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2016.03.28
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カテゴリ: アート
図書館で中沢新一著『東方的』という本を手にしたが・・・・
目次を見ると、多彩なテーマが並んでいて、何が語られるのか、興味深いのです。



東方

中沢新一著、講談社、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
ボストークー東の方。人間を乗せた最初の宇宙船の名前である。偉大なる叡智=ソフィアは、科学技術文明と近代資本主義が世界を覆い尽くす時こそが、真実の危機だと告げる。バルトーク、四次元、熊楠、マンダラ、シャーマニズム、製鉄技術、方言、映画とイヨマンテ…。多様なテーマで通底する「無意識」に、豊饒な叡智を探求する。

<大使寸評>
スラブ民族や熊楠曼荼羅など、果ては四次元的推論まで縦横無尽に書きつくす(あるいは書き散らす?)中沢さんの頭の中は、どうなっているのだろうと、驚いたのです。

shogakukan 東方的


物理学的あるいは数学的な推論を、次のように、読みやすく述べる中沢さんの頭の柔軟さに驚いたわけです。
p60~62
<四次元の展望>
 四次元の知覚というものが、どういうものかを正確に理解することは、とてつもなく難しい。それを考えるために、一般に試みられてきたやりかたは、アナロジーを使うという方法であった。

 たとえばまず、二次元の世界に生きている奇妙な二次元生物を想像して、その生物に三次元がどのようにとらえられるだろうか、調べてみるのである。二次元生物の世界に、突如として、三次元の球体が侵入してきたとしよう。この侵入物を、フラットランド(これが二次元生物の生きている世界にたいして、エドウィン・アボット・アボットがSF冒険小説『フラットランド』の中であたえた名前である)の住人は、どのようにとらえられるだろうか。

 そのとき、フラットランドには突如、彼らにとって唯一の世界である空間に、どこからともなく一つの点が出現し、その点はまたたくまに小さな円に変貌するのである。円はどんどん大きさを増していくが、今度はまた突然収縮をはじめ、ついには点にまで縮まって、その点もフッと世界の外部に消えてしまうのである。

 知性をもった二次元生物に立体を説明するのは、極度に難しい。たいていの二次元生物は、立体なるものの実在すら否定するだろう。ところが、それは実在し、二次元世界を通過していきながら、そこに自分の断面の軌跡を残すことだってできるのである。

 三次元をもった立体は、二次元の世界に閉ざされた知性には、どんな風にとらえられるのか、というこの思想実験をアナロジカルに拡大することによって、人々は四次元なるものの知覚をつくりだしてみようと、さまざまな思いつきを考案した。

 いちばんわかりやすいのは、つぎのような考え方だ。
 つまり自分の頭の知覚を、四次元超球体が通過していく様子を想像してみるのである。フラットランドのケースから類推してみると、まず点が見え、つぎに小さな球体が見えてきて、それはだんだん大きくなり、膨らむだけ膨らむと今度は収縮をはじめてやがて小さな球にもどり、最後には点になって見えなくなる、と予想してみることができるだろう。
 もっと視覚的に言うと、風船を手に持って、ゆっくり膨らませ、つぎに空気が逃げてしぼんでいくのにまかせるのと、同じようなものだと言える。超球体が部屋を横切っていくとき、そういう光景を目のあたりにすることになる。

 このアナロジーでいくと、球は円を三次元的に積み重ねたものであり、四次元超球体は球を四次元的に積み重ねたもの、ということになるわけだ。

 空間の概念の変容と拡大をもとめはじめていた、世紀末における最初の「現代人」にとって、この四次元をめぐる数学的アナロジーは、きわめて魅力的で、また豊かな説得力をもっていた。四次元の物体が私たちの世界を横切っていくとき、そこには三次元の「断面-立体」があらわれる。そして、その三次元の「断面-立体」は、つねに運動しているのである。

 「現代(モダニティ)」はこのようにして、知覚における「次元数の拡大」と「運動-時間」次元の導入によって、特徴づけることができる。そう考えてみると、思想の領域における四次元のブームと映画とが、深い関係をもっていることも、理解されるのではないだろうか。

