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2024.12.31
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『翻訳はめぐる』という本を、手にしたのです。
目次を見れば・・・翻訳に関連する表記、本などあらゆることが語られているので興味深いのです。
(「BOOK」データベースでは華麗なる脱線と表現しています)




金原瑞人著、 春陽堂書店、2022年刊

<「BOOK」データベース>より
翻訳家兼大学教員40年翻訳書600冊。翻訳にはじまり、英語、日本語、表記、古辞書、サリンジャーまでー華麗なる脱線。金原先生の公開講座。

<読む前の大使寸評>
目次を見れば・・・翻訳に関連する表記、本などあらゆることが語られているので興味深いのです。

rakuten 翻訳はめぐる


「Ⅰ 翻訳家の悩みは尽きない」の冒頭で翻訳の(脱線ぎみの)実態を、見てみましょう。
p12~15
<① 古びゆく翻訳>
 いってしまえば、翻訳とはせいぜい(ほぼ=)だと思う。訳者が原文を読んで捉えたものを、訳者の知識、情報、感性を駆使して作り上げた代替物。そして訳者がその時代、その環境にいるからには、訳文はその時代や環境を反映する。

 端的な例をあげると、『不思議の国のアリス』の明治時代の翻訳だ。最初の完訳に近いものが明治43年(1910年)の丸山英観の『愛ちゃんの夢物語』。タイトルからもわかるように、「アリス」は「愛ちゃん」になっている。翌年に出版された丹羽五郎編の『長篇お伽噺 子供の夢』では「綾子さん」になっている。さらに、綾子さんが菌(きのこ)を食べて首が伸びるところは、こんなふうに訳されている。
・・・是(これ)は叉何と云う不思議な事なのやら、今度は綾子さんの肩が何処かへ無くなつてしまって居るではありませんか。
併し肩が無くなつたと思つたのは全く綾子さんの考へ違ひで、其の実綾子さんは左の菌の利目でもつて、轆轤首になったのでありました。


 ほかにも、明治30年代に出た土居春曙と黒田湖山の共訳による『〇』のモーグリの挿絵が金太郎体型だったりするのをみると、あ、そうか、当時の人にとって山野を駆けめぐり、猛獣と同等に渡り合う少年は、金太郎だったのかと、思わず膝を打ったりする。

 このように、翻訳は時代の影響をもろに受ける。もちろん、自国の小説も同じなのだが、そこがオリジナルでない翻訳の悲しさで、すぐに古びていくところが違う。名作、古典として後世に残る作品は、その時代の人がその時代に書いたもので、のちの人々が読んでも違和感がない。それに対し、昔の翻訳は違和感だらけだ。さきに上げた『アリス』や『狼少年/ジャングルブック』の例も違和感があまりにも大きくて、かえって新鮮に思えるくらいだ。

 もうひとつ、翻訳を古びさせるものがある。それはその時代時代の翻訳観だ。つまり翻訳はどうあるべきかという考え方が時代によって変わる、これがまた面倒だ。明治時代の翻訳家は、日本人に理解しがたい、伝えづらい、(訳者によくわからない)部分は削除するか、大胆に翻訳したりしていたが、ある程度、外国の文化が日本でも知られるようになると、そういう逸脱はなるべく避けられるようになる。しかし、戦後何十年かたつまで、翻訳はかなり自由だった。たとえば、石井桃子訳、エリナ・ファージョンの『ムギと王さま』の冒頭。
村に、ひとりのばかがおりました。ところが、それが、どうして、ふつうどこにでもいて、使い走りなどしている「村のあほう」とはちがいました。

 かなり説明的な訳で、少なくとも「使い走りなどしている」は原文にはない。石井桃子は戦後の児童文学の翻訳家としてとてもいい仕事を残しているが、いま読むとどうしても冗長に思えてしまう。思い入れたっぷりに訳している感じがするのだ。

 新薬をテーマに講演した際、資料として河野万里子さんにフランス語の『星の王子さま』の新旧訳文の比較サンプル、関口英子さんにイタリア語の『マルコヴァルドさんの四季』の新旧訳文の比較サンプルを作っていただいた。
 どちらも新訳のほうがはるかに短い。また、サマセット・モームの『月と六ペンス』も、中野好夫訳が433ぺージなのに対し、金原瑞人訳は369ページ。どちらも新潮文庫で字詰めも同じだ。昔、中野好夫がエッセイに、「こいつは一本やられたねえ」という一文を、原文にはないのに、どうしても入れたくていれてしまったと書いてあったのを覚えている(〇)

 これに対し最近の翻訳家は原作を尊重して、原文にないものは入れない、原文にあるものは省かないという立場の人がほとんどだ。さらに原文の雰囲気や、登場人物のキャラや、文体のリズムまで忠実に再現しようとする。涙ぐましい努力だ。ある意味、訳者は黒子であるべきだという理念に基づいて翻訳している人もいる。

 なら、金原はどうなんだとたずねられると、ちょっとつらい。そこまでストイックに訳してはいないような気がする・・・というか、物によってはかなり自分の色を濃く出していたりして、たまに反省することもある。とはいえ、原文至上主義であることは間違いない。


『翻訳はめぐる』1 :鳥山明伝説





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Last updated  2024.12.31 00:13:30
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