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2022.10.26
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カテゴリ: メディア
「内田樹の研究室」の内田先生が日々つづる言葉のなかで、自分にヒットするお言葉をホームページに残しておきます。
内田

最近は池田香代子さんや、関さんや、雨宮さんなどの言葉も取り入れています。
(池田香代子さんは☆で、関さんは△で、雨宮さんは○で、池田信夫さんは▲、高野さんは■で、金子先生は★、田原さんは#、湯浅さんは〇、印鑰さんは@、櫻井さんは*、西加奈子さんは♪で区別します)

・村上文学の意義について
・統一教会、安倍国葬について他
・安倍政治を総括する
・選挙と公約
・無作法と批評性
・徒然草 訳者あとがき

・病と癒しの物語『鬼滅の刃』の構造分析
・「アウトサイダー」についての個人的な思い出とささやかな感想
・コロナ後の世界 
・格差について
・『コロナ後の世界』まえがき
・紀伊田辺聖地巡礼の旅
・成長と統治コスト
・『日本習合論』中国語版序文
・日本のイデオクラシー
・後手に回る政治
・倉吉の汽水空港でこんな話をした。

ここ )

(その48):『村上文学の意義について』を追記
********************************************************************



2022-10-19 村上文学の意義について より
 文壇にはじめて登場したころ、村上作品は70~80年代のポップで軽快な都市生活者のための文学だと言われた。その評語は今となってはまったくお門違いであることがわかる。現に、村上春樹は世界中の「ポップでも軽快でも都市的でもない人たち」のうちにも多数の読者を獲得したからである。現代日本作家で、これだけ多くの外国語に訳され、人種も宗教も階層も異にする読者たちの支持を得ている人は例外的である。なぜ、村上文学はこれほどの普遍性を持ち得たのか。

 私の仮説は、それは彼が「存在しないもの」との交渉を書き続けたからだというものである。「現に目の前にリアルに存在するもの」について書かれた作品の場合には、一読して「この作品は自分を読者に想定していない」と確信できることがある。そこで行き交うジャルゴンも意味ありげなしぐさもまったく理解できない作品の場合、私たちはすぐに本を閉じてしまう。けれども、仮に遠い国の、遠い時代のものであっても、登場人物たちが「あり得ない場所」で、「存在しないもの」に出会って、傷ついたり、癒されたり、別人に変貌したりするという物語はある種の普遍性を持ち得る。なぜなら、「存在しないもの」に対しては、どの時代の、どこの国の人も(無縁である度合いにおいて)等距離にあるからである。逆説的だが「存在しないもの」のリアリティーは歴史的・地理的な限定を超えるのである。

 村上文学では「この世ならざるもの」、人知を以ては計りがたいものが私たちの世界に繰り返し侵入してくる。そして、愛する人を拉致し去り、人を取返しのつかない仕方で傷をつける。でも、これは有史以来世界中の人びとが経験してきたことの実感なのだと思う。

「存在しないもの」は「存在するとは別の仕方で」私たちにフィジカルに切迫してくる。「存在しないはずのもの」が現にリアルに、タンジブルにそこにある時に、それとどう向き合うのか、どうやってそれと折り合いをつけることができるのか。そのような問いについていくつか有用な経験知を人類は伝えてきた。ルーティンを守ること、礼儀正しいこと、「ありもの」で急場の用を便じること、抑制的であること、世の大事の多くは「原理の問題」であるよりも「程度の問題」であると知ることなどなど。私たちが「成熟」の指標としていることの多くがここには含まれる。そのような実践知の意味が身に沁みる人たちは世界に散らばっている。彼らが村上文学の読者を形成しているのだと私は思う。(週刊金曜日10月13日号)




2022-09-12 統一教会、安倍国葬について他 より
―安倍さんを「嫌韓」と思っていた勢力は、実は安倍さんが反日的な韓国の団体と親しかったと判明し、「親韓」にすら見えかねない。

内田 安倍元首相の韓国に対するスタンスは、ネトウヨの感情的な「嫌韓」とはかなり異質なものだったと思います。彼の場合は感情的な「嫌韓」でも「親韓」でもない、もっと複雑なものです。とりあえず彼にとって優先するのは、国と国との関係じゃなくて、誰が自分の味方で、誰が敵かということです。自分に反対する人間は自国民であっても敵だし、自分を支援する人間は隣国の人間でも味方である。そういう人のことを「ナショナリスト」とは言いません。

―岸首相のころから韓国とは反共で提携してきたわけですが。

内田 僕の遠い親戚に平野力三という人がいました。戦前は農村組合の活動家で、戦後は社会党の片山哲内閣の農相を務めた政治家でしたが、彼のオフィスに朴正煕大統領からの贈り物の金と翡翠の置物が飾ってありました。どうして社会主義者のはずの人が朴大統領と繋がりがあるのか訊いたら「君らには分からないことがいろいろあるんだ」と笑っていました。反共主義の日韓ネットワークはかなり幅広く、奥の深いものであることだけは分かりました。

 朴正煕は日本の陸軍士官学校の出身で、関東軍に配備された後に満洲国軍中尉で終戦を迎えています。大日本帝国の軍人的エートスがかなり深く浸み込んでいる。ですから、大日本帝国への回帰を夢見る日本の右翼と体質的に親和性があっても不思議はありません。ただ、韓国民に根強い反日感情を配慮して、親日的と解されかねない言動についてはきびしく自制していたのだと思います。1965年の日韓基本条約については韓国内ではこれを「売国的」な条約だとして、激しい反対運動があったわけですけれど、朴大統領は強行採決した。おそらく、条約が締結された場合に見返りとして巨額の政治資金の提供を日本側が大統領に約束したからでしょう。

 でも、こういう日韓の権力者間のアンダーグラウンドのつながりについては、当時の日本人たちはほとんど知らなかった。もちろん野党やメディアの調査力が弱かったということもありますけれど、おおかたの日本人は日本と韓国が複雑なパワーゲームをしているという事実そのものに興味がなかったか、興味がないふりをしていた。

 韓国の最初の大統領李承晩は日韓併合時代はアメリカにいて、現実の日本人との交渉経験のなかった人物です。ですから、李承晩の対日政策は非常に敵対的、硬直的なものでした。それに比べると、朴正煕の対日政策はもっとリアルで複雑なものだったと思います。でも、李承晩から朴正煕へのシフトによって日韓関係がその後どういうふうにねじれてゆくのかを理解していた人は、両国のインターフェイスにいた一握りの「フィクサー」たちを除くと、日本の一般国民の中にはほとんどいなかったと思います。事情は韓国でも同じでしょう。日韓の両国民ともが日韓の権力者の間には入り組んだ利害関係があるというような話は知らなかったし、知りたくもなかったんだと思います。



以降の全文は 内田先生かく語りき38 による。





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Last updated  2022.10.26 00:30:17
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