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2021.11.29
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カテゴリ: アート
図書館で『海を越える日本文学』という新書を、手にしたのです。
著者は日本留学を経て、今では明治大学教授とのこと。中国人から見た日本文学という視点が興味深いのです。





張競著、筑摩書房、2010年刊

<「BOOK」データベース>より
海外での村上春樹人気のなぜ?を皮切りに、海を越える/越えられない日本文学にまつわる翻訳事情を紹介。また、日本文学が東アジアで読まれることと、欧米で読まれることの、意味の違いについて論じる。

<読む前の大使寸評>
著者は日本留学を経て、今では明治大学教授とのこと。中国人から見た日本文学という視点が興味深いのです。
rakuten 海を越える日本文学


中国での日本文学観が興味深いので、見てみましょう。
p146~150
<繰り返される「上下関係」の戦い>
 文学環境が好転するなかで、日本の近代小説は相次いで翻訳されるようになりました。日中国交が回復するまえには、プロレタリア文学の翻訳が多かったのですが、ほかの作家が紹介されていないわけではありません。たとえば島崎藤村『破戒』は早くも1955年に翻訳され、夏目漱石『坊っちゃん』も1959年に人民文学出版社から刊行されました。ただ、80年代以降、翻訳作品を選ぶ際、政治的な要素がほぼ排除され、作品の出来栄えや日本国内の評価を優先するようになりました。

 翻訳者は、文化大革命が終了した直後で、人材が少ないということもあって、戦前からの日本文学の専門家や、台湾や旧満州で日本語教育を受けた世代が多かったようです。しかし、十年も経たないうちに、新しい世代が育ち、2、30代の翻訳者が登場してきました。

 ノーベル文学賞受賞作家という肩書きのおかげで、80年代にもっとも注目されたのはやはり川端康成。『雪国』は1981年に早くも観光され、あっという間に10万部近くも売れました。やがて、ほかの同時代作家も紹介され、とくに文芸誌では多く翻訳されています。
(中略)

 日本語教育の規模拡大と、日本語学習者の急増も読者を増やし、日本文学の受容を促しました。90年代には欧米文学に匹敵するほどの作品が翻訳され、その後も拡大の一途をたどっています。1995年、三島由紀夫『金閣寺』をはじめ、『仮面の告白』、『潮騒』、『午後の曳航』、『愛の渇き』など多くの作品が翻訳され、『安部公房文集』も1997年に刊行されました。

 村上春樹がベストセラー作家になった影響で、2000年以降になると、日本文学の人気がいっそう高まり、翻訳の量は爆発的に増えました。ヒットする作家を見ると、渡辺淳一は2001年から、よしもとばななと山崎豊子はそれぞれ2005年と2006年から多く訳され、出版関係者のあいだでは「人気作家」と呼ばれています。

 そのほか、石田衣良、川上弘美、小池真理子、高樹のぶ子、宮部みゆき、林真理子など、幅広い作家の本が読まれています。私の手元にここ数年に出版された日本小説のリストがありますが、その数は600点を下りません。ちなみによしもとばななは中国語では「芭娜娜」と表記されています。

 推理小説の翻訳は意外と早く、森村誠一『人間の証明』は映画の公開と相前後して翻訳されました。1981年に出版された『野生の証明』の発行部数は16万部にも達しています。やがて、松本清張の小説が翻訳され、江戸川乱歩も紹介されるようになりました。2002年には19冊におよぶ『乱歩探偵作品集』が刊行され、現代の推理小説も大量に翻訳されています。
 (中略)

 最近の翻訳は商業主義のあおりを受け、販売実績は出版界の唯一の関心事になりました。売れそうな本はすぐに訳され、映画やテレビドラマになった作品はあいついで出されています。ブームに乗って一儲けするのが目的ですから、翻訳者の選択や訳文の質が後回しにされています。 また、刊行を急ぐために、同じ作品を複数の翻訳者が分担して訳することもよくあります。

 2010年、浅田次郎『蒼穹の昴』は中国でテレビドラマ化されました。テレビの放映に合わせるためか、中国語版の上下二巻は二人によって別々に訳されています。翻訳の質にばらつきがあるだけでなく、上下巻には明らかな文体の違いが見られます。村上春樹の小説はずっと林少華という翻訳者が訳していましたが、『1Q84』の翻訳権は南海出版公司によって高額で落札されたため、上海訳文出版社と専属関係の林少華は翻訳する機会を失いました。

 日本文学の翻訳はもはや文学の出来事だけではなく、さまざまな要素が複雑に絡んでいます。もっとも小説が商品である以上、翻訳出版も究極的には営利目的の商行為にすぎません。電子書籍という大変革に直面しているいま、海外における日本文学の読まれ方が果たしてどのように変わるか、しばらくは目が離せません。

ところで、日本文学とは関係ないが、明るいニュースを見てみましょう 大谷翔平の衝撃 現地アメリカの記者が語る

『海を越える日本文学』1





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Last updated  2021.11.29 08:28:40
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