PR
Keyword Search
Calendar
New!
歩世亜さんComments
Free Space
日本地図Freepage List
図書館で『 私労働小説 ザ・シット・ジョブ 』という本を手にしたのです。
元気印のような彼女自体が興味深いのでチョイスしたのです。
<table border="1"><tbody><tr><td width="550" height="50">
【 私労働小説 ザ・シット・ジョブ 】
webp 画像につき開示できず
< 「 BOOK 」データベース>より
シット・ジョブ。店員、作業員、配達員にケアワーカーなどの「当事者」が自分たちの仕事を自虐的に指す言葉だ。他者のケアを担う者ほど低く扱われる現代社会。自分自身が人間として低い者になっていく感覚があると、人は自分を愛せなくなってしまう。人はパンだけで生きるものではない。だが、薔薇よりもパンなのだ。数多のシット・ジョブを経験してきた著者が、ソウルを時に燃やし、時に傷つけ、時に再生させた「私労働」の日々、魂の階級闘争を稀代の筆力で綴った連作短編集。
<読む前の大使寸評>
追って記入
rakuten<a href="
https://books.rakuten.co.jp/rb/17625224/
">
私労働小説 ザ・シット・ジョブ
</a></td></tr></tbody></table>
主人公・喜和子と周りの友人たちの生活が興味深いので、ちょとだけ見てみましょう。
</a><TABLE border="1"><TR><TD width="550" height="50">p26 ~ 29
「ねえ、なんで雑貨屋を開きたいの?」
ある日、あたしはいつもの駐輪場への道で喜和子に聞いてみた。
「自分がかわいいと思うものに囲まれて毎日を過ごしたいから」と喜和子は答えた。
「田舎の子だったから、『 Olive 』とか『 an/an 』とかでかわいい雑貨を見て、ああいうものに囲まれて暮らす毎日をいつも思い描いてた。だから、小さな雑貨屋をやるのは究極の夢」
「ふうん」
でも喜和子はそういうひっそりとしたことではおわらないんだろうなと思った。九州全土に展開する雑貨店チェーンの経営者になり、別の業界にも進出したりして、一大ビジネス・エンパイアを築きそうな感じである。二十歳で中洲のママと間違われるほど、喜和子はナチュラルに商売がうまいからだ。
「チホちゃんは、なんでロンドンに行きたいの?」
「…ロンドンの音楽が好きだから。ロンドンの服が好きで、ロンドンの建物や風景が好きで、何もかも大好きだから、好きなものに囲まれて暮らしたい」
「じゃあ、あたしとまったく一緒じゃない」
喜和子がそう言うのであたしも笑った。
「ねえ、あたしたちっていま夢のために生きてるのかな」
「まあ、そういうことになるんじゃない」
「なんか、ちょっとあたしたち、かわいいね」
「うん、かわいいかも」
とは言え、 喜和子の客あしらいはそんなにかわいいものではなかった。
副島さんはぱったりお店に来なくなったが、ある日、彼の弟が店にやってきた。細身で神経質そうな副島さんとはまるで違い、弟は日焼けしたサーファーみたいなタイプだった。彼は自分の素性を明かさず喜和子を指名した。
隣のテーブルについていたあたしは、副島さんの弟の話を断片的に聞いていた。
「兄が離婚することになったんですよ。若い水商売の女性と不倫して」
「義姉は兄の会社の共同経営者だったので、会社のほうも畳むことになりそう」
「義姉は不倫相手の職場に行ったらしいんですが、若いのにしたたかな女性だそうで」
喜和子はまったくの他人の話を聞いているように「そうなんですか」「たいへんですね」と相槌を打ちながら、水割りを作ったり、水滴で濡れたグラスの下半分をおしぼりで拭いたりしていた。
喜和子の落ち着き払った態度に苛立ったのか、副島さんの弟が吐き捨てるように言った。
「まったく。中洲のホステスなんかに夢中になるから」
喜和子はぴんと背筋を伸ばして微笑し、やんわりと副島さんの弟に言った。
「で、お兄様たちにお子さんはいらしたんですか?」
「いませんでした。なかなかできなくて、それで義姉も悩んでいた」
「よかったですね」
「は?」
「お子さんがいないほうが、離婚は楽でしょう? それに、中洲のホステスなんかのせいでダメになるなら、いずれそうなっていたんじゃないですか」
喜和子は涼しい顔でそう言うと、ボルドー色の口紅を塗ったぽってりした唇に冷酒を流し込んだ。
副島さんの弟は薄い唇を半開きにしてじっと彼女の顔を見ていた。
</TD></TR></TABLE>
このあと中洲を舞台にしてドタバタ騒ぎが続くのだが、長くなるので以降省略します。
『図説不思議の国のアリス』(復刻) 2026.09.06
仏文書籍あれこれ(復刻) 2026.09.05
『飛行士たちの話(新訳版)』(復刻) 2026.09.03