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2015.03.13
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カテゴリ: アート
図書館で借りた『うみべのまち』を読んでいるいるのだが・・・
この漫画には、手塚治虫がブチきれた!? というエピソードがあるそうです。

手塚治虫と佐々木マキでは、目指すところが違うというか水とアブラであり、手塚治虫がブチきれるのもわかるような気がします(笑)

エキサイトレビューで、香山哲さんの『うみべのまち』レビューを見てみましょう。

「あの連載をすぐにやめろ!」手塚治虫がブチきれた!?  佐々木マキの前衛実験漫画『うみべのまち』
佐々木

 僕は気が向くと漫画を描く仕事を手伝ったり自分で真似してみたりするのだけれど、だいたい僕が住んでいるのは「祝!アニメ化!」とか「萌え!」とか一切無いほうの漫画家ワールドだ。
 そんな世界において、ゲゲゲの水木しげる並みに誰でも知っていて、その影響を受けていない作家を見つける方が難しいような大作家の一人に、佐々木マキというのがいる。この人の漫画は、どちらかというと何かを表現する人に愛されがちだが、今日は是非広く紹介したいと思う。

 村上春樹の表紙や挿絵、絵本作品でも有名な佐々木マキは、60年代から活躍した漫画家で、編集・印刷・出版といった類を熟知したような、新しい表現を大量に漫画に持ち込んだ革新家だった。その画面にはいつの時代ともどこの国のものとも判らないような物も多く、読む者・見る者の精神を大いに刺激してくれる。

 この作家の漫画作品は長らく入手困難になっていた物が少なくなかったのだけれど、このたび太田出版という出版社から、単行本味収録作品も加えた約400ページの本が出た。それが『うみべのまち 佐々木マキのマンガ1967-81』だ。題名が示すとおり、67年から81年にかけての作品が収録されている。

 佐々木マキの漫画は実験的なものが多く、フキダシの中に絵が入ったり、図だけのコマが続いたり、中世ヨーロッパの書物の挿絵みたいな絵だけで描いたり、そんなのは当たり前のように行われ、コピペやコラージュ、スタンプ使用などの描画手法も平気で使いまくる。

 内容もシュールやナンセンス、旅行記風からSF風に思えるものまで何でもあり。その前衛具合には、あの手塚治虫が「あれは狂ってる」「あの連載をすぐにやめろ、載せるべきではない」などと表明するぐらいだ(本書あとがきにも記述あり)。

 当時の手塚治虫はとっくに確固たる地位を築いて、「漫画の神様」と呼ばれるようになってからも随分たった頃。アニメでも大成功したあとだ。あの神様はどちらかというと新しい神様に負けるのが絶えず不安だったところもあるので、佐々木マキの実験精神にもおそれを抱いていたのかもしれない。

 『カムイ伝』のような超大作が『ガロ』で連載されると『火の鳥』で対抗し、水木しげるが妖怪漫画でヒットすると『どろろ』で対抗していた神様。佐々木マキも『ガロ』でその自由奔放な発想をスパークさせていたので、手塚治虫の嫉妬にも見える攻撃のターゲットになったのだ。

 佐々木マキの描くキャラクターに「ムッシュムニエル」という、ヤギのセールスマンみたいな魔術師がいる。… こいつがウロウロするストーリーの漫画や絵本の世界は幻覚的で、ゲームをやる人に対してはいつも「『MOTHER2』の狂った摩天楼・ムーンサイドみたいな世界」だと僕は説明している(糸井重里も村上春樹と一緒に本を書いたり『ガロ』に関わっていたぐらいなので佐々木マキは決して嫌いじゃないでしょう)。

 一切ホラーでもグロテスクでもないのに、僕は5歳ぐらいの頃、何度かムッシュムニエルが怖くてトイレに行けなかった頃があるぐらいだ。画風は杉浦茂や『フリッツ・ザ・キャット』で有名なロバート・クラムのような作家を思わせるものが多い。どちらも知らない人がいるかもしれないけど、ピンと来た人は是非見てみて欲しい。
(香山哲)


確かにコピペやコラージュが多いが、横尾忠則の作品よりマンガチックで奔放である。
・・・多分に、杉浦茂のマンガの影響を受けているのかもしれないですね。

『うみべのまち』の「あとがき」に佐々木マキさんの本意が語られています。
すなわち・・・
明るくてアナーキーで、呑気でナンセンスな、かわいらしいマンガを描いてみたいと思ったそうです。




 保証金なしの貸本屋というのは、戦後神戸から始まったそうで、私の子供時分には、どの町内にも二軒ずつくらいあって、それぞれ盛況であった。
 私は特に杉浦茂のマンガが大好きだった。杉浦先生はいわゆる貸本マンガ家ではなかったが、貸本屋は一般少年誌も貸していたし、ふろくの別冊マンガも四、五冊タコ糸で綴じて、一冊の貸本として扱っていた。

