日記付き。

<大使寸評>
週刊新潮に連載の「オモロマンティック・ボム!」を単行本化した3冊目にあたるとのことであるが・・・
「オモロマンティック・ボム!」というタイトルからして、そして中身も面白いのである。
彼女は紫式部文学賞なるものを授賞しているそうだが・・・
なるほど、長くつづる文体は紫式部のようでもある。
でも、彼女の文体は、清少納言や吉田兼好のような随筆にこそ生きるのではないかと思うのです。
rakuten 人生が用意するもの


では、オモロマンティックな、はたまた真摯なエッセイをいくつか紹介します。
発刊が福島原発事故のあとなので、反原発テーマの章が設けてあります。

<デモであれこれ> よりp86~88
 9月19日に明治公園で行われた「さようなら原発 5万人集会」に参加した。震災以後に開催されたデモのなかで最大規模になると聞いていたけれど、実際に足を運んでみると想像を遥かに上回る人の数。団体や組合の掲げる旗がひしめき、見渡す限りが人であった。主催者発表では6万人以上、警察発表では3万人。

  (文字数制限により省略、全文は ここ


お茶の間発想と謙遜しているが・・・いやいやどうして本質を突いていると思います。
メディアに頻出する経済学者など、悔しかったら彼女を納得させる反論を述べてみろとも思うのだ。


これでは、国語の教科書には載らないでしょうね。

<たとえルールがわからなくても> よりp109~111
 だんだんと暖かい日もつづくようになってきて、いいね、なんて言ってこのまま春の深まりに身を横たえて惰眠を貪りぬくぬく過ごしていたいのだけどそうはゆかぬのが人生です。いきなりガッと足首をつかまれて春のまどろみから引きずり出され、まるで有刺鉄線で編み上げられた絨毯でぐるぐる巻きにされて、そのうえから鬼が持っているいかつい棍棒でタコ殴りにされるかのような衝撃をくれるのはそう、どなたの明言だったかしらん、国によるカツアゲ・・・もとい、確定申告であります。

(文字数制限により省略、全文は ここ


奇抜と思われる川上さんの、まじめで優しい一面が見られるあたりを紹介します。

<夢見る人を支えているのは> よりp142~144
(文字数制限により省略、全文は ここ


避けがたい死とは生物の摂理であるが、そのあたりについて語っています。

<すべてはあの謎にむかって> よりp212~88
 先週、実家で暮らしていた犬が死んでしまった。
 人間でいえば80歳の13年を生きたのだから大往生とはいえ、元気だったのに、突然ころんと寝転んで数時間後に息を引き取ったらしくて驚いた。上京してからは別々に暮らしたけれど、どこまでも仲の良い我々だった。生まれたばかりのころのまだ歩くこともできなかった足、毎日拭き取った緑色のうんちのことなど、全部がついさっきのことのように思いだせて、すごく悲しい。

 しかし人間関係のことならいざ知らず、ペットの死、とりわけその悲しみについて書くのは剣呑だ。経験のある人は「わかるぜ」と深く肯いてくれるだろうけど、そうでない人にとっては比較的どうでもいい&残念だとは思うけどそんなに共感できない、そんな話であるわけで。

 しかし人間の死と動物(特に犬)の死にそれぞれ接してみて、深い感謝とともにある種の後ろめたさがあってしまうのは後者なんだよね。それはやっぱり彼らのふるまいを人間の都合によって解釈しつつ、際限なくその献身を享受しつづけたことによるのかも。
 冷静に振り返ってみれば我々は話しあいをしたこともないし、気持ちを確認したこともないし、いつだって成立していたのは人間の言葉を介した想像の当てはめなのだった。
 あんなに通じあっていたのに、そういえば1回だってしゃべったことないんだったなあ、と思うと少し不思議な気持ちになる。人間にとって言葉は大きなものだけど、しかし人間だって死んだ後、思いだして苦しくなるのは手触りとか一緒に時間を過ごした感覚そのものだったりして、ああ世界は言葉とそれ以外のもので今日も順調に満ち満ちているのだった。

 しかしそれが誰であれなんであれ、大事だと思うものに死なれてしまうのはやっぱりいやなことだと改めて思う。もう会えなくなる、触れなくなる、見えなくなるという実際的な悲しみの恐怖も大きいけれど、「生まれて、生きて、死んでいく」という、この避けがたくいつかすべての生き物を必ず捉えてしまうこのサイクルの訳のわからなさを何度でも思い知らされることもまた、恐怖のひとつだと思う。思えば人類の歴史を推進してきた巨大なエンジンのひとつは、この訳のわからなさに対しての抗いでできあがっている。宗教も科学も戦争も愛も哲学も、けっきょくは生を維持すること=死への恐怖、そしてその解明と克服とを原動力として日々育っている最中なのだ。

