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2021.10.09
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カテゴリ: 歴史
図書館で『陳舜臣対談集「歴史に未来を観る」』という本を、手にしたのです。
穏やかな風貌の陳さんが説くリベラルで聡明な語り口が、好きなんですよ。それに神戸っ子だし♪






陳舜臣著、集英社、2004年刊

<amazon>より
国際的な視野で文明を考える陳舜臣氏の対談。
世界史的な大きな流れの中で、一人一人の日本人は、いま現在をどう生きたらいいのだろうか? 陳舜臣氏が司馬遼太郎氏、桑原武夫氏、ドナルド・キーン氏、山折哲雄氏らと国際的視野で語る対談集。

<読む前の大使寸評>
穏やかな風貌の陳さんが説くリベラルで聡明な語り口が、好きなんですよ。それに神戸っ子だし♪

amazon 陳舜臣対談集「歴史に未来を観る」



まずモンゴルが語られているあたりを、見てみましょう。対談者は奈良本達也さんです。
p111~115
<モンゴルの世界制覇>
陳: ジンギス(成吉思)汗は中国の歴史のなかで少し異質な感じがしますね。

奈良本: といいますと・・・。

陳: 中国を征服した異民族の制服王朝ということなら、それまでに北魏とか遼とか金とかがありますが、ところがどうもジンギス汗というのは、ちょっと様子がちがうんじゃないかという気がするんですね。たとえば、北魏は鮮卑族・拓跋部ですね。それから遼は契丹族、金は女真族、みんな周辺に中国の高い文明がありまして、それに接して同化されるというパターンですけれども、モンゴルだけは中国文明に接する前に西征をやっておりますね。ホラズムへ送った使節が殺されて、それで怒って7年間西へ遠征していきます。

 そのときにサラセンの高い文明に接しているわけですね。中国文明に接する前にもう一つ大きな文明に接しているということで、異質な征服王朝になっているんですよ。中国ぶんめいにあまり敬意をはらわない。こんなものはもう知っているんだということですね。
奈良本: その当時のサラセンというのは非常に高い文明だったんでしょうね。

陳: サラセンというのは、もともとアラブのまったく文明のないところにマホメットがでまして、やっとアラブの民族が統一できるわけですね。その勢いを駆りましてね。だから自分たちは何もないんだという謙虚な気持ちがありますから、全部うけ入れてしまうわけですね。インドの文明とか、ギリシャとか、イランとか、それを全部アラビア語に翻訳します。

奈良本: 西洋の文芸復興というのは、そのアラビア語からラテン語に翻訳する仕事だったようですな。「光は東より来る」というのは、サラセンから来たという意味があるんですね。

陳: その高い文化へ紙が入ってくる。751年のタラスの戦い、サラセンと唐との国境紛争ですが、その唐の捕虜のなかに紙漉き職人がいましたから、その職人が紙を漉く。それまでに紙はちょっと来ていましたけれども、値が高いわけですね。やはり絹のほうがもうかるからというので紙はほとんど来なかったんですが、758年ごろ西のサマルカンドに最初の紙工場ができて紙が普及しはじめます。それがまた増幅された文明になるわけですね。羊皮紙のバイブルを一冊つくるのに、ヒツジ三百頭分いるんですよね。そこへ紙をサラセンのサマルカンドでつくるということでまた普及度が高くなる。

 だからかなり高い文明なんですよ。それから百年か二百年たって爛熟に達しているところへジンギス汗が行ったので、かなり高いインド、ギリシャなんかの文明を見ていますからね。そのあとで兵を返して甘粛にいた西夏を攻めるわけですね。だから中国と異なった文明にすでに接している。

奈良本: なるほど、そこが鮮卑とか女真、契丹などとちがうわけですね。

陳: 鮮卑や女真などは、それに魅入られたというか、最後に中国に同化されてしまうわけですけれども、モンゴルだけ最後まで同化されなかった。それはもう一つの文明をみている、ということが私は重要じゃないかと思うんですね。

奈良本: そういう意味では初めから世界帝国の萌芽というものを何かもっていたんでしょうね。

陳: 私はそれを考えますと、モンゴルというのはアラブと似たところがあるんですよ。自分のところは初めから何ももっていないい。

奈良本: そして世界の三大文明国、あるいは三つの大きな思想というものを全部見てきている。インド、ギリシャ、中国、その三つを統合する位置にあったというか、なにか歴史的な流れがあったからでしょうな。

■急速な勢力拡大
陳: ジンギス汗があらわれる前の状況というと、中国からいえば金、女真族なんですが、これは同じ征服民族でも漢族の政権を倒すのじゃなくて、北から来て契丹を倒したわけなんで、自分たちは少数派ですよ。だから支配下の民族の大同団結をさまたげるというのが金の至上の方針ですね。

 北の方の契丹とほぼ同系のモンゴルに対しましても同様です。これも遊牧民ですが、遊牧というのは小さく分かれるんですね。牧草地の広さが限られていますから、初めから小さく分かれるんだけれども、それが団結しないように金はかなり努力していますね。それからモンゴル系の部族には、よその部族の首長をつかまえてきたらとり立ててやるというようなことをいって内輪もめを奨励しているようなところがありますね。

奈良本: これは戦国における最高の政治でしょうな。つまり、統治するには分割せよということばがある。日本でも江戸時代に各藩に分けたのは、やはり一種の分割政治ですわね。

陳: そのような状況のモンゴルにジンギス汗は生まれるわけです。ただ、私、思うんですけれども、ジンギス汗はちょっとした部族の出だけれども、若い頃に貧乏して、「影の外に伴はなく、尾の外に鞭はなし」、自分の影のほかに道連れはないというほど孤独だったんですね。それが一代で世界帝国をつくるなんていうことはちょっと信じられないんです。

奈良本: そうですね。

陳: その膨張の秘密、拡大の秘密というのが問題なんですね。それは強いところには全部ついていくという草原の掟というか・・・。

奈良本:





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Last updated  2021.10.09 00:25:12
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