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2023.06.23
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カテゴリ: 歴史
図書館で『太平洋戦争への道1931‐1941』という新書を、手にしたのです。
表紙に名前が出ているお三方は、日本のリベラルな論客とも言えるような人選であり・・・チョイスしたのです。




半藤一利, 加藤 陽子著、NHK出版、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
2017年の終戦の日にNHKラジオで放送されて話題を呼んだ鼎談に、保阪正康の解説と図版・写真を加えて再構成した「開戦八十年企画」。1931年の満州事変から、1941年の真珠湾攻撃へ。昭和日本が犯した「最大の失敗」に至る道筋を六つの転換期から検証し、私たちが学ぶべき教訓と、令和日本が進む道を提言する。

<読む前の大使寸評>
表紙に名前が出ているお三方は、日本のリベラルな論客とも言えるような人選であり・・・チョイスしたのです。

rakuten 太平洋戦争への道1931‐1941


「第1章 関東軍の暴走」で述べているので、見てみましょう。
p43~48
<1931満州事変―1932満州国建国>
 昭和のはじめ、日本は国際連盟の常任理事国で世界の五大国(米・英・仏・日・伊)の一つでした。しかし、1929年(昭和4年)の世界恐慌により、経済は冷え込み、農村は困窮していました。
 日本にとって特別な権益があるとされていたのが、「満州」とも呼ばれていた中国東北部でした。
 日露戦争の結果、日本はロシアから、中国東北部を走る鉄道と、大連と旅順の租借権を手に入れ、鉄道防備のための軍隊=関東軍を置いていました。
 1910年(明治43年)に大韓帝国を併合し朝鮮半島まで支配していた日本医とって、北隣りに位置する満州は、ソ連に対する国防や、鉄や石炭の供給地として重視され、日本の「生命線」とも言われました。

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■大日本帝国にとっての満州
加藤: 大日本帝国にとって満州が、なぜ「生命線」と位置づけられたのかについて、考えてみたいと思います。

半藤: 満州というのは、日露戦争の結果、日本が日露戦争で勝ったことで、当時のロシアから得た権益です。「二十億の資材と二十万の生霊」というスローガンがありました。日本を守るために、二十万の人の命と、それから二十億のお金がかかって、多くの犠牲を出して権益を獲得したのだから、この権益を守らなければならない。だから関東軍は、満州を日本の生命線として一生懸命に守り抜いているのだと訴え、国民はそれを信じました。

加藤: まず「名前を与える」ということはとても大事で、たとえば元老にして元勲の山形有朋が「主権線」「利益線」ということを唱えました。韓国、朝鮮半島は日本にとって利益線である。だから、ここをまもらなければいけないということで、日清、日露戦争に進むわけです。一方で、満州を日本の「生命線」と名づけたのは松岡洋右ですが、大日本帝国にとって、満州を日本の「生命線」と位置づけることに、どのような同時代的意味があったと思われますか。

保阪: 日清、日露、第一次世界大戦、そして昭和に入っての満州事変へと進んでいきますが、私はこの満州に入っていく一連のプロセスを見ていて、主に経済的な権益の確保ということが重視されたと感じます。つまり、満州への進出は生存権の拡大であるとする財界・経済界が、軍を支えたわけです。自分たちの国は貧しい国で、こんな狭い国土で、とてもではないが生活するのもやっとである。
 私たちの国や民族にも、生存権を拡大する権利がある・・・ということで、満州に入っていることを正当化したのです。

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 1931年(昭和6年)9月18日、中国東北部の柳条湖で、日本の経営する南満州鉄道の線路が何者かによって爆破されました。
 関東軍は、これを中国軍によるものとして、武力攻撃を開始します。政府は「不拡大」の方針でしたが、朝鮮駐屯軍は、独断で越境して満州に入りました。
 陸軍は自衛を名目に、5ヶ月でほぼ満州全域を制圧します。満州事変です。

 しかし、鉄道爆破は、実は関東軍が自ら行ったものでした。関東軍は、政府に無断で謀略を進め、内閣が決定した不拡大の方針に逆らって、軍を動かしたのです。
 そして、翌1932年(昭和7年)には、満州国を独立させました。満州国は民族自決で生まれたとされましたが、実際は、行政や軍事を関東軍が握る傀儡国家でした。

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■なぜ関東軍の独断を許してしまったのか
加藤: では、次に「なぜ関東軍による独走、独断が許されてしまったのか」について。
 当時、大日本帝国の出先軍、現地軍というと、朝鮮半島に朝鮮軍二個師団がいて、中国には関東軍がいました。外地ですので、中央からの制御ができにくい。天皇の命令を現地軍に伝える奉勅命令というものがありますが、これで現地軍をとめるというのも、なかなか政党内閣ではやりにくかったと思いますね。

半藤: 中央部、つまり、政府ばかりでなく、東京の陸軍参謀本部が不拡大という指令を出しています。しかしながら、関東軍はそれを聞かなかった。ということは、これは統帥権干犯にあたりますから、本来は違反行為です。軍法で言えば、とんでもないことをやっている。

 ところが、ソ連がこうした関東軍の動きに干渉してこないとわかった瞬間に、参謀本部も一緒に乗っかってしまいます。昭和天皇の命令が「不拡大」で、できるだけ戦争を早くやめろというのを、参謀総長は「は、承りました」と言っておきながら、参謀総長から参謀へ、さらには参謀から関東軍の参謀へ、「おい、おまえたち、いい加減にしろ」というようなことをただ口で言うだけで、後半はずるずると一緒に乗っかってしまっています。ですからこれは、独断を許したというよりも・・・。

加藤: 陸軍中央も乗ってしまったわけですね。

半藤: このチャンスに、満州国の権益をできるかぎり広げようとして動いたと見ざるをえないと思いますね。そういう意味では、まさに「侵略」であったと言えると思います。昭和天皇は、統帥権を持っている大元帥として、これは侵略であるから止めろと明らかに言っています。参謀総長はそれを承っている。だから、本当は統帥権の干犯なんです。

 ところが困ったことに、昭和天皇は政府が決めてきた国策にはノーと言わないのが、きつい“しきたり”というか、心得なんですね。ですから、大元帥としては軍を止めろ、迫害をやめろと言っているけれども、政府のほうはごちゃごちゃしているうちに朝鮮軍越境の予算を出すことを決定してしまい、天皇はそれを認めます。
 つまり、昭和天皇は「大元帥」としては抑えているんです。ところが、「天皇陛下」としては、残念ながら国家の決めてきたことに対しては、ノーと言わない、と。それで、「では許す」ということになる。ですから、これは統帥権の干犯なんですよ、違反なんです。


『太平洋戦争への道1931‐1941』1 :はじめに





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Last updated  2023.06.24 16:02:23
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