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2015.03.22
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カテゴリ: 政治
<台湾、ひまわりの芽は>

香港の「雨傘運動」はポシャッたが、台湾のひまわりの芽は育っているようです♪
なお、インタビュアーは、大使一押しの吉岡圭子委員となっています。

台湾
(邱義仁さんへのインタビューを3/17デジタル朝日から転記しました)




Q:1年前、「ひまわり学生運動」はなぜ、起きたのでしょう。
A:まず、台湾人であるという認識(アイデンティティー)の高まりと、国民党・馬英九政権の『親中』路線との衝突があります。政治大学選挙研究センター(台湾)によると昨年、自分は台湾人だと考える人は6割、中国人でもあり台湾人でもあると考える人は3割でした。10年前は後者が5割近く、前者は4割程度だった。ちなみに20年前には4人に1人が中国人だと考えていましたが、いまは4%足らず。台湾に住み、その土地や社会に愛着を感じる人が増えているのです。

 一方で、2008年からの馬政権は中国との間で経済を中心に20を超える協定を結び、閣僚会談を実現するなど政治的にも中国に傾斜しました。でも巨大な経済の中国に近づいて暮らしがよくなったかといえば、庶民は実感していない。むしろ不動産価格や物価は上がっているのに給料は上がらない。格差も広がった。中国に工場も移転している。しわ寄せを強く受けるのは若者です。

Q:そこへ、30秒の強行採決。
A:多数の議席を持つ与党の国民党が、非民主的な手続きを取ろうとした。これに学生たちの怒りが爆発したのです。不透明な政策決定過程を『黒箱(ブラックボックス)』と批判して民主主義の危機を訴え、多くの共感を得た。学生への差し入れや座りこみに参加する市民もいた。

Q:いくら非暴力とはいえ、立法院の占拠には「不法行為」という批判もあったと思いますが。
A:彼らは自分の利益のためにやっているわけではないし、そもそも中台間の協定は市民の多くが利害関係者になる。中国への傾斜で民主的な社会が損なわれるのではないか、という懸念も多くの人が感じていた。

Q:協定の締結を急ぎ、統一への道筋作りをめざす習近平政権も衝撃を受けていたようです。
A:旧ソ連の崩壊にせよ、中東で民主化を求めた『アラブの春』にせよ、若者の情熱が盛り上がるときは突然なんです。物事が起きてから後付けで背景を説明できても、予測はできない。社会にたまったマグマがなんらかの動きで噴出する。今回はそれが『30秒採決』だったのです。

Q:学生たちの運動は穏健で、外国メディアへの通訳、医療、通信手段の確保、議場の管理など突然の占拠にもかかわらず周到でした。
A:ネットやスマホを使った動員や宣伝はいまの時代の特徴ですが、台湾には市民運動の蓄積があります。私も加わった民主化を勝ち取る闘いを経て、さまざまなテーマで運動が起きています。土地収用や原発への反対、ハンセン病や同性愛などの人権問題……。一昨年には中国と関係の深い企業が台湾メディアを買収しようとし、学生たちの反対で頓挫した。成功したものばかりではないが、市民社会の経験として着実に蓄積しています。

Q:台湾の地に「ひまわり」は突然咲いたわけではない、と。
A:そうです。たとえば『ひまわり』の学生たちを教える教員は、戒厳令解除後の民主化を求めた学生運動『野百合運動』の世代です。彼らの影響もあるはずです。

Q:昨年11月の統一地方選の投票率は67%で、国民党が大敗しました。若者が立候補したり、選挙運動に加わったりしていましたね。「ひまわり」の種が芽をだしはじめた?
A:若者の投票率はあがりました。でもその数字自体は特に高くない。総統選は8割近いのですから。台湾はまだまだ若い新興民主主義社会です。戒厳令の解除と民主化が1980年代後半、総統の初の直接選挙は96年。20年もたっていません。政治は変わらないと嘆くより、与えられた権利を有効に使いたいし、使わなければならない課題がある。中国との関係に限らず、議論すべき生活にかかわる身近な問題が山積みです。

Q:「ひまわり」のその後は。
A:問題を提起するより、解決するほうが難しいものです。中国との関係が絡むとさらに難しくなる。学生たちは民主的な社会の危機や、権力・資本による生活の圧迫を前面に出し、特定の政党色は出そうとしなかった。彼らのなかに意見の違いもあるでしょうし、出さないことで幅広く支持を得たともいえる。ただ、批判だけでは世の中は動かない。運動を継続するには組織化が必須です。

Q:政党を立ち上げた学生もいるそうですね。
A:組織を動かすには、きれいごとではすまない。政治資金や権力の配分を含めて『政治』をしていかねばなりません。その闘争で私も大いに傷つき、政権を離れてからは農業を4年余りしていた。トマトやカボチャを作った。(起訴されたり、無罪になったりして)体がくたびれなければ、眠ることもできなかった。

Q:「ひまわり」の学生たちと同じ年齢のころ、政治家になろうと考えていたのですか。
A:大学で哲学を学んでいた私は政治に興味はなかったが、国民党独裁への不満と若者特有の好奇心から民主化運動を手伝い始めた。当時は言論に自由がなく、黒塗りの米ニューズウィーク誌が売られていた。公務員や弁護士になるにも、大陸からやってきた人たちと、私のような台湾出身者の間では差別があった。民進党の結党は86年ですが、政党をつくる動きはそれまで何度も押さえ込まれ、投獄を覚悟でやっていました。

