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2021.01.08
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『日々是作文』という本を、待つこと2週間ほどでゲットしたのです。
直木賞受賞作家の「微妙なお年頃」を綴ったエッセイ集ってか・・・面白そうである。






山本文緒著、文藝春秋、2007年刊

<「BOOK」データベース>より
31歳の私に、10年後の私をこっそり教えてあげたいー。離婚して仕事もお金もなかった31歳から、直木賞受賞&再婚してしまった41歳まで。絶品の恋愛小説で読者の心を搖さぶり、出口の見つからない切なさを描いてきた著者も、日々様々な思いに搖れながら「微妙なお年頃」を過ごしてきた。激動の10年間を綴ったエッセイ集。

<読む前の大使寸評>
直木賞受賞作家の「微妙なお年頃」を綴ったエッセイ集ってか・・・面白そうである。

<図書館予約:(12/23予約、1/05受取)>

rakuten 日々是作文


本との付き合い方が語られているので、見てみましょう。
p103~105
<薄情者>
 人生を変えた1冊と言えば、これ(『限りなく透明に近いブルー』)である。
 けれど、私はあらすじを覚えていなかった。あらすじどころか、本棚を捜したら本も持っていなかった。

 それで本屋さんに買いに行ったところ、ハードカバーと文庫と両方売っていて、どうしようかと迷った末、文庫の方を買いました。まったく、読者というのは薄情である。
 人生を変えたと言っても、この本を読んだことで不良になったとか、作家を目指したとか、将来なんかどうでもよくなったとか、変にナチュラルハイになったとか、そういうことではなかった。

 この一冊で、読書傾向というものが、がらりと変わったのだ。
 いやそういうことを言うと、それまでも沢山本を読んでいて、その後まったく違う傾向の本を沢山読みはじめたみたいに聞こえるが、全然そうではない。

 私がこの本に出会ったのは、確か高校三年生の時だったと思う。
 一応「作家」という肩書きを持つ人間がこんなことを自慢気に言ってはいけないのだろうけれど、私は文学少女でも何でもなかった。

 国語の授業になどまったく興味がなくて、原稿用紙たった三枚の読書感想文でさえ、埋めるのに苦労していたのだ。
 本よりも私は漫画が好きだった。漫画の方がよっぽど現実味があって面白かった。私ぐらいの世代の人は、もしかしたらそういう人が多いかもしれない。

 かと言って本を毛嫌いしていたわけではなく、二歳年上の兄がよく本を読む人だったので、兄が面白いと言った本を私も読んでいた。当時はSFの全盛期で、小松左京、半村良、筒井康隆なんかを漫画を読む感覚で読んでいた。

 しかし読んでいたと言っても、月にニ冊読めばいい方で、17歳の私があとは毎日何をしていたかと言うと、漫画を読むか、友達と遊ぶか、家でごろごろ寝ているかのどれかだった。
(中略)

 そんな私も、たまには書架を眺めることがあった。ぶらぶらと本の背表紙を見ている時、この本が目に入った。きれいなタイトルだったので珍しく借りてみようかと思った。

 私は本当に無知だった。それが史上最年少で群像新人賞と芥川賞のダブル受賞をした作品だなんて知らなかったのだ。人のまばらな夕暮れの図書室で私はその本を読んだ。

 あれから15年、あらすじはまったく覚えていなかったが、あの時のショックは覚えている。
 こういうのも、小説って言うの?
 そう思った。今は作家である私が言うには、あまりにも恥かしい発言ではあるけれど、その時はそう思ったのだ。

 小説というのは、もっと理路整然としたものだと思っていたのだ。その本は混沌としていて、読んでいるといろんな匂いがしてくるような気がした。汗やパイナップルや、嗅いだことのない大麻の匂いや、覚えたての煙草の匂いや、これまた覚えたてだった男の人の体臭なんかだ。今まで読んできたものが、一気に色褪せていくように感じたのをよく覚えている。

 約15年ぶりに再読してみて、私は当時の精神状態をかなりクリアに思い出した。ちょうど映画の「ブレードランナー」をテレビで見た直後だったので、そのラストシーンとこの本のラストシーンが重なって感じられた。

 お気楽な高校生を“演じていた”私は、内心かなりまいっていたのだ。きゃっきゃと騒ぐクラスメイト達がみんな猿に見えて仕方なかった。今なら、そういう年齢にありがちな悩みだったと懐かしく思うけれど、当時は深刻だった。教室という狭い箱に入れられた40数匹の凶暴な猿から身を守るためには、自分も猿になるのが一番の安全策だった。

 そして、家に帰れば帰ったで親猿と兄猿が待っている。私は読む本さえも、兄猿の真似をしていたのだ。


『日々是作文』1





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Last updated  2021.01.08 00:07:57
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