 映画は写真に「時間-運動」の次元を導入することによって、「現代」の知覚の様式に革命的な変化をもたあしたのだ。写真は二次元の映像ではあるが、エマルジョンの物質性によって、そこにはつねに「超薄さ(アンフラマンス)」という次元がつけ加わり、それを特殊な三次元的映像にしている。また知覚的な想像力が、大脳の中で二次元映像に奥行きをあたえて、それを三次元の光景として想像できるようにしている。

 映像はその写真映像に、新しいもうひとつの次元である「運動-時間」をあたえたのだ。つまり映画は最初から、「現代」の人間に多次元的な知覚の能力を開くために、出現したメディアだったのだ。この映画にたいして深い関心をいだいていたベルクソンのような哲学者が、また数学者ポアンカレの仕事をつうじて、n-次元幾何学や非ユークリッド幾何学にも深い興味をいだいていたことなども、こういうことに関わりがあるはずである。

 「現代」の起源にとって、四次元のテーマはその意味でも、象徴的な価値をもっている。

ウーム素晴らしい。中沢さんがSF小説を書く日も近いかも♪

さらに、SF絡みのお話を見てみましょう。
p76~78
<キュビズムの冒険と挫折>
 フランスの知識人と芸術家たちが、「第四次元」という言葉を流行の概念としておおっぴらに語りだすようになるのは、20世紀にはいってからである。フランスには、ポアンカレのようなn-次元幾何学に通じた優れた数学者や、「持続」という四次元思想とも深い関わりのある概念を武器にして、哲学を一新しつつあった思想家ベルクソンなどが輩出していたのにもかかわらず、イギリスやアメリカのようには、この概念は、すばやく大衆化することがなかったのである。

 それには、たぶん民族性と出版事情のちがいがからんでいる。イギリスとアメリカには、早くから科学ジャーナリズムが発達していた。もともとそこでは博物学が発達し、また科学を応用した発明に、多くの人々が興味をいだき、新しい科学知識をいち早く知りたいという願望は、大衆のものでもあった。

 そのために、そこでは早くから、『ネイチュア』に代表されるような大部数を誇る科学週刊誌や、さまざまな科学月刊誌が発行されていたのである。そういうものが、フランスにはなかった。ここにはすぐれた文学雑誌はあっても、気のきいた科学雑誌は売られていなかった。

 そのために、アメリカ人の一般的な科学愛好家たちが、しきりと新しい幾何学とそれが開く思想的な展望などについて語っているときにも、フランスの大衆はポアンカレの本でも読まないかぎり、これらの概念に触れる機会を、あまりもつことができなかったのだ。
 多くの人々は、むしろH・G・ウェルズのSF『タイムマシン』の翻訳によって、四次元の考えの面白さを知ったのである。アルフレッド・ジャリが、いち早くそれにすばやい反応をしめした。彼は『タイムマシン』の翻訳が出た翌月の同じ雑誌に、「タイムマシンを実際に建造するのに役に立つコメント」という文章を発表している。
(中略)

 ジャリは、フランスの文学者にしてはめずらしく、アングロ・サクソンの科学者のエキセントリックな精神を愛好していた、風変わりな文学者だった。そういう彼が特別に愛していたのは、ニュートンやケルビン卿のような、極端にエキセントリックな性格と、常識はずれの天才をもって、科学の世界で自由な知性の遊戯を楽しんでみせたような科学者たちである。ジャリ好みの科学者たちは、石鹸の泡や独楽や樟脳を使って、奇妙な実験をおこなってみせた。

 ハンプティ・ダンプティが頭に住みついている数学者もいれば、宇宙を整頓してエントロピーに貢献する小悪魔を描いた大物理学者もいるという世界である。


溢れんばかりの科学的薀蓄に驚くのだが・・・衒学にならないよう、願う次第でおま♪





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Last updated  2016.03.28 00:03:19
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