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2018.04.30
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カテゴリ: 歴史
図書館で『中世のことばと絵』という新書を、手にしたのです。
絵巻に絵師の窮状を描いてお上に訴えるってか・・・
この人間くさい絵巻に着目し究明するところがいいではないか♪






五味文彦 著、中央公論社、1990年刊

<「BOOK」データベース>より
わびしく簡素なたたずまい、領地を与えるしらせに一喜一憂するまずしい絵師とその家族―絵巻『絵師草紙』は絵師が領地をめぐる窮状を、絵と詞に託して訴えるという体裁をとっている。しかし、この絵は生々しい実感に富む反面、どこまで事実に即した情景なのかは容易に判断できない。本書は『絵師草紙』を読み解く作業の中で作者像を明らかにし、絵だけではないことばとの交流を通して、新しい史料としての絵巻の活用を試みる。

<読む前の大使寸評>
絵巻に絵師の窮状を描いてお上に訴えるってか・・・
この人間くさい絵巻に着目し究明するところがいいではないか♪

amazon 中世のことばと絵

酒宴の場面

絵師と兼好法師との接点について語られているので、見てみましょう。
p71~75
■後醍醐の周辺
 朝廷の訴訟の担当者となれば、まず弁官、蔵人があげられる。だが絵巻にいささか貧相に描かれている弁は除かれよう。そうでなくともこれは直訴である。実際にかかわっている弁や蔵人がそんな相談に乗ろうものか。とはいえそれ以外では皆目、見当がつきそうにない。そこで後醍醐の周辺にあって、能書で、そのうえ洒脱な人物を探していこう。

 ここにはさまざまな人が集まった。『太平記』は玄恵法印の文談のことを特筆し、『徒然草』には日野資朝をはじめとしてたくさんの人のエピソードが載せられている。注目すべきは『徒然草』の作者、卜部兼好であろう。兼好は後醍醐とその父・祖父の後宇多・亀山に仕えていた。
(中略)

これはいよいよ兼好の可能性をもっとさぐらねばなるまい。まずは詞書と『徒然草』の文章の関連である。

■酒宴の描写
 絵師が朝恩を得たということで、家の中で酒宴が開かれた。絵巻の宴で盛り上がった場面が印象的であるが、詞書もその様子を巧みに描いている。その部分を引用しておこう。
わらいののしるこえごえ、天地をひびかして、物をとも、きこえ侍らずぞありし、さるほどに、老母をハじめとして、うとからぬ輩と賀酒をのみけるが、はやゑいぬれバ、乱舞一声におよぶままに、次第にのみしかりつつ、酒又とりよせけるが、使もゑいぬれバ、ゑんのやぶれに、あしを入れてたうれければ、酒をもこぼしぬ、

これとつぎにあげる『徒然草』の175段を比較してみよう。
心にくしと見し人も、思ふ所なく笑ひののしり、詞多く、烏帽子ゆがみ、紐外し、脛高く掲げて、用意なき気色、日頃の人とも覚えず、女は、額髪晴れらかに掻きやり、まばゆからず、顔うちささげてうち笑ひ、盃持てる手に取り付き、はては、許さぬ物ども押し取りて、縁より落ち、馬・車より落ちて、あやまちしつ

「心得ぬ事」の一つといて、酒呑みの狂態を描いたものだが、「笑ひののしり」「縁より落ち」といった表現が共通している。また絵の描写はこの段の雰囲気をまことによく伝えているであろう。男女の笑い、踊り喜ぶ姿が生き生きと描かれている。

 当時、よほど酒宴が流行していたものか、兼好は八つの段で酒について触れており、188段では、「仏事の後、酒など勧むる事」があるときのために、早歌を習う法師がいるが、それが興じて説教を習わなくなってしまい、ついには年をとってしまうことになる、と述べている。絵巻の絵の中で立って歌い踊っているのは、この早歌という流行の歌謡であろう。

 なお後醍醐が無礼講をもよおして幕府を滅ぼす計略とした話は有名だが、そのさまを「交会遊宴ノ体、見聞耳目ヲ驚セリ」「旨酒泉ノ如ク」と、『太平記』は記している。


『中世のことばと絵』1





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Last updated  2018.04.30 14:32:12
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