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2024.02.01
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カテゴリ: 気になる本
図書館で「映画でみる移民/ 難民/ レイシズム」という本を手にしたのです。
この本が取り上げた作品は、ほとんど観ていないのだが・・・
まあなんと、観るのも辛いような問題作が並んでいます。





中村一成著、影書房、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
戦争、虐殺、差別、貧困・格差、植民地主義…現代世界が直面する課題を眼前にしながら、奮闘する映画人たちがいる。日本社会の課題をも照射する映画評論集。

<読む前の大使寸評>
この本が取り上げた作品は、ほとんど観ていないのだが・・・まあなんと、観るのも辛いような問題作が並んでいます。

rakuten 映画でみる移民/ 難民/ レイシズム



まず、「第1章 難民とはなにか」でかつて観た「第9地区」を、見てみましょう。
p51~55
<4『第9地区』>
 ドキュメンタリーや現代ドラマにとどまらず、SFにも難民は頻繁に登場する。
 たとえばウルトラ怪獣の定番、宇宙忍者「バルタン星人」である。初登場は『ウルトラマン』の第2話「侵略者を撃て」。宇宙旅行中、マッド・サイエンティストの核実験でバルタン星が吹っ飛び、還る場所をなくして宇宙を放浪中、たまたま見つけたのが地球だった。

 科学特捜隊のハヤタ隊員(=ウルトラマン)は話し合いによる解決を目指すが、移住をめぐる交渉は不調に終わり、巨大化して街を破壊するバルタン星人ひとり(?)をウルトラマンは「成敗」する。驚愕はそこからだ。ウルトラマンはそれで一件落着とはせず、バクテリア大になった20億3千万人ものバルタン星人が眠る円盤を地球から離れたどこかへと押していく。
 映像では描かれていないが、空の彼方が光り、2度に渡って爆発音が響く描写からは、ウルトラマンが難民たちの眠る宇宙船にも必殺のスペシウム光線を浴びせたことが推察できる。

 仏像をモデルに造形されたともいわれるウルトラマンが、たったひとりの大暴れを理由にして、罪のない20億3千万人もの難民を虐殺するのだ。将来の危険除去だとでもいうのか。少なくともこれは地球の国際法では禁じられている「集団的懲罰」である。しかも過剰極まる虐殺だ。とても「正義の味方」とは思えぬやり口である。
(中略)

 単なる荒唐無稽に終わる、あるいは無自覚な差別意識が噴出するリスクもあるが、現代世界が直面する複雑な問題に、意表を突いた形でアプローチするには、SFは恰好のスタイルである。

 南アフリカ出身のニール・ブロムカンプ監督の長編デビュー作『第9地区』(09年)はそれらの系譜に連なるブラックでキッチュ、そしてパワフルでグロテスクな1本だ。ここに登場する「難民」は、紛争や飢餓・飢饉、政治弾圧を逃れて越境してきたどこかの国の「元国民」ではない。宇宙を航行中、なんらかの疫病が船内をまん延し、死滅寸前に地球に降り立った、まさにエイリアン(Àlien)、すなわち「外国人」である。

 上昇するヘリコプターに乗ったカメラが南アフリカ・ヨハネスブルグの巨大な難民キャンプを真下にとらえる。黄土色の大地に敷きつめられたとび色の不揃いなタイル群、あるいは寄木張りのような平面は、カメラが頭を上げるにつれて巨大なバラック群として立体化していく。その巨大なバラック群の淵には、難民キャンプの内側と外側、国民と難民を分かつ堅牢な壁が建てられ、ときに曲線を描きながらスクリーンを縦にひき裂く。

 難民たちを現代のゲットーに隔離し、「国民の世界」への入場を拒む壁は、まるで津波から人びとをまもるため、海岸線に築かれた防波堤のようだ。そう考えれば、灰色の遮断壁に押し寄せるようにひしめいている粗末なバラック群は、壁の向こうにある「国民の世界」(難民たちの苦境を無視し、安寧を貪る者たちが住む世界)を呑みこもうと打ち寄せる大波にも見えてくる。

「世界最悪レベルの治安」・・・。本作の舞台、南アフリカ・ヨハネスブルグの現実世界での枕詞である。別の言い方をすれば、そこは世界でもっとも弱肉強食の論理が貫かれた、「人」と称する猛獣たちがうごめくジャングルである。有史以来そうだったのではない。植民地主義と戦争、人種差別と搾取に見舞われてきたこの地の歴史ゆえである。

 17世紀、オランダ人が喜望峰に到達して以来、白人の入植が進み、18世紀以降は鉱物資源を求めるイギリス人が攻めこんできた。侵略者の懐を肥やすため、牛馬のように働かされてきたのは周辺諸国から集められた奴隷労働者である。
 植民地主義と奴隷制という、人道に対する罪と切っても切れない歴史をもつこの国で、白人絶対の統治形態を堅固なものにするために敷かれたのが、さらなる人類史上の犯罪、アパルトヘイト体制だった。
 白人の下に黒人がおり、黒人のなかでも海藻がある。最底辺はアフリカ諸国から越境してきた不法移民、難民たちである。
(中略)

 この南アフリカを舞台に、常に「外部」を作り出し、人間を序列化する国民国家体制の問題と、人間という生き物の度しがたさをセミ・ドキュメンタリー・タッチでえぐり出してみせたのが本作である。

 主人公とその周囲を映す手持ちカメラの映像と、インタビューを多用したドキュメンタリー的映像に、実際のニュース映像をテンポ良く組み合わせ、ブラック・ユーモアに満ちたハチャメチャな世界に観客を引き込む。その映画体験は、たとえるなら四輪駆動の大型ジープに乗り、見たことのない生き物が生息するジャングルを猛スピードで走り抜けるようだ。


・・・とにかくニール・ブロンカンプ監督の作品が好きなわけで、 ニール・ブロンカンプ監督作品集 としてフォローしているのです。





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Last updated  2024.02.01 00:04:39
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