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2015.05.06
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カテゴリ: お役所システム
図書館で『証言班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?』という本を手にしたが・・・・
原子炉安全の学者でもある著者が、専門家の立場で班目委員長の証言と事故処理について語っています。



斑目

班目春樹, 岡本孝司著、新潮社、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
事故当時、総理官邸内では何が起きていたのか。根幹となる原子力安全規制のどこに問題があったのか。そして、なし崩し的に進む再稼働は本当に安全なのかー。この国が戦後最大の危機を迎えた一週間、原子力安全委員長として官邸で事故対応に当たった班目春樹氏が語る「原発の真実」。
【目次】
第1章 未曾有の非常事態(三月一二日早朝、福島第一原発へ/ベント成功!? ほか)/第2章 官邸機能せず(「インチョウが来ました」/情報がない ほか)/第3章 霞が関の罠に嵌った原子力安全委員会(初の記者会見で/漏れ出した放射性物質量を初めて推計 ほか)/第4章 安全規制は何を誤ったのか?(無責任な緊急提言/世界に取り残された日本の安全規制 ほか)

<大使寸評>
原子炉安全の学者でもある著者が、専門家の立場で班目委員長の証言と事故処理について検証しています。
何につけ敗因を検証し、今後の改善に資することは有益なことだと思うのです。

班目春樹・元教授には、個人的に面識があったので、興味深いレポートです。

<図書館予約:(4/20予約、4/29受取)>

rakuten 証言班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?


当事者も、我々も1号機爆発には衝撃を受けましたね。
p75~78
<1号機爆発の衝撃>
 12日の午後5時頃、私は官邸5階にある総理の執務室から呼び出されました。
 この時は、私は隣の総理応接室にいました。応接室には当時、原発問題に対応する関係者が集まっていました。この頃、状況は少し落ち着きを見せていたと思います。というのも、午後2時半頃、1号機のベント弁を開けることにようやく成功したという連絡が入って来ていたからです。

 これで、水を入れられるようになる。格納容器の破裂も食い止められる。少なくとも事態の悪化は止まるのではないか―。
 そんな期待を膨らませていた矢先、総理執務室に呼び込まれたのでした。
 何事かと思って入った執務室に菅さんがいたかどうかはよく覚えていません。少なくとも姿を見た記憶はない。当然話もしていないでしょう。保安院の平岡次長とは応接室から一緒でした。その他、その場には何人かの人がいましたが、政治家で覚えているのは福山官房副長官です。

 「テレビを見て! もうすぐ映像が流れるはずだから」
 強い口調でそう言う福山さんに促されて画面に注目していると、しばらくしてものすごい映像が飛び込んできました。1号機の建屋上部が爆発して吹き飛んだのです。
 その瞬間、私は凍りつきました。
 「あー、水素爆発だ」
 平岡次長によれば、私はそう言ったそうですが、覚えていません。

 ただ、水素爆発であることは見た瞬間に分かりました。爆発の仕方から見ても、それ以外はあり得ないと思いました。
 1号機では前日から格納容器の圧力が上昇し、建屋の放射線レベルが上がっていました。多分、すでにメルトダウンが起こっていたのでしょう。そのプロセスで核燃料の被覆管が溶けて、水素が大量に発生していたはずです。格納容器から建屋の放射線レベルが上がるほどの量の放射性物質が漏れ出していたということは、同時に水素も格納容器の外側に相当漏れて、建屋内に溜まっていたと考えられます。

 格納容器も内部の圧力が高くなれば、扉や、電線の貫通部、上部を覆う蓋の結合部のすき間などから、気体などが漏れ出すことを疑ってもよかったのです。

 その結果、水素が建屋内に貯まり、濃度が上がれば、当然爆発します。考えてみれば当たり前のことなのですが、想像が及ばなかった。その可能性について事前に警告できなかったことは大いに悔やまれました。

 政治家を含めて、いろんな人に怒られるだろうな、世間からも相当バッシングを浴びるかもしれない――。そんな思いがグルグルと頭の中を巡っていました。

 「何が起きたんです。どう思いますか」
 ここもよく覚えていないのですが、周りにいた人たちによれば、福山さんは、怒るのではなく、昂ぶる感情を抑えるような口調で、そう質問してきたそうです。
 質問されたなら、私はたぶん「水素爆発ですね」と答えたはずです。
 爆発という非常事態に直面しながら、不謹慎だと思うかもしれませんが、実はこの時私は内心、やや楽観的なことを考えていました。