Q:高成長を続けていた台湾は、なぜ民主化へ動いたのでしょうか。
A:成長によって生まれた中産階級が、自分の利益を守ろうと権利意識を高めたのです。民主化への動きは時間の長短だけで、他の道はない。

Q:中国は経済発展を遂げたいまも、言論の自由や政治活動を厳しく制限しています。
A:中国にも民主を求める人たちはいるでしょう。逮捕されるか、それがいやだから心に秘めているか、国外に出るか。はっきり見えないかもしれませんが、中国社会は経済成長を経て変わっていくし、人々の意識も変わりつつある。日本はアジアの民主化された大国です。中国にせよ、台湾にせよ、民主的な価値を尊重する人々を応援してほしい。

Q:2月に北海道大学であったセミナーで、興味深い光景がありました。「ひまわり」のリーダーの一人である陳為廷さんと、香港で行政長官の民主的選出を求めて金融街を占拠した「雨傘運動」の学生幹部が話していました。陳さんは香港に入ろうとして当局に空港で追い返されたそうですが、日本で会えたのです。
A:台湾は、香港の運動に高い関心を寄せています。香港の学生たちの要求はかなわなくても、国際社会が香港に関心を持ち続けるようになれば、大きな成果です。中国は世界の目を意識せざるを得ないからです。

 グローバル化が進んで接点が多くなると、逆にそれぞれのナショナリズムがぶつかりあう。これは自然なことです。しかし、民主主義によって育まれる多様な言論は、長期的にみれば過激なナショナリズムを抑えることもできるはず。日本は自らのためにも、中国の民主をめぐる問題に強く関心を持ってほしい。民主主義もグローバルな力でこそ街角に届くのです。

    *
邱義仁:1950年台湾・台南生まれ。台湾大学哲学科卒、米シカゴ大学政治学修士。3月末までの1年間、北海道大学公共政策大学院客員研究員。


■「対大陸」若者の模索、香港でも 香港中文大学准教授・沈旭暉さん
沈

 香港の「雨傘運動」に参加した若い世代や、彼らに共感した人々にとって、最大で唯一ともいえる成果は何か。それは、中国大陸の人々とは異なる価値観を持っている、という「香港人であること(アイデンティティー)」を確認しあったことでしょう。独立や分離に言及しているわけではないし、表面上は何も得られなかったように見えるかもしれない。それでも、若い世代の心に永遠に残っていくと思います。

 北京の中央政府は、運動を鎮圧するにあたって、大規模な流血事件になることを避けていました。英米など国際社会に干渉されるスキを与えてしまうからです。逆にそれさえなければ、中国との外交・経済関係を重視する各国は干渉しない、という自信を持っているともいえるでしょう。もともと中央政府は、香港のメディアや法律家、文化人などの意識を変えたいと考えていましたから、管理がさらに強まるのではないか、と懸念しています。

 台湾の「ひまわり運動」についていえば、台湾人は自らの議会を動かすことで事態を変えられる。一国二制度下にある香港とは決定的に違います。一方で共通点もあります。中国経済の影響力から逃れられなくなっていることと、それにもかかわらず中国人というアイデンティティーを持つ若者が減っていることです。

 北京が言論統制やNGOなど市民活動に対する抑圧を強めれば、香港や台湾の若者の心は離れていく。ネット上では双方の若者たちが運動を支持しあい、情報を交換していました。台湾の人々は香港の運動に注目していたことでしょう。昨年11月、台湾の統一地方選で中国寄りとみられた与党が大敗したのも、香港の問題も影響したのかもしれません。
 雨傘運動は、中国大陸とどう向き合うか、香港社会に対立を残しました。若者は変革を望みますが、どの社会でも安定を最優先に考える人が多いのは当然です。大陸との関係が固まるまで、この先10年ほどは、規模や形は違っても似たような運動が起きると思います。混乱は続くとみています。

    *
沈旭暉:1978年生まれ。専門は政治学・国際関係学。著書に「摩擦と協力の米中関係」「中国と世界」(ともに共著)など。

<取材を終えて>
 陳政権時代には権謀術数にたけた「黒幕」とも呼ばれた邱さんが、闘争に挫折し、農業生活を経て札幌にいる――。青年時代は民主化運動に身を投じていた老練な政治家の目に映る「ひまわり」を聞いてみたかった。政治の表舞台から退いたとはいえ、民進党の視点での発言ではあるが、台湾の「若い民主主義」の激流にもまれてきた静かな迫力があった。

 邱さんの学生時代と異なり、高度経済成長をともに遂げた東アジア。その先にある社会の閉塞感もまた、共有している。日本を含めて次の世代には、アイデンティティーを踏まえながら、自らと異なる誰かと交わり、理解しあう想像力が根付くことを願う。(編集委員・吉岡桂子)



台湾、ひまわりの芽は 邱義仁2015.3.17








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Last updated  2015.03.22 02:38:27
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