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2017.04.16
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『呪いの時代』という本を、手にしたのです。
内田先生の言葉には、ネットの「内田樹の研究室」で常日頃からフォローしているのだが、エッセイ集としてまとまったものも・・・ええでぇ♪と思ったのです。



呪い

内田樹著、新潮社、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
巷に溢れる、嫉妬や妬み、焦り―すべては自らにかけた「呪い」から始まった。他者へ祝福の言葉を贈ることこそが、自分を愛することになる―呪いを解く智恵は、ウチダ的“贈与論”にあり。まっとうな知性の使い方と時代を読む方程式を考える一冊。

<読む前の大使寸評>
内田先生の言葉には、ネットの「内田樹の研究室」で常日頃からフォローしているのだが、エッセイ集としてまとまったものも・・・ええでぇ♪と思ったのです。

amazon 呪いの時代


草食系男子について、内田先生が次のように分析しています。
p127~129
<「世渡り術」からのスピンオフ>
 僕が学生だった頃、1970年代の新左翼の運動では、「プチブル的安逸を享受している自分」に対する自己処罰という契機がかなりの数の学生たちのうちに見られました。それがほぼ消えたのが1980年代だったと思います。

 ポスト・コロニアリズムや後期のフェミニズムの言説の中では、そういう自罰的・自責的な「疚しさ」の感情ははるか後景に退き、もっぱら「弱者の立場から強者に対して、非寛容に権利請求する」言葉が氾濫するようになりました。「被抑圧者の告発の前で強者たちは疚しさを覚えてうなだれなければならない」というそれなりに倫理的な命題が「とりあえず弱いふりをすると他人を屈服させることができる」という「世渡り術」にまで頽落するまでにそれから長い時間はかかりませんでした。

 草食系男子という「生き方」はこの「弱いふりをすることで自己利益を増大させる世渡り術」からの一種のスピンオフではないかと僕は思います。草食系男子はおもに性的関係の局面で「弱者」を演じるわけですけれども、そこで得られる利益とは何でしょうか。

 とりあえずは恋愛の局面において「傷つかないこと」があります。20年ほど前から、「口説く」人が少なくなりました。それどころか「口説く」という動詞自体がもう今の学生たちくらいの年齢では日常語彙には含まれていないのかもしれません。じゃあ、交際を求めて女性に言葉をかけるときに男性諸君は何というのか。
 「今、付き合っている人いる?」です。

 これはきわめて巧妙に構築された「口説き文句」だと思います。「今、付き合っている人いる?」という問いは、一見すると客観的な事態についての価値中立的な問いのように見えます。まるで、「今、雨降ってる?」とか「今、6時過ぎた?」と訊いているように。誰でも口にできるし、誰でもイエス・ノーで即答できるように作文されている。

 まだ知り合ったばかりでお互いをよく知らないもの同士が、いろいろあたりさわりのないことを話しているうちに話題も尽きてしまったので、ふっと訊いてみた。そういうふうなカジュアルな問いのように見える。あたかもその問いかけに対する相手からの返答に自分はとりわけ関心があるわけではないんだけど、ちょっと訊いてみただけと言わんばかりのノンシャランスをともなって口にされる。

 修辞的な問いであるということを誇示しているせいで、仮に「うん、いるよ」と即答されても、「あ、そうなんだ。ふん、でさ、キミ、音楽とか聴く?」というふうに「ぜんぜんそんなことはオレ的にはどうでもいいんだけどさ」的に修羅場から逃走できます。

 逆に、「いないよ」という答えがあれば、「じゃあ、僕と付き合わない?」といういきなり具体的な性行動レベルに一気に切り替えられる。

 「いるの?」「いるよ」という問答はまったく価値中立的で非情緒的なものであるにもかかわらず、「いるの?」「いないよ」という問答はエロス的関係について検討を開始するにやぶさかではないというシグナルとして解釈され得るからです。自分勝手だと思いませんか!


さらに、読み進めてみます。
p130~132
<傷つきやすさが前面に>
 当今の若者たちは決して感情生活の奥行きがなかったり、性的欲望が淡白であったりするのではありません。そうではなくて、おそらく傷つくのが嫌いなのです。傷つくことを恐れているのです。おそらく、それだけ人間として脆くなっている。

 いや、「人間として脆くなっている」という言い方は正確ではありません。そうではなくて、触れたらすぐ皮膚が破れ、血が出るような脆弱で傷つきやすい部分が前面に露出しているというべきでしょう。そういう構え方が採用されているせいで、結果的に脆くなっている。傷つきやすさが前面に出ているので、すぐ怒るし、すぐに泣く。

 逆から言えば、傷つきやすさが前面に露出しているために、それをまず保護しなければならない。その傷つきやすさの自己防衛が「他者からのメッセージに対して何の反応も示さない」という極端なかたちをとることもある。

 何を言われても傷つくか、何を言われても反応しないか、その二極の間を揺れ動いている。「逆ギレ」というのも同じ頃から社会的行動に登録されたものの一つです。それまで相手に穏健な気遣いを示していた人が、ある瞬間を境にしていきなり凶悪で利己的な態度に転じることです。

 ここに共通するのは「ペルソナ」の使い分けができなくなったということです。二極を揺れ動くというのは、社会的「ペルソナ」が2種類しかないということです。
 「ペルソナ」というのは、一言で言えば、人間関係の中で、過剰に他者を傷つけない、過剰に傷つけられないための防衛システムです。他人の攻撃から身を守ると同時に、自分が他人に加える攻撃を抑制する。ペルソナは双方向の暴力をコントロールするための装置です。


『呪いの時代』1





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Last updated  2017.04.16 06:08:46
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