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2019.10.23
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カテゴリ: メディア
今、多和田葉子著「献灯使」という本を読んでいるのだが・・・
ネットで「多和田葉子「献灯使」特設サイト」というのを見つけたので紹介します。
著者挨拶、著者インタビュー、動画などいろんな趣向が、ええでぇ♪


多和田葉子「献灯使」特設サイト
堀江栞


<献灯使>
■考えると明るくなる
キャンベル:  最後に『献灯使』というタイトルについてうかがいたいです。もとになっているのはもちろん、唐に派遣された「遣唐使」で、これは小説家である義郎がかつて取り組んだ最初で最後の歴史小説のタイトルでもあります。外国を示す「唐」をなくそうと、「献灯使」という漢字の組み合わせになったこの言葉は、日本のためにーー密航ですがーー海外に派遣される子供たちを意味します。十五歳になった無名は、この使命を帯び日本を出ることになります。外に出ていくことが、非常に重要な意味を持っている。

多和田:  まさにおっしゃるとおり、『献灯使』という題名には、外に出て、大陸に学ばないとだめなんじゃないか、という思いが込められています。無名は、身体は決して丈夫ではありませんが、「頭の回転が速くても、それを自分のためだけに使おうとする子は失格」、「他の子の痛みを自分の肌に感じることのできる子でも、すぐに感傷的になる子は失格」というような献灯使になるための条件をクリアできる子で、彼がいつか日本を出て、海の向こうに渡って何かを学び、交流が始まり、鎖国が終わるというのが、この小説のひとつの希望になっているんです。

キャンベル:  日本から出る、だけでなく、東京から出る、というのも重要なポイントですよね。無名と義郎が暮らしている「東京の西域」は自給自足がほぼ不可能で、沖縄のような汚染されていない土地から豊かな農産物を輸入している。義郎の娘で、行動力があって決断の速い天南は、早々に夫婦で沖縄に移住しています。
 食料を輸出できる沖縄は強気で、言語の輸出で経済を潤した南アフリカとインドの真似をして沖縄の言語を売り出そうか、などと考えた日本政府に、そんなことをしたら本州に二度と果物を送らないよ、と脅す。これはとても面白いです。

多和田:  おっしゃるとおり、『献灯使』には、東京が他の県より重要だという考え方は全くありません。むしろその逆ですね。特に23区は住んでいる人もいなくて、西域だけが機能している。

キャンベル:  多和田さんが育った国立から西ですね(笑)。

多和田:  国立から奥多摩にかけてでしょうか。でも、それも東京への愛着から、あまり遠くに離れられないから仕方なく住んでいるだけで、本当はもっと遠くに行った方がいいんです。先ほど指摘していただいた沖縄なんかは実際、農業のおかげで非常に栄えていて、自分が正しいと思う政治を行うことのできる自治区みたいになっています。
 それから、お金がものを言わない社会になっているんですね。食べることが一番大切になってくるから、たとえば沖縄などは、日本では沖縄でしかできないものがたくさんとれるので、発言権が強い。東京はお笑いみたいに植物の蓼を作ってみたりするのですが、全然だめで産業がない。

 これも私の考えたウソではありますが、東京から離れた別の土地、たとえば沖縄などで無農薬の農業を始めている人も最近は結構いますから、そういう傾向が実際ないわけではない。やはり、いまのことを描いた小説なんです。

キャンベル:  物語は、決して明るいエンディングを迎えるわけではありません。献灯使として船に乗り込まんとする無名は、もうすぐ自発呼吸ができなくなるかもしれないとにおわされていて、とても心配です。だからといって最後の1ページを閉じたときに惨憺とした思いになるかというと、そうでもない。それは、さっきまさにおっしゃったように、真剣なお話をするのに軽やかに言葉で遊んでいらっしゃるからかもしれないし、無名と義郎の依存し合わない、けれど互いをひとつの生命として見つめ合っているような関係のおかげかもしれません。多和田さんは書いている時に、小説を読んだ後に読み手にこんなことが残るといいなとか、そういうふうに考えることはありますか?

多和田:  書く側としては、書くという行為そのものに明るさを感じるんです。たとえば福島について語ったり書いたりすると、暗く重くなってしまうから避けるという人がいますが、私はそうじゃなくて、むしろ語ったり書いたりした方がいいと思う。だってそれは他人事ではないのだし、第一どんなことをしていても不安は決して自然に消えてくれるわけじゃない。だったら真正面から見つめて、言葉をフル回転させて考えたり、書いてみるんです。すると明るくなってくる。考えるという行為、そして書くという行為は、脳みその中に電気がバーッとつくような、エネルギーを生むんです。こんないい発電の方法はないですよ。自然を破壊しないで発電できる(笑)。

キャンベル:  「気をつけろホルモン」もいらないんですね。なるほど。

多和田:  「気をつけろホルモン」は、観察しているときに出ますね。社会現象を観察していると怖さを感じて「気をつけろホルモン」が出る。そうすると、もっとよく観察できるようになるんです。その上で、いろいろ考えながら小説を書いていると、今度は「幸福ホルモン」が出てきますね。まあ、そういうホルモンが本当に存在するのかどうかは知りませんし、「幸福」という言葉もかなり疑ってかかった方がいいのでしょうが、これは単なるものの例えです。

 書き手である私が、読み手の感想を操作するつもりは全くありませんが、読む人も、私が書いているときと同じように、ただ文字を追うのではなくて、自分でいろいろ考えながら読んでくれていると思うんです。そうすると、その考える活力によって、非常に気分が明るくなるんじゃないかな。そうだといいなと思ってます。

キャンベル:  ありがとうございました。





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Last updated  2019.10.23 00:24:11
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