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2021.01.30
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カテゴリ: 中国
図書館で『中国文学の愉しき世界』という本を手にしたのです。
だいたいにおいて中国は嫌いというか、コンプレックスを持つ大使である。
・・・でも、著者の説く中国文学は何やら面白そうである。
著者の読みやすい筆力が成せるんだろうね。

なお、帰って調べてみると、この本を借りるのは二度目であると判明しました。で、この記事は(その6)とします。




井波律子著、岩波書店、2002年刊

<「BOOK」データベース>より
「竹林の七賢」をはじめとする奇人たちの奇妙キテレツな言動を支えるパトスとは?幻想と夢の物語宇宙の構造はいったいどんなもの?-練達の中国文学研究者が平易な筆致で描きだす、奇人・達人群像。自らの体験もまじえながら語る文学世界の面白さ・奥深さ。読書の快楽を堪能すること請け合いの好エッセイ集。

<読む前の大使寸評>
だいたいにおいて中国は嫌いというか、コンプレックスを持つ大使である。
・・・でも、著者の説く中国文学は何やら面白そうである。
著者の読みやすい筆力が成せるんだろうね。

rakuten 中国文学の愉しき世界



「本との出会い」が語られているので、見てみましょう。
大使の図書館通いも、ある意味「本との出会い」を求めているわけだし。
p181~
本との出会い
 人と人とに千載一遇の出会いがあるように、人と本にも不思議な出会いがあるらしい。 わたしが中国文学にはじめて触れたのは、岩波の「中国詩人選集」によってである。いまから30余年もむかし、高校に入ったばかりのころだった。父がこの選集を予約していて、出るたびにせっせと読み、おもしろい、おもしろい、と言ったのがきっかけである。

 当時のわたしは、自分ではいっぱしの「文学少女」のつもりだったから、もし読めと強制されたなら、反発して見向きもしなかったかも知れない。しかし、ひとりでおもしろがっている父を見ると、がぜん好奇心を刺激され、その「詩人選集」とやらを手にとってみた。なんだかずいぶん難しいものだったが、読みすすんでゆくうちに、パズルでも解くような快感をふと感じたりした。

 わたしの父は若いころ「文学青年」であり、なんと小説まで書いていて、いまでも家には父の書いた小説が残っている。長篇小説の第一部らしいのだが、父はこの続きを書くことができなかった。祖父のたっての願いで、家業(染色工場経営)を継がざるを得なかったのである。しかし、けっきょく父はどうしても「実業」と肌の合わない人だった。

 そこで40代の後半、ひどい胃潰瘍にかかって大手術をし、かろうじて一命をとりとめたのを契機に、数年がかりで工場を整理してたたみ、故郷の富山県高岡を引きはらうと、家族を引きつれ、むかしから好きだった京都に居を移して、はやばやと隠遁してしまった。1952年、わたしが小学校2年の時のことである。

 以来、1980年、82歳で死ぬまで約30年のあいだ、父は趣味的生活を貫いた。いまでも隠遁とか隠者とかいう話になると、すぐ反射的に父を思い浮かべてしまうほど、その隠遁ぶりは徹底したものだった。付言すれば、わたしの母は、東京の下町の本所生まれなのだが、これまた「文学少女」であり、いまでも新刊書をチェックしては本屋通いを欠かさないほどである。要するに、両親ともどこか非現実的で奇妙キテレツだから、片方が京都で隠居だといえば、片方もそれはおもしろいとすぐ賛成する、という具合だったのだろう。

 いまにして思えば、そんな父だったから、わたしに中国文学をやらせたかったのだろうが、正面からいうと反発するので、さりげなく「詩人選集」を示して、興味を持たせたに違いない。

 結果的には、父の思う壺にはまってしまった(?)のだが、大学に入ったばかりのころは、第一外国語にフランス語を選んだ関係もあって、フランスの小説や文学理論を読む(むろん翻訳で)のに忙しく、中国文学にはほとんど関心がなかった。それが、二回生になり専攻を決めなければならなくなると、ふと全然ちがったものがやりたくなり、そんなときに、以前読んだ「」のことがマザマザと浮かんできたのだった。

 そこでもう一度、最初から読みかえし、中国だ、これに決めたと思った。急に方向転換するのは、たぶん遺伝なのであろう。父はわたしが中国文学を専攻することには、もちろん大賛成だった。

 1964年、三回生になり中国文学を専攻するようになると、すぐ中国書籍を扱う専門店に行った。そこで生まれてはじめて買った中国書が、ハンブンラン注『文心雕龍』と『紅楼夢80回校本』だった。どうしてこのふたつを選んだのか覚えがないが、きっと前者は中国古典文学理論の、後者は中国古典小説の最高傑作だというくらいは、知っていたのだろう。

 買ったのはいいが、家へ帰ってパラパラめくってみてもさっぱりわからない。吉川幸次郎先生は演習の時間に、「すぐ辞書を引かずにジーッと字をみつめていなさい。漢字はもともと象形文字だから、そのうち意味が浮かんできます」と教えてくださったが、いくらみつめていても、ちっとも意味など浮かんでこない。ろくに中国語もできなかったのだから、考えてみれば当然のことではある。

 しかし、こうしてほとんど無意識に買った『文心雕龍』をテーマとして、その翌年、卒論を書くことになったのだから、ほんとうに不思議である。はじめて見たとき、あまりに読めなかったのでくやしくなり、そのくやしさが深層心理にこびりついたのだろうか。

『世説新語』との出会いも縁としか言いようがない。修士課程のころだったと思うが、鈴木虎雄先生の蔵書が整理され、端本が研究室に出まわったことがあった。当時、わたしはあまり研究室に行かなかったので、行ったころにはめぼしいものはほとんどなく、一冊百円の線装本が数冊残っていただけだった。線装本といっても民国に入ってからのものである。残り物にあは福があるなどと思い、タイトルもろくに見ないでそれを買った。

 それが三冊に分かれた四部備要本の『世説新語』だった。それから数年たって、ふとこれを手にとって読みはじめると、おもしろくてたまらず、夢中になったあげく小さな論文を書き、さらにこれがきっかけとなって初めての本を書くことになったのだから、つくつく奇縁だと思う。


『中国文学の愉しき世界』5 :植物の名を表す漢字p166~168
『中国文学の愉しき世界』4 :中国の美女p161~162
『中国文学の愉しき世界』3
『中国文学の愉しき世界』2 :高橋和巳氏との交流p207~209
『中国文学の愉しき世界』1 :中国の文人画p146~149





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Last updated  2021.01.30 01:29:49
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