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2022.01.29
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『パリの日々』という本を、手にしたのです。
表紙に書かれた副題「言語哲学者の休暇、あるいは字幕翻訳者のプロローグ」にキャッチされたわけです。





丸山直子×丸山垂穂著、三修社、2020年刊

<商品説明>より
1978年、パリの丸山圭三郎一家。かの大著『ソシュールの思想』を世に問う前夜、丸山圭三郎は家族を伴いパリに一年間暮らした。パリで一服の解放感を味わう夫と、現地でことばを覚え、とまどいながらもフランスにとけこんでゆく娘。その生き生きとした姿を、当時のパリの空気とともに、妻であり母親の視点から描く。-そして娘は字幕翻訳者への道を選ぶ。当時公刊されたエッセイに加え、新たに書き下ろした四十年後の思い、親子三人の往復書簡(初公開)を収録。

<読む前の大使寸評>
表紙に書かれた副題「言語哲学者の休暇、あるいは字幕翻訳者のプロローグ」にキャッチされたわけです。

rakuten パリの日々


娘(丸山垂穂)さんが、フランス語学習とか字幕翻訳を語っているので、見てみましょう。
p220~225
<時を紡いで>
 2018年9月の深夜、母は(当時83歳)が脳梗塞の疑いで救急搬送された。幸い症状は軽く2週間後には退院、後遺症もなかった。そういえば私は一人娘で兄弟もいない。長年マイペースで自由に暮らしてきたが、そろそろ潮時か。子育ても一段落したので、高齢の母の見守りも兼ねて30年ぶりに同居することになった。退院後、しばらく気弱になっていた母は不死鳥のごとくよみがえり、娘の助けも要らなくなるほど回復した。それどころか最近は逆に世話を焼かれている。いくつになっても母親にとって娘は心配の種らしい。

 2019年5月、平成から令和へと元号が変わった。偶然の物語はゴールデンウィーク中に友人から届いた一通のメールから始まる。「何気なくラジオを聴いていたら、お父さんの名前が出てきた」という知らせだった。ラジオに出演されていた辞典編集者、〇川栄治氏がパリ留学中に知り合った父・丸山圭三郎の紹介で三修社へ就職することになったというのだ。その時は「へえ、そんな出会いがあったんだ」くらいの軽い気持ちだった。

 ところが、その数週間後に今度は同業の友人の紹介で、三修社の編集者、上山直寛氏から連絡をいただく。同社で製作しているFMラジオ番組『ゼッタイForeign Love!~外国語と海外文化にFall in Love~』への出演依頼だった。

「えっ、三修社? なんという偶然。しかも出版社なのにラジオ?」と面食らった。よくよく話を聞いてみると母の著書『街角のクレープ』(三修社刊)を読んでくださり、私が通ったパリの現地校でのエピソードやフランス映画字幕翻訳者になった経緯を話してほしいとのこと。父の著書も愛読してくださっていると伺い、これも何かのご縁だろうとお引き受けすることになった。

 さて、ラジオ出演の前に40年前のパリでの暮らしを思い出そうと『街角のクレープ』を読み直した。すると、両親や祖母に宛てた私の手紙が何通も収録されているではないか。プライバシーもなく冷や汗をかくような描写も多いが当時の様子が懐かしくよみがえってきた。

 ラジオでは幼少期の栄華との出会いから現在までを話し、自身の半生を振り返る良い機会となった。だが、それだけでは終わらない。絶版となっていた『街角のクレープ』に加筆し、母娘の共著として新たに出版してはどうかという提案をいただいたのだ。当初は母も「若気の至りで未熟な文章。今さら人様にお見せするなんてとんでもない」と渋っていたが「またとない企画だし、きっと良い記念になるから」と母を説得。その日から母娘の共同作業が始まった。
(中略)

 当時は今のようにインターネットもメールもない時代。夏休みの両親あてのキャンプ便りでも「日本から手紙来てますか?」「もし暇があったらお手紙ください」と書いているように、いかに手紙を待ち焦がれているか分かる。時折、知人から日本の雑誌や書籍が届くと、むさぼるように読んでいた。

 週末になると、日本映画を上映する映画会や名画座へ、いそいそと出かける。当時パリでは『東京物語』『秋刀魚の味』(小津安二郎)、『七人の侍』(黒澤明)、『裸の島』(新藤兼人)、『愛のコリーダ』(大島渚)など巨匠といわれる日本人監督の旧作が大人気で繰り返し上映されていた。
『二十四時間の情事』(Hiroshima mon amourアラン・レネ監督)を初めて観たのもパリだ。日本で高校生活を送っていたら、決して観なかったであろう作品を集中して鑑賞できた。今から思うとなんと贅沢な時間だろう。

 パリでの生活にも慣れた頃、東宝東和の制作部長で、後に映画字幕翻訳家として活躍された清水馨氏が出張の合間にわが家を訪ねて来られた。父の大学の先輩で同人誌仲間である。大人たちの映画談義に興味津々の私を見て「そんなに映画が好きなら、日本に帰ってきたら映画のチケットをあげるよ」と言われ、帰国後は新作が公開される度にチケットを送ってくださった。清水氏は、私にとって“あしながおじさん”のような存在だ。その十数年後には私自身も字幕翻訳者としてスタートを切り、清水氏と再会を果たすことになろうとは想像もしていなかった。


『パリの日々』2 :パリでの買い物
『パリの日々』1 :フランスへの憧れ





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Last updated  2022.01.30 08:53:18
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