 また近所の子供たちは、それぞれの家にある雑誌を持ち寄って、それら総てを回し読みしたので、「少年画報」も「少年」も、「おもしろブック」も「漫画王」「冒険王」も、「少年クラブ」も「漫画少年」も、見ることができたのである。中には自分の提供分として、妹や姉の「少女クラブ」、「りぼん」や「少女」、「女学生の友」、はては「ジュニアそれいゆ」などを出すものもいて、おかげで私は上田としこや今村洋子のマンガ、藤井千秋や日向房子のさし絵などを懐かしく思い出すことができる。

 しかし、とりわけしあわせな時間は、何といっても杉浦氏の未読のマンガとぽんち揚げなどの菓子が目の前にあって、その二つを味わうべく、日にやけた畳に腹這いになる時であった。その時だけは厭なことも辛いこともみんな忘れて、体の中を春風が吹くような、しあわせな気分に浸れるのだった。現実逃避。マンガはまさに避難場所だった。中学生になるとか資本屋の小説と近所の映画館が私のシェルターになった。

 十歳の時から色々なアルバイトをしてきたが、マンガを投稿して原稿料を貰うというアルバイトにめぐりあったのは、まことに幸運というほかない。1966年のこと、私の兄がどこからか、「ガロ」を創刊号から最新号までひと抱え借りてきたので、私もつげ義春のマンガを楽しみに見ていたら、「ガロ」では投稿作品を募集していたのである。マンガを描いて金を貰う。これなら人に会わずにすむし、時間の融通がきいて真夜中でもできる。

 初めての投稿が「ガロ」に掲載された時、現金書留の封筒にメモがはいっていて、おそろしく下手な字で、貴君のマンガは面白いのでこれからも描いて送るように、と書いてあった。この筆蹟の主こそ青林堂社長、長井勝一であった。私はこの紙片を残しておかなかったことを後悔している。長井さんにはずいぶん世話になった。「朝日ジャーナル」が初めてマンガを連載するという時に、私を推薦してくれたのも長井さんだった。

 私のマンガについて言えば、初めは普通の風刺マンガを描いていたが、そのうち、コマとコマが因果関係や時間の流れを表わすのではなく、詩の中でコトバとコトバが響き合うように、コマとコマが響き合う、そんなマンガが描けないものかと思うようになった。その試みの第一作が「天国で見る夢」である。

「朝日ジャーナル」は私に自由で実験的なマンガを望んでいた。私もその期待に応えていたら、マンガの神様と呼ばれていた人の逆鱗に触れたのである。神様は綜合雑誌に一文を寄せて、私のことを「狂人である」と断じ、「朝日ジャーナルは狂人の作品を載せてはならない。ただちに連載を中止すべきである」と主張したのだった。興味のある方は1969年夏頃の「文藝春秋」だったと思うが、そちらを参照されたい。

 もしもマンガを描くことのみで生計を立てている者をプロのマンガ家と呼ぶのなら、私がプロであったのは、わずか十箇月に過ぎない。「ガロ」はすでに稿料の出ない雑誌として知られていた。

 また私は、神様の怒りに触れなくても、これ以上前衛的実験的なスタイルでマンガを続けていくための材料もアイデアも、もはや持ち合わせていなかった。私は気が済んだというか、自分なりの実験は一応おしまいにして、さて次に何がやりたいのか自身にたずねたら、それは1950年代の杉浦茂に戻りたい、ということだった。

 すなわち、明るくてアナーキーで、呑気でナンセンスな、かわいらしいマンガを描いてみたいと思ったのだ。しかし私の場合、そういうものを発表する場所はどこにもありはしなかった。
 仕方なく、私はずるずるとイラストレーションや絵本の方面へ、生活の資を得る場を求めて移動したのである。アナザー・タウン、アナザー・ジョブ。

 それでも私は時折、マンガを描きたい衝動を抑えられなくなるのである。それで〈絵本〉のフリをシテ『たわごと師たち』とか『怪盗スパンコール』といった児童マンガを描いてみるのだが、ほとんど売れないまま、たちまち絶版になるのだった。

 昨年つまり2010年、神保町の書店が私の絵本の原画展をやってくれたとき、会場のアンケート用紙に、中学二年生(の多分女性)が「中一の夏、おしいれのガロ1969年2月号が見つかり、先生のマンガを読んだところ、しょーげきを受けました。なぜなら、自分が思っていたマンガらしいマンガだったからです」と書いてくれた。

 このマンガは「かなしい まっくす」のことだろう。私は少なくともこの子にとっては今でもマンガ家である。ちなみに私の税金申告書の職業欄は1969年から現在まで〈マンガ家〉のままである。


佐々木マキの世界 に収めています。





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Last updated  2015.03.13 00:09:37
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