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2023.06.26
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『南シナ海 アジアの覇権をめぐる闘争史』という本を、待つこと7日ほどでゲットしたのです。
米中が対峙する境界線といえば、台湾海峡と南シナ海であり、インドを加えた日米豪印クアッド(QUAD)は対中防衛軍でもあるわけで・・・必読書とも言えるこの本をチョイスしたのです。




ビル・ヘイトン著、河出書房新社、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
境界線と領有権の「なぜ」を詳説!人工島の拠点化、緊張する周辺国、衝突の危険と不測の事態。「南シナ海の歴史」は「世界の歴史」であり、その未来は世界の関心事だ。ここで起こることは世界の未来を決めることになる…歴史、国際法、資源、政治、軍事など、あらゆる角度から解説する必読書。

<読む前の大使寸評>
米中が対峙する境界線といえば、台湾海峡と南シナ海であり、インドを加えた日米豪印クアッド(QUAD)は対中防衛軍でもあるわけで・・・必読書とも言えるこの本をチョイスしたのです。
中国外務省の報道官は「クアッドは時代遅れの冷戦思考に満ちており、軍事的な対抗の色彩が強く、時代の流れに逆行し、人々の支持を得られない」とけん制しています。
<図書館予約:(6/09予約、副本2、予約1)>

rakuten 南シナ海 アジアの覇権をめぐる闘争史



「第5章 ゼロよりはまし」で、南シナ海の海洋資源を、見てみましょう。
p171~173
 1990年8月、東南アジア諸国は「中国の復帰」で大騒ぎをしていた。天安門事件から1年がたち、多くの有力者がそろそろほとぼりも冷めるころだと考えた。李鵬首相は虐殺を後押しした人物のひとりだが、それが9日間の東南アジア諸国歴訪に出ることになったのだ。

 二番目の訪問国はシンガポールで、通常の表敬行事と公式晩餐会のあと、8月13日に李鵬は記者会見を開いた。両国の外交的な交流がもとに戻るのかという点に質問は集中し、彼の表向きは友好的な言葉―「領有権の問題はしばらく棚上げにし、東南アジア諸国と協力して南沙諸島の開発に取り組む用意がある」―に気を留めたジャーナリストはほとんどいなかった。しかし、これはたんなる思いつきの言葉などではない。

 この政策を言い出したのは鄧小平で、初めて正式に表明されたのは1978年10月、東シナ海に関して日本と会談したさいのことだった。次に持ち出されたのは、1986年および88年のフィリピン首脳陣との私的な会合でのことだ。いわく、「われわれの世代には、このようなむずかしい問題を解決するだけの知恵がない。解決は知恵のあるのちの世代に任せるのも一案だと思う」。この声明はそれ以来、東シナ海と南シナ海両方における中国の国家的政策の基礎になっている。

 1990年、中国指導部はエネルギー問題に気をもんでいた。ここ30年間は、内陸部の大慶油田のおかげで石油を自給できたが、鄧小平の経済開放で一気に需要が増大したため、遠からず産出量が不足するのは明らかだったからだ。新たな供給源が必要だ。1987年4月、中国は南シナ海で科学的調査をおこない、その後ただちにボルネオ沖の「曾母暗礁(ジェームズ礁)に豊富な石油と天然ガス」が眠っていると発表した。

 1989年12月に『中華日報』が報じた公式発表によれば、スプラトリー諸島(南沙諸島)には250億立方メートルの天然ガスと1050億バレルの石油が、さらにジェームズ礁周辺には910億バレルの石油が埋蔵されている計算になるという。鄧小平ら政治的指導者は、迫り来るエネルギー危機の打開策は南シナ海にあると口にするようになった。この主旋律は、エネルギー部門や軍の奏でる基調によって増幅されていく。
 『解放軍報』は、1987年から90年にかけての連載記事で、国土防衛の「崇高な」意義を訴えつつ、海洋資源の開発という実利的な議論を展開している。

 こういう論説は東南アジアでは聞き流されていた。中国は遠く離れているし、岸から何キロも離れた場所でなにを開発する手段も能力も持っていなかったからだ。李鵬がスプラトリー諸島の共同開発を申し出たときは、ただの絵に描いた餅だと解釈されたものだ。しかしその見かたは変化することになる。鄧小平のねらいは、たんに意見の相違を棚上げにすることだけではなかったのだ。

 彼の言葉には三つの要素が含まれる。すなわち「領有権は中国にある」、「議論は棚上げにする」、「共同開発を推進する」。このうち最も重要なのは一番めの要素である。つまり事実上、「U時型ライン」内で海洋資源を開発しようとする国は、中国の主権を認めるか、さもなければ物理的な中国のプレゼンスと真っ向から対決することになるのだ。どこの国も中国の主権を認めていないから、李鵬のシンガポールでの宣言が今日の紛争のもとになっていると言える。

 このときまでは、中国がもっぱら関心を向けていたのは、1974年および1987~8年に占拠した島や礁だけのようだった。それがこの1990年以降には、中国政府ぶないの多くの利益集団が、「主権はわが国」というドクトリンをU時型ラインの全域で実現したがっていることが明らかになってきた。その利益集団を主導していたのは〈中国海洋石油総公司〉だ。しかし、この〈中国海油〉を最初にそそのかしたのはひとりのアメリカ人だった。

 1992年、コロラド州出身のひとりの男が、南シナ海のゲームを変えてしまった。それはまさに、無から黄金を生み出す現代の錬金術だった。彼は東南アジアの石油探査のルールを書き換え、ふたつの国を紛争の瀬戸際まで追い込んでおいて、数百万ドルをふところにして立ち去った。その過程で初めて明らかになったことだが、中国の「U時型ライン」に関する主張はたんなる歴史問題ではなく、将来的な意図のある声明だったのだ。

 そして周辺諸国は、中国がエネルギー安全保障を追及すれば、自国のそれが脅かされると気がついた。しかし、東南アジアの資源獲得戦争の物語は意外な始まりかたをする。


このあと、ランドル・C・トムスンが〈中国海油〉との契約にいたるお話が続きます。

『南シナ海 アジアの覇権をめぐる闘争史』1 :「九段線」の根拠





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Last updated  2023.06.26 00:07:38
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