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2022.10.06
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『物理学者のすごい思考法』という本を、手にしたのです。
ぱらぱらと見てみるとシュールな組み合わせ、というか、異次元の視点が見られて・・・ええでぇ♪




橋本幸士著、集英社インターナショナル、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
物理学者は研究だけでなく、日常生活でも独特の視点でものごとを考える。通勤やスーパーマーケットでの最適ルート、ギョーザの適切な作り方、エスカレーターの乗り方、調理可能な料理の数…。著者の「物理学的思考法」の矛先は、日々の身近な問題へと向けられた。超ひも理論、素粒子論という物理学の最先端を研究する学者の日常は、「異次元の視点」に満ちている!ユーモア溢れる筆致で物理学の本質に迫る科学エッセイ。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらと見てみるとシュールな組み合わせ、というか、異次元の視点が見られて・・・ええでぇ♪

rakuten 物理学者のすごい思考法


物理学の効用が語られているので、見てみましょう。
p114~117
<役に立ちますか?>
「今回の発見は、社会でどのように役に立ちますか?」。物理学である発見があって、テレビ局からその解説のためのインタビューを受けた時の、質問である。心底がっかりした。
「すぐには役に立たないでしょうね」と答えた。その言葉は放送には使われていない。

 科学は技術につながり、技術は世の中で役に立つものだから、化学は社会の役に立つためにある、と考える人も多いのだろう。事実、「科学技術」というつながった言葉もあるのだ。テレビ局からのインタビューは、そういった人々の科学への期待を代表したものだったに違いない。だから、基礎物理学の研究の現場では、「この発見はどんな役に立つんだろう」「こうやったらもっと役に立つのではないか」という議論が毎日のように繰り返されている、と想像する人も多いかもしれない。

 しかし、違うのだ。僕は素粒子物理学の研究者だが、少なくとも僕の周りで、研究に関して「役に立つか」を議論している姿を見たことは、この20年で一度もない。世界各国で研究をしてきて、いろんな議論をしてきた僕が言うのだから、おそらく、世界のどこでもそうだろう。つまり、基礎物理学の研究の現場では、「役に立つか」という質問自体が、全く興味の対象ではないのだ。

 ある時、研究会の招待講演を終えて質疑の時間になり、高名な先生から質問をされた。「橋本くんの研究は何の役に立つの?」。実はこの質問の意味は明確だ。社会の役に立つかどうかではなく、他の物理への関係があるのかを聞いているのだ。物理学や数学は、その対象や手法によって、細かく分かれている。素粒子もあれば、宇宙もある、といった具合だ。僕は講演で、他の物理学分野との関係を指摘したので、こんな質問になったわけだ。その質問の後は、ひとしきり楽しい物理の議論になった。

 素粒子物理学者は「役に立つか」で研究を進めてはいない。この世界はどうなっているんだろう、その「科学の不思議」を解明したくて、ずっと研究をやっている。それが、現在の物質宇宙の基礎方程式が発見されるまでに発展してきたのだ。

 もちろん、発見されてきた物理学の成果が、社会を大きく変えることもある。例えば、最もよく知られている物理の数式というと、アインシュタインのE=mc2という式であろう。Eはエネルギー、mは質量、cは光速である。質量がエネルギーであるということことを表したこの数式は1905年にアインシュタインによって導かれ、そして、その40年後、日本に原子爆弾が投下された。

 原子の質量がエネルギーに変換されることが、爆弾に応用されたのだった。科学の大発見は人類の運命をも変えうる。しかし、アインシュタインが爆弾開発に役立たせるために相対性理論を研究していたのではないことは明白である。

 2016年、重力波が初めて観測された時、ニュース番組で「この発見はどんな役に立つんですか?」の質問が飛んでいた。やはりか、とニヤニヤするしかない。重力波の理論的予言が1916年であるから、観測までに100年かかっている。役に立つまで、あと100年かかっても不思議ではない。より正確に言えば、すぐに役立つかもしれないし、100年後の未来でも人類の役に立っていないかもしれない。
(中略)

 役に立つかという視点は、近視眼的かつ局所的だ。重力波の予言から観測までの100年の間に人類の生活がいかに変貌を遂げたかを思い起こすと、その発見が「役に立つ」ということの定規自体が変わっていることに気づく。基礎科学における発見は、その普遍性に重きが置かれるのは自然であり、「役に立つ」かどうかは、その普遍性からの一つの成り行きなのだろう。

 恐る恐る、妻に聞いてみた。「僕の物理が今まで結婚生活で役に立ったことあるっけ?」。妻は考え込み、しばらくして、晴れやかな顔で次のように答えた。「洗濯物ハンガーの洗濯バサミが絡まってる時、ハンガー全体をある周期でガチャガチャ振れば絡まりがとれる、ってアンタ発見したやん、あれむっちゃ役に立ってるで」。


『物理学者のすごい思考法』1 :エスカレーター問題の解





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Last updated  2022.10.06 00:07:15
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