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2021.04.16
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カテゴリ: メディア
「内田樹の研究室」の内田先生が日々つづる言葉のなかで、自分にヒットするお言葉をホームページに残しておきます。
内田

最近は池田香代子さんや、関さんや、雨宮さんなどの言葉も取り入れています。
(池田香代子さんは☆で、関さんは△で、雨宮さんは○で、池田信夫さんは▲、高野さんは■で、金子先生は★、田原さんは#、湯浅さんは〇、印鑰さんは@、櫻井さんは*、西加奈子さんは♪で区別します)

・日本のイデオクラシー
・後手に回る政治
・倉吉の汽水空港でこんな話をした。
・中国はこれからどうなるのか?
・アメリカ大統領選を総括する
・アメリカの新しい論調から「ベーシックインカムについて」

・文化日報への寄稿「パンデミックとその後の世界」
・反知性主義者たちの肖像
・『沈黙する知性』韓国語版序文
・書評・食いつめものブルース 山田泰司
・書評・白井聡「武器としての「資本論」
・『街場の親子論』のためのまえがき
・パンデミックをめぐるインタビュー
・ホ・ヨンソン『海女たち』書評
・2020年度寺子屋ゼミ受講要項
・『山本太郎から見える日本』から
・『人口減社会の未来学』から

・映画『Workers被災地に起つ』神戸・元町映画館でのアフタートーク
・週刊金曜日インタビュー
・桜を見る会再論
・『Give democracy a chance』2
・『Give democracy a chance』1

・China Scare
・[週刊ポスト」問題について
・『低移民率を誇る「トランピアンの極楽」日本の瀕死』
・『ネット右翼とは何か』書評
・『最終講義』韓国語版あとがき
・『「そのうちなんとかなるだろう」あとがき』
・『参院選にあたって』
・『廃仏毀釈について』
・『論理は跳躍する』
・『「おじさん」的思考』韓国語版序文
・『市民講座』韓国語版のための序文
・空虚感を抱えたイエスマン
・大阪万博という幻想
・外国語学習について
・大学院の変容・貧乏シフト
・『知日』明治維新特集のアンケートへの回答
・カジノについて
・中国の若者たちよ、マルクスを読もう
・『街場の憂国論』文庫版のためのあとがき
・直言3月号「韓国の教育と日本のメディア」
・人口減社会に向けて
・時間意識と知性
・Madness of the King
・吉本隆明1967
・大学教育は生き延びられるのか?
・こちらは「サンデー毎日」没原稿
・奉祝「エイリアン・コヴェナント」封切り
・米朝戦争のあと(2件)
・気まずい共存について

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内田先生かく語りき8 目次

(目次全文は ここ )

(その33):『日本のイデオクラシー』を追記



2021/04/03 日本のイデオクラシー より
 ローマ時代の法諺に「事実の無知は弁疏となるが、法の無知は弁疏とならず」というものがある。ある事実を知らなかったというのは罪を逃れる言い訳になるが、その行為を罰する法律があることを知らずにその行為をなしたものは罪を逃れることができないという意味である。

 国会での大臣や役人たちの答弁を聴いていると、彼らがこの法諺を熟知していることわかる。国民に疑念を抱かせるような行為について「あった」と言えば責任を取らなければならない。「なかった」と言えば、後から「あった」という事実が判明すると虚偽答弁になる。そこで、窮余の一策として彼らが採択したのが「国民に疑念を抱かせるような行為があったかなかったかについての記憶がない」という「事実の無知」による弁疏であった。事実の無知については、これを処罰することができないから、これは遁辞としては有効である。

 けれども、政治家や官僚がかかる弁疏を繰り返した場合には「重大な事実について頻繁に記憶が欠如するような人間が果たして国政の要路にあってよろしいのか」という懸念が生じることは避けがたい。
 その懸念をどうやって解消するか? 
 この懸念を退けるロジックは一つしかない。それは「 知的に不調であることは政治家や官僚の職務遂行上の欠格条件ではない 」というルールを政府が公認することである。
 いや、改めて公認するまでもなく、わが国はだいぶ前からこの新ルールを採用していた。記憶がしばしば欠損する、論理的にものが考えられない、事前に告知された質問にしか回答できない、不都合な質問についてはつねに回答を差し控える・・・といった知的無能は今では公人である上での特段の支障とは見なされていない。それどころか、おのれの立場を危うくしかねない質問には一切回答しないで正面突破するというふるまいそのものが「権力」及び「権力に対する忠誠心」の記号として高く評価されさえする。

知的無能が指導者の資質として肯定的に評価されるような統治システムのことを「イディオクラシー」と呼ぶ。 「愚者支配」である。デモクラシーが過激化したときに出現する変異種である。
(中略)

今の日本はもうデモクラシーとは呼べない状態になっているのではないか。統治者の無能と無知のレベルが限界を超えて、統治者自身、もはや民衆の利害が何であるかがわからなくなっているからである。 しかたがないので、とりあえず自分と縁故者の利害だけを専一的に図るだけで日々を過ごすようになった。「イディオクラシー」とはそのことである。





2021/04/03 後手に回る政治 より
 私たちは子どもの頃から「後手に回る」訓練をずっとされ続けている。「教師の出した問いに正解する」という学校教育の基本スキームそのものが実は「後手に回る」ことを制度的に子どもたちに強いているものだからである。教師の出す問いに正解すれば報酬があり、誤答すると処罰されるという形式で状況に処することに慣れ切った子どもたちは、そのようにして「構造的に後手に回る人間」への自己形成する。

 それは会社に入った後も変わらない。仕事というのは、すべて上司から「課題」や「タスク」を出された後に、それに適切な「回答」をなすという形式でなされ、上司によってその成否を査定されるものだと信じているサラリーマンたちは全員が「後手に回る」人である。

 なぜ日本社会ではこれほど念入りに「後手に回る」訓練を国民に強いるのか? 難しい話ではない。権力者に頤使されることに心理的抵抗を感じない人材を育成するためである。「問いと答え」というスキームにすっぽり収まって生きていると、「問いを出す上位者」と「答えを求められる下位者」の間で非対称的な権力関係が日々再生産されているということに気づかない。でも、そうなのである。

 記者会見で、記者からの質問に答えず、自分の方から(記者が絶対に答えを知らないようなトリヴィアルな)質問を向けて、記者を追い詰めることを得意としている政治家がいた(いまもいる)。彼らは直感的に「質問をする者が先手を取り、正解を考える立場に追いやられた者が後手に回る」ということ、そして、いったん後手に回ったものには勝ち目がないことを知っているのである。

 たしかに相手をやり込めるにはうまいやり方だが、そんな姑息な技術に熟達しても一国のリーダーにはなれない。リーダーに求められているのは記者や野党議員を相手にマウントをとってみせることではない。状況の「先手を取る」ことである。

 適切な感染症対策をてきぱきと講じて、感染拡大を未然に防ぎ、権力者に阿諛追従する官僚ではなく、諫言することをいとわない有能な官僚を重用していれば、「こんなこと」は起きていなかった。「起きなくてもいい問題」は起こさない。それが統治者において「先手を取る」ということである。そのことに気づかない限り、首相は最後まで「後手に回り」続ける他ないだろう。


(以降、全文は 内田先生かく語りき(その32) による)





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Last updated  2021.04.16 08:28:27
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