 建屋の上部がポンと吹き飛んだのだから、格納容器自体は大丈夫だろう。格納容器とその内側の圧力容器には放射性物質がある。チェルノブイリ事故のように、これがすべて飛び散るのが怖かった。映像から見て爆発は格納容器の外側で起きたなずだ。これで水素ガスが抜けて作業がしやすくなったし、ベント弁はすでに開いているから、注水も本格化するはずだ。これで事態の悪化が食い止められるかもしれない―。

 しかし、この後、菅さんをはじめ政治家たちは、私は信用しなくなってしまいました。 国会事故調の報告書にも、この件については、専門家に対する不信感として一節が割かれています。
 「斑目委員長が『起きない』と断言していた爆発が12日15時36分に1号機で発生したことを契機に、官邸政治家における政府内の原子力専門家に対する不信感は頂点に達し、官邸政治家が前面に立つ本事故への対応体制が形成されることとなった」

 前にも述べた通り、チェルノブイリで起こった水蒸気爆発は、高温の核燃料が冷却水に触れ、発生した水蒸気により原子炉自体が一気に吹き飛んで核物質が外部に飛散するというものです。これに対して、原子炉炉心部から漏れた水素が外で爆発する水素爆発の危険度は低いのですが、爆発は爆発だということで、混同されてしまったようです。


p80~83
<皆が政治家の顔色をうかがい始めた>
 1号機がすでに炉心溶融、すなわちメルトダウンが起こっていると考えられることを、保安院が12日午後の会見で公表していました。まさに緊急事態でした。ところが、この発表を契機として、官邸の情報の判断には、技術的な合理性とは別のものが混ざり込むようになってしまったのです。

 ことの発端は、保安院が炉心溶融の見解を発表したことに、枝野官房長官やその周囲が不快感を示したことでした。状況から見て炉心の溶融はもう疑う余地がありませんでしたが、枝野さんにはそうした詳しい情報が十分に伝えられていませんでした。そもそも、枝野さんたちには技術的な内容について詳細は理解できていなかったのですが、そこへいきなり「メルトダウンが起こっている」という話が入ってきたために、「いったい、どうなっているんだ」ということになったというのが真相のようです。そのため枝野さんの周辺は保安院に対して、きちんと情報を官邸に伝えるようにと強く抗議したということです。

 保安院としては、寺坂院長が逃げ出してしまったこともあり、この抗議に過剰反応を見せます。今度は、その日の夜の記者会見などで「メルトダウンはまだ起こっていない」と真逆のことをメディアに説明し始めたのです。また、メルトダウンに言及した広報担当者も交代させられました。

 福島第一原発で何が起きているかということについて、政治家、官僚、東電などそれぞれの思惑が交錯する中で、この頃から理解や判断に政治的なファクターが色濃く反映されるようになりました。

(中略)
 メルトダウンの情報公開もそうですが、官邸にいる政治家の顔色をうかがうことが最優先となった関係者の間では、責任の押し付け合いや事実の隠蔽、かばい合いが始まっていました。

 福島第一原発の状況についても、まず、技術的な基礎知識さえない政治家に報告し、理解を求めることが優先され、正確な状況を関係者の間で十分に情報共有できなくなっていました。破局的な事態なのに、しかも、そうなってまだ一日も過ぎていないのに、こんな無責任な対処をしていては事態の悪化を食い止められる訳がない。

 本来なら、情報を密に交換し、知恵を出しあい、最も合理的な対策を次々に実施することが急務でした。しかし、特に保安院はひどかった。寺坂院長が逃げ出した後も平岡次長以下、何人かの幹部はいましたが、政治家が技術的なことを尋ねても、誰も答えない。それどころか、保安院の掴んでいる情報すら官邸には上げてきませんでした。

保身テクニックに長けた官僚たちが、責任を回避したうえに、学者を手玉にとることは、赤子の手をひねるようなものだったのでしょうね。

原子力ムラは政産官学の利権集合体のようなものであるが・・・・
学のトップのような斑目委員長から、かくも責任感溢れる証言や提言が示されたわけである。(ちなみに、政とは政権党、産とは東電・原子炉メーカ、官とはエネ庁・保安院、学とは各大学の学識経験者あたりか)

現在進行形の福一事故であるが・・・これら証言や提言が活かされることを願うものです。

証言班目春樹1 byドングリ





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Last updated  2015.05.06 16:18:19
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