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2021.10.15
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カテゴリ: 気になる本
図書館の放出本のラックで『文学界(2019年1月号)』という雑誌を、手にしたのです。
表紙に出ている特集に多和田葉子の名前が載ているのがゲットする決め手となりました。




雑誌、文芸春秋、2019年刊

<商品の説明>より
▼2019年を占うビッグ対談
落合陽一×古市憲寿 「平成」が終わり、「魔法元年」が始まる
多和田葉子×温又柔 「移民」は日本語文学をどう変えるか?

<読む前の大使寸評>
表紙に出ている特集に多和田葉子の名前が載ているのがゲットする決め手となりました。なお、この本は図書館放出本なんですが、なかなかの代物でおました。


amazon 文学界(2019年1月号)


多和田葉子と台湾人作家・温又柔との対談の続きを、見てみましょう。
p207~209
<「移民」は日本語文学をどう変えるか?>
■日本人とは何か、という定義
多和田: ハンブルグ大学時代、夏期の日本語集中講座で教えたことがあって、そこで学生が書いてきた「間違った」日本語が、とても興味深かったんです。「作家」と「サッカー」、「牧師」と「ボクサー」の響きが非常に似ていることとか、日本語だけの中に住んでいたら気が付かないようなことに気が付きました。

 それまで結び付けて考えていなかったものがどんどん結びついていって、シュールリアリズムの手法に語学の授業から入っていくような喜びがありました。

温: それは喜ばしいですね。うちの父親も、日本語と中国語の間でそういうのばかり見つけたがる。私たちが小さかった頃、会社から帰ってくる前に父はいつも「これから帰るよ」と電話してきたんですが、私や妹が電話に出ると必ず「今からパパ、ケロケロケロケロクワックワックワッ♪」って歌うんです。「カエル」と「帰る」が同じ音であることがよほど面白かったらしくて。日本のお父さんはあんまりしないですよね。

多和田: 父親は仕事が忙しくて残業が多くて、カエルが鳴いたくらいでは家に帰れないことが多いですね(笑)。

 移民の一世代目は非常に楽しい。二世代目はいろいろ苦労があるという話をドイツでも聞きます。一世代目は、自分がドイツ語を外から見ていることを隠す必用はない。外国人ならではのジョークも楽しめるし、ドイツ語を習得したことを誇りに思って喜んでいればいいんです。

 ところが二世代目はドイツ人と同じようにドイツで生まれてドイツ語しかできないのに、顔がアジア人だというだけで、ドイツ語がうまいと知らない人に褒められたりすると却って傷つくし、親が。外国人っぽいジョークを言っているのを聞くと恥かしくて友達から隠したくなる。

 それから、普通はバスの乗り方とか銀行振り込みの仕方とか、いろいろ社会のことを親が子どもに教えるじゃないですか。でも、移民の場合は二世代目の子どもが親に教えんきゃいけない。まだ小学三年生くらいなのに親の通訳をするために銀行についいて行くとか。親を守ろうとしたり、腹を立てたり、小さい時からいろいろな感情を体験するようです。
温: そうなんです。我が家がまさにそうでした!

■ちぐはぐな伝達
多和田: 今の時代、言語と文化はいろいろに重なり合って、同時にズレてもいますね。それを破局ではなく豊かさに変えていけるのが文学だと思うんです。たとえば、アメリカの製品の電話によるカスタマーサービスですけど、国際電話が安くなってからは、アイルランド、インド、アフリカ諸国、フィリピンなどいろいろな国に任されるようになりました。

 アメリカでアメリカ製の掃除機を買ったアメリカ人がカスタマーサービスに電話するとフィリピンに繋がって、担当のフィリピン人が英語で対応するという形です。今度の短篇集は、伝達がテーマになっているんですけど、そのような会話が普通に行われている世界を舞台にしています。

温: 経済の問題もありますよね。言語と経済の共犯関係と言うか。

多和田: そうなんです。

温: 私が大学に入った頃は、就職に有利だから中国語を勉強するという人もけっこういて、それもプレッシャーの一つでした。稼げるから習う、というモチベーションはわかるけど、言語を習う理由がそれだけだと、稼げない言語は生産性がないみたいでイヤだなって思います。

多和田: ドイツ語も実はヨーロッパの中では稼ぐための言語として学習されている場合もあるんです。ベラルーシのある大学に呼ばれて講演に行ったら、学生はみんなすごくよくドイツ語ができるんです。私はドイツ語で詩を書くなんていまどき「不経済」な活動をしているつもりだったのですが、先生が「みんなも多和田さんみたいにしっかりドイツ語を勉強してドイツに移住してサクセスを狙え」みたいなことを言って、いつの間にか移民の鑑にされていた。

 80年代に私がドイツに渡った時は、日本はバブルの時代で、日本には「自分たちは金持ちで正しい道を歩んでいる」みたいな雰囲気がありました。当時のドイツはそれとは逆で、自国の歴史への批判がさらに深められ、原発反対運動も盛んだったし、経済発展より自然を守れという声が大きくて、学生たちは「お金儲けなんかしないでいい、学問を一生やっていたい」なんて言っていました。

 私はその雰囲気が好きで、いわゆる経済移民の逆をいっていたんです。人にものを売りつけるのは恥かしいことだという職人気質、芸術家気質もかなり強かった。ところがドイツもいつの間にか世界の競争に巻き込まれ、変わってきました。携帯も含めて電話会社のえげつない競争に特にそれを感じますね。

 この本に収録された「てんてんはんそく」という小説に出てくる照子という名前は、テレコムというドイツの電話会社の名前からきています。もうひとりの青江は、AOLのドイツ語読みアーオーエルから来ています。それで、青江と照子が自分のほうに客を引こうとして競争するのですが、そういう生々しい戦いに、私自身がベルリンに引っ越した時に巻き込まれてしまって、なぜか暴力を受けたみたいな感触があったんです。もうつぶれましたけどアリスという会社もあって、これが絡んで大変なことになって。通信の問題が単なる機械技術と経済の問題ではなく人間のドラマのように思えたので、この小説を書いたんです。

温: ああ、そうか、照子と青江か! 見抜けなくて悔しい(笑)。


『文学界(2019年1月号)』4 :多和田葉子と温又柔との対談の続き
『文学界(2019年1月号)』3 :多和田葉子と温又柔との対談の続き
『文学界(2019年1月号)』2 :古市憲寿と落合陽一との対談
『文学界(2019年1月号)』1 :「移民」は日本語文学をどう変えるか?





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Last updated  2021.10.15 12:56:25
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