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2022.11.19
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『日本人はどう住まうべきか?』という本を、手にしたのです。




養老孟司×隈研吾著、日経BP、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
都市集中。過疎。自然喪失。高齢化。そして、震災、津波。21世紀、どこに住み、どう生きるのが幸せだろう。
【目次】
第1章 「だましだまし」の知恵/第2章 原理主義に行かない勇気/第3章 「ともだおれ」の思想/第4章 適応力と笑いのワザ/第5章 経済観念という合理性/第6章 参勤交代のスヽメ

<読む前の大使寸評>
追って記入

rakuten 日本人はどう住まうべきか?


第2章でコンクリート建築の信用性が語られているあたりを、見てみましょう。
p39~44
<第2章 原理主義に行かない勇気>
養老:  戦後の日本に限りませんが、都市開発に「大局観」というものが欠けているのは、20世紀の考え方の特徴なのかもしれません。エネルギー問題にしても、俯瞰して見ることが、あまりにもおざなりにされていたのが20世紀です。
 実は、経済成長の要因として資本や労働の重要性は低く、エネルギー消費量の増大の方がはるかに重要だというモデルを立てて、アメリカと日本と西ドイツの経済成長を計算したところ、ぴったり当てはまったんですね。1970年代にそれを最初にやったのが、ドイツの物理学者ライナー・キュンメルだったんですよ。その時点での経済学は、「経済成長はエネルギー消費と関係している」ということに気が付いていない。あんまり大きな声では言えないけど、文科系の学問ってのはアテにならないな・・・と思ってさ(笑)。

隈:  環境問題のデータも読み違いはだいたい経済学方面からと言われています。経済学の考え方は自然科学の考え方とはちょっと違うのでしょうか。

養老:  経済学の考え方は、つまりは人間の欲望をベースにしているのかもしれません。だかれ、「こうありたい」というバイアスが強くかかってしまう。その意味でいうと、建築は基本的に客観性、科学性重視で、経済の要素は二の次でしょう。いくら経済を重視して建てたって、建物がつぶれたら話にならないもの。

隈:  とはいえ、建築の基本はやっぱり人間同士の信頼関係なんです。特にコンクリートが主流になった20世紀の建築というのは、基本的に信用で成り立っている危ない世界です。だって、一度コンクリを打ってしまったら、中に何が入っているのか分からないですよ。鉄筋がなくたって、水をジャブジャブ入れたコンクリートだって、外からは見えない。だから、人を信用できない殺伐とした社会になると、例の耐震強度偽装のような事件がバンバン出てきて、誰もが建築を大嫌いになる。
 コンクリートがあれだけ世界に一気に普及したのは、技術としてものすごく単純だったからなんです。要するに簡単なベニヤを組み立てる技術があれば、世界中どこでもできる。でも、組み立てた中に何が隠されているのかは、誰にも分からない。ネズミだって猫だって入っちゃいます。世界にバーッと広まった技術ではありますが、まったく信用だけで成り立っているあやしいものなんですよ。

養老:  ちなみに20世紀以前の手法では、そういう問題は起こらなかったんですか。

隈:  石造りでは、やっぱり一個一個ちゃんと石を積み上げていかないと、そもそも建物が建たないですよね。「石を積む」という技術はある程度のレベルが保証されているわけです。でも、コンクリートを使うようになった途端に、まったく保証がない状態になったんです。

養老:  コンクリート建築の信用性というのは、社会や国などの信用性につながっているということですか。

隈:  間違いなくつながっています。特に日本の大工さんは技術力が高くて、ベニヤを手早く組み立てることができた。それが逆説的にまずかったのかもしれませんが、建築家がどんなに勝手な造形で図面を描いても、日本の大工さんがいればたちまち世界で一番きれいなコンクリートが打ち上がるんです。建築家の妄想みたいなものを実際に形にしてくれる、素晴らしい職人さんがいたわけです。

 日本の建築と建築家は、丹下健三さん以来、黒川紀章さんも、安藤忠雄さんも、ベニヤをうまく組み立てられる日本の職人さんがいたおかげで世界に名が知られた。まあ、甘やかされていたようなものなんですよ。もちろん僕もその恩恵にあずかっています。それで、ものづくりの厳しさを、どこか忘れちゃったのかもしれない。

養老:  コンクリートでできていれば安心だ、という「コンクリート神話」が消費者のがわには確実にあるでしょうね。

隈:  これも逆説的ですが、中身が見えなくて分からないからこそ、強度を連想させる何かがある。生活の危うさとか、近代の核家族の頼りなさのようなものを支えてあまりある強さを感じるのかもしれません。そういう何かにすがりたいという人間の弱い心理に付け込んだ、詐欺のようなところがコンクリートにはありますね。石やレンガの積み方はひと目で分かりますから、こちらは欺きようのない世界です。でもコンクリートは完全に密実なる一体で、壊しようがなく、圧倒的強度があるようにみんな思い込んでしまう。実はその中はボロボロかもしれないのに。

養老:  なぜ日本の都市建築では木をもっと使わないのでしょう。

隈:  それは関東大震災と、太平洋戦争のトラウマですね。木造の建物が燃えて、多くの人たちが亡くなったわけですから。それで国が、以後は不燃化こそが都市計画の中心だと言うようになって、木造は作りにくいような法律になりました。

養老:  その不燃化が行き過ぎて、碁盤の目型の都市計画や郊外住宅、超高層マンションなど、僕がすごく苦手とする風景が日本にできちゃったんですね。

隈:  その風潮は21世紀になっても、しぶとく生き残っています。しかも、より洗練された言い訳を伴っているんです。例えば高層マンションを建てる人の理屈は、高層マンションによって緑地ができるから、環境に優しいんだそうです。





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Last updated  2022.11.19 14:32:32
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