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2021.02.17
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カテゴリ: アート
図書館に予約していた『剃刀の刃/サマセット・モーム選集第5巻』という本を、待つこと5日でゲットしたのです。
神戸市が堅牢な外装を施しているが、中身は1951年刊行のままなので、茶色く変色しています。
・・・どおりで、この本を楽天とアマゾンで探しても出なかったわけだ。






サマセット・モーム著、三笠書房、1951年刊

<「BOOK」データベース (ちくま文庫)>より
イザベルの叔父で上流社会に出入りすることを生き甲斐とするエリオット。イザベルの幼なじみで、非業の最期をとげるソフィ…。人物描写鋭く、次々と展開してゆくストーリー。その中に人間の根源、人間本来の生き方を鋭く問う著者晩年の傑作小説。

<読む前の大使寸評>
予約後5日でゲットした本である。神戸市が堅牢な外装を施しているが、中身は1951年刊行のままなので、茶色く変色しています。
・・・どおりで、この本を楽天とアマゾンで探しても出なかったわけだ。

<図書館予約:(2/08予約、副本1、予約0)>

amazon 剃刀の刃(ちくま文庫)



エリオット・テムプルトンのお話しの続きを、見てみましょう。
p15~17
<5>
 エリオットが招待してくれた午餐に出かけるに先立って、私が、洗ったりブラシをかけたりしていると、帳場から電話で、彼が下にいるといって来た。私はいささか驚いたが、身支度が出来ると、すぐ降りて行った。

 われわれが握手をした時、「やって来てお連れしたほうが、間違いないだろうと思ったんでね。あなたがどの程度シカゴをご存じか判らなかったんですよ」と彼はいった。

 アメリカは、ややこしい、危険でさえある場所で、ヨーロッパ人が自分で行く先を見つけるのは、不安で放っておけないと、永らく外国で暮らして来た数人のアメリカ人が考えているのを、私は気づいていたが、エリオットもそうした考えを持っていた。

「まだ早いですね、途中、少し歩いてもよさそうですな」と彼はいい出した。
 風はいく分冷たかったが、空には一片の雲もなく、足を伸ばすのは気持がよかった。
「あなたが妹に逢う前に、あれのことを話しておいたほうがいいかと思ったんですよ」と
エリオットは、われわれが歩いていると、いった。「妹はわしと一緒に一、二度パリに滞在いていたんですがね。その当時、なたはあそこにいらっしゃらなかったと思いますな。なに、大したパーティーじゃないんですよ。ねえあなた、たった妹とその娘のイザベルと、グレゴリー・ブラバズンだけなんです」

「装飾家の?」と私は訊ねた。
「ええ、妹の家はひどいざまなんでね。イザベルとわしは、妹にそれを模様替えさせようと思ってるんです。ふと、グレゴリーがシカゴにいることを耳にしたんで、わしは妹に、今日あの男を午餐に招ばせたんですよ。無論あの男はちゃんとした紳士じゃありませんがね。見る目は持っていますよ。メァ・オリファントのために、レイニイ・キャッスルを、それから聖アースのために聖クレメント・タルボットを装飾したんです。

 一体どうして妹がシカゴに住んでいられるのやら、これまたわしには到底合点が行きますまいよ」

 ブラッドリ夫人は、息子二人に、娘一人という三人の子持の寡婦だということが判った。しかし、息子たちはずっと歳うえで、結婚していた。一人はフィリッピンで官職にあり、もう一人は父親がそうだったように、外交畑で、ブェノス・アイレスにいた。ブラッドリ夫人の夫は、世界の各地で任務に就き、数年の間、ローマで一等書記官を務め上げ、その後、南米西岸の一共和国の公使に任命され、そこで死んだのだった。

「あれの主人がこの世を去った時に、わしはルイザにシカゴの家を売り払わせかったんですがねと」とエリオットは言葉を続けた。「しかし、あれは、その家にあにか感慨を持っていたんですな。ブラッドリ一家の手にはいってから、あの家はもうずい分永い間になるんでしてね。ブラッドリ家は、イリノイスでの一番古い家柄の一つなんですよ。1839年にヴァージニアからやって来て、現在のシカゴからおよそ60哩ばかり離れた土地を手に入れたんです。今日でもまだそれを持っていますよ」エリオットはちょっとためらった。

 そして、私がそれをどう取るだろうか知ろうと、私をじっと眺めた。「そこに落ち着いたブラッドリ一家というものは、とにかく前世紀の中頃、中西部が開発されはじめた当時は、実に沢山のヴァージニア人が、良家の若い子弟どもですな、そういう連中が未知の世界の誘惑にひかれて、自分たちの故郷の豊かな食べ物を捨て去ったんですよ。

 わしの義弟の親爺のチェスター・ブラッドリは、シカゴが将来のあることを見抜いて、ここで法律事務所にはいったんです。そして、とにかく、十分な金を作り、あとに残した息子に、なに不自由なくやって行けるほど、あてがったんですよ」

 エリオットのこうした言葉より、むしろその素振りのほうが、相続した堂々たる邸宅や、広い耕地をあとにして事務所にはいったことも、故チェスター・ブラッドリにとってはおそらく決して不面目なことでなく、一財産築き上げて少なくとも、一部分ではあるが、それらを埋合わせたのだという事実を仄めかしていた。


この長編小説の主人公とも言えるラァリーはまだ登場してこないのです。この小説が第二次大戦中の米軍兵士の間でよく読まれたそうだが、どこが面白かったのでしょうね。


『剃刀の刃/サマセット・モーム選集第5巻』1



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Last updated  2021.02.17 00:39:08
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