 だからまあ、生きている者が死んだりすれば、そりゃ悲しくて怖くて、訳がわからないのは誰のせいでもなく、それはもう誰かと関わりあって生きているだけでどうしようもなく備わっている限界というか摂理みたいなものだから、悲しいあいだはずっと悲しんだっていいような気もするよ。無数にある悲しみのなかには、いつか忘れられるものもあるだろうし、どうしたって忘れられないものもあって、その濃淡だって日々変化していくものになるかもしれないし、ならないかもしれない。努力でどうにかなる生活上のこともあるけど、世界の初期設定&ルールは我々にはどうすることもできないことで、がちがちにできあがっていることに、改めて感嘆の溜め息つきつきだ。

ウーム 哲学的な一文ですね。
若いわりに悟りきっているのがなんともはや?というか・・・・ええでぇ♪

 ところで、彼女は紫式部文学賞なるものを授賞しているそうだが・・・彼女の文体で気になることを、挙げてみます。
 長くつづる文体は紫式部のようでもある。それから、文章中に&を入れることや、体言止めは大使もよくやっているが、彼女の文体では常用されていますね。

 彼女の文体は、独自の発見を自由な口語の文章で書き連ねる・・・つまり、随筆に適した文体なんでしょうね♪

彼女の文体が「あとがき」によく表れているので、じっくり読んでみましょう。

<あとがき> よりp216~218
 「オモロマンティック・ボム!」も早いもので連載4年目に突入し、単行本はこうして3冊目を刊行できる運びとなり、うれしいことだなあと思いながらいまは夏、ものすごく暑い夏で、さっき台所の窓から外を見てみると誰もひとりも歩いていない。音だってなんにも聞こえないよなそんなぐあいで、電柱や瓦や、公園の縁取りや、このあたりのカラスたちがおそらく住んでるだろうとあたりをつけている小さな林も、ふだんどおり当然のことながらしっかりと色はついているのになぜかどこまでも真っ白に見えてしまう、そんな印象ばかりが残ってしまう、とにかく目も眩むような夏の真んなかあたりで(と思ってたら今日の東京はいちばんの35度を記録した模様)、この文章を書いています。みなさんはお元気でいらっしゃいますか。

 ついこのあいだ、子どもを生んで、変化だったり大変だなあと思うときにこそ頑張らずしていつ頑張るのだ、なはんていう意味不明の強迫観念がなぜかどうしてかいつからか常にあるせいで、そんなふうにがんがん産後を過ごしていたらあっというまに体長を崩してしまって、いま現在は連載を休憩させていただいているところなのだけど、でもやっぱり授乳をしていても食事を作っていても、あやしていてもニュースを見ていてもシャワーを浴びているときでも、なにかしらちょっとでもどこかにひっかかるような点があれば「うしし、メモメモ」ってな感じで気持ちはつねにオモロマとともにあるわけで、みなさまがこのあとがきを読んでくださってるいまは復帰しているとたぶん思うのですけれど、そんなわけで今後ともなにとぞよろしくお願いいたします!

 この数日間、ここに収める1年分の文章をまるっと読み返していたら、3月の大地震について書いている部分に突きあたると、やはり気持ちはうんと沈むのだった。どうしたって思い出してしまうあの日のこと――そしてそれ以来、それぞれに訪れた困難は、東京に住んでいたってやはりとらえどころのないしんどさの中にいまをずるずる引きずりもどす、そんな力に満ちていて、ひきつづき大変なことです。もちろんなにも解決していないどころか問題は日々増えていく一方なのだけど。

 いいものもそうでないものもひっくるめて、人生が用意するものはいつだって数えきれずあるけれど、でもやっぱり、遠くを見ても近くを見ても、日常が一色であることはありえない。どんなにものすごいことが起きたって、ふとしたときに、どうでもいいようなことで笑ったり怒ったりいらっとしたり倒れたり、喜んだり抱きあったり途方に暮れたり忘れたりしながら、そういうマーブル状のあれこれとして、この連綿とつづいているように見えてしまう毎日の背中をそれでもなんとか押してくれる、そんな瞬間があってくれるのもまた本当なので、そういうものをなんとか繋げてやっていければよいなと、2012年の今はそんなふうに思っています。なんとか、なんとか。

ウン♪ 川上節の文体がええでぇ♪


川上未映子の文体は、本質的というか、コロンブス的に自由であり、面白いのである。

格調とか薀蓄までを考慮すると、当代随一のエッセイとまでは言えないかもしれないが・・・
とにかく清少納言のように言いたい放題であり、この路線を鋭意継承するのもいいではないかと思うのである♪

なお、彼女の文章を読んでいて読みにくいと感じることがあるので・・・
書き写した文章の一部に、漢字変換と句点追加を行っています。(著者には申し訳ないが)





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Last updated  2014.09.29 02:43:19
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